大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・052『第一回みんなで楽しく語る会』

2023-09-12 09:55:20 | 小説

(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記

052『第一回みんなで楽しく語る会』   

 

 

 普通教室半分ほどの応接室に30人が入った。

 

 ゴォォォォォォォォ

 万博で泊まった宿舎と同じくらいのエアコンが唸っている。昭和のエアコンは、いかにも機械。大きさとデザインもさることながら、その運転音は、戦車の中にいるみたい(乗ったことないけど)。

 メンバーは、わが一年五組を中心に、他のクラスからも20人ほど集まってる。

 まあ、半分はエアコン目当て。なんせ、この時代エアコンなんて一般家庭はもちろんのこと、電車でも付いているのは特急とか新幹線ぐらい。万博見に行って、宿舎の町屋や銭湯では経験済みだけど、学校という日常の中で見ると、その迫力と効果はスゴイよ。

 

「……だからぁ、僕たちは、学校の主人公だって自覚を持たなきゃならないと思う!」

 十円男が、普段の『俺』ではなく『僕』という一人称で演説している。

 さっきまでは――なぜ、女子はスカートを穿かなければならないのか?――という題材で真知子が話していた。

 真知子は主催者として、みんなの気持ちを「まず、喋ってみよう」という空気にしたんだ。

 自分の性別さえ個人の自由で決めていいと言い出す令和と違って、やっとウーマンリブとかがアメリカで出てきたばかり――スカート=女?――という問題提起は、時代の最先端的な感じで、みんな食いついてきた。

 だけど、すぐに「日本の高校生は制服に縛られてるのかも」って誰かが言いだして、半分近くの子が耳を傾け、十円男は一人称を『僕』に替えた。

「うん、加藤君の言うことも分かるけど、制服にはプラスもあると思うんだ」

 委員長の高峰君が穏やかに反論する。

「制服があることで、無駄な被服費がかからない。同じものを着ているから、見かけで人を判断することが抑制されるし、仲間意識を持つことにも役立ってると思う。もし私服だったら、僕みたいな朴念仁でも、なにを着て行こうかと、日に数分は考えてしまう。日に一分悩むとして、一年で6時間余り。文庫なら一冊読めてしまう」

「あ、分かるぅ。靴下一つでも五分は悩む自信ある!」

「あはは、自信かぁ」

「そうよねえ、私服なんて、よそ行きの他は季節にニ三着だもんね」

「ええ、あたしなんか、季節に一着ぐらい!」

「うちは商店街の洋品店だから、私服にしてもらったら売り上げ増えるかもぉ(^_^;)」

「おお、商売人!」

 盛り上がってきた。

「そうじゃなくって、加藤君は、学校における主人公は生徒であるべきと言ってるんだ。ねえ、加藤君」

 知らない男子がヨイショする。

「うん、そうだ。校則やら受験制度に縛られている日本の高校生の有りようこそが考えられるべきなんだ」

「ああ、でもいいかなあ」

 たみ子が授業の時みたいに手を挙げた。

「人間がさ、千何百人か集まってるわけでしょ、学校って。人が大勢集まったら、おのずとルールができるし、必要なんじゃないかなあ」

「うんうん、商店街でも看板の出し方とかルールあるよ」

「ルールを否定するわけじゃないんだ、ルールは自分たちでつくればいい。先生たちに強制されるようなもんじゃないと思うんだ」

 もう一人ヨイショ男が現れる。

「でもぉ、生徒って三年しか学校にいないわけでしょぅ……あ……」

 ツインテールの子がωの口で話す。ヨイショの男たちが、チラリと十円男を見る。

「あ、僕のことなら気にするな、勲章みたいなもんだから」

 アハハと数人の追従笑い、こいつら、十円男にだけ君付けだし。ちょっと気分悪い。

「ええと、今日は第一回だし、あまり一つのことを深堀りしないですすみたいんだけど」

 真知子の提案に『残念』と『そうそう』の反応。

「じゃ、話題変えるね、日本は四季のハッキリした国だけど、みんなはどの季節が好きかなあ? あ、ちなみに、わたしは春なんだけどね」

 春を愛する人は~♪

 だれかが口ずさんで、ちょっと笑い。

 エアコンの恩恵もあり、真知子のリードもしっかりしていて、『第一回みんなで楽しく語る会』は大成功。

 

