大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

やくもあやかし物語2・028『ソミア先生の変換魔法と豆まき』

2024-02-03 17:58:01 | カントリーロード
くもやかし物語 2
028『ソミア先生の変換魔法と豆まき』 




 福はぁうちぃ~(^▽^)/(^〇^)/(^皿^)/(^▽^)/(^◇^)/ バラバラバラバラ!

 鬼はぁそと~(^〇^)/(^▭^)/(^〇^)/(^▽^)/(^〇^)/  バラバラバラバラ!


 吹き抜けになった階段ホールから始まった!

 寮生、先生、非番の衛士、食堂のオバチャン、一緒になって豆をまく!

 豆は変換魔法のソミア先生が魔法で作ってくれたビーンズバレル!


「ヒントはね、映画館のポップコーンよぉ(^▽^)」


 きっかけは変換魔法の授業だった。

「映画館のスナックの定番と言えばポップコーンよね?」

 ああ、そうですね……という感じでみんなが頷いた。

 国際色豊かな学校なので、なにか質問されて、全員が頷くことは少ない。

 それが、みんな頷くと言うのだから、映画館のポップコーンというものの普遍性や偉大さが分かる。

 ちなみに、わたしは映画館は苦手で、学校の芸術鑑賞で一回行った以外は、新聞屋さんがくれたチケットでお母さんと行ったのがあるきり。

 そんなわたしでもポップコーンだと思うんだから、大したものなんだ。

「ポップコーン食いてえ(^▢^;)!」

 ひとりよだれを垂らすハイジを無視して先生は質問した。

「では、なんでポップコーンなんだろ?」

 先生の問いかけにはいろんな答えがあって面白かったんだけど、話が横っちょに行きそうなんで省略。

「映画を観てるとね、興奮した観客が物を投げるのよ! 手近なものを投げるから、売店で買ったドリンクとかスナックを投げる! ビンとか缶とか投げたら危ないよね。キャンディーやチョコでも当ると痛いよね。ホットドッグとか投げたらバッチイよね。そこで、映画館のマネージャーが考えたのがポップコーン!」

 ああそうか! みんなピンときた!

「そう、ポップコーンなら遠くに飛ばないし、当たっても痛くないし、それで20世紀に入ったころには映画館の必須アイテムになったわけなのよ」

 なるほどぉ……みんな感心したんだけど、もう半年も授業を受けているから遠慮なく質問が出る。

「でも、あとの掃除大変じゃないですかぁ、ポップコーンのバレルの底って、カスやら塩とかぁ、キャラメル味とかチョコ味とか、けっこうくっつくんじゃないですかぁ」

 ロージーが手を挙げる。

「そう、いい質問ね。実は先生も修業時代に映画館でバイトしていてね、その問題には頭を悩ませて、それでいい手を思いついたわけよ!」

 そう言うと、先生は教卓からポップコーンのバレルを取り出して、「エイ!」と掛け声をかけてみんなにぶちまけた!

 キャ! ウワ! アチャア!

