大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

せやさかい・387『2683』

2023-02-11 11:37:47 | ノベル

・387

『2683』さくら   

 

 

 2683……何の数字やと思います?

 

 冬物衣料のクリアランス、ティーンの人気ブルゾンが2683円!

 ちゃいます。

 イコカの残高、2683円、そろそろチャージせなあかん。うちのイコカは残高103円で終わってるけど。

 ちゃいます。

 昨日食べたあれこれのカロリー合計、2683キロカロリー。ちょっと食べすぎ。

 ちゃいます。

 うちの家から堺東の駅まで2683メートル……う~ん、そんなもんやけど計ったことないから分かりません。

 

 じつは、令和5年は、紀元2683年なんです!

 

 で、今日は2月11日で、建国記念の日ぃなんです!

 話は、頼子さんロスで落ち込んでたあくる日のこと。

「ちょっと佐藤さん……」

 朝のショートホームルームが終わったら、教室出る足を止めてペコちゃんがオイデオイデする。

 留美ちゃんとメグリンは心配そうに、ソニーはニヤニヤ笑って視線を向けてくる。

 三人の気持ちを一言で表したら――なにやらかしたんやぁ?――ですわ。

 呼ばれたうちも、ちょっとドキドキ。

 せやかて、ペコちゃんは、うちに欠点を宣告した時みたいな憂い顔してるし。ふだんは『さくら』って呼び捨てやし。

「えと、なんですか?」

 

「実はね……」

 

 と、ヒソヒソ話しをされて、一週間後の今朝、大きな姿見の前でメチャ緊張してます!

 同じように、留美ちゃん、メグリン、ソニーの三人も!

 三人とも揃いの巫女服の上に千早いうのんを羽織って、手にはぶどうを逆さに持ったような神楽鈴。

 髪もロン毛のエクステ付けて、地毛との境目を半紙みたいな紙で巻いて熨斗が付いてる。

「これがわたしか!?」

 目ぇ剥いてるのはソニー。

 ソニーはブロンドなんで、黒髪のウィッグ。ペコちゃんは「地毛でも構わないんだけど、ブロンドの付け毛は無いからねぇ」と恐縮してた。

 それで、黒髪のウィッグにしたんやけど、眉毛が合わへん。「じゃあ描くわ」とペンシルで描いたら、今度はまつ毛が合わへん。それで、今度は黒のツケマまでしたら、完全に別人!

「ごめんね、ここまでやらせてぇ」

 ペコちゃんは恐縮のしまくり。

「いや、先生、いいですよ。新しい自分を発見しました!」

「みっともなくないかなあ(;'∀')」

 頭一つ分背の高いメグリンは背中が丸い。

「大丈夫よ、たった五日間だったけど、舞の呼吸はピッタリ合うようになってきたし!」

 ドン!

「は、はい」

 背中に気合いを入れられてピッとすると、うちの頭はメグリンの肩よりも低くなる。まあ、ええけど。

「なんだか『君の名は』の……みたい」

「それ連想したら、巨大隕石が降ってくる!」

「え、あ、どうしよう!」

 留美ちゃんは妄想の世界に入りかけてるしぃ(^_^;)

 

「じゃあ、そろそろ本番、神楽殿に行くよ!」

 

 もう分かってると思うんですけど、うちらは、ペコちゃんの神社でお神楽を舞います。

 今日は建国記念の日ぃで、一般的には休日やねんけど、ペコちゃんの神社では建国祭という行事なんですわ。

 神楽舞をやる氏子のお嬢さんたちの都合が悪くなって、急きょペコちゃんはうちらに頼んだわけです。

 うちの学校はカトリックやし、うちはお寺の子ぉやし、だいたい担任がクラスの生徒に家の用事頼むのは反則めいてるし。

 それで、学院長先生の許可までもらって、うちらに頼んだというわけ。

 学校は、特別な理由によるアルバイトいうことで公に許可してくれる。

 

 渡り廊下を通って静々と神楽殿へ。

 

 昨日までの鬱陶しい曇り空もすっかり晴天になって、神楽殿の前には氏子さんやら一杯の参拝客やら見物のお客さんやら。あ、院長先生まで来てくれて……テイ兄ちゃんとお祖父ちゃんも。

 よし、気合い入れて頑張るぞ!

