大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

せやさかい・390『卒業式のサプライズ』

2023-02-24 15:03:36 | ノベル

・390

『卒業式のサプライズ』さくら   

 

 

 …………と、いろいろな出来事やさまざまな思いがありましたが、無事に目出度く卒業の日を迎えることができました。

 こんな身勝手な三年生に付いて来てくれた在校生のみなさん、導いてくださった先生方、職員のみなさん。お父さんお母さん、家族のみんな。商店街を始めとするご近所の方々。そして、入学以来ここまで見守り、我々の魂を磨いてくださったマリア様に感謝の誠を捧げ、卒業の言葉といたします。

 2023年 2月 24日    卒業生代表 田中真央

 

 シーーーーーーーーーーーン

 

 パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ!!

 

 さすがは百武真鈴! いや、卒業生代表田中真央!

 式場の全員、聞きほれてしもて、とっさには拍手がでけんと、シーンとしてしもてからの大拍手!

 三年に及んだ流行り病のために、授業やら行事が押せ押せになって、例年より一週間遅れての卒業式。

 でも、もうマスクもせんでええし、ソーシャルディスタンスもいらんし、真鈴先輩の名調子も拝聴できたし。

 これで雨やなかったら120点の卒業式やった!

 

 で、折り入って話があるんだが……

 

 学食の外テーブル。

 散策部の四人で、午後の紅茶を頂きながら卒業式の感動を噛み締めてると、本人の真鈴先輩がやってきた。

「先輩、さっきの答辞、めっちゃよかったですよ!」

「百武真鈴の新境地ですね!」

「あはは、うんうん、好きなだけ褒めてくれていいんだぞぉ……と言いたいんだが、直ぐに結論を出さなければならない相談があるんだ」

「「「「え?」」」」

 四人揃ってびっくりし、わたしが代表で聞いた。

「なんですか?」

「実はな、この金土日と君たち散策部に付き合ってもらいたいんだ」

 え?

 期待半分心配半分(^_^;)

 文化祭のパレードといい、こないだの『犬が西向きゃ尾は東』と言い、真鈴先輩の「ちょっと相談」というのは絶対ちょっとやないからね。

「実はな、頼子に卒業証書を持って行ってやりたいんだ。ついてはわたし一人ではつまらないし、みんなにもいっしょに付いて来てもらいたいんだが。みんな、パスポートは切れてないだろう?」

「はい、大丈夫です!!」

 わたしが代表して、行く気まんまん!

「でも、費用とか飛行機のチケットとかは……」

「うん、むろんこっち持ち。っていうことは放送局の企画なんだけどね(^_^;)」

「いくいく!」

「大丈夫です!」

「わたしはダメだ」

「ええ、ソニーあかんのん?」

「部長から金曜の夜から仕事だと言われてる」

「部長って、ミスター・ジョン・スミスだよね?」

「うん、あっちは大佐、こっちは伍長だからね」

「ああ……軍務なら仕方ないよね」

 お父さんが自衛隊のメグリンは俯いてしまう。

「ええと、その反応は想定内だったりしてね……」

 先輩が言葉を継ごうとしたら、ソニーのスマホが鳴った。

「ちょっと、ごめん」

 スマホを持ってピロティーの方へ行くソニー。

「忙しそうだね……」

 メグリンが同情の眼差しを向ける。

 英語でやり取りしてるソニー、むろん話が聞こえる距離やないねんけど、うちらと話す時とは違う軍人さんの姿勢。

「なんか、草薙素子みたいだね」

 先輩は声優の大先輩がやってるキャラの印象みたいに言う。

「イエッサー!」

 なんか、最後はやけくそみたいに返事して戻ってきた。

「わたしも行くことになった!」

 よかったあ(^▽^)/…………うちらが喜ぶ割には、冴えへんソニー。

「最後まで聞け、使う飛行機はヤマセンブルグの公用機、そしてパイロットは、このソニーだ」

 

 え!?

 

 みんな口を開けたままフリーズしてしもた。

 

☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら      この物語の主人公  聖真理愛女学院高校一年生
  • 酒井 歌        さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
  • 酒井 諦観       さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦念       さくらの伯父 諦一と詩の父
  • 酒井 諦一       さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
  • 酒井 詩(ことは)   さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
  • 酒井 美保       さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
  • 榊原 留美       さくらと同居 中一からの同級生 
  • 夕陽丘頼子       さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 聖真理愛女学院高校三年生
  • ソフィー        ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
  • ソニー         ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
  • 月島さやか       さくらの担任の先生
  • 古閑 巡里(めぐり)  さくらと留美のクラスメート メグリン
  • 百武真鈴(田中真央)  高校生声優の生徒会長
  • 女王陛下        頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
  • 江戸川アニメの関係者  宗武真(監督) 江原(作監) 武者走(脚本) 宮田(制作進行) 花園あやめ(声優)  
  • さくらをとりまく人たち ハンゼイのマスター(昴・あきら) 瑞穂(マスターの奥さん)
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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・009『宮田博子』

2023-02-24 11:06:59 | 小説

(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記

009『宮田博子』   

 

 

 ジャンボジェットの子だ!

