大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

せやさかい・432『散策部で八尾の条里制を見る』

2023-09-10 15:01:38 | ノベル

・432

『散策部で八尾の条里制を見るさくら   

 

 

 「「「「おお!」」」」

 

 モニターの画像に、散策部の四人は感嘆の声をあげた!

 映ってるのは田んぼと畑、その間に学校やら工場やら資材置き場とかもあるねんけど、そこも元々は田んぼやったことが偲ばれる。

 なんでか言うと、学校も工場も、ほぼ同じ真四角のかたち大きさ、あるいはそれを区切ったものやいうことが分かる。

『これがなぁ、大阪では珍しい条里制の跡なんやぞ』

 車内のスピーカーからテイ兄ちゃんの解説が聞こえて、なるほどなるほどと四人でうなづく。

 車の外では、テイ兄ちゃんが、墨染めの衣のままコントローラーを操作して、上空100メートルぐらいの空に虫が飛んでるみたいにドローンの姿。

「すごいなぁ、地上から見たら、どこにでもある郊外の景色なのに、空から見たら昔の条里制のまんまだ」

 いまや、うちら以上に日本に詳しくなったソニーが感心する。

『……ほんで、あちこちに小さな神社やら祠やらが残ってる』

 テイ兄ちゃんは、器用にドローンを操作させて、あちこちの神社や祠をズームアップしてくれる。

「あ、うちらの車や!」

 神社の駐車場に車が停まってる思たら、うちらのワゴン車。

「せや!」

「ちょ、さくら」

 留美ちゃんの前を無理やり通って車外に。

「どう、見えてる?」

「「「うわ」」」

「驚くことないやろがぁ」

「だって、いきなりさくらのドアップ!」

 テイ兄ちゃんがいちびって、うちの頭をドアップにしたんや。

「イーーー(`皿´;)だ!」

 

 アハハハハハハハ((´◇`))

 

 駐車場を貸してくれた神社にお礼を言うて、八尾市街に入る。

「このあたりは、木村重成のお墓を見に行った時に通ったわね」

 物覚えのええ留美ちゃんが感激。

 たしかに、恩智川を跨ぐと、昭和の雰囲気の街並み。玉櫛川を渡ると昭和でも戦前の雰囲気を残す住宅街。

 そこを坊主ならではの土地勘で、一通やら進入禁止を躱しながら第二の目的地のお屋敷。

 

「ここもすごいなあ……」

 

 ソニーが振り仰ぎながら写真を撮る。きっと、お姉ちゃんのソフィーに見せびらかすんやろね。

 今風の借家やら分譲住宅がならんでる街中に、忽然と茅葺のお屋敷。

 けっこうな規模で、敷地は幼稚園ほどやけど、母屋はお寺の本堂なみの大きさ。

 桜林堂

 控え目に屋号の看板がかかってる。

「あたま打ちそう……」

 入り口は大扉の脇の小さな通用口(?)から。

 無事に入ると、昔ながらの三和土(たたき)の土間。へっついさんやらおくどさんが残ってて、天井の木組は丸出しで、煙出しから、仄かにお日様の光が入ってくる。

「松花堂弁当注文しといたさかい、ゆっくりしよ」

 みんなでお座敷の席に収まる。

「ありがとう、テイ兄ちゃん、お昼までおごってもろて」

「「「ありがとうございます」」」

「ええ、ええ、言い出しべえはボクやねんしなあ」

 そうなんよ、うちも留美ちゃんも仕事がオフ。テイ兄ちゃんも仏教会の会合が延期になって「散策部のみんな空いてるかなあ?」て言いだして、急に春以来お休みになってた部活ができることになった。

 台風一過で、ひところの暑さもマシになって「穴場に行こう!」と、八尾の条里制跡を見に来ることになった。

「条里制って、都が碁盤目状になってることやと思てた」

「それは条坊制と云うんだよ、京都や奈良の区割りには残ってるよ。でも、条里制の跡が、こんな大阪の都心近くに残ってるというのはすごい事だと思う」

「いや、ちゃんと現役の農地なんだから、跡じゃなくて現役そのものだぞ。1000年以上昔の田んぼが、そのまんま田んぼで残ってるというのはすごいことだぞ!」

「そうだよね、駐車場貸していただいた神社も式内社だったし」

「シキナイシャ?」

「えと、延喜式に記載のある神社なんだよ」

「エンギシキ?」

 うちらの会話も、だいぶレベルがあがってきたけど、うちは微妙に遅れてる(^_^;)

