大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

やくもあやかし物語2・029『修学旅行+αがやってきた』

2024-02-10 10:03:43 | カントリーロード
くもやかし物語 2
029『修学旅行+αがやってきた』 



 日本から修学旅行の御一行様がやってきた!


 ほんとうは去年の秋の予定だったんだけど、いろんな事情で年が明けたこの時期になった。

 やってきたのは大阪にある聖真理愛(せいマリア)学院高校。

 うちの学校にとっても、王室にとっても特別な学校なんだ。

 なんと言ってもヨリコ王女がご卒業になった学校。そんで、王宮衛兵でもあり魔法学の先生でもあるソフィア・ヒギンズ先生と聴講生の詩(ことは)さんの母校でもある。

 それにそれに売り出し中の高校生声優酒井さくらさんと、女優の榊原留美さんの二人も入ってるんだよ。

 二人は中学からヨリコ王女といっしょで、部活も中学では文芸部、高校では散策部といっしょだった。お家は堺市内のお寺で、詩さんも、そのお寺の娘さん。さくらさんとは従姉妹同士の関係なんだそうよ。

 たった一日の滞在なんだけど、素敵なことや面白いことがいっぱいあった。

 でも、それは、ちょっと置いておくね。

 いっぺんに書いたらお腹いっぱいになりそうだし、これだけは先に言っといた方がいいことがあるからなのよ。


 それはね……


 学校の敷地にバスが8台も入って来て、うちは全生徒で出迎えたんだけど、聖真理愛の半分ほどで……そのことも置いといて、ビックリしたんだよ。

 なんと、最後のバスから雛人形が下りてきた!

『あいつ、わたしほどじゃないけど、くらいが高い』

 御息所がポケットから首だけ出して不足そうに言う。

 もう、いつもの1/12サイズだから、もとのツンツンに戻ってる。

『え……勅使だってぇ!?』

 そいつは、巫女服みたいなの上にゴージャスな衣をまとって、御息所の声が聞こえたのか、地上10センチくらいのとこを滑るようにしてやってきた!

『そなたですね、小泉やくもという妖使いは?』

「あ、はい。妖使いかどうかは分かりませんが、小泉やくもという者は、学校で、わたしひとりです」

『うむ、妾は大鷦鷯天皇(おほさざきのすめらみこと) にお仕えする官女にて、八方と申します。見知りおきください』

「オオササギノスメラミコト?」

『ヒ!』

 ポケットの声に八方さんは視線をポケットに向けた。

『これはこれは、桐壺帝の先の東宮妃ではありませんか……いわゆる六条御息所さま』

 半分イヤミじゃないかと思う感じで腰をかがめる八方さん。

『頭が高いわよ、やくも、こいつ、いや、このお方は第十六代の仁徳天皇の御勅使であらせられるのよ!』

 ギョ!?

 わたしを含め、周囲5キロ四方くらいの妖精や妖たちがいっせいに息をのんだよ!


 
☆彡主な登場人物 
  • やくも        斎藤やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生
  • ネル         コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
  • ヨリコ王女      ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
  • ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
  • メグ・キャリバーン  教頭先生
  • カーナボン卿     校長先生
  • 酒井 詩       コトハ 聴講生
  • 同級生たち      アーデルハイド メイソン・ヒル オリビア・トンプソン ロージー・エドワーズ
  • 先生たち       マッコイ(言語学) ソミア(変換魔法)
  • あやかしたち     デラシネ 六条御息所 ティターニア オーベロン
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ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第77話《江田島にとばされてヘボ将棋》

2024-02-10 08:46:27 | 小説7
ここ世田谷豪徳寺 (三訂版)

第77話《江田島にとばされてヘボ将棋》惣一 






 すっかり冷めたコーヒーを吉本一佐は飲み干した。


「ハハ、猫舌なんでなぁ(ᵔᗜᵔ) 」

 聞きもしないのに一佐はえびす顔で応える。こたえない人だと苦笑してしまう。

 横須賀に着くと、艦長ともども詳報を書くように言われ、艦長室に缶詰めになり、書き上げて基地司令に渡したとたん、江田島幹部学校付の辞令を渡され、その足でヘリに載せられて江田島に急行するという慌しさだった。