 最後に会の名前を『ミタカ』の略称で呼ぶことに決めた。

 

 MINNNADE TANOSHIKU KATARU KAI の頭、MI TA KAをとった名前。

「それならミタカカだ、KAIを忘れてる」

 十円男が言ったけど、却下!

 

 

☆彡 主な登場人物

  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校一年生
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         1年5組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            1年5組 副委員長
  • 高峰 秀夫             1年5組 委員長
  • 吉本 佳奈子            1年5組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            1年5組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 藤田 勲              1年5組の担任
  • 先生たち              花園先生:4組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。

   

 

 

 

 

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RE・トモコパラドクス・15『調子に乗り過ぎた』

2023-09-12 06:44:46 | 小説7

RE・友子パラドクス

15『調子に乗り過ぎた』 

 


「いやあ、すいませーん。九州で事故っちゃって。とりあえず、あたしたちだけでも間に合わせました(^◇^;)」

 小野寺潤のスガタカタチでディレクターにあいさつする紀香。

「スタッフの人たちは、事故処理で、まだ宮崎です(^△^;)」

 矢頭萌に化けた友子もかました。

 

「よかったぁ! とにかく衣装つけてメイク。済んだら、すぐに舞台ソデ!」

 

 ディレクターと入れ違いに、総監督の服部八重がやってきた。

「心配したよ~(৹˃ᗝ˂৹)!」

 半泣きで二人をハグしたが2秒後には総監督の顔に戻って指示をする。

「10分はMCで持たしとくから、曲には遅れないでね。ヨロシク!!」

 まなじりあげて舞台に戻る八重。仲間への愛情とプロ根性がバランス良く同居している。さすがはAKRの総監督ではある。

 感心している間もあらばこそ、衣装さんが魔法のように二人を裸にして衣装をつけさせる。これに一分。

 すかさずメイクさんとヘアーメイクさんが取り付いた。普段なら、潤も萌もほとんど自分でやる。紀香と友子にも同じスキルがあるが、それではとても間に合わず。急いでプロがでっち上げる。これに五分、そして、6分30秒後には舞台に立っていた。

「すみませーん、ちょっと衣装破けちゃって、直してました~」

「ちょっと、最近食べ過ぎなのよ。サイズ合わなくなってきたんでしょ」

「そんなことありませ~ん。その証拠に体重計持ってきましたあ」

 萌(友子)が楽屋にあった体重計を舞台に置いた。

「ちょっと潤、乗ってみそ」

「はいはい……先週と同じ○○キロで~すv(´∀`)v」

 ピースサインの潤。

「ちょっとぉ、壊れてんじゃないの」

「じゃ、ヤエさん、乗ってみ」

「いいよ」

 ヤエが乗ると、なんと体重計は八十キロを指した。

「ええ、ウソでしょ!」

 観客席に笑いが満ちる。

 ヤエが乗ると同時に、潤と萌が、片脚を乗せて踏ん張っている。気づいていないのはヤエ一人。やがてそれに気づいて追っかけになるというアドリブをかまして、曲に入った。


《出撃 レイブン少女隊!》 

 GO A HED!  GO A HED! For The People! For The World! みんなのために!

 アフタースクール校舎の陰で、構えるスマホは正義のシルシ、#を押したらレイブンさ!

 世界中が見放した 平和と愛とを守るため わたし達はレイブンリクルート!

