大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・007『ショーウィンドウの写真たちから』

2023-02-13 11:57:34 | 小説

(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記

007『ショーウィンドウの写真たちから』   

 

 

「お祖母ちゃん、うちは写真館で写真とか撮ったことある?」

 

 家に帰るまで、写真館のあれこれが頭に浮かぶ。

 

 ショーウィンドウには、七五三の子どものや、袴姿の女子学生や、結婚式やら、記念の家族写真やら、人や家族の想いがこもった大小の写真たちが並んでいた。ドアの向こうにはスタジオが覗いていている。

 写真なんて、スマホやデジカメでしか撮ったことが無いから、ちょっと新鮮。

 半分以上はカラー写真なんだけど、白黒の写真もあった。昔の写真だからなのか、そういう仕様なのかは分からない。

 令和の時代にも、わざとセピア色にしてレトロ感出した写真もあるしね。

 ……みんな真面目な顔で写ってた。校長室に並んでる歴代校長の写真みたい。

 振り袖姿で微かに微笑んでる……いや、恥じらってる写真。これは見合い写真かなあ……いい感じ。

 ちょっと上を向いてニコニコしている赤ちゃん。

 あれは、カメラの後ろでお母さんとかがあやしてるんだろうなあ、写真屋さんも「ここからハトが出まちゅよお(^▽^)/」とか、赤ちゃんが笑った瞬間を見事にとらえてる。

 B5くらいの小さな写真には梅沢ナントカさんみたいな役者さんの写真。女形さんなんだろうけど、とってもきれい。

 自衛隊の隊員さんの写真。椅子に腰かけ、手は膝の上でグーにして、ちょっと凛々しい。

 その横にも自衛隊……ちょっと制服が違う。え、昔の軍人さん?

 1970年でも、戦後だよ、えと……25年は経ってる……割にはクリア。

 下に『古くなったお写真の復元いたします』と張り紙、なるほど。

 写真たちの間からスタジオや店内の様子が見える。

 カウンターにはレトロなレジ。小さな写真を張ったパーテーションの後ろに手入れの行き届いた観葉植物。その向こうは薄暗くて、たぶんスタジオ。スタジオの全貌は見えないけど、ごっついスタンドの付いたカメラ。柄のところにライトが付いてアンブレラ式のレフ板? キャスター付きの衣装掛けには七五三の名残か子ども用の着物。床は、カメラの下から鈍色のパンチカーペット、天井には黒い骨組みがあって、小さなスポットライトがスタジオの奥を狙っている。

 とっても雰囲気だった。

 

 プロに撮ってもらう写真もいいなあと思いながら家路につく。

 

 歩道に段差があるのも、不愛想な駅員にも、加速減速の度にガックンとくる電車にも慣れた。

 わたしって順応性高いのかもしれない。

 伝言板をチラ見すると―― 先に行く K ――が消えていた。

 Kさんが確認したのか、6時間経ってしまったのか、1970年というのは想像力を掻き立てられるね。

 

 で、家に帰ると「お祖母ちゃん、うちは写真館で写真とか撮ったことある?」と聞いてみたわけです。

 

「写真館?」

「うん、証明写真。説明会で写真館行って撮ってこいって、で、写真館下見したら、いい写真がいっぱいあって」

「ああ、昔はそうだったね……ええと……あったかなあ……」

 お祖母ちゃんが指を振ると、あちこちの引き出しやら物入がゴソゴソ騒ぎだして一枚の写真を吐き出した。

「あ、見せて見せて!」

「ちょっと古いけどね……」

「え……どれどれ……おお!……て、なんかボケボケになったよ」

 それは、ショーウィンドウで見た自衛隊の隊員さんに似た姿のお祖母ちゃん。椅子に掛けてオスマシなんだけど、数秒きれいに見えて直ぐにボケボケになってしまった。

「あ、間違えた!」

「なにぃ、この写真?」

「これはね……ちょっと危ない任務に就く前に撮る写真なんだよ」

「え、お祖母ちゃんて、ドジだから内勤だったんじゃないの?」

「最初からってわけじゃないさ。最前線のバリバリだったこともある」

「お祖母ちゃんも実戦部隊にいたんだ……でも、なんで、こんなにボケボケ?」

「これは魔法写真でね、魂ごと魔法少女を写すのよ。任務で殉職してもね、この写真があれば50%の力で蘇らせることができるのよ」

「ええ! 命が二つになるってこと!?」

「まあね、完全回復には時間がかかるけどね。お祖母ちゃんは仮死状態だったから、少しはは写真に残ったんだけど、完全に死んでしまったら、全部消えてしまう」

「そうなんだ……」

「ほら、これなんか、どうよ」

「どれどれ……わ、かわいい!」

 それは、お仲間らしい四人といっしょに校庭みたいなところで撮った写真だ。

 魔法少女のコスも初々しくて、入隊したての女性自衛官的緊張感の写真。

「ああ、でも写真館で撮ったんじゃないんだね」

「まあ、あんまり写真は撮らなかったからね。さあ、晩御飯にしよう、二回も説明会に行ったからペコペコだろ?」

「え、ああ……なんか、お腹空いたのも忘れるくらいかも」

「そう、今日は志忠屋に行くつもりだったんだけどねえ」

「え、それ先に言ってよ! ぜったい行くから!」

「じゃ、用意しといで、お祖母ちゃん予約しとくら」

「うん!」

 

