大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・079『代議会・1』

2024-02-05 14:39:03 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
079『代議会・1』   





 代議会は南館一階のどん詰まり、階段教室で行われる。


 地学の準備室が横にあって、時どき地学の授業でも使うから馴染みはあるんだ。

 でも、代議会で階段教室に入ると印象が違う。

 階段席には他のクラスや二年生の正副委員長さんたちが並んでる。

 うちのたみ子や高峰君もそうなんだけど、みんな正副委員長オーラがある。

 あ、ロコが面白がってついて来てくれたんだけどね、入るや否や「おおぉ」ってゆった。

 それに、席が階段状になってるんで、なんか古代ギリシアとか古代ローマの……なんてったっけ……議会みたいで、それもいい効果出してる。

「あ、何組かな?」

 視界の外から声かけられて、ちょっとビックリ。

 黒板の横に執行部の書記の一年生。たしか一組の女子なんで、フロアが違うので見覚えが無い。

「あ、五組、正副委員長両方休みだから代理です」

「あ、はい……」

 代理の理由とか言わなきゃならないのかと思ったら、黒板の出席表の5組のところにチェックが入れられて、それでおしまい。

「特に席は決まってないようですねぇ」

 ロコが、みんなバラバラに座っているのに気付いて、せっかくだから、一番後ろの席に着く。

 え、めちゃ暖かい?

「天井が近いですからねえ、暖気が溜まるんです。だから、そこに……」

 ロコが指差した隅っこでは扇風機がゆるく首を振っている。

 なるほどサーキュレーターの代わりなんだ。

「国会だったら、田中だとか福田だとか有力議員が座る席ですよ、ここは」

「え?」

「あ、田中角栄とか福田武夫とか」

「え、ああ」

 田中角栄って、こないだお屋敷が焼けたところだ。福田ナントカは分からない。

「佐藤栄作も、早く議員席に戻った方がいいです」

「佐藤……?」

「栄作、総理大臣ですよ。もう七年目ですからね」

「総理大臣なら、どこに座ってるのかなあ」

「あ、黒板の左、ちょうど会長がいるとこらへんが大臣席です」

 見ると、さっき出欠をとっていた書記の横で議案の確認だろうか、ノートを見ながら書き込みをしているインテリっぽい男子がいる。

「上杉さんです。先生から頼み込まれて生徒会長を引き受けたみたいですけど、貧乏くじだったって評判ですよ」

 ああ、分かるなあ……学園紛争の明くる年だもんね、体育祭でデモの真似事やるやつとかまだいるしねえ。イブの集いじゃインターネットじゃなくてインターナショナル歌って邪魔するやつもいたしぃ(^_^;)

 会議の内容は正直よく分からない。ただ、プリントとか配られたらもらっといてということなので、そこには気を付けて、横っちょの二年生をチラ見して確認。

「バインダー持ってる人が居ますよ、あれなら確実ですね」

 ロコの言う通り、バインダーやらファイルで、配られたしりから綴じている人もいる。さすが委員長副委員長クラスは意識も能力も高そうな感じ。

 議案が一通り終わったところで手が上がった。

「ハイ、一年八組さん」

 発言の許可を得て立ち上がった女子……あ、演劇部の部長だ。

 たしか牧内千秋さん。

 名前も姿形も美しいし、イブの集いでは照明やファイアーストームでお世話になったんで、わたしには珍しく覚えてる(^_^;)

「本来は部長会議で発言すべきなんですが、年度内の部長会議はありませんので、少し変則的ですが発言させていただきます」

 議長の副会長が会長に目配せして、会長が頷いて、牧内さんはドラマの人物みたいにハキハキとカッコよく語り始めた……。



☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校一年生
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         1年5組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            1年5組 副委員長
  • 高峰 秀夫             1年5組 委員長
  • 吉本 佳奈子            1年5組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            1年5組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 藤田 勲              1年5組の担任
  • 先生たち              花園先生:4組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  教頭先生
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹        
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 7組) 上杉(生徒会長)
  • 灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  
  
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RE・かの世界この世界:228『千引の大岩と桃太郎』

2024-02-05 10:22:54 | 時かける少女
RE・
228『千引の大岩と桃太郎 』テル 


 