 いきなりだったので、みんなビックリ。ハイジだけは大口開けて、ぶちまけられたポップコーンの二割は食べたけどね(^_^;)。

「……あれ、先生、このポップコーン、口の中で消えてしまうぞぉ!?」

「そう、これには変換魔法がかかっていてね、投げるとかぶち当たるとかのショックが加わると窒素や酸素やらの分子に変わるというか変換されるのよ」

「ああ、なんか余計にお腹減ったぁ」

「アハハ、肝心の食欲を満たさないということでNGになったんだけどねぇ」

 変換魔法のなんたるかを教える、いい授業だった。


「そうだ!」


 その昼休みにハンター・ヤングが閃いた。

「なあ、ヤクモ、ソミア先生の魔法があったら豆まきができるんじゃないか!?」

 ハンターは日本のアニメが好きで、アニメでやっていた豆まきをやってみたくて仕方がなかった。

 同室のメイソン・ヒルといっしょに学校に掛け合ったんだけど「あとの掃除が大変だぞ」というソフィー先生の意見で却下。

 ソフィー先生は日本への留学経験もあって豆まきのなんたるかを(後の掃除が大変)知っていたんだね。

 そこで、ソミア先生のアイデアを元に売りこんだら「他文化を理解するいい機会」ということでOKが出た。

 それで、先月の末から、みんなで変換魔法の実習を兼ねて『消える豆』を大量生産。

「やるからには、本格的にやりましょう!」

 という王女さまの発案で、わたしが巫女に扮してバレル100個分の『消える豆』に御祈祷をした。

 かけまくも~畏き大神に額づき、かしこみかしこみ申さく~

 バサリバサリと幣を振って御祈祷。

 むろん巫女の資格も修業もしてないからカッコだけなんだけど。

「なんか、空気が浄められた感じがするぞぉ……」

 ネルが耳と鼻をひくつかせる。


 で、めでたく節分の午後。


 ホールを手始めに学校中で「福はぁうちぃ~」「鬼はぁそと~」をやっているわけ。

 なんせ、投げたら数秒後には消えるという豆まき専用なので遠慮がない。

 寮や校舎内はあっという間に撒き終わって、一部は校舎の外に出て撒きだした。

「みんな見ろ!」

 ソフィー先生が指差した校舎の屋根から、寮の軒端から、ニョロニョロと濁った人玉のようなものが逃げていく。

「トトロに似たのがあった!」

 ハンターが手を広げて振り返って、半分くらいの子が「ああ……」という顔をする。

「そうだ、ススワタリが家から逃げ出すのが、こんな感じ!」

 オリビア・トンプソンが手を叩いて、やっとわたしも思い出した。

「すごいぞ、ほんとうに厄払いの効果があるのかもしれないぞ」

 ソフィー先生まで褒めてくれて、犬のボビーも「賛成!」という感じで尻尾を振る。

「他の所でも撒いてみよう!」

 誰かが言いだして、全校生徒があちこちに散って「福はぁうちぃ~」「鬼はぁそと~」の声が広い敷地に木霊した。

「見て、森からも上がってる!」

 ネルが最初に発見した。

「ええ、なんだあ?」

 ハイジが横っちょに来る頃には、森の、おそらくは学校に面している側だけだと思うんだけど、いろんな人玉みたいなのが逃げ出していく。

「みんなぁ、森はやめた方がいい。妖精たちのテリトリーだよ!」

 言った時には遅かった。

 わたしの横にティターニアが立っているし(;'∀')

「あ、申しわけありません、日本の行事で、あ、その……ほんの遊びなんです。すぐに止めさせますから!」

「ううん、いいのよ。森の浄化には常々気を付けているんだけどね、気づかないうちにはびこっていたのね……大したことない者ばかりだけど、数が多い。オーベロンに記録させている。森の向こう側はわたしたちでやってみるわ」

「は、はい」

「中には、森の浄化に役立っていると思っていたのも混じっている……見かけによらない者もいるようね」

「すみません、変な効き方したかもです」

「いや、こっちが認識を改めるべきだったのかもしれない、フフフ、オーベロンの奴、なんだか楽しそうだ」

 遠目で見るオーベロンは木々の戦ぎに紛れてしまうけど、わたしが見ても、雪の降り始めに元気づいた子供のようだ。

「では、またね」

 そう言うと笑顔を残してティターニアは消えて行った。

 よかったぁ、トラブルにならなくてぇ。


 ホッとして向きなおると、少し離れた小高い芝の上にデラシネがオーベロンみたいに機嫌よく体を揺らしていた。

 
☆彡主な登場人物 
  • やくも        斎藤やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生
  • ネル         コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
  • ヨリコ王女      ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
  • ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
  • メグ・キャリバーン  教頭先生
  • カーナボン卿     校長先生
  • 酒井 詩       コトハ 聴講生
  • 同級生たち      アーデルハイド メイソン・ヒル オリビア・トンプソン ロージー・エドワーズ
  • 先生たち       マッコイ(言語学) ソミア(変換魔法)
  • あやかしたち     デラシネ 六条御息所 ティターニア オーベロン

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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・078『たみ子からの電話』

2024-02-03 09:30:37 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
078『たみ子からの電話』   





「もしもし、たみ子ぉ?」

『え、なんでぇ?』

「え、あああ……なんとなく、たみ子の感じがして(;'∀')」

 ディスプレーには(辻本たみ子)と出ていたので、ついスマホのつもりで出てしまった。
 お祖母ちゃんが、昭和からかかってくる電話は、わたしのスマホにかかるようにしてくれたんだ。
 昭和にはスマホも携帯電話も無いんだ、たみ子は昭和のわたしんちの固定電話にかけたつもりでいる。

『え、すごい勘!』

「アハハ、学校の住所録見てたらさ、あ、三学期も終わり近いから、ちょっとね整理の真似事してて、ちょうどたみ子のとこらへん見てたしぃ(^_^;)」

『そうなんだぁ、なんかドラマみたいだねぇ(^〇^)』

「アハハ……あ、それでぇ?」

『じつはね、ひい祖父ちゃんが亡くなってね、お葬式に行かなくちゃならなくて』

「え、あ、それはご愁傷様ぁ……」

『それでね、明日の代議会代わりに出てもらえないかなって』

「あ、うん、かまわないけど、高峰君(委員長)居るんじゃないの?」

 代議会は正副委員長のいずれかが出ればいいはずだ。

『ああ……実はね、ナイショってほどじゃないんだけど、高峰君は従兄でね……』

「ええ、そうなんだ( ゚Д゚)!?」

 学年の初めから二人は微妙に近しかった。副委員長引き受ける時も、なんか親し気に声かけてたし。

『それで、二人とも出られないから。それに、今年度最後の代議会だと思うから』

「あ、うん、任しといて。先生には言っとこうか?」

『ありがとう、でも、朝に学校に電話するから』

「あ、そうか、じゃあ、ええと……お疲れとか出ませんように」

『うん、ありがとう、じゃ、お願いします』


 お葬式にいく友だちに「お疲れとか出ませんように」ってしめくくりで良かったのかなあと迷いながら電話を切る。
 これが令和だったら、ラインとかメールとかで、顔文字とかデコレーションとか付けて雰囲気出すんだけどね、声だけで伝えるって友だち相手でも、ちょっと緊張。

