大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

銀河太平記・146『連隊長 胡盛徳大佐』

2023-02-15 11:32:05 | 小説4

・146

『連隊長 胡盛徳大佐』  

 

 

 意識が戻ったのは工作艦雷陽のファクトリーのハンガーだ。

 空母のハンガーほどの広さは無い。収容しているのは艦載機ではなくて、ロボットの予備機体だからだ。

 いかつい軍人ロボットでも、飛行機ほどのサイズは無い、せいぜい人の1・5倍。艦載機一機分のスペースに一個小隊50体分は収納できる。工作艦には艦載機で20機分、1000体の予備機体が格納されている。

「お目覚めですね胡大佐、もう五分お待ちください。電脳と各部の調整をします」

「二分でやってくれ、まだ戦闘中だからな」

「では、簡易調整で済ませます。簡易調整の場合は、以後の換装と調整は兵器廠に戻るまでできませんが」

「かまわん」

「では、調整に入ります」

 ピーーーーン

 チェッカーの起動音、聞いてはいたが不快な音だ。軍事用のハイスピードだからだろう、民生用には使えない代物だ。

 戻ってきた聴覚と視覚でハンガーを見渡す。残っている予備機体は一個分隊ほどでしかない。そのうちの半分は自分同様に調整中だ。

 これでは、今度戦死したら復帰するのは本土の兵器廠、まる二日は戦闘に戻れなくなる。

 まあ、二日もあれば島の占領は終わっているだろうがな。

「予備パーツが百体分ありますし、回収した戦死体も戻ってきますから、もう二百体ぐらいには対応できます」

「フランケンシュタインになるのはごめんだ。せいぜい、大事に使わせてもらうさ」

「……あと三十秒です」

 自分よりも先に調整の終わった兵隊どもがハンガーを出ていく。瞬間開いたドアの向こうには重傷のポンコツどもが見える……ずいぶん難しい戦になったもんだ。

「完了です」

「すまん、世話にな……貴様、脚はどうした?」

 世話をしてくれた整備班長は両脚が無く、腰から上を作業台に括り付けてあった。

「北の連隊長にお貸ししました(^_^;)」

「そうか……じゃあ、行ってくる」

「これをどうぞ」

「お札か、謝謝!」

 関帝のお札をポケットに収め、その足で最上甲板に上がると、ごった返す負傷兵をかき分けかき分け、転がっていたジェットを担いで島に飛んだ。

 

 ピシューーーーーン!!

 

 もうすぐチルル空港というところで山頂のカルデラから高出力のパルス波が発せられる。

 ふつうパルス波は目には見えないものだが、よほどの高出力。空気中で触れた水蒸気や埃を瞬間で蒸発させ、それが光と音になっている。

 ドッゴーーーーーン!!

 たった今までいた工作艦が大爆発を起こして、瞬沈しまった。

 あれではスキルもメモリーも転送している余裕はなかっただろう。将校は国防部にメモリーを残しているが、下士官や兵の多くは枝が付いているだけでメモリーとしては残っていない。文字通りの消滅だ。

 特別に将校が優遇されているわけではない。ロボットも民衆レベルでは国や軍を信用していない。下手にメモリーを預ければ、どのように改ざんされるか分かったものではない。漢明もその程度には、そう呼べるなら民主化はされている。

 まあ、枝はつけられているから、生殺与奪の権は握られているがな。

 

 空港に残っていた部下たちはリンクを切ってスタンドアロ-ンになっていた。

 

 これで居所を掴まれることはないが、敵と同様に連携した行動はとれない。

 敵は、事前にスタンドアローンにした状態で作戦を練っているだろうが、こっちは、ただリンクを切っただけで刻々変わる戦況を理解し対応することはできない。

 ピシュンピシュン

 パルス銃の弾線が掠めていく。

「バカ者! 胡盛徳だ! 貴様らの連隊長だ! ドローンと間違えるな!」

 着地した砲撃痕には数名の部下が残っていて、最上級の少尉がアナログ音声で「付近に八十名あまりの味方が残っております」と告げた。

 着地寸前に記録した映像と照合、生死不明の者も合わせ百八体を確認。

 敵は大半が自爆攻撃によってバラバラになった破片。数体がボケて映っている。俺のアイカメラのフレームレートを超える速度で動いている。油断のならない奴らだ。

 山頂のパルス砲は沈黙している。乱れたパルス残滓がショートしたように火花を上げている。

「無理な高出力で壊れてしまっているようです、無力化されています」

「よし、二名ずつの斥候を出す。ナバホ村とフートンの状況を調べる。可能ならば国際空港の様子も探らせろ、この部隊は少尉が指揮……A鉱区2番坑口にまわれ、爆撃で途中で落盤している。しばらくは身を隠せるだろう。通信兵、貴様は、瓦礫を集めて狼煙をあげろ」