 最後は、だれも二号とは呼ばなかった。


 涙と鼻水と涎でグチャグチャになりながら三つの坂道を一気に飛び降りて、迫りくる鬼と醜女たち目がけて桃の木に変身。あっという間に枝いっぱい桃の実を実らせると、その桃の実を鬼と醜女たちに食わせて時間を稼いで、みんなを助けたんだ。

 そんなあいつを、もうだれも桃太郎二号とは呼ばない。呼ばなかった。

「くしょー、なによ、なんなのよ、自分一人カッコつけて(≧◇≦)」

「これから、だれとバカ話すればいいんだよぉ(>△<)」

 齢の近いヨネコとケイトが地団駄踏んで悔しがり、大人たちは虚脱したように蓋をした大岩を見つめる。

「これからは、オオカムヅミノミコトと呼ぶことにしよう」

 イザナギさんが静かに言った。

 ミコト……命……これは神様の尊号だ。

「わたしたちが生んだ神ではありませんが、彼は日の本の神々と並ぶに相応しい男の子です」

 すると、与一さんが矢立てを出し、大岩にサラサラと大神実命 と記した。

「ああ、いいですね。わたしは意富加牟豆美命なんて万葉仮名でしか思い浮かびませんでした。大神実命、大いなる神の実。実に相応しい字です」

「では、わたしは……」

 雪舟ねずみは大神実命の下にきれいな桃の実の絵を描いた。

「桃太郎ぉ……桃太郎ぉぉ……(˚>ᯅ<) 」

 ヨネコは大岩に両手を突くと、オデコをくっつけ嗚咽しながら名前を呼ぶ。

「え……またやってくる!」

 くっつけたオデコに振動を感じて後ずさるヨネコ。すかさず、ヒルデとタングリスが大岩に耳をつける。

「多い……大きい者が混じっている」

「殿下、離れてください!」

 二人が飛び退ると、もう我々にも分かる地響きが大岩を、山を震わせた。


 ドンドンドン!! ドンドンドン!!! ドンドンドン!!!!


 猛烈な力で岩を叩く音!

『憎らしい憎らしいぞよ、恨めしいぞよ恨めしいぞよ、イザナギィィィィ!』

 語尾を歯ぎしりにして怨嗟の声を上げるのは……イザナミだ!!

「ここを破られては後がない!」

 ガッシ!

 与一さんが大岩に取りつき、我々も及ばずながら全力で大岩を押しとどめた!



☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――
  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
 ブリュンヒルデ     主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官 ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          シリンダーの幼体 82回目で1/12サイズの人形に擬態
 ペギー         異世界の万屋
 ユーリア        ヘルム島の少女
 その他         フギンとムニン(デミゴッドブルグのホテルのオーナー夫婦)
 日本神話の神と人物   イザナギ イザナミ 那須与一 桃太郎 因幡の白兎 雪舟ねずみ 櫛名田比売 ヨネコ
―― この世界 ――
 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 
 
 

 
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ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第72話《護衛艦たかやす》

2024-02-05 07:19:00 | 小説7
ここ世田谷豪徳寺 (三訂版)

第72話《護衛艦たかやす》惣一 





 昨日カレーを食ったから、今日は土曜日か……。

 三直目の勤務を終えて、おれは士官食堂に向かった。


「ハハ、やっぱり40秒早く着いてしまうな」

 テーブルに着き習慣になっている時間を確認した。

 なぜ配置のCICから一分も早く食堂に着いてしまうかというと、艦が違うからだ。

 この五月で「あかぎ」を降りて「たかやす」に乗り込んでいる。26000トンの「あかぎ」から3500トンの護衛艦に替わると、覚悟はしていたが、狭くて小さい。

「たかやす」の砲術士が訓練中に怪我をしたので、その代替要員として、三カ月この船に乗り込むことになった。
 本来砲術士は曹クラスの配置だ。そこに一尉のおれが代わりに入るのは極めて異例だ。
「たかやす」は、今度の任務が終わったら、一線任務から外され、改修後練習艦になる。実質的に護衛艦としては最後の任務だ。

