大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

せやさかい・389『三方さんの引き継ぎ』

2023-02-20 16:54:57 | ノベル

・389

『三方さんの引き継ぎ』さくら   

 

 

 夜中に目が覚めた。

 

 なんやら、ヒソヒソと話声がする。

 ひょっとすると夢?

 以前も、夜中に話し声がして、それが夢やったことがある。

 十七年も生きてると、五千回ぐらいは夢見てる。

 せやさかい、夢やという予想はついた。横を向くと、留美ちゃんが幸せそうに寝息を立ててる。

 親友の幸せは、うちの幸せ。

 このまま寝てもええねんけど、夢の中のヒソヒソ話というのは、めっちゃ気になる。

 

 ニャゴニャゴ……

 

 耳を澄ますと、話声のひとつはダミアの声。

 もっかい薄目を開けると、ちょっとだけ部屋の襖が開いてて、その隙間に向かってブタネコとは思えん甘えた声でニャゴニャゴいうとおる。

 誰と喋ってんねん?

 お布団は目の下まで被って、心眼を凝らす……見えてきた。

 襖を素通しにして見えてきたのは、なんとマリーアントワネット!

 

「……それじゃあね」

 

 最後の一言だけが聞こえて、マリーアントワネットは口の前に人差し指を立てると、こっちに向かってニッコリ微笑んで消えていってしもた。

 ダミアは、うちの顔見て「ニャ」と一言だけいうと、そのまま留美ちゃんのベッドに潜り込んで寝てしまいよった。

 ヒソヒソヒソ……

 まだヒソヒソ声がする……これは廊下の、まだ向こう……本堂から聞こえてくるんや。

 じんべさんを羽織って本堂に向かう……話し声は外陣の真ん中へんから聞こえてくる。

 うちは、須弥壇の陰から――すんません、阿弥陀さま――とことわって、外陣の様子を見る。

 え……?

 

 なんと、二人の三方さんが向き合ってお話の真っ最中やおまへんか。

 

「……ということで、まだまだ気ぃの回れへんお方であらっしゃいますが、よろしゅうお頼申します」

「はい、縁あって三方のお役目を引き継ぎましたからには、専心誠意、お役目を務めさせていただきます」

「それでは、これを収めてもろて、引継ぎのしるしといたしましょう」

 なんや、旧三方さんが、三方に載せた和綴じのブットイ帳面を新三方さんの前に進めた。

「少し拝見してもよろしいでしょうか?」

「よろしいもなにも、これからは、こなたさんが当家の三方。しっかり目を通しておくりゃれ」

「それでは……」

 新三方さんは、捧げ持ってお辞儀をして、ハラリハラリとページをめくる。

「……なるほど、これからもご主人さまは波乱万丈の人生を歩んでいかれるのですねえ」

「うむ、それを、苦労ととらまえては、とても続くものやありまへん。気は持ちようという言葉もおますよって、どうぞ、こなたさんも気を大きゅうお持ちなさりませ。こなたさんに譲ったとは申せ、わたしは、目と鼻の先のごりょうさんにお仕えしとります。宮仕えゆえ、言われて直ぐというわけにはまいりまへんやろが、ごりょうさんも『さくらのことは気にかけてやれ』との仰せにおじゃります。そうそう、番号の交換をいたしておきまひょ」

「おお、先輩もスマホをお持ちなのですか?」

「二台持っておるぞえ。パブリックとプライベートじゃ。構えて公私混同はならぬからのう」

「そうですねえ、そういう分別は大事ですからねえ」

「ついでに、裏情報も送っておくぞ」

「それでは……」「それでは……」

 

 ピ!

 

 無事に番号の交換は終わったみたい。

「あ、これは……」

「いかがいたしゃった?」

「ご主人様は、おねしょの癖がおありなのですか?」

「ああ、それは、くれぐれも内聞にな。さくら殿も十七、人への聞こえもあるというもの、こなたが十分に気をつけておれば事なきを得るでありましょう。くれぐれも頼みましたぞえ」

「ははあ!」

「ほれ、申したしりから……」

 

 二人の三方さんがこっちを向いた!

