大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

くノ一その一今のうち・74『王妃と会食』

2023-09-06 11:08:37 | 小説3

くノ一その一今のうち

74『王妃と会食』そのいち 

 

 

 会食も半ばを過ぎて王妃様は、おもしろい話をされた。

 

「ハワイの王さまが日本のプリンセスを王子の嫁を迎えようとされたのはご存知ですか?」

 わたしとまあやは初耳で、大人たちは――ああ、あのお話か――という顔をしている。

「さすがにご存知のご様子だけれど、ここはわたくしに……」

「はい、わたしもうる憶えの話ですので」

「どうぞお聞かせください」

 二人の社長は、さすがにソツがない。

「ハワイ王朝末期、明治大帝がご存命だったころ、王さまが日本を親善訪問されて、王さまは『よろしければ、日本のプリンセスのお一人を王子の妃に迎えたいのですが』と大帝に切り出されました。大帝も『それは良いお話です』と喜ばれ、宮内省は内々に皇族のお姫様方の中で適任はいないかと探しにかかりました。惜しくも、その後ハワイはアメリカに併合されて立ち消えになってしまいましが、実現していれば、きっとディズニーがアニメにしていたでしょうねえ『モアナとプリンセスの伝説』とか、ねえ、アデリヤ」

「アハハ、わたし、ジブリ世代でディズニーはあんまり見てないから(^_^;)」

「そうだったわね、じゃあ、うちの話はどうかしら」

「お母さま」

 アデリヤの目が泳いだ。

「うちの五代前の国王は『うちが、ハワイ王の夢を実現しよう!』と、言い回しはいいのだけど、パクリを狙ったんです」

 パクリ(^_^;)

「しかし、度重なる戦争で立ち消えになり、パクリは実現しませんでした。そして、大東亜戦争に日本が敗北して日本の公使が帰国することになったんです」

 微妙に話が飛んだ。

「お母さま、そろそろお昼寝の時間じゃないかしらぁ」

「夕べは一時間余計に寝ておいたから大丈夫よ」

「はい」

「ところが、帰国する間際になって公使が使ってらっしゃったメイドが病気になってしまい、公使はメイドを一人残して日本に帰って行きました。公使といっても捕虜同然だったから仕方がなかったのね」

「先々代の国王夫妻は、このメイドを憐れに思われて、我が国の国籍を与えて看病なさいました。そして二年療養してすっかり良くなると、王子が、このメイドを見染てしまいました。国王は『彼女は日本人なのだから日本に帰してあげよう』と王子を諭しました。しかし、調べてみるとメイドの家族は戦争で全員亡くなっていて、彼女は帰国しても身寄りが一人もいないことが分かったんです」

「まあ……(o; )

 まあやが、もうウルウル。

「それで、そのメイドは我が国の人間として大臣の養女にした上で王子の妃になりました。そして生まれてきたのが、いまのわたしの亭主というわけです。思いがけず、パクリが成功しました」

「え、えと、妃殿下!」

「はい、まあやさん?」

「いまのお話って、国家機密なんじゃ……(;'∀')」

 そうだろ、王家の血筋に外国人の血が混ざってるって、ちょっとヤバイ話だ。

「はい、でも、みんな知っています。そして、とても大事にしていますのよ」

 

 程度の差はあるけど、みんな王妃さまの話に感銘を受けて、我々は指定された自分の部屋に入った。

 

 部屋に行くと、わたしのベッドの上に日本からの航空便が届いていた。

 

☆彡 主な登場人物

  • 風間 その        高校三年生 世襲名・そのいち
  • 風間 その子       風間そのの祖母(下忍)
  • 百地三太夫        百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
  • 鈴木 まあや       アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
  • 忍冬堂          百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
  • 徳川社長         徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
  • 服部課長代理       服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一
  • 十五代目猿飛佐助     もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者
  • 多田さん         照明技師で猿飛佐助の手下
  • 杵間さん         帝国キネマ撮影所所長
  • えいちゃん        長瀬映子 帝国キネマでの付き人兼助手
  • 豊臣秀長         豊国神社に祀られている秀吉の弟
  • ミッヒ(ミヒャエル)   ドイツのランツクネヒト(傭兵)
  • アデリヤ         高原の国第一王女

 

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RE・トモコパラドクス・9『空飛ぶ女子高生』

2023-09-06 06:56:57 | 小説7

RE・友子パラドクス

9『空飛ぶ女子高生』 

 

 

 カキーーーン!

 

 友子の投げた球は紀香によってホームラン間違いなしの当たりになった!