「905年に作られた律令の施行細則、つまり、補足説明だな。その中に、全国の大事にすべき神社の一覧があって3000近い神社が登録されているんだ」

「す、すごい」

 式内社もすごいけど、それをスラスラ説明できるソニーは、もっとすごい。

「この桜林堂も、三百年前の庄屋屋敷を使ってるんや。ただ文化財として保護してるより、じっさいに使ったほうが傷めへんし、維持管理の費用も出るさかいなあ」

「うちのお寺もそのくらいやろ、うちもなんかやったら儲かるんやない?」

「お寺で商売やったら、そのぶん税金かかねんぞ。それに、三百年程度のお寺なんか掃いて捨てるほどある。さくらが思うほど値打ちは無い」

「あはは、そうなんや」

「ところで、自分ら、進路はどないすんねん? もう二学期やさかい、心づもりせなあかんねやろ?」

「自分は留学なので、元の勤務に戻ります」

「ああ、ソフィーは現役の軍人さんやったなあ、伍長やったっけ?」

「今月から二等軍曹になりました」

「わ、下士官だ!」

 メグリンが幹部自衛官の娘らしく感動する。

「いや、将来はソフィーといっしょに王室護衛の任務に就くので将校の階級が必要なんです。そのための準備です」

「お姉さんは、どないしてんのん?」

「あ、はい、中尉に昇進して、王立民俗学学校の教官をやっています」

「王立民俗学学校?」

「はい、実質は魔法学校なんですが……」

 説明しながらうちの顔を見るソニー『こんなことも言ってないのか?』という気持ちが籠ってる。

 しゃあないやんか、このごろ声優と学校の掛け持ちで忙しいねんもん。

「古閑さんは?」

「はい……自衛隊に入ります」

「ああ、やっぱりなあ。親子二代の自衛隊やなあ、がんばってな(^▽^)」

「はい、ありがとうございます」

「留美ちゃんは?」

「大学に行きます」

「モデルと役者の道は?」

「はい、いまのお仕事はちゃんと勤め上げて、それが終わったら学生に専念します」

「うん、偉いなあ、ちゃんと見通し持ってて……さくらは?」

「え、あ……」

「おまちどおさまでした、松花堂弁当5つお持ちしましたぁ(^▽^)」

 ラッキー(^▲^;)

 ちょうどウェイトレスのおねえちゃんが注文を持ってきてくれて、言わんですんだ。

 

 せやさかい  第一期 完      

 

            一部内容を『やくもあやかし物語・2』に引き継ぎますご愛読いただければ幸いです

 

☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら      この物語の主人公  聖真理愛女学院高校二年生
  • 酒井 歌        さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
  • 酒井 諦観       さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦念       さくらの伯父 諦一と詩の父
  • 酒井 諦一       さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
  • 酒井 詩(ことは)   さくらの従姉 聖真理愛学院大学三年生 ヤマセンブルグに留学中 妖精のバンシー、リャナンシーが友だち 愛称コットン
  • 酒井 美保       さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
  • 榊原 留美       さくらと同居 中一からの同級生 
  • 夕陽丘頼子       さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 愛称リッチ
  • ソフィー        ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍中尉
  • ソニー         ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍二等軍曹
  • 月島さやか       中二~高一までさくらの担任の先生
  • 古閑 巡里(めぐり)  さくらと留美のクラスメート メグリン
  • 百武真鈴(田中真央)  高校生声優の生徒会長
  • 女王陛下        頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
  • 江戸川アニメの関係者  宗武真(監督) 江原(作監) 武者走(脚本) 宮田(制作進行) 
  • 声優の人たち      花園あやめ 吉永百合子 小早川凜太郎  
  • さくらの周辺の人たち  ハンゼイのマスター(昴・あきら) 瑞穂(マスターの奥さん) 小鳥遊先生(2年3組の担任) 田中米子(米屋のお婆ちゃん) 瀬川(女性警官)
  •   

 

 

 

 

 

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RE・トモコパラドクス・13『幸福の黄色いハンカチ』

2023-09-10 07:01:13 | 小説7

RE・友子パラドクス

13『幸福の黄色いハンカチ』 

 

 

 一瞬、自分たちと同じ義体なのではと友子は思った……。

 絶やさぬ笑顔、人の気をそらさぬ話し方。アイドルサイボーグという言葉が頭をよぎったが、そんな人工的な言葉では表せないオーラが二人にはあった。

 

 二人とは、坂東はるかと仲まどかの二人である。

 

 坂東はるかは、家庭事情で、この乃木坂学院を二年で中退している。大阪の府立高校に転校し、いろいろ苦労したようだが、そのことで、十九歳とは思えない大人びた優しさと魅力がある女優だった。

 仲まどかは、この春に乃木坂を卒業したばかりだが、それまで都下有数の伝統的大規模校であった乃木坂の演劇部にいろいろと事故が重なり、わずか三人に減った演劇部を立て直した。そして、その年の都大会で最優秀賞を獲得、全国大会でも優秀賞を取った。

 友子たち現役の演劇部にとっては中興の祖。今でも、部室の真ん中に二人の写真が掲げられているほどだ。

 で、その時の顧問が担任のノッキーこと柚木先生で、事あるごとに二人の思い出を語り、友子たち三人の演劇部員に無邪気な圧力をかけてきた。

 まどかも、はるかの『春の足音』という連ドラにエキストラ出演したことがきっかけになり、まどかと同じNOZOMIプロに所属。全国大会で最優秀が取れなかったのは、彼女が、もうプロと見なされたからだという。

