大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

鳴かぬなら 信長転生記 143『信長版西遊記・羅刹女の岩山・1』

2023-09-18 12:56:13 | ノベル2

ら 信長転生記

143『信長版西遊・羅刹女の岩山・1信長 

 

 

 モンモンモンモン モンモンモンモン モンモンモンモン……

 

 岩に木霊してなにやら聞こえてくる。

 くぐもった響きは過行く夏を怨みながら最後の力を振り絞る蝉のようでもあり、地の底で繰り言を呟く土地神たちの群れのようでもあり、地底の風穴が大地の血流の響きを拾っているようでもある。

「……あれは念仏の響きだウキ」

 親父(織田信秀)の葬儀に乱入した時、菩提寺の本堂に満ち満ちていたクソ坊主どもの読経に似ている。

 元々は漢語である経を、そのまま音だけ拾ってモンモン唱える読経など、参列者はおろか当の坊主どもも意味など解してはおらん。

 それを、さも有難そうに唱える坊主どもも、それに和する参列者の有象無象たちも反吐が出るほど嫌いだった。

 リチャード三世も真っ青というような権謀を巡らし、領民や家臣どもから恐れられながらも尾張半国しか取れなかった親父にも腹が立った。

 ムカムカして焼香壇に進むと、想いが溢れ、香を手づかみにして位牌に向かってドバドバ投げつけた。

「さらわれた坊主たちに違いないッパ」

「様子を見に行こうブヒ!」

「ウキ!」

 

 岩陰を拾いながら風穴の奥に進む。

 

「あれだッパ!」

 沙悟浄が指差す穴を覗くと、大勢の坊主が特大の平鍋に半身を漬けられモンモン経を唱えているのが見えた。

 鍋の中央に薬草や香草が積み上げられたところがあって、我らが三蔵法師がニコニコと経を唱えている。

 

 ボ!

 

 音がしたかと思うと、鍋の周囲に陽炎が立つ。

「あ、いま火をつけたブヒ!」

「とろ火だ、じっくり煮込んでエッセンスを搾り取ろうという算段だッパ!」

「くそ、玉門関で助けてやったというのに、無防備すぎるぞ坊主どもブヒ!」

「俺たちも三蔵法師を取られているんだ、文句は言えないウキ! まずは、鍋の火を止めるウキ!」

「「よし!」」

 穴を飛び降り、鍋の周囲を駆け巡る。

「どこにも元栓は無いッパ!」

「これは妖術鍋ブヒ!」

「くそ、元凶を倒さなければ停められないのかウキ! 羅刹女の居所を突き止めるウキ!」

「この岩山のどこかに居るブヒ!」

「やみくもに探しては鍋が煮えてしまうウキ、なにか目星、ウキ!」

「そうだ、いまは牛魔王が来てるブヒ、牛魔王はデカイから目立つブヒ」

「いや、今は人の形だッパ」

「じゃぁ、しらみつブヒ!?」

 羅刹女の岩山は全山が軽石のように無数の岩室がある、探すとなると手間取りそうだ。

「いや待て、人の姿ということは……お楽しみに至る可能性が高い、いや、真っ最中かもしれんッパ」

「ブヒ、お愉しみ(n*´ω`*n)!?」

「牛魔王の本性は黒牛、牛の体温は40度もあるし体臭がきつい、ヒト化してましにはなっているだろうけど、狭い岩室、きっと換気をしているに違いない。臭いと温度を探るッパ」

「よし、ウキ!」

 坊主たちの鍋も少しずつ温度が上がって、そこからも熱が放散され始め、そこの放熱と区別がつきにくくなる。いや、うかうかしていては、三蔵法師も坊主どもと諸共に煮上がってしまう! 時間の問題だ! 時間の勝負だ!

 俺たちは、岩山を駆けまわって羅刹女の岩室を探した!