 

 とたんに催してきて、リアルに目ぇ覚ましてトイレに行きました(^_^;)。

 

 ☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら      この物語の主人公  聖真理愛女学院高校一年生
  • 酒井 歌        さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
  • 酒井 諦観       さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦念       さくらの伯父 諦一と詩の父
  • 酒井 諦一       さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
  • 酒井 詩(ことは)   さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
  • 酒井 美保       さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
  • 榊原 留美       さくらと同居 中一からの同級生 
  • 夕陽丘頼子       さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 聖真理愛女学院高校三年生
  • ソフィー        ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
  • ソニー         ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
  • 月島さやか       さくらの担任の先生
  • 古閑 巡里(めぐり)  さくらと留美のクラスメート メグリン
  • 百武真鈴(田中真央)  高校生声優の生徒会長
  • 女王陛下        頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
  • 江戸川アニメの関係者  宗武真(監督) 江原(作監) 武者走(脚本) 宮田(制作進行) 花園あやめ(声優)  
  • さくらをとりまく人たち ハンゼイのマスター(昴・あきら) 瑞穂(マスターの奥さん)
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銀河太平記・147『待ち伏せ』

2023-02-20 12:51:17 | 小説4

・147

『待ち伏せ』メグミ  

 

 

 ズッボオオオオオン!

 

 ゴジラがうがいをしている最中にキングコングか何かに腋の下をくすぐられたらこうなるどだろうという勢いで海水が噴き出す。

 ドゴゴゴゴーーーン!

 洗鉱用の海水タンクを爆破して500トンの海水を一気に放出した!

 A鉱区の崖下を北に走っていた漢明兵がまとまって隘路の岩や崖に叩きつけられる。ロボット兵だから溺れることも無ければ、岩に激突しても死ぬわけでもない。

 しかし、文字通りの鉄砲水に翻弄されて転がる様は、お岩さんの手に掛かって洗濯機改造の皮むき機で皮を剥かれる芋のようだ。

 食堂なら、そのまま大きなザルに拾い上げられ、巫女服にタスキ掛けのハナによってスライスされたりザックリ切られたりしてお惣菜の具やフライドポテトになる。

 その巫女服のハナが崖の上で目覚まし時計のネジを巻くようにスイッチを入れる。

 ドッカーーーーン!

 五十メートルほどに渡って崖が崩れ、崖下の芋たちの上に降り注ぐ。

 ドドドドド ドドドドド ドドドドド

 初速の遅いパルス機関砲だけど、岩に挟まれたり、体がブチ切れたロボット兵を粉砕するのには十分だ。

 敵は粉砕、攪拌されて粉々になり、もう戦場の応急手当や修理では間に合わないくらいに破壊される。

 沖の工作艦も、ついさっきナバホ、フートン混成部隊によって轟沈させられたから、ボディーの換装もできない。将校なら、国防省のサーバーに残っているデータとソウルで復元されるだろうが、一般兵たちは、これでお終い。

 その将校たちも、出撃前の状態でしか復元できないだろうから、この戦闘で勝ち取った経験や知識は無駄になる。

 

「二人残ってるぞ!」

 

 お岩さんが飛び出すのに倣って、わたしも跳躍。遅れている方の将校を始末に掛かる。

 シュイン!

 横ざまに振るうパルスナイフは目くらまし。敵がのけぞった隙に後の岩で反動をつけ、背後にまわったところで勝負!

 四年前は、この動きで火星の修学旅行生からパスポートを掠め取った。

 今度はソウルを頂く。

 グシュ!

 パルスナイフを延髄に突き立て、瞬間1万パルスの波動を流しつつグキっとえぐる。

 ロボット殺しの必殺技だ。電脳とボディーのリレーを切ると同時に電脳そのものを破壊する。

 刃先がリレーをえぐり切るコンマ一秒。その間に敵のデータが少しだけ読める。

 わたしの特技は細胞レベルの擬態。天狗党にスカウトされて、その能力を増幅させるためにブースターを埋め込んだのが役に立つ。

 胡盛徳大佐

 連隊長ではあるが、任務の目的は―― 島の制圧 ――としか記憶されていない。

 実行部隊は捨て駒。敵軍は、状況次第で陽動部隊にも攻撃主力にもできるように設定しているようだ。

「ハナを!」

 お岩さんは、完全にデータを読むつもりだ。止めを刺さずに情報を読んでいる。

 読みながらも、ハナのことを心配してるんだ。

 嫌な予感。

 崖を駆け上がると、首の半分を吹き飛ばされて朱に染まったハナが転がっていた。

「ハナ!?」

 確かめるまでも無い、直撃だ。

 死んだ自覚もなかっただろう、半分残った顔は、当たりくじを引いた子供のように笑っている。

 かわいそうに……(-_-;)

 千切れた巫女服の袖を顔にかけてやる。

 南無阿弥陀仏

 天狗党で憶えた念仏を唱えてやる。こいつもココちゃん(心子内親王)といっしょに火星に逃がしてやるべきだったか……島では人の詮索はしない。

 野生児みたいな少女で、こんな戦闘ぐらいでは死なない奴だと思っていたが、やはり、リアルな戦争では何が起こるか分からないもんだ。

「……ちょ……起こして……」

 え?

