やくもあやかし物語 2
日本から修学旅行の御一行様がやってきた!
ほんとうは去年の秋の予定だったんだけど、いろんな事情で年が明けたこの時期になった。
やってきたのは大阪にある聖真理愛(せいマリア)学院高校。
うちの学校にとっても、王室にとっても特別な学校なんだ。
なんと言ってもヨリコ王女がご卒業になった学校。そんで、王宮衛兵でもあり魔法学の先生でもあるソフィア・ヒギンズ先生と聴講生の詩(ことは)さんの母校でもある。
それにそれに売り出し中の高校生声優酒井さくらさんと、女優の榊原留美さんの二人も入ってるんだよ。
二人は中学からヨリコ王女といっしょで、部活も中学では文芸部、高校では散策部といっしょだった。お家は堺市内のお寺で、詩さんも、そのお寺の娘さん。さくらさんとは従姉妹同士の関係なんだそうよ。
たった一日の滞在なんだけど、素敵なことや面白いことがいっぱいあった。
でも、それは、ちょっと置いておくね。
いっぺんに書いたらお腹いっぱいになりそうだし、これだけは先に言っといた方がいいことがあるからなのよ。
それはね……
学校の敷地にバスが8台も入って来て、うちは全生徒で出迎えたんだけど、聖真理愛の半分ほどで……そのことも置いといて、ビックリしたんだよ。
なんと、最後のバスから雛人形が下りてきた!
『あいつ、わたしほどじゃないけど、くらいが高い』
御息所がポケットから首だけ出して不足そうに言う。
もう、いつもの1/12サイズだから、もとのツンツンに戻ってる。
『え……勅使だってぇ!?』
そいつは、巫女服みたいなの上にゴージャスな衣をまとって、御息所の声が聞こえたのか、地上10センチくらいのとこを滑るようにしてやってきた!
『そなたですね、小泉やくもという妖使いは?』
「あ、はい。妖使いかどうかは分かりませんが、小泉やくもという者は、学校で、わたしひとりです」
『うむ、妾は大鷦鷯天皇(おほさざきのすめらみこと) にお仕えする官女にて、八方と申します。見知りおきください』
「オオササギノスメラミコト?」
『ヒ!』
ポケットの声に八方さんは視線をポケットに向けた。
『これはこれは、桐壺帝の先の東宮妃ではありませんか……いわゆる六条御息所さま』
半分イヤミじゃないかと思う感じで腰をかがめる八方さん。
『頭が高いわよ、やくも、こいつ、いや、このお方は第十六代の仁徳天皇の御勅使であらせられるのよ!』
ギョ!?
わたしを含め、周囲5キロ四方くらいの妖精や妖たちがいっせいに息をのんだよ!
☆彡主な登場人物
- やくも 斎藤やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生
- ネル コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
- ヨリコ王女 ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
- ソフィー ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
- メグ・キャリバーン 教頭先生
- カーナボン卿 校長先生
- 酒井 詩 コトハ 聴講生
- 同級生たち アーデルハイド メイソン・ヒル オリビア・トンプソン ロージー・エドワーズ
- 先生たち マッコイ(言語学) ソミア(変換魔法)
- あやかしたち デラシネ 六条御息所 ティターニア オーベロン