 長かった一日は、食べたいメニューのアレコレが頭に浮かんで目出度く終わりました。

 

☆彡 主な登場人物

  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校一年生
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
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宇宙戦艦三笠25[暗黒星団とど根性レイマ姫]

2023-02-13 07:24:40 | 真夏ダイアリー

宇宙戦艦

25[暗黒星団とど根性レイマ姫]  

 

 


「ただ今の戦闘ぉ、三笠大破ぁ、航行不能ぉ。艦長と砲術長戦死だ~す( ´ ▽ ` )」

 可愛い顔で、レイマ姫は宣告した。


「今の設定ありえねーよ! 両舷から10万機の飽和攻撃なんて、攻撃側も味方の弾くらって、二割がたの損失は出てるっての! なあ、クレア!?」

 子どもみたいに拳を上げるトシ。

「あ、えと、10万機の戦闘機を、一度に管制して攻撃する能力は、わたしの知っている限り、ありえません」

「そりゃ、クレアさんは、元ボイジャーでぇ、相当の宇宙情報持ってらげども、全ででねわ。わんど暗黒星団観測すた限りは、グリンヘルドもシュトルハーヘンも、こぃぐらいの戦闘は普通にこなすだ」

「でも、同士討ちの二割に、三笠が撃破した分を入れれば6万機の喪失よ。部隊としては壊滅。次の作戦に差し支えるわ」

「そうだ。仮にあたしたちを撃破したとしても、他の国の艦隊がいるぞ。それに対する準備も……」

 樟葉も天音も自分の立場から反論する。

「でもさ、考えてみたら、そのありえないことでソ連は壊滅したんだよ。レーガンの際限もない軍備拡張に、ソ連はかなわなかった」

 ウレシコワはソ連時代の感覚でレイマの肩を持つ。

「なんど、日本人の末裔だべな。第二次大戦で、負げるど分がってながら、神風やったんだべな。あれ、アメリカは想定外であったって、恐れてながらも尊敬すてらってダースのお祖父ぢゃんも褒めぢゃーよ」

「あ、でも、俺たちは寒冷化防止装置を取りに行くんだから……」

「分がってらわ艦長。死んでまったっきゃなんにもなねものね。い、わーがしゃべりでのは、それぐらいの前向ぎな敢闘精神で取り組まねばぁ、腕は上がねっていうごどなのよ。見でけ、この数字!」

 レイマがクリックすると、モニターに数字が現れた。

 損失:485  損傷:2707  戦死搭乗員:3044

「え! いつの結果だったっけ!?」

 知らない数字らしく、クレアは真剣な顔でモニターを見上げる。

「こぃは、大東亜戦争で米軍が被ったB29の被害よ」

 喪失と損傷を合わせると3000機を超える。

「3192だ」

 天音が正確な数字を言う。さすが砲術長。

 もう一度クリックすると、2505という数字が出てきた。

 ?

「終戦までに製造されだったB29の数だよ」

「え、間違ってないか、撃墜撃破が生産機数よりも多いぞ」

「撃破されだのは修理すて、まだ使ったはんでね」

「それでも、3044人の戦死はけっこうな数字よね……」

 樟葉は、機体の被害よりも戦死者の数を気にして眉を顰める。

「なんどの先人は、困難な戦況の中で、こんきの成果上げであったのよ」

「で、でも、日本は負けちまったんだろ。そんなこと自慢にならねえよ」

 トシが口を尖らせる。

「そうがなあ、ニ十一世紀の今日までのスパンで考えだっきゃね。大東亜戦争って野球さ例えだっきゃ、せいぜい二回の裏。いまの繁栄やら世界がらの尊敬考えだっきゃ十分勝ってらど思うわよ」

 あ、なんか意表を突かれた感じがしたぞ。

「でも、何百光年も離れた暗黒星団が、そこまで地球の事を気にかけてるって、なんか……不思議」

「そう? だって、観察すてあったはんでごそ、こうやって出会えだ時さ、いっぱいお話がでぎるでね。ウクライナだって、自分の戦争さ必死の時さ、世界の穀物状況や日本の北方領土のごど気にかげでらでね(^▽^)」

「あ……」

 レイマは、ちゃんとウレシコワの、ウレシコワ自身でも揺れているアイデンテティーを踏まえて話しをくれている。こいつは、ただのギャップ萌えのお姫様ではないかもしれない。

「あはは、みんな熱心さ聞いでけるはんで、つい生意気しゃべってまったぁ(*ノωノ)。話戻すわね。ま、最初のエクササイズはグリンヘルドの攻撃だげで瞬殺さぃであったはんで、進歩ってば進歩じゃね。もう一回クレアさんとスミュレーションすなおすてけでみるはんで。天音砲術長もよろすくだ」

「お、おう、任しとけ!」


―― 可愛い顔して、あの子、わりとやるもんだねと…… ――


 俺の頭には、祖父ちゃんが歌っていた懐メロのイントロが、リフレインした。

「あ……!」

「どうかした、レイマ姫」

 トシが、急に立ちあがったレイマ姫に声を掛ける。CICに走りかけていた天音も、思わず振り返った。

「申す訳ね、わんつか寄り道すてもらえねだびょんか」

 こめかみを押えて、めちゃくちゃ可愛い顔でお願いするレイマは反則だ!