 

 ほら、合格者説明会が終わって帰ろうとしたら、空見上げててぶつかってきた子。

「どこの航空会社のなんですか?」

「え、ああ……家にあったの持ってきただけでぇ」

「ロゴとか……無いのは、きっと特別製なんですねえ、聞いたことあります。ベテランのスチュワーデスは特注のキャリー持ってるって! へーー、いいなあ、カッコいいなあ」

「アハハ(^_^;)」

「え、ひょっとして椅子になるんじゃないですかあ!?」

「え、椅子?」

「ちょと、失礼……ここを、こうやって……」

 カチャカチャ

「ほら!」

「あ、ああ……」

 これは究極のババキャリーだ……ほら、くたびれたお婆ちゃんが、公園とかでキャリーを椅子にして寛いでる。若者は絶対持ち歩かない奴だよ(-_-;)。

「スゴイです! 特注中のトクチュ……テ、舌噛んでしまいました(;'∀')」

「あはは」

 こないだのジャンボジェットほどじゃないけど、チラ見していく人が結構いる。半分は、この飛行機オタクっ子のせいだけどね。

 見渡すと、キャリーを持ってきているのはわたし一人……どうやら1970年、キャリーバッグを使っているのはスチュワーデスぐらいみたいだ。

「あ、わたし宮田博子っていいます。よかったら、いっしょに周りませんか?」

「え、あ、そうね」

 と、成り行きと勢いで、いろいろの受け渡しをいっしょに周ることになった。

「あたし、時司巡。よろしくね」

 わたしにも常識はある。相手が名乗ったなら、こっちも名乗らなくちゃね。

「トキツカサ?」

「あ、時間の時に、司会の司と書いて時司。めぐりは巡査の巡」

「時間の時に司会の司……」

 手のひらに指で書いて憶えてる、なんか可愛い。

 そう言えば、この子の身長はわたしの鼻の頭くらい。陽気で押し出しが強いせいか、小柄なのに気付かなかった。

「テヘ、物覚え悪いんで」

 おお、テヘペロ! リアルで見るのは初めてかも!

「ううん、いい記憶法だと思うよ」

「お祖父ちゃんに教わったんです」

「そうなんだ。あたしのキャリーもお祖母ちゃんに『持ってけ』って言われて、あ、スチュワーデスとかじゃないんだけどね」

「え、そうなんだ。年寄の言うことって、含蓄ありますよねえ。あ、まあ半分くらいは」

「うん、そうかもね。あ、教科書が早いみたい!」

 校舎の入り口で係りの先生が―― 教科書空いてまーす ――と言ってくれてる。

 教科書は選択授業によって変わるので要注意。

 宮田さんと注意し合って列に並ぶ。

「あ、芸術は同じですね」

「宮田さんも美術なんだ」

「副読本多いですねえ(^_^;)」

「うん、ちょっと多すぎかも」

 地理の地図帳、白地図帳、英語の辞書二冊(英和辞典 和英辞典)、高等英文解釈、国語便覧……

『教科書、副読本は一覧表を基に確認して下さ~い。空き教室を用意していますのでご活用くださ~い』

 不足や間違いがあると、販売店まで行かなければならないらしいので、みんな真剣に確認。

 先に制服の受け渡しをやった子たちは、制服の箱が邪魔そう。

「オッケーです、制服いきましょう!」

 制服は本館前の植え込み前。ゼミ机で結界を張り新入生全員分の制服の箱が積んである。

 フフフ

 やっと憧れの制服だ。

 これのために、わざわざ五十年先の令和から越境入学したんだ。思わず笑みがこぼれる。

「やっぱ、制服はスーツですよね!」

 宮田さんも同類みたいだ。

「靴もね、ローファーを買ってもらったんです。高校の制服って、最後は足もとで締めなくっちゃいけませんからねえ」

「あ、わかる~、中学まではスニーカーでしょ、スニーカーって子どもっぽくって」

「スニーカー?」

「え、あ、これ」

 足元を示すと、また目を見開く宮田さん(^_^;)

「おお……さりげなくもイカシた運動靴ですねえ! 靴底の厚さといい、くるぶしあたりの肉の厚さといい、言われて見なければ分からないさりげなさですけど、自己主張してますねえ……そうか、スニーカーってメーカーなんですねえ」

 スカートの膝のところでスニーカーってなぞってるし(^o^;)

