大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

鳴かぬなら 信長転生記 164『大橋、曹操の指示書を代読』

2024-02-11 14:13:54 | ノベル2
ら 信長転生記
164『大橋、曹操の指示書を代読』信長 




 騎兵部隊の軍旗には『曹』の一字が染め出されている。

 蹲踞した部隊長の顔は兜の眉庇(まびさし)に隠れて判然としなかったが、伏せたままの口上で分かった(-_-;)。

 こいつは、曹茶姫の兄にして三国志三傑の一人である魏王曹操の弟、あのろくでなしの曹素ではないか!

曹素:「御説法大行進の脚をお停めして申し訳ございません。わたくしは魏王曹操の愚弟にして義軍騎兵総司令の曹素にございます。こたびは、玄奘三蔵大師猊下のお噂を、我が賢兄曹操が聞き及び、是非にも魏の都洛陽にご来駕賜り、御説法を賜りますよう申しつかってまいりました!」

三蔵:「待たれよ曹素殿。わたしはただの僧侶に過ぎません。愚禿三蔵でございます。身に余る大師や猊下などの尊称、謙譲は当惑するばかりです。どうぞご無用になさってくださらぬか。それに、あまりに畏まられては意通ぜぬこともありましょう、どうか、友と語らうようにお気楽に申されよ」

曹素:「ハハァ、もとより兄曹操に及ぶも無き愚弟、いささかの礼に欠くやもしれませぬが、ご容赦のほどを……」

 それから曹素は、要領よく曹操の意思を伝えた。

 俺たちを付け回し、一時とはいえ茶姫に自害を決心させた、力で押し潰すような無法さ、野蛮さ、押しの強さが影を潜めている。
 それに、以前は騎兵ではなく、輜重隊の司令であったに過ぎない。それが魏軍騎兵総司令と名乗るとは。

 少しは苦労して人が変わったか、使えると曹操が判断したか。

 さて、三蔵法師を招いて仏の道を聞法したいとは、どんな下心あってのことなのか?

三蔵:「愚僧の法話をお聞きくださるとあれば、いずこへとも喜んで向かわせていただきます」

曹素:「それは有難き仰せ、洛陽より駆けて参った甲斐があります」

大橋:「割り込むようで申し訳ありません。曹素どの、わたしとしては三蔵法師さまのお気持ちとあれば、申し上げることも無いのですが、この豊盃での御説法も始まったばかりです。いま少し、こちらでの御説法を済ませてからではいけませんか?」

猪八戒(茶姫):「それに、説法をお願いするのに五十騎とは言え、騎兵を引き連れての申し入れ、ちょっと剣呑ではないかブヒ!」

曹素:「これは、お弟子の申されよう、もっともでござる。騎兵を引き連れたことに他意はございません。この五十騎は、騎兵総司令としての通常の供揃えでございます。三日前、役宅から参内の途中兄の使いより命を受け、そのままの供揃えで参上したまでで、御懸念とあれば五十騎を先に帰しても構いません」

三蔵:「いやいや、仮にも魏王曹操殿のお使い、ましてその身は王弟であられる。御体面もございましょう。お気持ちは分かりました。一つだけお聞きしてもよろしいか?」

曹素:「ハハ、なんなりと」

 曹素が畏まると、三蔵は馬を下りて、散歩の途中に友だちに会ったような気楽さで曹素に近寄って、腰を下ろして曹素に向き合った。
 突然の距離の詰め方に、みんなは驚き、沙悟浄など思わず本性の茶姫に戻りそうになった。

三蔵:「説法とあれば、たとえ地の果てでも足を向けます。ただ、ただねぇ曹素さん」

曹素:「はい?」

三蔵:「どうせやるなら、魏の国境を開いて、三国志のどこからでも人が参加できるようにしませんか。この豊盃だけでも、万余の人が集まったんです。せっかくだから、途中成都にも寄って蜀のみなさんや、余裕があれば他の町や村にも声をかけたいのですが、どうでしょう?」

曹素:「はい、それについても兄曹操から指示を受けております……」

 そう言うと、曹素は鎧の懐に手を突っ込み、護衛の俺たちは、いっしゅんギクリとした(;'∀')。

曹素:「兄は、こう述べております……」


 曹素はトツトツと兄曹操の指示書を読むが、根が不勉強なせいか、曹操が難しい字や言葉を使いすぎるのか、詰まってばかりなので大橋が「お嫌でなかったら、わたしが読みましょうかぁ?」と微笑みを向ける。

曹素:「あ、これはどうも畏れ入る(#*´△`*# )」

 ことのほか照れまくった曹素から指示書を受け取り、大橋が読み上げた内容に俺たちは息を呑んでしまったぞ。

 