 いつの間に用意したのか艦長は退官届を用意していたが、それを出す暇も無かった。随員を一人許可されたので、艦長はオレを指名したのだ。

「すまん。他のもんやと、たかやすの艦内業務に支障が出るんでな。ま、江田島で将棋の相手でもしてくれや」

 艦長はそう言ったが、横須賀に残ってもおそらく艦を下ろされ監禁同様な待機を命ぜられることは予想がついた。一佐と一緒にしておけば手間が省けるというものだろう。


 で、今朝も、あてがわれた二人部屋の教官室で、へぼ将棋の真っ最中。


 ここへ来て五局目の将棋だが、へぼ将棋が謙遜ではないことが、よく分かった。あの佐世保沖での艦隊指揮がうそのようだった。

「佐倉君は強いなあ……」

「はあ、将棋なんて、所詮は戦闘シミレーションですから。実戦は別物です。校長が差し入れてくれた羊羹が、まだ残っています。切ってきます」

 教官用の給湯室に向かう。行き交う教官たちが畏敬のこもった敬礼をしてくれる。大概の教官が自分よりも年齢も階級も上なので閉口する。

 羊羹と茶を盆に乗せて戻ってみると、艦長は窓から海を見ていた。

「わしは、ハンモックナンバーもドンケツのほうでなあ。平穏無事に一佐で退官するはずやったんやけどな……」

 そこまでいうと、さっそく羊羹を一切れ口に放り込み、正直においしそうな顔になった。

「退官したら、日本中の甘いもん屋渡り歩くつもりや……て、どこかでしゃべったんやろな。教頭さんが、これで甘いもん屋の検索でもしてください言うてパソコン持ってきてくれた」

『甘い政府の見通し』というタイトルが目に入った。

「甘いもん屋で検索したら、そんなんが出てきた」

 A新聞のウェブ記事だった。たとえ領海付近を航行していたとは言え『撃沈』するのは言語道断。政府は徹底的に調査したうえで海上保安庁並びに海上自衛隊関係者を厳正に処罰すべきと書いていた。

 総理大臣は記者会見を開き、調査の上必要な処置をとると、ギリギリ客観的な発言をしていたが、記者に「犠牲になった漁船乗組員と遺族への言葉はないんですか?」と詰め寄られ「その点については調査中であります」と返した。
 すると、記者はパネルを出し、燃え盛る操舵室の中の人影を指して「人が燃えているんですよ、この直後に漁船は爆発して沈んでしまいました。遺体も発見されていません、明白じゃないですか」と決めつけた。捕獲した漁船(ドローン船)が沈んだことについても自衛艦が禁じられている警察行動をとったと非難。

 記事はまだ続いていたが、一佐も俺も読むのを止めた。

「わしの首では軽すぎるかもしれへんなあ」

「首ですか?」

「やしまの船長、無事やとええけどなあ……」

 一佐の言う通りだ、ドローン船が爆発した時も、たかやすから引き継いだドローン船を沈めてしまったのもやしまだ。全てをたかやすのせいにするのは無理があるだろう。

 六局目に付き合わされるかと思ったが、窓から見える古鷹山がきれいで懐かしく、二人で登った。

 後日、あの山登りはどっちが言い出したか判然としなかった。

 こちらの方は、ずっと曖昧にしたままになっている。




☆彡 主な登場人物
  • 佐倉  さくら       帝都女学院高校1年生
  • 佐倉  さつき       さくらの姉
  • 佐倉  惣次郎       さくらの父
  • 佐倉  由紀子       さくらの母 ペンネーム釈迦堂一葉(しゃかどういちは)
  • 佐倉  惣一        さくらとさつきの兄 海上自衛隊員
  • 佐久間 まくさ       さくらのクラスメート
  • 山口  えりな       さくらのクラスメート バレー部のセッター
  • 米井  由美        さくらのクラスメート 委員長
  • 白石  優奈        帝都の同学年生 自分を八百比丘尼の生まれ変わりだと思っている
  • 原   鈴奈        帝都の二年生 おもいろタンポポのメンバー
  • 坂東 はるか        さくらの先輩女優
  • 氷室  聡子        さつきのバイト仲間の女子高生 サトちゃん
  • 秋元            さつきのバイト仲間
  • 四ノ宮 忠八        道路工事のガードマン
  • 四ノ宮 篤子        忠八の妹
  • 明菜            惣一の女友達
  • 香取            北町警察の巡査
  • クロウド          Claude Leotard  陸自隊員 
 

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