大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

鳴かぬなら 信長転生記 109『天照大神との交渉』

2023-02-21 16:45:16 | ノベル2

ら 信長転生記

109『天照大神との交渉信長 

 

 

 ああ、やっと来たぁ!

 

 見かけは平手の爺が『本朝神仙図絵』で見せてくれた通りの天照大神の装束なのだが、機嫌の悪い時の濃(俺の女房)そっくりの不機嫌面で現れた。

「大相国信長である」

「ん? ダイショウコク? なにそれ?」

「死んでから天皇にもらった称号だ、知らんのか?」

「あ、官職名か、太政大臣のことだな。官職名なら上総介にしておけ」

「上総介は桶狭間までだ。それに自称だぞ」

「上総介の方がかっこいい」

「かっこいいか、まあいいだろ。『やっと来た!』と言っていたが、俺が来るの知ってたのか?」

「転生してきた者たちは大勢いるけど、この天照に会いに来たのは上総介が初めてなのじゃ。だから、そういう意味で初めてなわけさ」

「ん? あっちゃんは『簡単には会えません』的なことを言っていたぞ。今日だって、自分が草薙剣になって付いて行かなきゃダメだって」

「ああ、それは後回し。とにかく、転生者は、自意識が強いっていうか『自分こそは!』って者ばっかりだろ。神頼みしても形だけだからね」

「しかし、謙信などはなかなか信心深いぞ。他にも、高山右近とかのキリシタン大名とか物狂いしたような者もおるぞ」

「そいつらは、自分の中に作り上げた神を敬っておるだけだ。勘違い、あるいは自己愛、あるいは、欲得ずくという奴もおる」

「なるほど、よく見ておるのう」

「で、願いごととかあるんじゃろ。言え」

「ああ、それはな……」

「なるほど、三国志の茶姫の処遇なのだな」

「まだ、なにも言ってないぞ」

「あ、すまん。神さまだから、心に浮かべただけで分かってしまう(^_^;)」

「それなら話は早い、どうしたらいい?」

「茶姫は業の深い女なのじゃ。深くてこんぐらがっておる……はてさて……」

 深い憂悶でもあるのか腕組みして空を仰いでしまった。

「どうしたらいいかは分かっておる。分かってるんだけども、それは気象予報士が台風の進路を言い当てるようなものでなあ……台風そのものをどうこうすることはできん」

 その程度のものなのか天照大神とは……これではアイドル気象予報士の天気予報と変わらんだろう(-_-;)

「見くびるなよ、上総介」

「おっと、考えただけで分かってしまうんだったな」

「天照は、いま上総之介に見えている姿が全てではない。あちらこちら、この転生の扶桑だけではなく、現世や幽世、数多ある異世界のあちこちにも在って、様々な問題や困難に立ち向かっておるのじゃ。この扶桑に全力を振るうわけにはいかん。次元は違うが、本能寺直前の上総之介に似ておる」

「俺にか?」

「そなたも、日本中の敵を相手にしていっぱいいっぱいであっただろう。で、光秀のことにも想いをいたせずにな」

「……なるほど(-_-;)」

 痛い例え話だ。

「そうだ、上総之介、その困難のいくつかを背負ってはくれないか?」

「天照の代わりをやれと言うのか?」

「問題の半ば以上は、素戔嗚(すさのお)のことなのだ」

「あの『わんぱく王子のオロチ退治』の?」

「あんなに可愛いものではない。というか、例えが古いなあ、『わんぱく王子のオロチ退治』は、宮崎駿が入社する前の東映動画の作品だぞ。まあいい、実はな、あちらこちらで荒ぶる神になって皆を困らせておる。しかし、あれでも我が弟。力づくで滅ぼしてしまうのもしのびなくってな」

「俺が素戔嗚を……」

「この草薙剣を貸してやる。並の刀剣では太刀打ちできんだろうからな」

「ちょっと待て」

「それから、一回に付き一人助手を付けてやる。人選は任せてもらうがな。励め、期待しておるぞ」

「待ってくれ」

「神さまの決定事項だから、キャンセルは無しだぞぉ(`_´)」

「……そのバニラの香りはなんだ?」

「え、あ、これぇ(n*´△`*n)?」

「並みのバニラではないぞ」

「あ、カナダの神さまから飛び切りのメイプルシロップもらったもんでぇ、とっときのバニラエッセンス使ってホットケーキ作るとこなのさ」

 ゴクリ

「上総介って、甘いものに目が無かったわねえ」

「そ、それは……」

「素戔嗚を一人やっつけたら、食べさせてあげるから、しっかり頑張ってぇ! じゃね(^▽^)/」

 

 シュボン

 

 一瞬で杜は元の芝に戻って、気まぐれな風が髪のほつれをなぶっていった。

 