「狼煙でありますか?」

「ああ、電波もパルス波もすぐにジャミングをかけられるからな。煙が上がったら、このリズムで煙を切れ」

「……モールス信号」

「二百年前の通信方法だが確実だ。一回やれば十分、すぐに帰ってこい」

「連隊長は?」

「内緒だ、一時間たっても帰ってこなければ、少尉、貴様が連隊の指揮を執れ」

「了解しました!」

「そう気負うな、演習だと思えばいい」

 少尉の肩を叩きながら、満州戦争の頃の自分を思い出す。

 劉宏将軍も、斥候に出る自分に同じことをおっしゃった。

 あとは、俺に将軍の半分も才覚と運があればと願うだけだった。

 

 ☆彡この章の主な登場人物

  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵              天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任
  • 扶桑 道隆             扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)    将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥(児玉隆三)        地球に帰還してからは越萌マイ
  • 孫 悟兵(孫大人)         児玉元帥の友人         
  • 森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン             太陽系一の賞金首
  • 氷室(氷室 睦仁)         西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)         西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)          西ノ島 フートンの代表者
  • 及川 軍平             西之島市市長
  • 須磨宮心子内親王(ココちゃん)   今上陛下の妹宮の娘
  • 劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官
  • 王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書

 ※ 事項

  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
  • 西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
  • パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
  • 氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王

 

 

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宇宙戦艦三笠27[フィフスのクレージードリル(訓練)]

2023-02-15 06:27:13 | 真夏ダイアリー

宇宙戦艦

27[フィフスのクレージードリル(訓練)]  

 

 


 最初は、単なるジャンケンだった。

 ロボットが相手だったが、スキルを人間程度に設定してあったので、まあ、十回勝負で六勝四敗というところだった。


「さあ、これが出発点だ」


 と、言われても、先が読めない。

「こんなので訓練になるのか?」

 天音が口を尖らせる。

 天音は父が職業自衛官だったので、横須賀の親類に引き取られるまで、父の転勤に付き合って何度も引っ越している。ゆく先々で頼れる者は自分一人「揉まれているうちに度胸も付いて勘も良くなった」と言っているが、俺は、持って生まれたものだと思う。


 ケンカや勝負ごとに勝った時に「天音の強さは生まれつきだもんな」と言って張り倒されたことがある。

「強いなんて言うなっ!」

 褒めたのに、なんでキレるんだ?


 後で樟葉が話してくれた。


「天音はね、自分が弱くて大人しい子だったら、お父さんはPKOなんかに行って死ぬことは無かったと思ってる」

「あ……」

「いくら自衛隊でも父子家庭の下士官を引っ張っていくことはしないよ。でもね、大変なPKO任務に志願して行ったお父さんは天音の誇りでもあるんだよ」

 高校生になって『二律背反』という言葉を習った。俺の『二律背反』は天音の顔をしている。

 そんなことを思い出したら、ミカさんの頬がポッと赤くなった。みかさんは、今の思い出をエネルギーに変換したんだ。三笠は俺たちの思い出をエネルギーにしている。

 そんなミカさんの足元に四匹の猫がすり寄って来る……こいつら、三笠のネコメイドたちだ(^_^;)。こいつらはミカさんからエネルギー貰ってんのか?

 ミャーー(^▽^)

「今のは人間と同じ設定だったので、君たちの実力がそのまま出ておる。今度はロボットのスキルをマックスに上げる。ロボットは、君たちの表情や息遣いからちょっとした変化まで解析してジャンケンをする。君たちは、そのロボットの解析を読んで対応してもらう」

 

 今度は完敗だった。

 

 ガルルルル

 天音が唸ってる。ほんとはただの勝負好きなのかもな(^_^;)

