大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

くノ一その一今のうち・75『航空便と朝食の席』

2023-09-14 10:55:49 | 小説3

くノ一その一今のうち

75『航空便と朝食の席』そのいち 

 

 

 航空便は卒業証書のような筒状で、封を切ると、勢いよく丸まったのが飛び出し、空中でシャキンとした。

 

「ああぁ、やっと楽になったぁ!」

 

 プルンと音を立てて真っ直ぐに伸びたのは、帝国キネマのえいちゃんだった!

「え、えいちゃん!?」

「はい、帝国キネマの長瀬映子、ただいま到着しました('◇')ゞ!」

「え、え、なんで?」

「所長から出向を命ぜられました!」

「出向?」

「はい、この撮影に限りお手伝いするように申しつかって参りました」

「えいちゃんて、大阪限定だと思ってた」

「はい、本来の所属は昭和5年の帝キネで、時代を超えた行動範囲も京阪神に限られているんですが、所長が裏技をつかってくださったんです」

「うらわざ?」

「はい、あて名書きのスタンプを見てください」

「スタンプ……」

 空になった筒のあて名書きとスタンプを見てビックリした!

 

 発送は長瀬郵便局、宛名は高原の国王宮、そして配達日時は今日を指定してある。

 そしてそして、もっとビックリしたのは、差し出された日付。

 昭和5年9月1日

「え、93年も留め置きだったの!?」

「あはは、だから、もうあちこち凝っちゃって。あとでお布団の下に入れて伸ばしていただけると嬉しいです(^_^;)」

「わかったわ、でも、帰る時はどうすんの? あ、もちろん、このまま21世紀に居てもらってもいいんだけど」

「その時は、配達日を昭和5年9月2日にして郵便局に出してください。書留で」

「え、あ、うん分かった」

「お願いしま……キャ!?」

 クルン

 93年間のまるめ癖で、安心したとたんに、元の丸まった状態に戻ってしまった。

 

 アデリア王女に頼んでスチームした上で一晩ガラスに挟んでもらって、本格的に伸ばしてもらった(^_^;)。

 

「ここでの仕事は二つだ」

 撮影隊だけの朝食の席で三村先生が服部半三の顔で言う。

 ただ、まあやだけは王妃がアデリヤ王女共々自室ででの朝食に招いているので、ここには居ない。

「首都に留まってロケハンと撮影の準備に入る者と、西部に向かって敵と戦う者の二組だ」

 なんで、二組に分かれるんだろう?

「我々は、表面は撮影隊だが、実質は木下豊臣家とその傘下に入ってしまった草原の国との戦闘部隊だ」

 うん、それくらいは分かってる。

「これは忍の戦いで表に出ることはないし出すべきでもない。しかし、じつは世界中が注目している戦いなのだ。だから、撮影隊と名乗ってここに我々がいることは、関係国の中枢や諜報機関は掴んでいる」

「それで……」

 徳川社長が、あとを続ける。

「鈴木豊臣家が全力を挙げて、この戦いに臨んでいることを撮影隊である我々が、首都とその周辺で世界に見せつけ、かつ作戦指揮の実質を握る。戦闘部隊は……」

「自分が言います」

 百地社長が身を乗り出す。こんな真剣な社長を見るのは初めてだ。

「桔梗、そのいち、ミヒャエルの三名で敵の本拠地に入ってもらう。目的は、敵の戦意を挫くこと。必要に応じて本部の我々から加勢の人員、あるいは部隊を派遣する。桔梗組の出発はヒトサンマルマル……」

 締めくくろうと、三村、いや服部課長代理が口を開いた時、ダイニングのドアが元気に開いた。

 バァーーン

「このアデリアを忘れてもらっては困るぞ!」

 

 ダイニングのみんなが驚く中、ズカズカと入ってきたアデリア王女は、テーブルの上座にドッカと腰を下ろした。

 

 みんな驚いたりヤレヤレという顔をしたり。

 