☆彡 主な登場人物

  • 織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生  ニイ(三国志での偽名)
  • 熱田 敦子(熱田大神) 信長担当の尾張の神さま
  • 織田 市        信長の妹  シイ(三国志での偽名)
  • 平手 美姫       信長のクラス担任
  • 武田 信玄       同級生
  • 上杉 謙信       同級生
  • 古田 織部       茶華道部の眼鏡っ子  越後屋(三国志での偽名)
  • 宮本 武蔵       孤高の剣聖
  • 二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま
  • 雑賀 孫一       クラスメート
  • 松平 元康       クラスメート 後の徳川家康
  • リュドミラ       旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ  劉度(三国志での偽名)
  • 今川 義元       学院生徒会長
  • 坂本 乙女       学園生徒会長
  • 曹茶姫         魏の女将軍 部下(備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
  • 諸葛茶孔明       漢の軍師兼丞相
  • 大橋紅茶妃       呉の孫策妃 コウちゃん
  • 孫権          呉王孫策の弟 大橋の義弟

 

 

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RE・かの世界この世界:016『喫茶みかど』

2023-02-21 07:25:13 | 時かける少女

RE・

016『喫茶みかど』   

 

 

「先輩! 先輩なんですね!?」

 女神さまの声は中臣先輩だった!


 ほんの一時間足らずぶりなんだけど、海外のどこかで財布もスマホもパスポートも無くして知り合いに出会った感じ。

『どうやら、とても難しい世界に行ってしまったようね』

「はい、えと、わたしどうしたらいいんでしょう(;'∀')」

『あのね……ちょっと待って……』

 電話の向こうでボシャボシャと話声、どうやら志村先輩と話し合っているようだ。

『……わかった、うん……いい、みっちゃん。一つ課題を解決すれば、その世界から離脱できるの。いま、時美に探してもらってるから……うん、こっち? えと……みっちゃん』

「はい」

『駅一つ向こうに『みかど』って喫茶店があるの』

「あ、A駅の方ですね」

 リアルでっていうか元の世界のA駅前で見かけたことがある。

『その『みかど』の窓際の四人掛けシート、そこに三時半から四時までの間座っていてもらいたいの』

「座って何をするんですか?」

『意味はまだ分からない。ただ、座っていることで、そっちの世界が三十年後に大きな影響があるらしいの。お願いできるかなあ……』

 ひどく申し訳なさそうな口調、先輩にも詳しいことは分からないんだろう。

「分かりました、三時半なら余裕です!」

『じゃ、がんばってね!』

「はい、がんばります!」

 場所も分かっているので明るく応えて受話器をもどした。

『がんばってね』「がんばります」……女子の常套句。小説とか書いていたら、まず使わない月並みで上っ面な言葉。でも、とっさに出てくるのはこういう言葉なんだ。今だって先輩の『がんばってね!』を冷たいとは感じなかった。

 わたし、小説の表現なんか考えてるよ。ちょっと余裕? ううん、さっきまでは赤地に白丸とかニクソイ小学生とか変な参考書とかでアセアセになりかけて、先輩の電話でめっちゃ救われたんだ。やっぱり、先輩の人柄なんだ。

 

 自販機で切符を買うなんて久しぶり。

 

 行先ボタンとお金、どっちが先か? ちょっと悩んで、ボタンを押すけど反応なし。お金なんだと、百円と十円二枚を投入。

 すると、この駅を真ん中に上り下り二駅ずつのランプが点いてA駅を選ぶ。

 改札機ではふんだくられるように切符が吸い込まれるので、ちょっとビックリ。

 スイカとか定期はスイっと改札機を舐めるだけなので暴力的に感じてしまうんだ。

 
 寒!

 
 電車に乗ると、暴力的な冷房に震える。

 設定温度間違えてるんじゃないかと鳥肌といっしょに腹がたつけど、周囲のお客さんたちは平然としている。

「うわ!」

 進行方向の逆につんのめる。

 電車の加速が、ガックンガックンしていてびっくり。

 元の世界では、もっと滑らかに加速していたと思う。これじゃ、立っているお年寄りなんか……周囲を見ると、そのお年寄りも含め、みんな器用にショックをいなしている。

 スマホはおろか携帯を触っている人も居ない。お年寄りは三四人くらいで、乗客の平均年齢は、かなり若いように思える。

 そうか、昭和63年は、お年寄りの数は少ないんだ。

 驚いたり感心しているうちにA駅に着く。

 身構えて改札機へ……

 バシュ(;'∀')

 やっぱりふんだくられるのには慣れない。

 
 A駅の控え目な駅前を歩く。

 
 記憶では、もうちょっと賑やかなんだけど、三十年前はこんなものなのかもしれない。

 そして、『みかど』という喫茶店は見つからなかった……。

 

☆ 主な登場人物

  •  寺井光子  二年生
  •  二宮冴子  二年生、不幸な事故で光子に殺される
  •  中臣美空  三年生、セミロングの『かの世部』部長
  •  志村時美  三年生、ポニテの『かの世部』副部長
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