 振り向くと、ミカさんまで負けている。船霊のみかさんが勝てないのなら、仕方がないと俺たちは思った。

「はああ……だめじゃのう。これが戦闘なら、全滅じゃ」

 ナンノ・ヨーダは四等身の頭を振ってため息をついた。

「だって、ミカさんだって勝てないんだよ(>0<)」

 トシがプータレる。

「船霊は、クルーの能力に合わせて成長する。船霊とはそういうもんだ」

「テヘペロ(๑´ڡ`๑)」

 ミカさんはテヘペロで誤魔化す。ウレシコワは船を下りた船霊だったので、湯気を立てながらも寂しい顔をしている。クレアは、元々前世期のボイジャーだったので、CPの能力が追いついてこない様子だった。

「負けても仕方がないと思っとるじゃろ、しょせんジャンケンは運しだいじゃと。その負けても仕方がないでは、グリンヘルドにもシュトルハーヘンにも勝てん。今度はやり方を変える。参加するロボットを百万にまで増やす。そして、君たちを含め全員に百円を持ってもらう。二人一組で始め、勝った方が勝った者同士でまた一対一の勝負。簡単な計算じゃが、最後の勝者は一億円を手にすることになる。それでは、勝負じゃ!」

 ザワ

 百万のロボットが転送されると圧を感じる。ネコメイドたちは、どこかに消えてしまった。

「オーーーーシ!」

 天音は両の手の平を交差させて組んで覗き込むっちゅう伝統的準備姿勢!

 すると、ロボットの半分以上が真似をするが、関節のリミッターを超えてしまうのか、こんぐらがって取れなくなってしまう。

「おまえたちは、真似せんでいい!」

 ヨーダのこめかみがピクピク震える。

 真似しなかったロボットたちが直してやって、仕切り直し。


 最初はグー、ジャンケン、ポン!!


 百万と八人の声がダススターに轟いた。

 無邪気な欲と言うのは恐ろしいもので、数回繰り返しているうちに三笠組の八人が残るようになり、最後の勝者は俺一人になった。

「これで良い。無邪気な欲が勝利に繋がる。これが実戦なら、三笠の大勝利じゃ!」


 が、これで終わりではなかった。


 次に、レフトセーバーの使い方の訓練であった。レフトとは心臓が左側にあることからついた名前だ。
 人間は最後に心臓を守ろうとする。人と並ぶとき左側に人に立たれると、なんとなく落ち着かないことや、喫茶店、映画館のシートが左側から埋まっていくことなどにも現れているんだそうだ。樟葉は単に著作権の問題かと思ったが、ミカさんと目が合うと、ミカさんは、ただニッコリ笑みを返してきただけだ。


「よいか、やみくもにセ-バーを振り回しても勝てやせん。心の中にプレステのコントローラーを思い浮かべよ。そのコントローラーで操作するようにやれば、勝利は疑い無し。励め!」

「でも、なんでプレステのコントローラー? うちXボックスなんだけど」

「プレステはフォーまできておる。フィフスは、それを超えるものじゃからじゃ!」

「プレステは5(ファイブ)まで出てるんだけど」

 自分は持っていないくせに、トシが苦情を言う。

「ファイブは半導体不足で品薄じゃ!」

 ヨーダも負けてはいない(^_^;)

 ダジャレとこじつけみたいだったが、やってみると、なるほど上達が早かった。

 他にも、様々な訓練(ドリル)が課された。中には、ここで書けないような内容も含まれているが、それではつまらないので、その一端を紹介しよう。

 セックスアタックへの耐性訓練と言うのがある。バーチャルではあるが、絶世のイケメンと美少女の誘惑に勝つ訓練だ。三笠のクルーは、みんな高校生という多感な年ごろ、ウレシコワやクレアも入れ物としての体は少女だ。反応は人間と変わらない。

 詳述は省くが、この訓練がもっとも大変だった。三笠組は年頃であるということとラノベのキャラであるということで、この種の誘惑には弱かった。レイマ姫は過去に訓練を受けていた様子だった。で、この訓練が一番つらいことを知っていた様子であるが、この訓練のときだけ標準語になることが可笑しかった。

 かくして、ひと月にわたる訓練が終わり、各自のHPとMPが発表された。ゲームで言えば、初回最後のボス戦の時のような数値だった。

「これからは、実戦が訓練であると思って頑張りたまえ!」

 ナンノ・ヨーダは、そう締めくくった。クルーたちは、まるでチュートリアルを終えたばかりのゲーマーのように新鮮な闘志に燃えていた。

 

