鳴かぬなら 信長転生記
ドオオオオオオオオオオオン!! グラグラグラグラグラグラグラグラ!!
天地がひっくり返ったような衝撃に馬ごと跳ね上げられ、着地したかと思うと、煎り豆のように激しく揺すられる二人の相棒。
ブヒヒイイイイイイ! カカッパパパパパパパア!
ダダダダダダダダ……………ぶ……っかぁ!?
「だ丈夫か!?」と叫んだつもりが、こちらもきちんとした言葉にはならない。
どころか、もうもうとした砂煙に、まともに目も開けていられない。
―― イライラするねえ! こんなんじゃ目を開けていられないだろうが! ――
はるか上空で声がして、俺は寒気がした。
この寒気は予感だ、同時に叫んだ。
「ウキイイイイイイ!!」
咄嗟に出た叫びは猿語だ、意味は「ヒラメみたいに伏せろ!」なんだが通じたか?
この寒気は、近江の千草越えの折りに杉谷善寿坊に狙撃される直前に感じた寒気以上だ、とても禍々しいものが来るぞ!
ビョオオオオオオオオオオオオオ!!
平手の爺が教えてくれた、過ぐる元寇の折りに吹き渡った神風の百倍はあろうかという大烈風!
こんな風が吹いては、もう、自分の指の先も見えなくなるだろうと思った。
ところが、大烈風は器用に砂煙だけを吹き飛ばし、あたりを元日の朝のようにクリアーにした。
二人は大丈夫かと思うと、砂に四本の脚……馬の脚だ。
そうか、八戒と沙悟浄は馬ごと逆さまに落ちて埋まってしまったのか!
助けなければ……と、思ったら、足の周囲がゴソゴソ動いて、馬ぐるみひっくり返って二人が姿を現した。
「ひどい目に遭ったブヒー!」
「砂まみれッパ、あ、悟空も無事だったッパ?」
「よかったブヒ……あれは、ブヒ?」
落ちてきた巨大なもののその上に、ヒラヒラと舞っている天女のようなやつがいる。
「ようやく気が付いたかい、間抜けなやつらだ。やっぱり、間抜けなおまえたちに、この三蔵法師はもったいなさすぎるねえ」
「あ、お師匠さまだブヒ!」
巨大なものからひらひら浮いてくるものがあると思ったら、天女の小脇に挟まれニコニコと合掌したままの三蔵法師。
「あれを取られちゃ、まずいッパ!」
オブジェと気づかれたらゴワサンだ。
「そんなに狼狽えるんじゃないよ。この三蔵は、他の坊主たちといっしょに煮込んで、この羅刹女さま専用の美容液にしてやるんだからね。クソ坊主どもにどんな効き目もあるもんかと思っていたが、玉門関で黄風大王をぶちのめした力はなかなかのもんだ。見直してもらってありがたく思いな。さあ、あとは頼んだよ!」
誰に言ってる?
思ったとたんに山が動いて、気が削がれる。
グモオオオオオオオオオオオオオオ!
山が吠えた!?
『ここからは、このわしが相手だあ!』
「「「山が口をきいたウキ! ブヒ! ッパ!」」」
山の頂上がグルッとまわったかと思うと、それは巨大すぎる牛の頭だった!
☆彡 主な登場人物
- 織田 信長 本能寺の変で討ち取られて転生 ニイ(三国志での偽名)
- 熱田 敦子(熱田大神) あっちゃん 信長担当の尾張の神さま
- 織田 市 信長の妹 シイ(三国志での偽名)
- 平手 美姫 信長のクラス担任
- 武田 信玄 同級生
- 上杉 謙信 同級生
- 古田 織部 茶華道部の眼鏡っ子 越後屋(三国志での偽名)
- 宮本 武蔵 孤高の剣聖
- 二宮 忠八 市の友だち 紙飛行機の神さま
- 雑賀 孫一 クラスメート
- 松平 元康 クラスメート 後の徳川家康
- リュドミラ 旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ 劉度(三国志での偽名)
- 今川 義元 学院生徒会長
- 坂本 乙女 学園生徒会長
- 曹茶姫 魏の女将軍 部下(備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
- 諸葛茶孔明 漢の軍師兼丞相
- 大橋紅茶妃 呉の孫策妃 コウちゃん
- 孫権 呉王孫策の弟 大橋の義弟
- 天照大神 御山の御祭神 弟に素戔嗚 部下に思金神(オモイカネノカミ) 一言主