大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・082『お祖母ちゃんの水晶占い』

2024-02-18 09:55:15 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
082『お祖母ちゃんの水晶占い』   




 リビングのドアを開けるとお祖母ちゃんの背中が丸い。


 いちおうお祖母ちゃんは東京タワーと同じくらいの歳だと言ってるけど、本当のところは分からない。
 懐かしそうに話すひいお祖母ちゃんの思い出なんか、ひょっとしたら自分のことを言ってるんじゃないかと思ったりする。だとするとひいお祖母ちゃんは明治の生まれ?
 いや、ひょっとしたら、ひい祖母ちゃんもサバ呼んでて、坂本龍馬とかと同い年かもしれない。

 キッチンの方に周って気が付いた。

 お祖母ちゃんは水晶玉みたいなのをテーブルに置いて、手をかざしながらムニャムニャ言ってる。

 もう、魔法少女じゃなくて、まるっきり魔法使いのお婆さんだよ(^_^;)

「お祖母ちゃん、水晶占いでも始める気ぃ?」

「ちょっと静かにして……」

 なんか、真剣。

「……やっぱり、確証をもつとこまではいかないかぁ。メグリ、お祖母ちゃんにもお茶ちょうだい」

「え、あ、うん」

 それで、ペットボトルの方じゃなくて、急須を出してお茶を淹れる。

「昨日はH3ロケットの打ち上げ成功当たっちゃったからねぇ」

「え、あれも水晶占いで当てたの?」

「あれは、茶柱が立ってさ」

「アハハ、茶柱ぁ……」

「それで、本格的にね、ひい祖母ちゃんが使ってた水晶玉で本格的にね……」

 そう言うと、また背中を丸めてムニャムニャやり始める。

 じゅうぶんお茶を蒸らして、いい塩梅で急須ごとテーブルに持っていく。

 コポコポコポ……

「はい、どうぞ……やだ、お祖母ちゃん鼻に汗かいてるよ」

「……だめだぁ、やっぱ確証もつとこまではいかない」

「いったい、なによぉ……」

 湯呑を置くついでに水晶玉を覗いてみる。

 え……( ゚Д゚)!?

 水晶玉に浮かんでいるのは、ちょっとオネエサンにはなってるけど、わたしの姿だ!

 少しだけおしゃれして時計を見てる。今どき、時計はスマホで間に合わせる。
 それが、腕時計で、左手首の内側なもんだから、肘と手首をクニっと曲げて見る仕草が、とっても女性的!

 すると、手前の方から男の背中が近づいて来て、そいつが「よっ」って感じで手を挙げると、パッとわたしの顔が明るくなって、ハタハタと手を振り返す。

「ね、どう見てもデートの待ち合わせだろぉ?」

「あ……ま、まあね……」

「それでねぇ……男の顔を確かめてるんだけどぉ……」

 お祖母ちゃんが手を動かすと、コントローラーのグリグリを回したみたいにアングルが移動して男の顔が見えそうになるんだけど、もう少しのところで、角度が変わったりボケたりする。

「メグリ、この後姿に心当たり……あるって顔だね」

「え、ああ……」

 その後ろ姿は……九割九分の確率で○○君だ。

「でもね、こういのもあるんだよ」

「え、他にも!?」

 つぎに出てきたのは、どう見ても10円男!

「え、ちょ、こいつは徒(いたる)さんの亭主!」

「いや、他にもね……」

 全部で五人の男……って、思い出した!

「これ、ぜんぶ義理チョコ渡した奴らだ!」

「あ、ああ……そうか、昭和の昔でチョコを撒いちゃったわけかぁ……」

「ええ、どうしよう、どうなっちゃうのよ、これぇ(;'∀')!?」

「ちょ、待って……」

 お祖母ちゃんが操作すると、♡マークといっしょに数字が現れる。

 50 62 75 55 52

「これって……」

「ゴールイン指数、加藤君が62%、後姿君が75%……これは、もうメグリ、あんた次第だね」

「え、だって10円男は徒さんと確定じゃん!」

「ああ……でも、歴史は変わるからねえ」


 じょ、冗談じゃないんですけど!



☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校一年生
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         1年5組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            1年5組 副委員長
  • 高峰 秀夫             1年5組 委員長
  • 吉本 佳奈子            1年5組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            1年5組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 藤田 勲              1年5組の担任
  • 先生たち              花園先生:4組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  教頭先生  倉田(生徒会顧問)
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹        
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 7組) 上杉(生徒会長)
  • 灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  
  
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ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第85話《突然の解除》

2024-02-18 07:33:33 | 小説7
ここ世田谷豪徳寺 (三訂版)

第85話《突然の解除》さつき 





「帰っていいことになりましたよっ(^▽^)!」


 入って来るなり柿崎一曹は生の喜びをむき出しにした。

 ほんとうに子供っぽい。例えて言うなら、二浪で宝塚音楽学校に合格したお姉ちゃんを心から喜ぶ妹みたい。

 でも、拉致同然に駐屯地に連れて来た時も完ぺきに女子高生に化けてたし、油断はならない。

「なにかあったんですか(^_^;)?」

 踵に重心を残して聞いてみる。

「C国で政変があったみたいで。もう、ドローン船のことでイチャモンつけてる場合じゃないみたいなんです。上の方で、もう大丈夫と判断したみたいです!」

 噂では聞いていた。

 C国では不動産問題やら賃金未払やら銀行の預金封鎖やらで抗議活動や暴動が頻発していて、中央も地方政府も危ない状態。今度のドローン船事件も、そのガス抜きっぽい。

「もう、そういうことではもたなくなったんでしょうねえ。と言って、本物の戦争もできなさそうで、ま、とにかく目出度いから、これでいいですよ(^▢^)/、夕方までには出られますから準備して、ゆっくりしてください!」


「こんなもの持たされた」

 昼食で一緒になったタクミ君が胸元から引っ張り出して見せてくれた。

「え、認識票じゃない。これって普段は身分証明といっしょの定期入れみたいなとこに入ってるんでしょ?」

「ああ、特別製。さざれ石の微粒子を混ぜた金属でできてんの。さつき除(よ)け」

「ええ、あたしの指輪だけじゃだめなの?」

「念には念を。これが東京に帰る条件」

 妙なもので、こうやってさざれ石で互いの想念を遮断してしまうと、逆に相手への関心が高まる。一か月近く続いた一緒の暮らしが終わるのが、ちょっと寂しく思えてくる。


 食堂でバカ話をしたのが、タクミ君とのお別れだった。

 彼は、その足で東京に帰った。

 あたしは身の回りを整理し、一時間ほど遅れてS駐屯地を後にした。見送りは柿崎さんだけだ。

 三時の新幹線に乗り、何か月ぶりかで我が家を目指した。



 やっぱり、この一か月緊張していたんだろう。京都を過ぎたあたりで眠ってしまい、目が覚めたら浜松のあたりだった。

 渋谷まで出て、ちょっと息抜き。
 
 店のガラスに映る自分を見て決心。バイト時代から通っている格安の美容院へ。

 なじみの美容師さんは系列の別の店にいっていたので、若い女の子にやってもらった。

「どんな風にしましょうか?」

「任せるわ。とにかく今の自分とイメチェンしたいの」

「分かりました。お客様の感じでしたらぁ……よし! これで……」

 最初はどうなるかと思ったが、思いのほか若々しいフレッシュな変形フェミニンボブにしてくれた。

「ありがとう!」

 そう言って、店を出ると五分で女子高生の一群に取り囲まれた……。


☆彡 主な登場人物
  • 佐倉  さくら       帝都女学院高校1年生
  • 佐倉  さつき       さくらの姉
  • 佐倉  惣次郎       さくらの父
  • 佐倉  由紀子       さくらの母 ペンネーム釈迦堂一葉(しゃかどういちは)
  • 佐倉  惣一        さくらとさつきの兄 海上自衛隊員
  • 佐久間 まくさ       さくらのクラスメート
  • 山口  えりな       さくらのクラスメート バレー部のセッター
  • 米井  由美        さくらのクラスメート 委員長
  • 白石  優奈        帝都の同学年生 自分を八百比丘尼の生まれ変わりだと思っている
  • 原   鈴奈        帝都の二年生 おもいろタンポポのメンバー
  • 坂東 はるか        さくらの先輩女優
  • 氷室  聡子        さつきのバイト仲間の女子高生 サトちゃん
  • 秋元            さつきのバイト仲間
  • 四ノ宮 忠八        道路工事のガードマン
  • 四ノ宮 篤子        忠八の妹
  • 明菜            惣一の女友達
  • 香取            北町警察の巡査
  • クロウド          Claude Leotard  陸自隊員 
  • 孫大人(孫文章)      忠八の祖父の友人 孫家とは日清戦争の頃からの付き合い
  • 孫文桜           孫大人の孫娘、日ごろはサクラと呼ばれる
 
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