「じつはぁ……(-_-;)」


 レイマ姫は、暗黒星団の防衛軍があるアルファ星からサイコ通信が入ってきたと言って目を伏せた。


「艦長、申すわげねが、アルファ星さ寄ってもらえねだびょんか」

 納得はしたものの、あの厳しい演習が始まるのかとゲンナリしていたクルーたちは、レイマ姫の予定変更を歓迎した。


「見たところ、大きさも環境も月と変わりません。地表はクレーターが多くて、人工構造物は感知できません」

 クレアの観察だった。

「あの星のどこに、秘密基地があるんだ?」

「近づげば、分がるわ(ಠ_ಠ )」

 レイマ姫は、快活そうに、でも目は真剣……というより、厄介なことになるなという色をしていた。


「え……え、そんな!?」


 クレアが驚きの声を上げた。

「分がった?」

「容積のわりに質量が小さい、小さすぎです。たった今感知しました。たった今まで月と同じ数値だったのに……」

 三笠のアナライザーCPUは、あいかわらず月と変わらないデータを表示していた。

「10万キロさ近づぐど、クレアさんみだいな優秀なアナライザーには、分がってまるんだぁ。アルファ星は人工の星だびょん」

 デススターか!?


 周回軌道に乗ると、極に近いクレーターが開くのが分かった。

「「「「おお!」」」」

「構造物は、全て星の内部にあるのか……」

 俺たちは驚きの声を上げた。

 三笠は誘導ビームに従ってクレーターの中に入って行った……。

 

☆ 主な登場人物

 修一(東郷修一)    横須賀国際高校二年 艦長
 樟葉(秋野樟葉)    横須賀国際高校二年 航海長
 天音(山本天音)    横須賀国際高校二年 砲術長
 トシ(秋山昭利)    横須賀国際高校一年 機関長
 ミカさん(神さま)   戦艦三笠の船霊
 メイドさんたち     シロメ クロメ チャメ ミケメ
 テキサスジェーン    戦艦テキサスの船霊
 クレア         ボイジャーが擬人化したもの
 ウレシコワ       遼寧=ワリヤーグの船霊
 こうちゃん       ろんりねすの星霊
 レイマ姫        暗黒星団の王女 主計長

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RE・かの世界この世界:008『旧校舎の中廊下』

2023-02-13 07:00:18 | 時かける少女

RE・

008『旧校舎の中廊下』   

 

 

 それは予感していた。

 

 旧校舎の中廊下のドアは、どれも目をつぶったように閉まっているのだ。

 授業に使われることが無くなって久しく、倉庫になっている他はいくつかが部室として使われているらしいけど、廃部になったりマイナーな部活で、人の出入りはほとんどない。

 ギシ……ギシ……

 ずっと奥の方だと記憶しているので、板張りの廊下を踏みしめながら、手前のドアから試してみる。

 そして、一番奥のドアまで試してみるが、開くドアは無かった。

 

 やっぱりだ。

 

 予感はしていたんだけど、常識的な選択肢から試してみるのは性格なのかもしれない。

 

 二階?

 

 そう思って打ち消す。

 記憶をたどっても階段を上がったのは、最初に屋上を目指した時だけだ。

 真っ直ぐ屋上に上がり、迫って来る足音に耐えられなくなって飛び降りたんだ。

 一瞬、頭蓋骨が割れるイメージ、フルフル首を振って、廊下の奥に視線を戻す。

 

 そうだ。

 

 わたしの脳みそは段階を踏まなければ思い出さないようだ。

 ドアなんか開けていない。

 追い詰められて、ドシンと壁にぶつかって……

 奥の壁から押していって、三か所目でビンゴだった。

 

 キャ!

 

 どういう仕掛けか、フッと壁が無くなって、タタラを踏んで転げ落ちた。

 ドサリと畳の感触、顔を上げると志村・中臣両先輩が座敷童のように座っている。

 

「お帰りなさい」

「とりあえずは回避できたみただな」

 

 曖昧な笑顔を向ける両先輩、まるでVRのスリラーゲームの一コマのよう。

 前回のことがなかったら、悲鳴を上げて気絶していただろう。

 

☆ 主な登場人物

  •  寺井光子  二年生
  •  二宮冴子  二年生、不幸な事故で光子に殺される
  •  中臣美空  三年生、セミロングの『かの世部』部長
  •  志村時美  三年生、ポニテの『かの世部』副部長
  •  

 

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