 

 

☆彡 主な登場人物

  • 織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生  ニイ(三国志での偽名)
  • 熱田 敦子(熱田大神) あっちゃん 信長担当の尾張の神さま
  • 織田 市        信長の妹  シイ(三国志での偽名)
  • 平手 美姫       信長のクラス担任
  • 武田 信玄       同級生
  • 上杉 謙信       同級生
  • 古田 織部       茶華道部の眼鏡っ子  越後屋(三国志での偽名)
  • 宮本 武蔵       孤高の剣聖
  • 二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま
  • 雑賀 孫一       クラスメート
  • 松平 元康       クラスメート 後の徳川家康
  • リュドミラ       旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ  劉度(三国志での偽名)
  • 今川 義元       学院生徒会長
  • 坂本 乙女       学園生徒会長
  • 曹茶姫         魏の女将軍 部下(備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
  • 諸葛茶孔明       漢の軍師兼丞相
  • 大橋紅茶妃       呉の孫策妃 コウちゃん
  • 孫権          呉王孫策の弟 大橋の義弟
  • 天照大神        御山の御祭神  弟に素戔嗚  部下に思金神(オモイカネノカミ) 一言主

 

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RE・トモコパラドクス・21『あの水島さんの弟!?』

2023-09-18 06:57:59 | 小説7

RE・友子パラドクス

21『あの水島さんの弟!?』 

 

 

 二人が不審げに戻ってくると、そいつはホコリを払って、やっと立ち上がるところだった。

 そいつは、戦前の旧制中学の制服を着ている。起き抜けみたいに目をしばたたかせ、キョロキョロすると友子と紀香の顔を交互に見た。

「君たち、僕のこと見えてる……?」

「「うん」」

「キミは、残留思念が実体化したものだね」

「ぼく、残留思念なのかい?」

「普通は幽霊っていうやつ、でしょ先輩?」

「うん、幽霊ってのは、本人は自覚してないだろうけど、一種の残留思念なのさ」

 紀香は、ロマンのカケラもない話をし始めた。

「残留思念……?」

「オナラしたら、臭い残るでしょ。あれみたいなもん」

「オ、オナラ……」

「……じゃ、かわいそうか。写真撮るでしょ。ストロボ焚いてズボッって。そしたら、しばらく光が目に残るでしょ」

「もうちょっと、ロマンチックにさ……」

「むつかしいなぁ……好きな女の子ができたとするじゃん。そしたら、寝ても覚めても、その子の姿が目について離れない……これくらいでいい? わたしの言語サーキットって、あんまり文学的にできてないの。ごめん」

「じゃ……僕って、ただの幻( ꒪⌓꒪)!?」

「そいうこと」

 しょげてきた幽霊さんに、友子がフォローに入った。

「あのう、あなたの時代でも、電話ってあったじゃない。あれって不思議でしょ。何百キロって離れたところから話しても、耳元でしゃべってるみたいでしょ。それに近いかな?」