 友子は全速で球を追いかけ、グラウンドの対角線方向で練習している野球部のところまで追いかけ、バックスタンドと仮定していたバックネットのところで大ジャンプ。バシッっとグラブの音と手応え。勢いでジャージはブラが見えそうなところまでずり上がり、形のいいオヘソが野球部員達に丸見えになった。

 ナイスキャッチ! パチパチパチパチパチパチ(^▽^)

 野球部の諸君から、拍手と賞賛が送られた。

「どーも、すみませんね。本職の邪魔しちゃって(^_^;)」

 友子は頭を掻き掻き、自分たちのダイヤモンドに戻り、ボールを投げ返した。

「オーライ、オーライ……」

 そう言いながら、妙子は少し後退してボールを追う。

 パシ 

「取れたぁ!」

 妙子は、ウサギのように飛び上がって喜んだ。

 

 まるで、本物の野球をやってるみたいだ。

 

「今のを、無対象演技って言うんだ」

 白い歯を見せながら紀香は、妙子から見えないボールを受け取った。

「トモちゃんが入ったら、とたんにボールが見えるようになった」

 あたりまえである。紀香も友子も義体である。だから無対象の見えないボールでも。相手の投球や打球を見て、瞬時に弾道計算をして、着地点に走り、ボールを球速に見合ったリアクションで取る。
 おまけに打ったときや、球を捕ったときの「カキーン」「バシッ」ってな擬音までついている。妙子も、それにつられて目が慣れて、有るはずもないボールが見えたような気がしたのである。

 あとは、三人でダチョウ倶楽部のコントの真似や、AKBの『フライングゲット』やら、自分たちの学校と同じ名前のアイドルグループのパフォーマンスを練習した。これも、義体である友子と紀香には朝飯前。取り込んだダチョウ倶楽部やAKBのパフォーマンスを、そのままやればいいのである。

 さすがに声まで変えることはしなかったが、呼吸や動きはダチョウ倶楽部のままである。まるで森三中がダチョウ倶楽部のモノマネをやったような出来である。

 AKBではさらに勢いづき、友子がM田敦子。紀香がO島優子を完ぺきにコピー。調子に乗って声のボリュ-ムをマイク並にしたので、グラウンド中に響き、そのそっくりぶりに、グラウンドで練習していた運動部の諸君が手を休めて見入ってしまうほどであった。妙子は並の人間ではあるが感化されやすい性格で、声のボリュームだけは及ばなかったものの、S原程度のスタンスを維持できた。

 

「すごっい、今日のは入部して一番おもしろかったです( *´▢`* )!」

 妙子の興奮は着替え中も冷めない。

「よかった、タエちゃん、このごろ練習してても引きがちだったもんね」

「そりゃ、白石先輩一人だけすごいんだもん。部活に来ても凹みますよ」

「でも。トモちゃんもすごいよね。タエちゃんを、あそこまで、その気にさせちゃったんだから」

 紀香は、義体としても友子の力はすごいと思い始めていた。

「でも、演劇部のノリって、あれでいいんですか。お芝居の練習とか」

 友子はマットーな質問をした。

「いいのよ、今時ハンパな創作劇を五十分も我慢して見てるのはオタク化した演劇部だけ。これからの演劇部は違う線狙わなきゃだめだと思うの。演劇の三要素知ってる?」

「えーと?」

 と、妙子。

「戯曲、観客、俳優」

 友子があっさり答えた。

「そう、わたしは、この戯曲をもっと幅のあるものに解釈したいわけよ。硬いドラマだけじゃなくTPOに合わせたパフォーマンスにしたいの。今日やった野球の無対象やらモノマネでも、練習中の運動部の手を止めて観客にしちゃう力があるじゃない」

「わー、今日の白石先輩カッコイイですぅ(#^0^#)!」

「いやー、アハハ」

 

 などと言っているうちに駅前までやってきた。

 

 昨日までタイ焼き屋があった店は閉められていて、○○不動産の看板がかけられていた。

「今度は、どんな店ができるんだろうね」

「駅前にはファストフ-ドのお店が少ないから、その手の店が入るんじゃないかしら」

 友子は、駅から半径百メートルの地図から検索して推論した。

「まあ、我らが新生演劇部のように、先を楽しみにしておこうか」

「オオ、新生演劇部! 新生ファストフ-ド!」

 気炎を上げて地下鉄の駅に向かった。改札に入ると妙子は下りの、友子と紀香は上りのホームに向かった。

「ちょっと付き合ってもらえません」

「友子、そういう趣味?」

「茶化さないで。マジな話なんです」

「どんな?」

「うちのクラスに長峰純子って、長欠の子が居るんです……」

「ちょっと、こんぐらがった事情がありそうね」

「ここからだと、ちょっと距離があるんですけど」

「じゃ、地上からいくことにしょうか」

 二人は、次の駅で降りると手頃なビルの上にジャンプし、時速百キロで街を駆け抜け、5分ほどで、長峰純子の高級住宅についた。

 二人の姿は、たまたま残業していたサラリーマンが目撃し動画サイトに『空飛ぶ女子高生』のタイトルで投稿したがAIに作らせたんだろうと叩かれた……。

 

☆彡 主な登場人物

  • 鈴木 友子        30年前の事故で義体化された見かけは15歳の美少女
  • 鈴木 一郎        友子の弟で父親
  • 鈴木 春奈        一郎の妻
  • 白井 紀香        2年B組 演劇部部長 友子の宿敵
  • 大佛 聡         クラスの委員長
  • 王 梨香         クラスメート
  • 長峰 純子        長欠のクラスメート
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