 わたし達は ここに立ち上がる その名は終末傭兵 レイブン少女隊

 GO A HED!  GO A HED!  For The People!  For The World!  For The Love!

 ああ~ ああ~ レイブン レイブン レイブン少女隊……ただ今参上(^^ゞ!


 無事に最初の曲の一番を終わると、あとは、スムーズに流れた。

「ねえ、みんな今日の萌ちゃん、すごいんだよぉ。この子が歌もフリもノーミスでやったのはじめてだよ。これは記念になにかやらなきゃね」

 ヤエが、さっきの復讐。

「みんなで、萌を胴上げしよう!」

 あっと言う間に、みんなに胴上げされてしまう。

「イヤー、おパンツ見えちゃうよ!」

 そう叫びながら、萌は本物の萌が瀕死の重傷で意識が戻ったことに気づいた。

――やばいよ、紀香。二人宮崎で事故って、瀕死の重傷。まだ発見されてない―― 

――今すぐ行こう!――

「じゃ、あたしたちオフなんで、これでお疲れ様で~す」

「なによ、カラオケ付き合うっていったじゃんよ!」

「ワリーワリー(^_^;)」「また今度ね~(^。^;)」

 

 二人は屋上に上ると、ステンレスのダクトカバーを外して、ロケット状に加工して、屋上を飛び立った。

 ビューーーーーーン

 

 現場は空港に近道するための林道だった。

 潤と萌とスタッフの三人は、林道から落ちた谷川で横転した四駆の中にいた。三人ともあちこち骨折の重症、萌だけが意識があった。

 二人は天使の姿に擬態して、三人の怪我をチェックした。

「……天使さん?」

 苦しい息の下から、萌が声をかけた。

「そう、わたしがミカエル。あっちのヒネたのがガブリエル」

――友子、治せそう?――

――全員あちこち骨折。今からナノリペアー注入。萌ちゃんは、肋骨が折れて肺に刺さってる。しゃべらせないで――

 友子は、ハンドパワーで萌の肋骨を元に戻し、車のパーツでギブスを作り、三人にあてがった。

――どうする、今から救急車呼ぶ?――

――だめだよ、ライブにも出ちゃったし治療もしちゃったし――

 仕方なく、二人は車をソロリともとにもどし、ボディーを加工して上空の低温や、空気摩擦に絶えられるようにした。

「いくよ」

「うん」

 怪我人を後部座席に固定して、元四駆の車を空中に浮揚させると、亜音速で東京を目指した。

 当然、自衛隊やら米軍やらのレーダーに映り、自衛隊にはスクランブルまでかけられた。

 仕方なく海面スレスレまで降りてレーダーを躱したが、その分人目に触れて、あちこちで写真に撮られてしまった。

 ようやく相模湾上空でステルス化に成功。三人をそれぞれのマンションやら、アパートに運んだ。

 

「へえ、太平洋側のあちこちでUFO出現……それにしても妙なカタチだな。ねえ、ねえちゃん」

 妻の春奈がいないので、一郎は新聞を見ながら、やっと起きてきた姉に声をかけた。

「UFOはね、焼きそばもピンクレディーも苦労したらしいわよ……」

「なんだか、めずらしくくたびれてるね?」

「うん、ああ……明日から中間テストだからね……」

 そうごまかして、友子は自分の部屋に戻った。

 このあたりが限界なのか、力の配分なのか、身体にぜんぜん力が入らない。

 少し調子に乗り過ぎた。

 布団をかぶりながら、友子は自分の取説が欲しいと思った……。

 

☆彡 主な登場人物

  • 鈴木 友子        30年前の事故で義体化された見かけは15歳の美少女
  • 鈴木 一郎        友子の弟で父親
  • 鈴木 春奈        一郎の妻
  • 白井 紀香        2年B組 演劇部部長 友子の宿敵
  • 大佛  聡        クラスの委員長
  • 王  梨香        クラスメート
  • 長峰 純子        クラスメート
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