 

 2683年前のこの日、神武天皇が橿原神宮で即位されて、今の日本が始まったんやそうです。

 うちも一週間前までは知らんかったんやけどね。

 あ、頼子さんと詩(ことは)ちゃんには知らせてません。

 あとで動画を送ってやって、羨ましがらせてやろうと、四人の意見が一致したからね。

 

 

 ☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら      この物語の主人公  聖真理愛女学院高校一年生
  • 酒井 歌        さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
  • 酒井 諦観       さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦念       さくらの伯父 諦一と詩の父
  • 酒井 諦一       さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
  • 酒井 詩(ことは)   さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
  • 酒井 美保       さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
  • 榊原 留美       さくらと同居 中一からの同級生 
  • 夕陽丘頼子       さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 聖真理愛女学院高校三年生
  • ソフィー        ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
  • ソニー         ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
  • 月島さやか       さくらの担任の先生
  • 古閑 巡里(めぐり)  さくらと留美のクラスメート メグリン
  • 百武真鈴(田中真央)  高校生声優の生徒会長
  • 女王陛下        頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
  • 江戸川アニメの関係者  宗武真(監督) 江原(作監) 武者走(脚本) 宮田(制作進行) 花園あやめ(声優)  
  • さくらをとりまく人たち ハンゼイのマスター(昴・あきら) 瑞穂(マスターの奥さん)
  •   

 

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宇宙戦艦三笠24[暗黒星団 暗黒卿ダースべだ・2・レイマ姫]

2023-02-11 07:28:09 | 真夏ダイアリー

宇宙戦艦

24[暗黒星雲 暗黒卿ダースべだ・1・レイマ姫]  

 

 

 東北弁とダースベーダー風の衣装は、とっても似つかわしくない。

「まえだおぢが目指すてらピレウス北極どするど、この三笠は、やっと福島あだりだ。というごどだげでもねんだが、言葉はやっぱ訛ってまる、ガースー」


 その間にもダースは、特有の籠ったような声で、荒い息遣いだ。


「訛ってても、貫録あるねぇ。下手に取り巻き連れてかっこつけてないとこなんか、シブいよ!」

 こういうことに関しては、トシは独特の感性で反応する。

「それはだな……ゲホンゲホン、ゼーゼー……」

「大丈夫、ダースさん?」

「なんでもね、歳なんだ。聞ぎぐるすくてすまね、ガースー」

 みかさんの質問に、ダースは年寄りくさく応えた。


「で、御用はなんなのかしら(`Д´)?」


 お誕生会に水を差されたウレシコワは、いささかカドがある。

「折り入って頼みがあるんだ。そえで、みんな集まってらどごろがいど思ってな、ガースー」

「断りもなく現れて、お願いって言われてもねえ」

 天音も、そっぽを向いた。

「まあ、聞くだけ聞いてみようや」

 俺は間に入った。年寄りイジメ的なのは嫌だからな。


「すまね艦長。この暗黒星団は宇宙の大田舎なんだ。ガースー、なんの因果か、星雲の外がらは中の様子は分がね。なんだが、とでづもね暗黒帝国があるみだいに思わぃでら。要は宇宙開闢以来、電波も光も外がらは通さね。ガースー、そえで、宇宙のみんなはおっかねものど思って、寄り付ぎもすね。グリンヘルドやシュトルハーヘンでさえも見向ぎもすね。おめんどが名付げだロンリネスなんて、星どすては一等地なんだぞ、ガースー」


「ひょっとして、暗黒星団の宣伝してこいとか?」

「いや、図々すいお願いなんだが、ガースー、ピレウスまで、一人同乗させではもらえねびょんか?」

「あ、帝国の皇帝とかならお断りだぜ! せっかく和気藹々とやってるとこに、えらそーなオッサンなんてごめんだからな」

「皇帝どがはいねじゃ。このダース、暗黒星雲の代表だ、ガースー」

「でも、そういうナリしてると、皇帝がいるように思うわ」

「そう思っでもらえるみでぐ、こったナリすてらんだ。なんか、もっと偉ぇ存在がいるみでぐ思うびょん、ガースー」

「……ああ」「なるほどね」

 クルーたちは、変に納得した。

「そえで、お願いどいうのは……ガースー……」

「わーがらしゃべるじゃ!」

 もう一人現れた。純白のローブが良く似合う、見るからに王女だった。

「あ、姫……」

「秘密ばらすてはまいねだ!(ダメです!)」

「最後の秘密は……ガースー」

「しゃべったも同然でねの」

「あのう……ひょっとしてお孫さんですか?」

 樟葉が、遠慮なく核心をついた。

「ほら、分がってまったでねの!」

「すまね。実は、このレイマ姫ピレウスさ連れでいっで欲すいのだ。ガースー、この三笠の遠征は一大叙事詩なるびょん。きっど宇宙のレガスーになるびょん。それに、うぢの王女さまが一緒であったどいうごどになるど、暗黒星団の名前も挙がる。ガースー、姑息な手段ど笑わぃるがもすれねがな。それえも、オラだぢは、王女さ、レイマ姫にかげでみるすかねのだ、ガースー」