 モゾモゾと身じろぎするハナ……動く方の左手が、わたしの膝にかかって力が入る。

「ハナ…………あ、あんた、ゾンビ?」

「ゾンビ?」

 袖の千切れがずり落ちて、こっちを向いた顔は半分になってしまっているけど、いつもの元気印のハナだった。

 

 ☆彡この章の主な登場人物

  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵              天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任
  • 扶桑 道隆             扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)    将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥(児玉隆三)        地球に帰還してからは越萌マイ
  • 孫 悟兵(孫大人)         児玉元帥の友人         
  • 森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン             太陽系一の賞金首
  • 氷室(氷室 睦仁)         西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)         西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)          西ノ島 フートンの代表者
  • 及川 軍平             西之島市市長
  • 須磨宮心子内親王(ココちゃん)   今上陛下の妹宮の娘
  • 劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官
  • 王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書

 ※ 事項

  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
  • 西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
  • パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
  • 氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王

 

 

 

 

 

 

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宇宙戦艦三笠31[水の惑星アクアリンド・1]

2023-02-20 06:31:21 | 真夏ダイアリー

宇宙戦艦

31[水の惑星アクアリンド・1] 修一  

 

 

「両舷10時と2時の方向に敵艦体!」「距離4パーセク!」

 Jアラートみたいな警報とともに当直のクレアとウレシコワが叫んだ。


「両舷共に10万隻、クルーザーとコルベットの混成艦隊、あと1パーセクで射程に入ります」

「敵艦隊、共にエネルギー充填中の模様。モニターに出します」


 クレアとウレシコワが的確に分析し、報告を上げてくる。モニターには、敵艦一隻ずつのエネルギー充填の様子がグラフに表され、まるで、シャワーのようなスピードでスクロールされている。

「全艦の充填には3分ほどだな。両舷前方にバリアー展開!」

 俺が命じたときに、砲術長の天音が遅れて駆け込んできた。

「ごめん! ミカさんバリアーお願い!」

 天音は、濡れた髪のまま、いきなり船霊のミカさんに頼んだ。

「天音、冷静に。ボタンぐらい留めてからきなさいよ(#`_´#)!」

 樟葉に怒られる。

 天音は、ざっと体を拭いたあとにいきなり戦闘服を着て、第一第二ボタンが外れたままだった。俺とトシの視線が自然に天音の胸元に向く。さすがに、0・2秒で、天音はボタンを留めた。

 が、その0・2秒が命とりになった!

「敵、全艦光子砲発射。着弾まで15秒!」

「ミカさん、バリアー!」

「大丈夫、間に合うわ」

 ミカさんは冷静に言った。

「カウンター砲撃セット!」

 カウンター砲撃とは、三笠の隠し技で、敵の攻撃エネルギーを瞬時に三笠のエネルギー変換し、着弾と同時に、そのエネルギーの衝撃を和らげて、攻撃力に変えるという優れ技である。カタログスペック通りにいけば、三笠は無事で、敵は鏡に反射した光を受けるように、自分の攻撃のお返しを受けるはずだった。

「着弾まで2秒。対衝撃閃光防御!」

 クルーは、ゴーグルを下ろし、身を縮め持ち場の機器に掴まった。

 

 ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオン!

 

 ウワアアアアアアアア!!

 震度7ぐらいの衝撃がきた!