 でも、これで予定通りなんだろう。

 もともと、こんな大事な話、忍び語りもせずにやるわけがない。

 ちょっとムカつくのは、このヤラセも含めてわたしには何も伝えられていなかったこと。

 

 まあ、徳川の下請けの百地のアルバイト、仕方がないっちゃ仕方がないんだけど。

 

 

☆彡 主な登場人物

  • 風間 その        高校三年生 世襲名・そのいち
  • 風間 その子       風間そのの祖母(下忍)
  • 百地三太夫        百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
  • 鈴木 まあや       アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
  • 忍冬堂          百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
  • 徳川社長         徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
  • 服部課長代理       服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一
  • 十五代目猿飛佐助     もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者
  • 多田さん         照明技師で猿飛佐助の手下
  • 杵間さん         帝国キネマ撮影所所長
  • えいちゃん        長瀬映子 帝国キネマでの付き人兼助手
  • 豊臣秀長         豊国神社に祀られている秀吉の弟
  • ミッヒ(ミヒャエル)   ドイツのランツクネヒト(傭兵)
  • アデリヤ         高原の国第一王女
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RE・トモコパラドクス・17『対決、紀香VS友子!』

2023-09-14 07:24:32 | 小説7

RE・友子パラドクス

17『対決、紀香VS友子!』 

 


〔ここまでのストーリー〕

 友子の娘が極東戦争を起こすという説が有力になった未来。三十年前、その未来からの特殊部隊によって、友子は一度殺される。しかしこれに抵抗する勢力により義体として一命を取り留めるが、未来世界の内紛や、資材不足により、義体化が完了したのは三十年先の現代。やむなく友子は弟一郎の娘として社会に適応する「え、お姉ちゃんが、オレの娘!?」 そう、友子は十六歳。女子高生としてのパラドクスに満ちた生活が始まった!

 

 シュバーーーーーン!!

 
 足許でプラズマ弾が炸裂した!

 すんでの所で友子はフロア350までジャンプ。

 しかし、すぐに鉄骨をキックして隅田川に飛び込んだ。将来東京タワーと並んで国宝に指定されるスカイツリーを傷つけることはできない。

 川面を超低空で飛んだ友子は、ほんの二秒間だけ、紀香のロックオンを外す事が出来た。

 吾妻橋、駒形橋、厩橋、蔵前橋と、衝撃波を出す寸前の1230㎞でくぐり抜けたが、国技館前で待機していた国防軍のレーダーにひっかかった。

 国防軍のレーダーや統合幕僚部のコンピューターは、紀香がとっくにハッキングしている。国技館前の対地対空兼用ミサイル通称タカミサカリは武者震いをして発射され、両国橋の手前で、友子の後ろ十メートルのところに着弾した。

 ドォォォォン!  

 この爆風で、友子は制服を吹き飛ばされアラレモナイ姿になったが、二発目は意表をついて東に曲がり、タカミサカリは、虚しくNTT浜町ビル前の護岸を破壊しただけだった。

 京葉道路を東に進むと、交差している清澄通りから、吉野家の前に5両、りそな銀行前に6両の10式戦車が並び、一斉に榴弾の飽和攻撃をしかけてきた。

 ヤバイ、粘着榴弾だ!

 あれが当たっても、友子の装甲はぶち破れないが、装甲内部が剥離破壊され、数パーセントの確率で、義体内部が破壊される。気づいたのは交差点から二百メートルの真砂寿司の前だったが、行動を起こしたのは、交差点手前の本所警察の前だった。

 友子にとってはアナログな武器だが、この至近距離で当たれば無事では済まない。かといって戦車を破壊することは出来ない。一両につき三名の乗員、殲滅すれば33名の戦死者を出してしまう。

 両国のマンション前で、両腕のプラズマ砲を空砲にして発射。その反動で、ほとんど九十度の角度で上昇。腕の良いフラッグ車の一弾が当たりそうになったが、友子は、その粘着榴弾を角度をつけて蹴り飛ばした。
 しかし粘着榴弾というのは、避弾形状の装甲でもぶち破れるように先端が丸くできており、友子のローファーの靴底で炸裂した。靴底も装甲になってはいるが内側で剥離破壊が起こり、右脚の生体組織を傷つけ、爆風でタンクトップを引きちぎり、ブラの右肩のストラップを切ってしまった。