 

 二人はクラスの授業見学……のはずだったが、みんなの気が散って授業どころでは無くなり、二人を囲んでのお喋り会になってしまった。

「はるかさん。どうしたら、そんなにキレイでいられるんですか(#^_^#)!?」

 蛸ウィンナーの妙子が、まっさきに聞いた。

 瞬間二人の頭に、この数年間の出来事が駆けめぐったのが分かった。親の離婚、突然な転校、自然な流れの中での演劇部への入部、いろんな挫折。
 はるかのことは『はるか 真田山学院高校演劇部物語』まどかさんのことは『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』に書かれている通りだと分かったが、やはり生のエモーションに接すると刺激が違う。

「う~ん、正直言って、わたしもまどかも、進んでこの道に入ったんじゃないんです」

「そう、うちの事務所には、白羽さんて人タラシが居て、二人とも、要は乗せられちゃった……かな?」

 まどかさんが、あっさり片づけようとすると、はるかが付け加えた。

「自分で言うのもなんだけど、わたしもまどかも、目立つ方じゃないけど、真っ直ぐだったように思います。それにオメデタイ(笑)」

「あの話なんか、いいんじゃない?」

 まどかが振る。

「そうね」

 そう言うと、はるかはペットボトルのお茶を半分飲んで、教卓の上に置いた。

「この状態をどう見るかです」

 みんな「?」であった。

「もう半分しか残っていない。と見るか、まだ半分残っているかと見るか」

「わたしたちは、共通していました」

「「まだ半分残っている(^▽^)!」」

 アハハハハハハハハ(((((´□`))))))

 二人がハモって、そして教室のみんなも笑った。

「あと、根拠のない自信ですね」

「最初から自信あったんですか!?」

 麻衣が手を挙げて聞いた。

「そんなもんなかったですよ」

「ただ、半分残っていると思える、お気楽さだけ」

「それを、根拠のない自信にしちゃうんだから、この世界は怖いです(笑)」

 全くの思いつきで、はるかは黒板に図を書いた


①  >      <

②   <    > 


「この外向きと内向きで区切られた空間ってか、その間に線を引いたらどっちが長く見えますか。直感で!」

「「はい、手を挙げて(^▽^)/」」

 二人の呼吸は絶妙だった。圧倒的に①が多かった。ただ一人目立ちたがりの自称「イケメン」の亮介だけが②に手を挙げた。

「答は、両方とも同じなんです。ちょっと定規貸してもらえる?」

 亮介が高々と差し出したが、はるかは友子の五メートルのスケール(部活用に持っていた)を取り上げた。

「徳永君、ごめん。長い方がいいから」

 亮介のそれは三十センチしかなかった(^_^;)。

「まどか、そっち持って、いくら?」

「一メートル三十センチ……かな、下もいっしょ」

「ううん、下の方が二ミリ長くない?」

「ほんとだ」

「おめでとう、徳永君正解!」

「やったー!」

 亮介が無邪気に喜んだ。

「でも、それって誤差の範囲じゃないですか」

 妙子が混ぜっ返す。

「……ともいうそうです(笑)」

「これが根拠のない自信です。プロディユーサーなんかは、こんなところを見ています。むろんプロになれば、他に役者としての勉強は必要ですけど、基本は、このカッコをいかに強力にしていくだけですね」

「じゃ、実験。ちょっと教科書貸してくれる」

 はるかは、中島敦の『山月記』を乙女の恋する心で読んだ。

 

 隴西の李徴は博學才穎……天寶の末年……若くして名を虎榜に連ね、ついで江南尉に……(ღ*ˇᴗˇ*)

 

 あんなに、カクカクしてコムツカシイ漢文調の文章を、恋のラブストーリーのようにしてしまった。

 次にまどかが読むと、まるでコメディーの描写のようになり、みんな大いに笑った。

 驚いたのは、この楽しい一時間はまるっきりアドリブで、その場の雰囲気で話題を進めていることだった。友子でも、一分先の二人の心を読むことができなかった。

 

 そして、授業との最大の違いは、みんなが楽しかったこと。

 

 そのあと、講堂で生徒全員を集めて講演会が開かれた、驚いたことに、ここでも二人の心は、ほとんど読めなかった。みんなと、その場その場での会話を楽しんでいる。

 お昼になって、迎えの車が来て、いったん乗ったはるかが降りてきた。

 

「忘れるとこだった。これ、部室に掛けといてくれる!」

 

 渡されたのは、黄色いハンカチ。これは読めた。二人の自伝的ラノベに出てくる幸福の黄色いハンカチだった。

 

 

☆彡 主な登場人物

  • 鈴木 友子        30年前の事故で義体化された見かけは15歳の美少女
  • 鈴木 一郎        友子の弟で父親
  • 鈴木 春奈        一郎の妻
  • 白井 紀香        2年B組 演劇部部長 友子の宿敵
  • 大佛  聡        クラスの委員長
  • 王  梨香        クラスメート
  • 長峰 純子        クラスメート
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