大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

鳴かぬなら 信長転生記 142『信長版西遊記・牛魔王の背中』

2023-09-11 10:06:24 | ノベル2

ら 信長転生記

142『信長版西遊・牛魔王の背中信長 

 

 

 頭だけかと思ったら、その下には首と胴が付いていて、その胴は山そのものだ。

 

 ノシ

 

 大地が軋むような音をさせて山のような牛が立ち上がる。

「あんなにデカイのに脚が無いブヒ!」

「ちがうっッパ、砂煙で脚が霞んでるッパ!」

 ドドドド!!

「まずい、こっち来るウキ!」

「逃げるブヒ!」

 馬の首と八戒の腹に押しつぶされそうになりながらも馬腹を蹴る!

「な、なんで真っ直ぐ逃げないブヒ!?」

「あの牛、意外に速いウキ」

「真っ直ぐ逃げてはすぐに追いつかれるッパ! 雪崩を躱す要領なんだなッパ!?」

「そうだがな……」

 グモオオオオオオオオオオオオオオ!

 がぜん速度を上げてきた牛を辛うじて躱す。

 ズザザザザザザザザザ

 砂漠が爆発したかと思うような砂煙を上げて停止したかと思うと、停止いした力を旋回と跳躍の力に変換、こちらが息つく間もなく襲い掛かって来る!

『この牛魔王から逃げられると思うてか!』

 ドドドドオオオオオオオン!!

 かろうじて避けると真反対に逃げ、牛魔王が立ち直る前にさらに直角に折れて牛の視界の外に出る。

『待てえ!!』

「ブヒーー!」

「これでは、キリがないッパ!」

「次がチャンスだウキ!」

 俺も二度躱したことで牛魔王の呼吸が掴めた。

「飛べ!」

 命ずると同時に――変身!――と念じた。

 予想通り頭の緊箍児(きんこじ)の一言主も感応、空中で馬は元の紙飛行機に戻って、キョロキョロする牛魔王の上を小さく旋回した。

「少し小さくなったッパ」

「一割は三蔵法師になっていたからなウキ」

『グオオオ どこに失せおった!?』

 真上を飛んでいるとは気づかずキョロキョロする牛魔王。

「高度が落ちてきたブヒ!」

「八戒が重いッパ」

「重さは変わらないブヒ」

「ジッとしてろ、ウキ!」

 体重を移して紙飛行機を旋回させて牛魔王の背中に着陸させる。

 文字通り山のような化物なので、着陸さえすれば身は隠せる。

 

「……で、どうするのブヒ?」

 

「そうか、羅刹女と牛魔王は夫婦だ、放っておいても羅刹女のところに戻っていくわけだッパ」

「ああ、子どもの頃、平手の爺に聞いた『西遊記』を思い出してなウキ」

「しかし、羅刹女のもとに行くときは人の姿になっているはずだッパ」

「タイミングを見計らって隠れるウキ」

「隠れたその後はブヒ?」

「兄を信じろウキ」

「あんた、大事なとこで失敗してるからブヒ」

「信長でも失敗するのかッパ?」

「ブヒ、荒木村重が裏切った時さぁ、説得に黒田官兵衛に行かせて、黒田官兵衛がそのまま人質になっちゃったのを寝返ったと勘違いしたじゃん」

「そんなことがあったのか?」

「うん、それで、人質に取ってた官兵衛の息子の首を切った」

「え、子供に罪はないだろ」

「それを『さっさと倅の首を切れ!』ってブチギレてぇ」

「黒田官兵衛と言えば、関ヶ原の戦いの時、どさくさに紛れて九州の北半分取っちゃうほど軍事の天才だって、三国志でも有名だぞ。敵に回したらまずいでしょ?」

「官兵衛が人質になってるって分かって、サルがね、別の死んだ子供の首を見せて匿っていたのよ。『上様、このサルの一存にて官兵衛の息子は生かしております!』って、その時のアニキの顔って無かった」

「無事に済んだのぉ?」

「くやしいけど、サルは行き届いていたわよ。言うと同時に戸板に乗せられた官兵衛を連れてきてさ。官兵衛、人質生活で足が動かなくなってたのよ」

「それはヤバイ」

「『有馬の湯が効く、有馬の湯で湯治しろ!』って、あの時の狼狽え方は、めちゃくちゃカッコ悪かった」

「うるさい! おまえら素に戻ってるぞ!」

「ブヒ!」「ッパ!」

 

 やがて、羅刹女の住処の山に到着。牛魔王が人の姿に戻る寸前に飛び降りて、まずは三蔵法師の居場所を探った。

 

☆彡 主な登場人物

  • 織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生  ニイ(三国志での偽名)
  • 熱田 敦子(熱田大神) あっちゃん 信長担当の尾張の神さま
  • 織田 市        信長の妹  シイ(三国志での偽名)
  • 平手 美姫       信長のクラス担任
  • 武田 信玄       同級生
  • 上杉 謙信       同級生
  • 古田 織部       茶華道部の眼鏡っ子  越後屋(三国志での偽名)
  • 宮本 武蔵       孤高の剣聖
  • 二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま
  • 雑賀 孫一       クラスメート
  • 松平 元康       クラスメート 後の徳川家康
  • リュドミラ       旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ  劉度(三国志での偽名)
  • 今川 義元       学院生徒会長
  • 坂本 乙女       学園生徒会長
  • 曹茶姫         魏の女将軍 部下(備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
  • 諸葛茶孔明       漢の軍師兼丞相
  • 大橋紅茶妃       呉の孫策妃 コウちゃん
  • 孫権          呉王孫策の弟 大橋の義弟
  • 天照大神        御山の御祭神  弟に素戔嗚  部下に思金神(オモイカネノカミ) 一言主