「ねえ、この恵方巻どうだろ?」

 お祖母ちゃんが新聞のチラシをヒラヒラさせる。

「あ、大浜の磯寿司!」

 磯寿司は、ここいらでは一番のお寿司屋。

 でも、名前の通り、店は大浜にあって、電車か車、この季節だから自転車というのは勘弁してほしい。

 どうするのかと思ったら、タキさんの『志忠屋』に出かけて、みんなで節分することになった。



☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校一年生
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         1年5組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            1年5組 副委員長
  • 高峰 秀夫             1年5組 委員長
  • 吉本 佳奈子            1年5組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            1年5組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 藤田 勲              1年5組の担任
  • 先生たち              花園先生:4組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  教頭先生
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹        
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部)
  • 灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  
  

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ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第70話《紀伊国坂》

2024-02-03 06:48:21 | 小説7
ここ世田谷豪徳寺 (三訂版)

第70話《紀伊国坂》さくら 






――事務所においでよ――


 鈴奈さんからのメール。


 わたしは鈴奈さんに長いメールを打った。

 どうして学校を辞めたのか、なんでわたしには言ってくれなかったのか。内容はこの二つだけど、学校でのショックがあったので長いメールをなった。その返事が、たった八文字の返事。
 よほど思い悩む事情があったのか、とんでもなくアッケラカンなのか、どちらともとれる八文字だ。


「おひさ~(^▽^)/、ちょうど打ち合わせ終わったところだから、そこで」


 鈴奈さんは、相変わらずの様子で空いてる小会議室を指した。

「まず、あんたの話から聞いたほうがいいって顔だね。飲み物とってくるから、考えまとめときな」

 そう言って鈴奈さんは部屋を出て行った。あたしは鈴奈さんのことが聞きたかったので「あんたの話から」と言われて面食らった。
 で、当然ながら自分のことについては考えがまとまらないまま、鈴奈さんがコーヒーを持って戻ってきた。

「ごめん、ドア閉めて」

「あ、ハイ」

「どっちが変わったか、分からないんでしょ?」

「え……あ……うん」

 核心をついていた。鈴奈さんと話をしようと思ったのは、表面的には鈴奈さんの退学についてだったけど、その動機の根本は、学校にもどったときのみんなのよそよそしい反応。
 その原因が自分にあるのか、学校のみんなにあるのか計りかねていたからだ。 

 で、鈴奈さんの退学が同じようなことからなのか……ようは、自分のことが知りたくて連絡をとったことを分かりながら、鈴奈さんはフランクに対応してくれた。

「それって意味ないわよ。変わったのは両方。さくらも、この世界の人間ぽくなっちゃったから、どうしても出ちゃう。仕事の中で歩き方から言葉の使い方まで仕込まれたでしょ。どうしても出ちゃう。だから普通どおりのポニーテールしてても、違った目で見られる。まあ、帝都だから面と向かっては言わないだろうけど、トイレの洗面あたりじゃやっかみで言う子もいるだろうね」

「すごい。鈴奈さん、トイレの話なんかそのままですよ」

「ハハ、あたしも同じ目にあったから。すぐに慣れるわよ、あんたもみんなも」

「じゃ、鈴奈さんは……」

「続きは晩ご飯食べながら話そうか。おいしいお店知ってるから」



 それから、鈴奈さんとタクシーで、赤坂見附まで行った。



「ここから、ホテルオオタニにかけてが紀伊国坂。知ってるよね、小泉八雲の話?」

 タクシーを降りると、いきなり小泉八雲になった。

「ああ、ムジナの話ですね。出てくるの、みんなムジナが化けたノッペラボー」

「そう……あたし、そのノッペラボーにはなりたくなくってね……」

 鈴奈さんの話は始まっていた……。


☆彡 主な登場人物
  • 佐倉  さくら       帝都女学院高校1年生
  • 佐倉  さつき       さくらの姉
  • 佐倉  惣次郎       さくらの父
  • 佐倉  由紀子       さくらの母 ペンネーム釈迦堂一葉(しゃかどういちは)
  • 佐倉  惣一        さくらとさつきの兄 海上自衛隊員
  • 佐久間 まくさ       さくらのクラスメート
  • 山口  えりな       さくらのクラスメート バレー部のセッター
  • 米井  由美        さくらのクラスメート 委員長
  • 白石  優奈        帝都の同学年生 自分を八百比丘尼の生まれ変わりだと思っている
  • 原   鈴奈        帝都の二年生 おもいろタンポポのメンバー
  • 坂東 はるか        さくらの先輩女優
  • 氷室  聡子        さつきのバイト仲間の女子高生 サトちゃん
  • 秋元            さつきのバイト仲間
  • 四ノ宮 忠八        道路工事のガードマン
  • 四ノ宮 篤子        忠八の妹
  • 明菜            惣一の女友達
  • 香取            北町警察の巡査
  • クロウド          Claude Leotard  陸自隊員 
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