 友子は、思い切って東京湾で勝負をつけようとした。

 国防軍の兵士500と武器1200を把握した。その気になれば十秒ほどで全滅させられる。しかし、友子を縛る公選規程はは自衛隊時代の国防軍よりも厳しく、この時代の人間を殺すことはできない。

 まだか(;'∀')!?

 友子は焦った。国防軍の統合幕僚本部のコンピューターにウィルスを送り攪乱しようと、適正なウィルスを秒速三千件で検索し組み替えている。ウィルスを送ることは、容易いが、コンピューターのプログラムそのものを壊すことはできない。周辺諸国の警戒にあたる国防軍の目を潰すことは出来ないのだ。

 ピーピーピー

 やがて横須賀のイージス艦にロックされた。しかし、せいぜいトマホーク。簡単にジャミングできると思った……。

「うそ、ジャミングが効かない!」

 友子は、房総半島を迂回するようにして、太平洋に出ようとした。

 しかし、速度を500ノットまで上げたところで、トマホークに追いつかれてしまった。

 

 パーーーーーーーーーーーーン!

 

 房総沖にきれいな花火のような閃光が走った。

 友子は、ブラのストラップはおろか、生体組織の全部を持って行かれ、完全なスケルトンになった。

 (⊙д⊙)!!?

 気づくと、紀香が至近距離で、プラズマ砲を構えている。

「もう逃げられないわよ、友子」

 紀香がニヤリと笑う。


 クソ!


 友子は、万分の一の可能性にかけて紀香に抱き付いた!

「それは禁じ手だわよ!」

「裏技と呼んでもらいたいわね!」

 そう言って、友子はコントローラーを投げ出した。


 紀香は、悔しそうに固まっていた。


 モニターには、双方生存率二十パーセント、ドロー……と出ていた。

「まあ、これで、データがとれたからいいじゃん」

「ま、まあね……」

 紀香は、やっと汗にまみれたコントローラーを手放した。

「妙子を、法律と歴史に詳しくしてやったツケだもん。仕方ない」

 昨日の現社のテストで、妙子はパニックになり、救急車で病院に担ぎ込まれた。文章としても、理論としても矛盾だらけの日本国憲法の前文と第九条を書きなさいという問題が原因である。

 おかげで、妙子は二十年後内閣参与になったが、さらにその二十年後、敵にもそれに見合う猛者が現れるハメになり、当時、もうカビの生えた『友子脅威論』を持ち出して、未来から紀香に進捗状況の報告を求めてきたのである。

 まさか、本当に戦うわけにはいかないので、プレステ5を部室に持ち込んで、ゲームのアバターを自分たちにして、模擬戦をやってデータをとったのである。街なかでの戦闘を極力さけたのも、後の時代に痕跡や矛盾を残さないためである。

「しかし、よく寝るね、こいつ」

 モニターに映し出された妙子は、自分の部屋で、鼾をかいて爆睡していた。

「今日の数学は、自力でがんばったもんね」


「さ、あたしたちも行こうか。駅前のタイ焼き屋、テイクアウトのパンケーキ屋さんになったみたいだから」

「さっそくデータ収集にいくか!?」

 いそいそと、駅前を目指すカタキ同士であった……。

 

☆彡 主な登場人物

  • 鈴木 友子        30年前の事故で義体化された見かけは15歳の美少女
  • 鈴木 一郎        友子の弟で父親
  • 鈴木 春奈        一郎の妻
  • 白井 紀香        2年B組 演劇部部長 友子の宿敵
  • 大佛  聡        クラスの委員長
  • 王  梨香        クラスメート
  • 長峰 純子        クラスメート
  • 麻子           クラスメート
  • 妙子           クラスメート 演劇部

 

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