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

RE・トモコパラドクス・14『退屈な紀香と友子』

2023-09-11 07:14:07 | 小説7

RE・友子パラドクス

14『退屈な紀香と友子』 

 

 

 友子の抹殺者として送り込まれてきた白石紀香には、カタキとしての緊張感がない。

 

「ねえ、そのパフェ、わたしにも一口おくれでないかい?」

 今も、そう言ってヨダレを垂らしている。

「やーねー、あげるからヨダレだけ拭いてくれない」

 紀香は、ハンカチでヨダレを拭うと「いいよ」も待たずに、スプーンでゴッソリと持っていった。

「あ、ああ~(◎△◎)!」

「たっまら~ん、わたしも、こっちにしときゃ良かったぁ(〃▽〃)!」

 友子は三十年前に首都高で事故に装って殺されかけた。将来、友子の娘が極東戦争の元凶になるので、未来の秘密組織が母(になる予定)の友子を抹殺しに来たのだ。

 からくも反対勢力である国防軍秘密組織ミームによって助けられ、ひと月前に蘇った十万馬力の義体。

 超チタン合金の骨格、核融合動力、コアCPUは第五世代の量子コンピューターという化け物。それでありながらボデイーの外郭は生体組織である。人間であったころのDNAをそのまま持っているので、外見は生きていた三十年前の十五歳のまま。そして、生体組織の血管には無数のナノリペアが循環していて、傷ついたりすれば、簡単なものだと数十秒で回復する。

 だからこそ未来の秘密組織に命を狙われる友子だが、さらに未来では友子脅威論はフェイクとされた。しかし、利権化した友子脅威論は容易には解消されず、抹殺のために紀香が送り込まれた。

 しかし皮肉なことに友子が消されては友子脅威論の根拠が無くなるので、逆に友子を保護する立場になってしまい、友子を演劇部に誘い込んで、マッタリ仇と共にJK生活の今日この頃。

 友子も紀香も同クラスの義体であるが、決定的な違いがある。

 友子には生殖能力が残されているのだ。

 どうも、わたしは特別らしい……な~んてことはとっくに忘れて、普通の女子高生として、蛸ウィンナーの妙子と三人で冴えない演劇部をやっている。
 冴えないといっても、友子と紀香の演技力は抜群。擬態能力が高いので、人間なら、たいがいのものには化けられる。先日も不登校と思われていた長峰純子を、それらの能力を駆使してC国の秘密組織から救ったところだ。

 

『あれぇ、どこいっちゃたんだろ!?』

『写真撮りそこねた!』

『あれ、ぜったい小野寺潤と矢頭萌だよね!』

 店の外で女の子達が騒いでいる。

『あっち、探してみよ!』

『オレたちも行くぜ!』

 

 一群は階上のテラスへ上がっていった。

 

「ちょっとやりすぎたかなあ……」

 口の端っこにクリームをつけたまま紀香が反省。

「紀香って、調子こいてサインまでやっちゃうんだもん」

 そう、二人は、ついさっきまで階上のテラスでAKRの小野寺潤と矢頭萌に擬態して遊んでいたのだ。

 最初は、ほんの数分のつもりで、買ったばかりの服を着てグラサンかけて、それなりに身を隠していたが、なんせ本物ではないので緊張感がなく、紀香がグラサンをとって汗を拭いた。

「わ、小野寺潤だ(゚д゚)!」

 ということになり、追いかけ回されてしまい、それを楽しんでいた。

 しかし、階段を降りたところで、熱烈なファンに出会ってしまった。

「仙台から来たんです! 命がけのAKRファンです。こんな目の前で出会えるなんて……きっと、こないだ瑞巌寺にお参りした御利益だわ。お願いです、サインしてください!」

 仕方なく、紀香は小野寺潤としてサインしてやった。擬態化すると、擬態した人間のスキルや、あらかたの知識もダウンロ-ドされるので、完ぺきなサインもできるし、本人の感性で行動することもできる。

 潤になりきった紀香は、潤の気持ちのまま、仙台の子をハグまでしてやった。

 そこを道の向かい側の店で買い物をしていた視力2・0のファンに発見されてしまった。

「いたー!」

 そして、二人は慌てて従業員用のドア(パスキーがついていたが、二人には無いも同然)から、商業ビルに飛び込み擬態を解いて制服に着替え、パフェなんぞ食べているのである。

 

 なんで、こんなことをやっているかというと……二人は退屈なのである。

 

 週明けの月曜からは中間テストで、部活もできない。授業内容は義体のCPUに完全に入っている。あとはセ-ブして、どのへんの点数に落としこむか。それは、当日のみんなの出来具合に合わせるだけである。

 

『ちょっと、ほんとに見かけたのかい!?』

『はい、こうやってサインももらいましたし』

『……ほんとだ、これ、潤のサインだよ!』

 一群の人たちが、また階上のテラスに上がっていった。

 でも、今度は、このビルの上にある劇場のスタッフと、AKRのプロデューサーまで混じっていた。

 

 彼らの強い不安と思念が飛び込んできた。

 

 まもなく、上のホールでAKRのライブが開かれる。

 そして、楽屋には、まだ本物の潤と萌が到着していないのだった……!

 

☆彡 主な登場人物

  • 鈴木 友子        30年前の事故で義体化された見かけは15歳の美少女
  • 鈴木 一郎        友子の弟で父親
  • 鈴木 春奈        一郎の妻
  • 白井 紀香        2年B組 演劇部部長 友子の宿敵
  • 大佛  聡        クラスの委員長
  • 王  梨香        クラスメート
  • 長峰 純子        クラスメート
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする