大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

鳴かぬなら 信長転生記 167『孔明来訪』

2024-02-27 10:45:40 | ノベル2
ら 信長転生記
167『孔明来訪』信長 




「お久しぶりにございますなあ、ニイ少佐どの」


 面食らった。

 長鬚五尺に身の丈六尺半はあろうかという巨漢が発した声は、メゾソプラノの女の声だ。それに、悟空の姿に変えたというのに、俺のことを『ニイ少佐』の偽名で呼んでいる。

 ムム……

「あまりの名月に、いささか興を覚え、狸のような真似をいたしました」

「丞相殿、もうよいか?」

「ああ、すまん。もう前に出る」

 そう言って、関羽雲長 の後ろから出てきたのは、蜀の丞相であり大軍師である諸葛茶孔明だ。

 あいかわらず、薄物のワンピの上にガウンめいたのを羽織って、手には例の団扇かハエたたきか分からんものを戦がせている。

 関羽の前に出て、さらに数歩迫って来ると、背後の月光を受けて、薄物とガウンが透け、女子化した俺が見てもハッと息を呑むようなプロポ―ションが露わになる。

「三蔵法師御一行が現れたのは玉門関の頃から噂に聞いて、調べておりました。最初は、魏の曹茶姫様が姿をやつして戻ってこられたのではないかと」

 油断のならんやつだ(;'∀')

「最初の最初は、三蔵法師が茶姫様。お弟子三人の内、お一人がニイ少佐、もう一人がシイ少尉かと見積もっておりましたが、それでは一人余ってしまう。敦煌までのお働きを精査して、どうやら、お弟子三人が、茶姫、ニイ少佐、シイ少尉と見当がつきました。あの連携の取れた戦いぶりは御三方に違いが無い」

 ムムム……

「しかし、そうすると、三蔵法師が分からなくなる。最初はただの木偶かと思っておりましたが、西安からこの豊盃までを観察するところ、ただの木偶ではなく、ひとかどの大僧正……いや、仏教者の枠では捉えきれぬほどのお方であると拝察し、蜀を出て、豊盃で待ち受けていたのです」

「では、昼間の大説法会も」

「はい、関羽と張飛は目立つので公園の樹木と岩の陰に隠れさせておりましたが、この孔明は、オーディエンスに紛れて、説法をお聞きしておりました」

「それでは、あの大行進にも……」

「いやあ、あのボレロのリズムとパッション、血が騒ぎましたなあ!」

「孔明が、ボレロを!?」

「ハハハ、この孔明、いささかのパリピでございましてな」

 ドカドカドカ

 騒がしい足音がしたかと思うと、偉丈夫が鉞のような矛を担いでやってきた。

「軍師殿、寺の周囲一町四方を見て周ったが怪しの者は見えなかったぞ」

「ごくろう張飛将軍」

「それで、この寺には何用でこられたのだ」

「それは、申すまでもなく、三蔵法師猊下に御目文字賜らんがため」

 ウ……三蔵法師は結跏趺坐の姿勢で、ただのフィギュアになっている。

 会わせるわけにはいかんぞ(;'∀')



 
☆彡 主な登場人物
  • 織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生  ニイ(三国志での偽名)
  • 熱田 敦子(熱田大神) あっちゃん 信長担当の尾張の神さま
  • 織田 市        信長の妹  シイ(三国志での偽名)
  • 平手 美姫       信長のクラス担任
  • 武田 信玄       同級生
  • 上杉 謙信       同級生 配下に上杉四天王(直江兼続・柿崎景家・宇佐美定満・甘粕景持 )
  • 古田 織部       茶華道部の眼鏡っ子  越後屋(三国志での偽名)
  • 宮本 武蔵       孤高の剣聖
  • 二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま
  • 雑賀 孫一       クラスメート
  • 松平 元康       クラスメート 後の徳川家康
  • リュドミラ       旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ  劉度(三国志での偽名)
  • 今川 義元       学院生徒会長
  • 坂本 乙女       学園生徒会長
  • 曹茶姫         魏の女将軍 部下(備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
  • 諸葛茶孔明       漢の軍師兼丞相
  • 大橋紅茶妃       呉の孫策妃 コウちゃん
  • 孫権          呉王孫策の弟 大橋の義弟
  • 天照大神        御山の御祭神  弟に素戔嗚  部下に思金神(オモイカネノカミ) 一言主
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ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第93話《さつき今日この頃・1》

2024-02-27 08:50:10 | 小説7
ここ世田谷豪徳寺 (三訂版)

第93話《さつき今日この頃・1》さつき 





 アッと思ったら、手のスマホが無くなっていた。


 目の前電柱一本分先を走っているカットソーとジーンズの女の子が犯人だということに理解が及ぶのに数秒かかった。

「スマホドロボー(*>д<) !」

 叫ぶのに、さらに二秒かかった。

 犯人はとっくに、豪徳寺の高架を抜けて右に曲がって姿が見えなくなっていた。これは、もう駄目だろうという諦めが湧いてきた。

 え!?

 と、思ったら、高架の右側から犯人が左側に駆け抜けていった。

「ド、ド、ドロボー(*>▢<)!!」

 あたしは改めて叫んで追いかけた。

 なんといっても豪徳寺は地元だ、姿さえ見えていたら、路地裏の奥まで追いかけられる。

 と思って走っていると、自転車に乗った北側署の香取巡査が自転車で追いかけていた。


「一応窃盗だからね」


 香取巡査が、取調室で、あたしと犯人の両方に言った。スマホドロボーは、なんと、あたしと同じ東都大の留学生だった!

「周恩華さん、前は無いみたいだけど、単に検挙されてないだけで、初めてだったって言い訳は通用しないよ。さつきさん、どこも怪我してません? ひっかき傷でもしてたら強盗致傷になるからね」

 香取巡査は、冷たい麦茶を置きながら首筋の汗を拭いた。使ったタオルハンカチは、その横で調書を取っている女性警官のものらしく嫌な顔をしている。

「怪我はしていません。スマホが戻ったら、あたしはいいんです」

 周恩華という同学の留学生は、固く口をつぐんだまま机の上を見ている。覚悟はしているようだった。

 あたしは、この周さんは、本当に初めて、あるいは手馴れていないのだと思った。慣れていたら、こんな豪徳寺みたいなローカルなところじゃやらないだろう。

 でも、なんで豪徳寺なんかに来たんだろうって、疑問は残った。

「なんで豪徳寺なんかに来たの? あなたの寮は大学の近所でしょう?」

「……佐倉惣一の家が知りたかった、さつきのスマホ見たら惣一の住所分かる」

「兄貴の住所?」

「そうよ、佐倉惣一は佐世保沖海戦の英雄だから、どこの高級住宅に引っ越したのかと思って」

「え……?」

「どこよ、成城? 軽井沢? ひょっとして、特別に赤坂御料地の中とか?」

「なに言ってんの?」

「だって、英雄でしょ? 海戦の立役者でしょ? だったら、政府からの特別待遇で、どこかの高級住宅街で、セレブな家に越してるんでしょ?」

「えと……海上勤務で、あんまり帰ってこないけど、一応、うちが現住所なんだけど」

「う、うそ!?」

「いや、ほんと」

「ええー! だったら、さつきの後、付けていくだけで済んだあ!?」

「きみねえ、反省してない! 反省してないし、挑戦的だし」

 香取巡査は、再び汗を拭いた。

「あたし、被害届出しません」

「出しなさいよ。そんなことで恩にきたりしないから。麦茶、もう一杯、お巡りさん」

「可愛くないなあ……」

 そう言いながらも、お茶を淹れにいくところが、香取巡査のいいところだろう。

 ドン

「はい、どうぞ。でもね、なんで佐倉さんのお兄さんを?」

 あたしも、それには興味があった。

「佐倉惣一は、たかやすの乗り組み士官。それに『MAMORI』の記事で、佐世保沖の大虐殺の正当化をやってる!」

「そんな言い方やめてくれる。あれはC国の軍艦がドローン船を発進させたから」

「嘘! ドロ-ン船なんかじゃない! あの漁船には人が乗っていた!」

「いや、最初はそう言われてたけど、自衛官の人が乗りこんでビデオに撮ってネットで流してたじゃない。マネキンだったよぉ」

「ああ、あれ流した三等海曹、懲戒免職になったんですよね」

 調書をとっている婦警さんが顔を上げて付け加えた。

「嘘! あれはフェイクだ! フェイクでなくても、別の船だ! 撃沈されたのには人が乗ってた!」

「周さん……」

「アハハ」

 さすがに香取巡査も笑ってしまった。

「笑うな! あの漁船で燃えていたのは、わたしの兄さんなんだから!」

「「「え?」」」

「実家に警察から連絡があった『あんたの息子は漁船に乗ってて、日本の軍艦に撃たれて爆発して死んだ』って」

「そんなバカなぁ!」

「なにが馬鹿よ! 政府は気の毒に思って弔慰金までくれたんだから! その弔慰金、うちのお母さん、ぜんぶわたしの口座に入れてくれて、それで、今年も留学続けられて……でも、お兄さんの命の代償で留学続けられても、嬉しくないよぉ……」

 そこまで言うと、周さんは机に突っ伏して泣きじゃくった。

 ああ……これ、どうしたらいいんだ(-_-;)?


☆彡 主な登場人物
  • 佐倉  さくら       帝都女学院高校1年生
  • 佐倉  さつき       さくらの姉
  • 佐倉  惣次郎       さくらの父
  • 佐倉  由紀子       さくらの母 ペンネーム釈迦堂一葉(しゃかどういちは)
  • 佐倉  惣一        さくらとさつきの兄 海上自衛隊員
  • 佐久間 まくさ       さくらのクラスメート
  • 山口  えりな       さくらのクラスメート バレー部のセッター
  • 米井  由美        さくらのクラスメート 委員長
  • 白石  優奈        帝都の同学年生 自分を八百比丘尼の生まれ変わりだと思っている
  • 原   鈴奈        帝都の二年生 おもいろタンポポのメンバー
  • 坂東 はるか        さくらの先輩女優
  • 氷室  聡子        さつきのバイト仲間の女子高生 サトちゃん
  • 秋元            さつきのバイト仲間
  • 四ノ宮 忠八        道路工事のガードマン
  • 四ノ宮 篤子        忠八の妹
  • 明菜            惣一の女友達
  • 香取            北町警察の巡査
  • クロウド          Claude Leotard  陸自隊員 
  • 孫大人(孫文章)      忠八の祖父の友人 孫家とは日清戦争の頃からの付き合い
  • 孫文桜           孫大人の孫娘、日ごろはサクラと呼ばれる
 
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