 天音が急場に留めたボタンが、みんな弾け飛んだ。瞬間胸が露わになった天音だったが、余裕ぶって見ている余裕はなかった。

 三笠はシールドで受け止めたエネルギーの大半を攻撃力に変換。カウンター砲撃を行った。主砲、舷側砲から、毎秒100発の斉射で光子砲が放たれた。

 しかし、両舷で100万発を超える敵弾のエネルギーは変換しきれず。舷側をつたって、シールドの無い艦の後方に着弾し、いくらかの被害が出てしまった。


「敵、6万隻を撃破。シールドを張りながら撤退していきます」

「各部、被害報告!」

「推進機、機関共に異常無し!」

「主砲、舷側砲異常なし!」

「右舷ガンルームに被弾。隔壁閉鎖」

「……後部水タンクに被弾。残水10」
 
「天音、シャワー済ましといてよかったね。飲料用に一週間もつかどうかだよ……」

 樟葉が優しくフォローするが、責任感と癇癪の強い天音は唇を噛んでいる。

「ここらへんで、水を補給できる星はないかしら?」

 ウレシコワが、真っ直ぐにレイマ姫に声を掛けた。

「右舷の2パーセクさアクアリンドがあるじゃ……」

「「「「アクアリンド……」」」」

「んだ……覚悟が必要じゃ」

 アクアリンドは、表面の90%が水という星であったが、グリンヘルドもシュトルハーヘンも手を付けないだけの理由があったのだ……。


☆ 主な登場人物

 修一          横須賀国際高校二年 艦長
 樟葉          横須賀国際高校二年 航海長
 天音          横須賀国際高校二年 砲術長
 トシ          横須賀国際高校一年 機関長
 ミカさん(神さま)   戦艦三笠の船霊
 クレア         ボイジャーのスピリット
 ウレシコワ       ブァリヤーグの船霊
 メイドさんたち     シロメ クロメ チャメ ミケメ  

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RE・かの世界この世界:015『中島書店』

2023-02-20 06:03:49 | 時かける少女

RE・

015『中島書店』   

 

 

 ネガを見ているようだ。

 

 むろん日の丸のネガが赤字に白丸なわけないんだけど、見事に赤白逆転なので、ネガの感じに見えてしまう。

 社務所の窓に宮司さんの後姿、一瞬足が動いたけど思いとどまる。

 日の丸以外は元の世界にソックリだけど、何が起こるか分からない。知り合いと接触するのは、ひとまず避けよう。

 

 神社を離れて駅の方に向かう。

 

 まずは自分の生活圏を見てみよう。それに、人通りの中に居た方が気が楽だし。

 途中、小学校の横を通る。そうだ、校舎の屋上に日の丸があったはず……見上げたそれは、やっぱり赤地に白丸だ。

 立ち止まっていると、下校途中の小学生に怪訝な目で見られる。

 エホン。

 軽く咳払いして、小学生とすれ違う。

 エホン。

 やつも咳払いして、ニタ~っと笑いやがる。こいつ、小悪魔かなにかか?

 構わずに先を急ぐ。

 

 駅に通じる商店街、抜けたところに中規模書店。

 

 あれ? うぐいす書店のはずなのに、中島書店になってる。

 レイアウトに変わりはないんだけど、レジや本棚が微妙に違う。

 つい本を手に取りたくなるんだけど、我慢して参考書などのコーナーへ。

 目の端に見えた受験参考書の背表紙は1988年○○大学と書かれている。

 1988年……たしか昭和だよ……25を引けば昭和に変換できる。授業で習った変換式に代入……昭和63年だ。

 わたしって賢い……よく見ると参考書の西暦の下に(昭和63年)と書いてある。

 違う、確かめるのは……地図帳だ。

 あった……学校の地図帳と同じなのに値段は三倍くらいのそれを手に取って後ろの方を見る。

 世界の国々の情報が国旗と一緒に並んでいる……国旗を知っている国なんてニ十か国ほどしかないんだけど、ザッと見た限り首をひねるような国旗は無い。

 問題は日本……やっぱり白丸だ。

 スマホがあればググってみるんだけど、ここが昭和63年ならば、スマホはおろかパソコンだってあったかどうか。

 ましてネットカフェなんてあるはずもないだろう。

 他の本を読んだら……思ったけど、気力が湧かず、そのままうぐいす……中島書店を出る。

 
 ぼんやり駅前を歩いていると急に電話のベルが鳴った!

 
 プルルルル プルルルル プルルルル

 
 え? え?

 
 首を巡らすと久しく見たことが無い電話ボックスの中で公衆電話が鳴っている。

 道行く人たちはNPCのように歩き去っていき、電話のベルに関心を示す人はいない。

 ファイナルファンタジー13で、公衆電話が鳴って、それをとったライトニングがヒントを聞いていたのが思い出された。

 
 もしもし、光子です!

 
 受話器を取ると、女神さまの声が聞こえた……

 

☆ 主な登場人物

  •  寺井光子  二年生
  •  二宮冴子  二年生、不幸な事故で光子に殺される
  •  中臣美空  三年生、セミロングの『かの世部』部長
  •  志村時美  三年生、ポニテの『かの世部』副部長
  •  
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