 しかし容易い任務ではない。南西諸島方面のパトロール任務である。

 近頃C国の挑発は常軌を逸しつつある。今月に入っても南シナ海でB国の漁船に体当たりして沈没させている。テレビでは呑気に「相手は漁船ですからね、B国も戦闘するわけにはいかんでしょう」などと言っている。100隻もの漁船が漁具も積まずに整然と海を走っているわけなどありえない。表だった武装こそしていないが、間違いなく海警か軍の人間が乗っている。自衛隊機への異常接近も、ついこないだのことである。

 そんな緊迫した情勢の中でのパトロール任務である。相手を刺激しないように、あえて退役寸前のロートル艦を回してきた。旗艦は我が「たかやす」 それに「いこま」と「かつらぎ」というどっこいどっこいのロートル三隻の艦隊だ。
 いずれも大阪の山の名前を頂いた艦で、海自の中では『吉本艦隊』とも言われている。わが「たかやす」の艦長が吉本一佐なので、あながち間違った呼び方ではないが、どうも揶揄された感じは否めない。

 この艦隊編成を決めたのが海幕か防衛大臣か、それより上かは分からないが、非常にC国に気を遣ったものであることは確かである。


「どや、ちょっとは慣れたか?」

「あ、艦長」

「カレーの次が肉じゃがかぁ。なんや海軍の伝統に意地張ったようなメニューやなあ」

 艦長が不満とも面白さともとれるような言い回しで、俺の横に座った。

「艦長も意地ですか。肉じゃが特盛りですよ」

「わしの好物でな、たかやすのカレーと肉じゃがは海自で一番やろな」

「大阪の艦で固めるならこんごうも連れてくればよろしかったですのに」

「あれはイージスや。シャレに成らへんからな」

 旧海軍時代から、大阪に関わる名前を付けた艦はろくなもんじゃなかった。戦艦河内は徳山湾で原因不明の爆沈。摂津はワシントン条約で戦艦籍から外されて標的艦になり、ボコボコにされた上に戦時中に撃沈された。

「一度聞いてみようと思っていたんですが、なぜたかやすの臨時砲術士に自分が選ばれたんですか?」

「ハハ、そらあかぎの艦長に聞いてぇ。あいつの推薦やさかいに」

「やっぱり、あかぎの艦長ですか……」

「まあ、そないにしょぼくれなぁ。いつぞやの一般公開のときに、格納デッキで『フォーチュンクッキー』踊ったやろ?」

「はあ、なりゆきで……」

「わしも、佐倉くんが来るいうんで、動画見せてもろたでぇ(^▭^)」

 艦長はエビス顔の上半身でフォーチュンクッキーのフリをする。

「これは、吉本艦隊で訓練せなあかんなて思た」

 訓練? 俺のことか? 艦のことか?

「あの、艦長。なんで肉だけ残すんですか?」

「残してんのとちゃう。楽しみは最後にとっとくんや」

 エビスさんが子どものような顔になり、肉の一塊を口に運んだとき、艦内放送が流れた。

「艦長、ブリッジまで! 艦長ブリッジまで!」

「くそ、いま食お思たとこやのに……」

 艦長は、肉ばかり食べ残したお椀を怨めしそうに見ると、次の瞬間ブリッジに向かって駆け出していた……。



☆彡 主な登場人物
  • 佐倉  さくら       帝都女学院高校1年生
  • 佐倉  さつき       さくらの姉
  • 佐倉  惣次郎       さくらの父
  • 佐倉  由紀子       さくらの母 ペンネーム釈迦堂一葉(しゃかどういちは)
  • 佐倉  惣一        さくらとさつきの兄 海上自衛隊員
  • 佐久間 まくさ       さくらのクラスメート
  • 山口  えりな       さくらのクラスメート バレー部のセッター
  • 米井  由美        さくらのクラスメート 委員長
  • 白石  優奈        帝都の同学年生 自分を八百比丘尼の生まれ変わりだと思っている
  • 原   鈴奈        帝都の二年生 おもいろタンポポのメンバー
  • 坂東 はるか        さくらの先輩女優
  • 氷室  聡子        さつきのバイト仲間の女子高生 サトちゃん
  • 秋元            さつきのバイト仲間
  • 四ノ宮 忠八        道路工事のガードマン
  • 四ノ宮 篤子        忠八の妹
  • 明菜            惣一の女友達
  • 香取            北町警察の巡査
  • クロウド          Claude Leotard  陸自隊員 
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