「あ……オナラよりましかな?」

 友子は思いついて、スマホを出した。そして五目並べの無料ゲームをダウンロ-ドした。

「やってみて、ここの画面にタッチするだけでいいから」

「え……すごい。僕五目並べには自信あるんだけど……あ、負けちゃった。これ、誰かがどこかで操作してんの?」

 幽霊さんは、スマホをひっくり返したり、グッと目に近づけて見つめたりした。

「それ、中に五目並べに関する思考力が入ってるんです。これ、ちょっと近い?」

「人工頭脳?」

「まあね」

「こんなのもあるよ」

 紀香が、タブレットを取りだした。

「なんですか、この厚めの下敷きみたいなのは?」

「まあ、いいから。出会いって字にタッチしてごらんよ」

「え……うわ!」

 幽霊さんが腰を抜かした。

 タブレットの上には1/2サイズの女の子のホログラム映像が現れていた。

『わたしでよければ……お付き合いしていただけますか。名前は紀香っていいます♪』

「もっとタッチしてごらんなさいよ」

 タブレットの上には、次々と美少女が現れては幽霊さんを誘惑していく。

「紀香、キャラにお友だちの名前付けるのやめてくれる」

「ごちゃごちゃ言わないの」

「それに、紀香って子と、友子って子と、ずいぶん差があるように感じるんだけど」

「差を付けたんだもん」

 あまりの正直さに、友子はズッコケて怒る気もしない。

「それに、それに、これって現代の技術にないもんだし!」

「まあ、いいじゃん。ほんのお遊びなんだから……え、なんで、そいつ選ぶの!?」

 幽霊さんは、友子を選んでいた。

「飾りっ気がなくて、僕と気が合いそうで……」

「あ、そ(`з´)!」

 紀香はむくれたが、幽霊は落ち着きを取り戻してきてホログラムに語り掛ける。

「自分は、水島昭二っていいます。昭和四年生まれ。兄が昭一、もう成仏しちゃったけど。あ、僕幽霊なんだけど構わないかな(#^0^#)」

『あ、わたし、幽霊さんて大好きです。生きてる人間みたいにウザイこと言わないし。いつでも、お相手してくださいそうで。あ、あの……』

「なんだい?」

 幽霊さんは、あまり身を乗り出しすぎて、ホログラムの友子と被ってしまった。まるでCGのバグだ。

『ハハ、お互い実態がないから被ってしまいますね』

「ああ、ごめん」

 水島クンは、頬を染めて後ずさった。

『お名前、なんて読んだらいいですか。水島さん? 昭二さん? あ、ハンドルネームでもいいですよ』

「ハンドルネーム?」

『あ、仮名のこと。バンツマとかエノケンとかさ』

「僕は、堂々と本名だ!」

『じゃ、水島さん』

「あ、それじゃ、兄貴と区別つかなくなるから、昭二で」

『じゃ、昭二さん……』

 

 そこで、紀香はタブレットのスイッチを切った。

 

「あ、友子さん……」

「分かった? 原理的には、このタブレットの子と水島クンは同じなの。タブレットの友子は人工頭脳が作った残像みたいなもの。あなたはこの校舎や時代の空気に焼き付いた残留思念なの。でも、ちゃんとした自意識も判断力もあるけどね。それを世間では幽霊という。分かった!?」

「分かった……かな、なんとなく……でも、君たちも普通の人間じゃないね」

 そこからの説明は長くなったが、どうやら水島クンは分かってくれたようだ。非常に洞察力と理解力に優れている。旧制中学は偉い!

「あなたって、ひょっとしたら『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』に出てくる水島さんの弟さん?」

「その物語は知らないけど、水島昭一なら、一つ上の兄貴だよ。そんな物語があるんなら読んでみたいな!」

 水島クンが目を輝かせた。

「あ、今は手許にないの。電子書籍にもなっていないし、そうだ!」

 友子は、紀香のタブレットをひったくり、アマゾンのサイトを出した。

「よかった、『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』は一部在庫有りだって、注文しとくね」

「ちょ、ちょっと」

「これも縁じゃん。半分ずつもって、水島クンにプレゼント」

 

 そう決めたとき、談話室のドアを開けて、三者懇談の終わった妙子が入ってきた。

 

「え、どうかした、二人とも?」

 どうやら、妙子には、水島クンの姿は見えないようだ。

 友子は、謎であった『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』の水島さんの名前が分かって、大満足であった。

 

☆彡 主な登場人物

  • 鈴木 友子        30年前の事故で義体化された見かけは15歳の美少女
  • 鈴木 一郎        友子の弟で父親
  • 鈴木 春奈        一郎の妻
  • 白井 紀香        2年B組 演劇部部長 友子の宿敵
  • 大佛  聡        クラスの委員長
  • 王  梨香        クラスメート
  • 長峰 純子        クラスメート
  • 麻子           クラスメート
  • 妙子           クラスメート 演劇部
  • 水島 昭二        談話室の幽霊

 

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