「あ、そういうわけじゃあ……あ、体操服!」

 流れに沿って体操服の場所に移動。

「ゲ、ブルマ!?」

 受け取ってビックリ。

 男子はジャージの上下に丸首の体操服だけど、女子のは体操服の下はブルマだよ( ゚Д゚)。

「仕方ないですねえ、昔から女子はブルマですからあ」

 ぬかっていたあ……まあ、時代なんだ。みんなで穿けば怖くない。

 

 人ごみを抜けて、あとは帰るだけ。これも縁だから宮田さんに声をかける。

 

「じゃ、そこまでいっしょに帰ろうか?」

「あ、わたし、もう一つ寄るところあるから」

「え、なにか忘れてたかな!?」

「あ、あそこのね……」

 宮田さんが指差した先には『奨学金申し込⇒』の張り紙。

「え、あ、そか」

「あ、じゃあね、バイバイですぅ」

「う、うん」

「入学式楽しみですねえ、同じクラスになれたらいいですね!」

 健気に手を振って校舎の中に入っていく宮田さん。

 微妙におたついたけど、ほんと、同じクラスになれたらと思った。

 

 校門を出て仰いだ空、ジャンボジェットが飛んでいく。

 見上げる人は、もういなかった。

 

 

☆彡 主な登場人物

  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校一年生
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
  • 宮田博子

 

 

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宇宙戦艦三笠33[水の惑星アクアリンド・3]

2023-02-24 06:32:37 | 真夏ダイアリー

宇宙戦艦

33[水の惑星アクアリンド・3] 修一  

 

 


 あくる日は視察と親善訪問でいっぱいのスケジュ-ルだった。

 アクアリンドのIT施設、生命科学研究所、老人介護施設、交通システム管理センター、軍の閲兵、そして、たまたま日が重なった三年に一度の高校総合文化祭の観覧と目白押しだった。

―― やっぱ、この星おかしい ――

 クレアの言葉が、直接頭に飛び込んできた。老人介護施設の訪問が終わろうとした時だった。

「この星の歓待ぶりは格別だね……」

 俺は、会話の流れとしては自然な一言を発した。

 次の瞬間、俺とクレアはデコイと入れ替わった。

 昨夜、クレアとバーチャル映像を監視カメラなどにかましながら決めた合言葉だった。クレアが用意した修一とクレアそっくりのデコイと瞬時に入れ替わっていた。瞬間各種のカメラに微弱なノイズが入るが、気が付く者はいないだろう。また気づいたとしても、ノイズを解析し、二人がやったことに気づくころには三笠は、この星を離れている。


「これはこれは珍しい。旅の修行僧のお方とは」

 アクアリンド大陸南端の密林の中に、それはあった。


 アクア神の唯一の神殿であるセントアクア聖殿である。僧官長のアリウスが両手を広げ、若い修行僧姿の修一とクレアを神殿に招き入れた。アリウスは、どうやら二人の正体と、訪れた目的を知っている様子である。

「夕べ、夢を見ましてな。北の方角から、若い修行僧二人が訪れると。これもアクア神の賜物でしょう」

「僧官長さまのお教えと、アクア神のお導きがいただきたく、大陸のあちらこちらを経めぐり、ようやくアクアの神殿にたどりつくことができました」

「いずこから来られた方であろうと、このアクア神のみ教えを拝する方は同志です。どうぞ聖殿に入られよ」

「我々のような修行浅い者が、聖殿などに入ってよろしいのですか?」

「聖殿でなければ、神の声は聞こえませんでな……」

 聖殿は神殿の奥にある八角形の台座で、その上にマリア像に似たアクア神の神像があった。

「入られよ」

「「失礼いたします」」


 僧官長にいざなわれ、俺たちは台座の中に入った。中央に八角形の大きなクリスタルが、様々な色に変わりながら輝いて、中央でゆっくりと旋回していた。

「これが、アクア神の御神体。上の神像は、人の目を欺く……と言ってはなんですが、分かりやすく人に見せるために作られた、祈りの象徴にすぎません。八十年に一度新しいものと交換いたします。本当の神のお姿はこのクリスタルです。地球のお方」

「やはり、ご存じだったんですね」

「この星で、八十年以上前の記憶を持っているのは、わたし一人です。わたしは、今年で二百八十歳になりますが、世間には八十歳で通しています。だれも怪しみません」

「それは……みんな八十年以上前の記憶がないからですね」

 クレアの言葉に僧官長は、かすかな笑みをたたえて沈黙してしまった。

 深遠な、すごみのある沈黙だった。

 

☆ 主な登場人物

 修一          横須賀国際高校二年 艦長
 樟葉          横須賀国際高校二年 航海長
 天音          横須賀国際高校二年 砲術長
 トシ          横須賀国際高校一年 機関長
 ミカさん(神さま)   戦艦三笠の船霊
 クレア         ボイジャーのスピリット
 ウレシコワ       ブァリヤーグの船霊
 メイドさんたち     シロメ クロメ チャメ ミケメ  

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RE・かの世界この世界:019『新しい任務が表示された』

2023-02-24 06:11:49 | 時かける少女

RE・

019『新しい任務が表示された』   

 

 

 ……白い闇の真ん中がドーナツ状に凝縮していき、二呼吸するほどの間にUFOのような発光体になった。

 拉致られる!? キャトられる!? 異世界にとばされる!? 