☆ 主な登場人物

 修一(東郷修一)    横須賀国際高校二年 艦長
 樟葉(秋野樟葉)    横須賀国際高校二年 航海長
 天音(山本天音)    横須賀国際高校二年 砲術長
 トシ(秋山昭利)    横須賀国際高校一年 機関長
 ミカさん(神さま)   戦艦三笠の船霊
 メイドさんたち     シロメ クロメ チャメ ミケメ
 テキサスジェーン    戦艦テキサスの船霊
 クレア         ボイジャーが擬人化したもの
 ウレシコワ       遼寧=ワリヤーグの船霊
 こうちゃん       ろんりねすの星霊
 レイマ姫        暗黒星団の王女 主計長

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RE・かの世界この世界:010『志村先輩』

2023-02-15 05:48:35 | 時かける少女

RE・

010『志村先輩』   

 

 

 最初に崩れた東側のビルは、結果的に三か国の共同でつくられた。

 

 実際の工事に入ってみると、日本以外の二か国の技術では対応できないことが分かったからだ。

 その時点で二か国を撤収させ、日本企業だけで作るべきだった。

 しかし、メンツを重んじる二か国は継続を固執し、日本企業もことを荒立てることを好まず、東棟の建設に部分参加させた。

 結局二か国が担当したところは、三棟を屋上プールで連結する部分で重量に耐え切れずに挫滅し、東棟全体を傾かせることになったのだ。そして、傾いた東棟は中棟と西棟をも巻き込んで大崩壊に至ったということみたい。

 これは、責任を擦り付け合う、グロテスクな争いになるだろうなあ……。

 

「悲惨な事件だけど、これは、ただのたとえ話なの」

「今から説明することのな……」

「たとえ話……?」

「ああ、この事件は、こじれても会社が潰れたり国の評判が落ちたりするだけのことだ。まあ、崩れる時間帯によっては数千人の犠牲者が出るだろうがな。世界が滅びるようなことにはならない」

「時美、そういう言い方は良くないわ」

「あ、すまん。光子は気にするよな。まあ、これは、ただの前振りだ」

「話を進めましょ」

「ちょっと切り替えるぞ……」

 

 志村先輩が右手を上げると画面が変わった。

 ビルのシルエットはそのままで、シルエットは無数の小部屋に区分けされた。

 小分けされた小部屋には、わたしの知識では分からない……たぶん歴史的な事件が書かれている。

 歴史的な事件と分かるのは、ところどころわたしでも分かる出来事が書かれているからだ。

 

 平安遷都 元寇 太閤検地 サラミスの海戦 コロンブスアメリカ大陸到達 戊辰戦争 アパルトヘイトの終焉 etc……

 

「歴史年表ですか?」

「なんだけどな……」

「よく見て……」

 中臣先輩が呟くと、画面のあちこちがランダムに拡大されていく。

 

 秀吉が幕府を開く  ナポレオンがロンドンを陥落させる  ミッドウェー海戦勝利の日本がハワイを占領  リンカーン大統領暗殺失敗  阪神淡路大震災に米軍のトモダチ作戦  安倍首相暗殺未遂

 

 史実ではないことがチラホラうかがえた。

 

「そう、寺井さんが知っているのとは違う事件が起こった、別の世界の年表」

「たとえばな、阪神淡路大震災のとき首相は村山じゃない可能性もあった。すると、もっと早くアメリカの支援も受けられたし、自衛隊の出動も早くなって、死者は4000人で済んだ」

 あの震災では6000人以上の犠牲者が出ていたはずだ……

「2000人以上の命が救われる……すると、どうなると思う?」

 イタズラっぽい視線を送って来る志村先輩。

「良かったんじゃないですか、2000人も多く助かるんだから」

「すると、こうなる……」

 年表のあちこちが点滅して、事件のいくつかが書き換わった。

「歴史が変わるんですね、先輩……」

 

 振り向くと、志村先輩の姿が無かった。

 

「え、え?」

「2000人助かると、時美は生まれてこないの」

「どうしてですか?」

「時美のお母さんが震災で助かった別の男の人と結婚するから、いまのお父さんと出会う前にね」

 中臣先輩が、シレッと言った。

 

☆ 主な登場人物

  •  寺井光子  二年生
  •  二宮冴子  二年生、不幸な事故で光子に殺される
  •  中臣美空  三年生、セミロングの『かの世部』部長
  •  志村時美  三年生、ポニテの『かの世部』副部長
  •  

 

 

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