鳴かぬなら 信長転生記
曹素の五十騎は三国志各地に散った。
魏王曹操の指示書には、三蔵法師の許しを得たうえで、魏、呉、蜀、三国の緩衝地で『大説法会』を開くべしと書かれていた。
提案してきた場所は、長江中流の河原というか河川敷だ。
ほら、憶えているだろう。
俺と市がニイ・シイと名乗って三国志の偵察に出て、いろんな事件に巻き込まれた末に、茶姫の近衛兵になったことがあるだろう。
茶姫は先見の明のある奴で、装備を鉄砲を中心とする近代装備に変更して、三国志全域と扶桑の南辺を行軍させた。
その数三千の銃装騎兵で、見てくれは強力な騎兵旅団だったが、ロジスティックスというか輜重隊を連れていなかった。
見る者が見れば、単なる新装備のパレードで、ただちに攻撃や侵略行動ができるような代物ではないことが分かる。一斉射撃をやれば、ものの数分で撃ち尽くしてしまう。弾薬が無ければ馬に乗っているだけのボーイスカウトと変わりない。糧食も兵が背負っている背嚢の分しかなくて、どう食いつないでも三日が限度だ。
念のために国境付近まで様子を見に来た信玄と謙信も、その意図をくみ取ると、騎兵旅団の美しさを堪能しただけで学院に帰って行った。
茶姫は、その美しい騎兵旅団を引き連れ、三国志各地を周り、蜀の諸葛茶孔明とも図って、孔明云う所の『天下三分の計』を成し遂げようとした。
その業が、ほぼ成し遂げられた時に大休止をとったのが、あの河原だ。
リラックスした茶姫は、水着に着替えて泳いだり日光浴をしたり。あやうく、俺と市もスク水でお供をさせられるところだった。
曹操は、その河原で、豊盃のそれを上回る大説法会を開こうと提案してきたのだ。
三蔵法師が「良いことだと思うのですが、いかがですか?」と豊盃説法会の主催者である大橋に振り、大橋が笑顔で頷く。
そして、曹素が連れて来た五十騎の騎兵は、大説法会の開催と参加を呼び掛けるために、三国志各地に散っていったところだ。
「気が進まんかウキ?」
思案顔で腕を組んでいる沙悟浄の茶姫にふる。
「曹操兄は企んでいる、何かは分からんがなッパ。そうとう質の悪い企みだ。曹素があんなに人のいいオッサンになり果てているッパ」
「そうか……しかしなあ、それは大説法会が成功することが前提になっているだろうウキ。それなら、大説法会の成功までは、目標は同じということだろう。まあ、あの河原は、お前が逆賊認定された場所で、警戒するのは分かるけどな、ウキ」
「分かっている……」
言葉を切ったかと思うと、鞍壺にかけた瓢箪をとって頭の皿に持っていく沙悟浄。
ジュウ~
水分補給かと思ったら、強制冷却だった(;'∀')
目を転じると、大橋が書籍範老人に、なにか耳打ちしている。
「……範のお爺ちゃん、会場周辺とかの調査を頼まれたみたいブヒ」
そうだな、凡庸な老人に見えているが、西安の手前で見事に俺たちを発見している。ただの古本屋の爺さんでは無いのかもしれない。
『では、お集りのみなさん、公園まで戻ります。また、歌って踊って、ステップ踏みながら行きますからねぇ、次の……名前はまだ決まってないけど……そう、三国大説法会! うん、これはいいわね。三国大説法会成功に向けて、もうひと頑張り、いっきまーーす(^▽^)/』
再び、ボレロのリズム高まって、大行進は南に向かった。
☆彡 主な登場人物
- 織田 信長 本能寺の変で討ち取られて転生 ニイ(三国志での偽名)
- 熱田 敦子(熱田大神) あっちゃん 信長担当の尾張の神さま
- 織田 市 信長の妹 シイ(三国志での偽名)
- 平手 美姫 信長のクラス担任
- 武田 信玄 同級生
- 上杉 謙信 同級生 配下に上杉四天王(直江兼続・柿崎景家・宇佐美定満・甘粕景持 )
- 古田 織部 茶華道部の眼鏡っ子 越後屋(三国志での偽名)
- 宮本 武蔵 孤高の剣聖
- 二宮 忠八 市の友だち 紙飛行機の神さま
- 雑賀 孫一 クラスメート
- 松平 元康 クラスメート 後の徳川家康
- リュドミラ 旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ 劉度(三国志での偽名)
- 今川 義元 学院生徒会長
- 坂本 乙女 学園生徒会長
- 曹茶姫 魏の女将軍 部下(備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
- 諸葛茶孔明 漢の軍師兼丞相
- 大橋紅茶妃 呉の孫策妃 コウちゃん
- 孫権 呉王孫策の弟 大橋の義弟
- 天照大神 御山の御祭神 弟に素戔嗚 部下に思金神(オモイカネノカミ) 一言主