 弾けるように妄想が膨らむと、リング状の蛍光灯だと合点がいく。

 どこかで見たような……考えていると霧が晴れるように白い闇が消えていき、部室の天井だと分かる。

 ウ……

 分かると同時に背中に引力を感じる。

 何のことは無い、見えているのが天井ならば背中は床だ。床方向に引力があるのはあたりまえ。

 どうも、わたしの感覚は視覚的なようだ。

 
 気が付いたか?

 
 ギクッとした。

 視界の左にピーターパンみたいな志村先輩の心配顔。

 ホッと吐息が漏れる。

 右側にかぐや姫みたいに中臣先輩。

 
 突然見えたみたいだけど、さっきから居たんだろう。私の感覚は聴覚的?

 
「大変だったわねぇ」

「そっと起きるんだぞ」

「あ、はい……ああ……」

 上半身を起こすと部室がグラ~っと回って、わたしはカエルを潰したように腹這いになった。めちゃくちゃ気持ちが悪い。

 体中の穴から寺井光子の実体が溶けだしてクラゲかバクテリアになってしまいそう。

 
 ソロリと先輩の優しい手で上向きにされる……すると中臣先輩の顔がズ~ンと寄って来た。

 どうやら抱き起されている……先輩の美しい顔はさらに寄って来る。先輩のロンゲがハラリと頬に掛かった。

 ア……

 わたしの口が先輩の唇で覆われてしまった。

 生まれて初めてのキスが先輩……すると口移しに爽やかなものが流し込まれ、ビックリしたけど不快じゃない。

 爽やかなものは、瞬くうちに全身に漲って平衡感覚が戻って来た。

「初めてだから次元酔いしたのよ」

「次元酔い?」

「口移しにしてごめんね」

「あたしの方が良かったかぁ( ̄∀ ̄)?」

「茶化しちゃダメよ時美」

「ハハ、この次は自分で飲みな、冷蔵庫に冷やしてあるから」

「は、はい。ありがとうございました志村先輩」

 て……この次があるの(;'∀')?

「よかった無事に戻ってきて……あれを見て」

 
 先輩が指したモニターを見ると、三本の柱の右端のが青みを増している。ようく見ると、柱は無数の小部屋と言うか細胞というかで出来ていて、その半分ほどが青くなっている。残りは赤やどっちつかずの白。見ようによっては無数のフランス国旗が埋め込まれているように見える。

「ミッチャンのお蔭よ」

「わたしですか?」

「うん、光子がミカドの窓際に座ったんで、あの学生と営業見習い風の女は出会わずに済んだ」

「あ、あの二人……」

「二人が出会うと、二年後には結婚して子供が生まれるの」

「男の子なんだけど、五十年後に総理大臣になるんだ」

「そして国策を誤って、日本どころか世界をメチャクチャにしてしまう」

「メチャクチャに?」

「うん、でも生まれないことになったから、多分大丈夫よ」

「あの青いところが安全になった世界なんですね」

「そう、青が安全。赤は滅亡、白は一進一退というところだ」

「真ん中のひときわ明るい青がね、ミッチャンが修正したところ」

「あ、でも……」

 
 思い出した。わたしと出会ったことで三十年前のお母さんは死んでしまうんだ。

 
「……そう。危機は回避したけど光子は生まれない世界になってしまったのね」

「それで戻ってきたんですか?」

「まあ……でも、あの世界は大丈夫だからな」

 自分が生まれない世界と言うのは釈然としないが、母親の事故死を防げなかったという衝撃は小さくなった。

 だって、他の世界、真ん中と左側の柱には、母が生きていて、当然わたしも生まれている世界がたくさん残っているんだ。

「そして、光子が冴子を殺さずに済む世界も、まだ現れてないんだ」

「それって……」

「もうひと頑張りしなくっちゃ……」

 志村先輩がノーパソを操作すると、モニターに新しい任務が表示された。

 

 ☆ 主な登場人物

  •  寺井光子  二年生
  •  二宮冴子  二年生、不幸な事故で光子に殺される
  •  中臣美空  三年生、セミロングの『かの世部』部長
  •  志村時美  三年生、ポニテの『かの世部』副部長
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