「あの、レイア姫じゃないんですか?」

「うんにゃ、レイマ姫だ。著作権の問題だす」

「もう、違います。暗黒星雲の言葉で『希望』って意味があるんだ。ずっちゃ、卑下のすすぎだ」

 

 といういきさつで三笠のクルーが増えた。主だったポストは埋まっているので、レイマは主計長ということになった。

 だが、この見かけは宇宙一可愛く、喋らせると完全に東北弁のレイマ姫は、とんでもない力の持ち主だった……。

 

☆ 主な登場人物

 修一(東郷修一)    横須賀国際高校二年 艦長
 樟葉(秋野樟葉)    横須賀国際高校二年 航海長
 天音(山本天音)    横須賀国際高校二年 砲術長
 トシ(秋山昭利)    横須賀国際高校一年 機関長
 ミカさん(神さま)   戦艦三笠の船霊
 メイドさんたち     シロメ クロメ チャメ ミケメ
 テキサスジェーン    戦艦テキサスの船霊
 クレア         ボイジャーが擬人化したもの
 ウレシコワ       遼寧=ワリヤーグの船霊
 こうちゃん       ろんりねすの星霊
 レイマ姫        暗黒星団の王女 主計長

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RE・かの世界この世界:006『二日前・3』

2023-02-11 06:45:03 | 時かける少女

RE・

006『二日前・3』   

 

 

 

 ヤックンの視線を遮るように冴子がわたしの前に座った……。

 以前のわたしだったら、ただの偶然だと思うだろう。

 

 でも、今は違う。

 

 明らかに――わたしのヤックンに近づくな!――と、全身で言っている。

 作業が終わったら、さっさと帰ろう。

 こないだは、ぐずぐず残ってヤックンと二人きりになってしまった。

 告白なんて、そうそうできるもんじゃない。

 二人きりになる状況を避けて決心をはぐらかせれば、なんとかなる。

 ヤックンは冴子のことも嫌いではないはずだ。うまく誘導すれば、冴子の方に向かせることだってできるかもしれない。

 もともと、今日は行けないと言ってあるんだ。さっさと帰っても不自然じゃない。

 

 よし!

 

 最後のお札に取り掛かる、これを仕上げれば帰れるぞ。

「それが最後だよね?」

 仕上げの熨斗を掛けたところで、高階さんが話しかけてきた。

「は、はい」

「野本さん(具合が悪くて休んでる一人)入院することになったんだ」

「入院……じゃ、巫女神楽は?」

 野本さんは、もう一人の遠野さんと二人で今年の巫女神楽をやることになっていたんだ。

「急に申し訳ないんだけど、代わりに入ってもらえないかな」

「え……もう二回もやって……十六だし……」

 巫女神楽は十三歳の女の子がやるのが伝統だ。

「うん、でも、別の子が一から覚えるには時間がね。テレビの取材もあるし……実は、遠野さんも野本さんがやらないんだったら、降りたいって」

 気持ちは分かる、過去二回もやってる私と並んだら緊張はハンパないだろう。

 でも、それだったら冴子に頼んでもいいんじゃないかな。冴子は遠野さんとも近所で顔見知り、わたしとやるよりはましだ。

「冴ちゃんにはOKもらってる。つまり、一昨年と同じ組み合わせでやろうと思うんだ」

 

 うう……神楽のお囃子にはヤックンが入る。とうぜん稽古と本番で何度もいっしょになることになる。

 ヤバいよ、そうそう不自然な距離をとれるもんじゃない。

 

 しかし、断るに十分な理由がない。

 だいいち、高階さんを始め、この夏まつりの世話をしている人たちに迷惑をかけてしまう。

 どうやったら、元の時間に戻れるかは分からないけど、ヤックンの告白を回避しない限り戻れないような気がする。

 

「……分かりました」

 

 数秒置いて返事をする。もどかしさと暗い後悔が胸にわだかまる。

 

 そのあといろいろあって、最悪なことに帰り道がヤックンと二人になってしまった。

 当然、冴子も誘ったんだけど、なんだか不機嫌に断られた。

―― これで、ヤックンに告白させたら、もう、世界の終わりなんだよ! ――

 まさか正直に言うわけにもいかず、ここから逃げ出すわけにもいかず、良い回避方法も見つからないまま、ズルズル、ヤックンと帰ることになった。

 

 そして帰り道。   

 夜道にいくらでもキッカケは有ったというのに、ヤックンは告白してこなかった……。

 

☆ 主な登場人物

  •  寺井光子  二年生
  •  二宮冴子  二年生、不幸な事故で光子に殺される
  •  中臣美空  三年生、セミロングの『かの世部』部長
  •  志村時美  三年生、ポニテの『かの世部』副部長
  •  


 

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