☆彡 主な登場人物
  • 織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生  ニイ(三国志での偽名)
  • 熱田 敦子(熱田大神) あっちゃん 信長担当の尾張の神さま
  • 織田 市        信長の妹  シイ(三国志での偽名)
  • 平手 美姫       信長のクラス担任
  • 武田 信玄       同級生
  • 上杉 謙信       同級生 配下に上杉四天王(直江兼続・柿崎景家・宇佐美定満・甘粕景持 )
  • 古田 織部       茶華道部の眼鏡っ子  越後屋(三国志での偽名)
  • 宮本 武蔵       孤高の剣聖
  • 二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま
  • 雑賀 孫一       クラスメート
  • 松平 元康       クラスメート 後の徳川家康
  • リュドミラ       旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ  劉度(三国志での偽名)
  • 今川 義元       学院生徒会長
  • 坂本 乙女       学園生徒会長
  • 曹茶姫         魏の女将軍 部下(備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
  • 諸葛茶孔明       漢の軍師兼丞相
  • 大橋紅茶妃       呉の孫策妃 コウちゃん
  • 孫権          呉王孫策の弟 大橋の義弟
  • 天照大神        御山の御祭神  弟に素戔嗚  部下に思金神(オモイカネノカミ) 一言主
 
 

 
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ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第78話《S駐屯地の非常事態》

2024-02-11 09:57:43 | 小説7
ここ世田谷豪徳寺 (三訂版)

第78話《S駐屯地の非常事態》さつき 





「申し訳ありませんが、今日は駐屯地から出ないでください」


 司令付きの三曹さんが微妙に慌てて言うと、すぐ部屋を出ていった。

 理由は分かっている。

 佐世保近くの海で海上自衛隊とC国の間でもめ事があったからだ。海上保安庁の巡視船も関係しているらしいんだけど、C国の漁船が沈んだとかで、自衛隊だけが非難されていて、そのとばっちりが自衛隊全てに向けられているんだ。一昨日は航空自衛隊の基地にゴミ袋が投げ込まれ、昨日は一般道を走っていた陸自の車両に石が投げられた。

 他にも自衛隊の施設や駐屯地の周囲でプラカードや横断幕を持った市民団体の人たちがチラホラ。それで、わたしが居るS駐屯地も、マニュアル通りの警戒態勢をとっている。



「しかし、なんかチグハグですね」

 やっと昼前に部屋から解放されて、食堂でお昼を食べながら柿崎さんに聞いた。

「え、なにが?」

「こないだはドラマの著作権問題やらNHKの受信料問題でデモとかあったけど、ネットで盛り上がってただけで、新聞もテレビも取り上げませんでしたよね」

 S駐屯地に来てからは、あまりやることも無いので動画ばっかり見ている。

「テレビ観る人も新聞読む人も減ってきたからね、コアな読者とか視聴者を繋ぎとめようと必死なんでしょうね。A新聞なんか、あちこちで夕刊廃止し始めてるしねぇ、ほら……」

 食堂のテレビを指さす柿崎さん。

 テレビはワイドショーの合間のCMを映しているんだけどACジャパン(日本公共広告機構)のを流している。

 ACジャパンのは、最後に『エーシーー』ってフレーズが入るので日本国民は耳についている。

 エーシージャパン(Advertising Council Japan)は、日本で様々なメディアを通した公共広告によって啓発活動を行っている公益社団法人で、 ACジャパンの啓発メッセージは、スポンサーがつかない時に、致し方なく流される埋め草。ACジャパンのは無料で流されるわけで、つまりは――スポンサーが付きませんでした――と言っているのと同じ。

 スポンサーが付かないということは、その分広告料収入が減ることになって、テレビ局としては死活問題。

「でも、たかやすの乗組員はいい面の皮でしょうねえ、艦長さんはお気の毒に解任されて、どこかで謹慎中とか……」

「え?」

 柿崎さんが意外そうな顔をする。

「さつきさんのお兄さんも、艦長といっしょに謹慎させられてますよ」

「え!?」

 今度は自分が驚く番だ。

 だって、兄貴は最新鋭艦のあかぎに乗り組んでいるはずだ。見るからにポンコツのたかやすに乗り組んでいるわけがない。

「先月、たかやすに移動になっておられたんですよ」

「えええ!?」

「たかやすの艦長は海自の内部では知られた人物です。出世コースからは微妙に外れてますけど、実戦向きの優れた人で、将来有能な幹部は彼の下で修業させられるって言われてますよ」

「そ、そうなんですか!」

「長い目で見れば、佐倉一尉には勲章になるでしょうね」

「そうなんですか?」

「はい、さざれ石のお告げです」

 さざれ石?
 
 なんのこっちゃと?マークが浮かんだ時、トレーを置いて前に人が座った。

「タ、タクミ君……!」

 目の前に座ったのは、東京にいるはずのタクミ・クロウド三曹だった……どうして!?



☆彡 主な登場人物
  • 佐倉  さくら       帝都女学院高校1年生
  • 佐倉  さつき       さくらの姉
  • 佐倉  惣次郎       さくらの父
  • 佐倉  由紀子       さくらの母 ペンネーム釈迦堂一葉(しゃかどういちは)
  • 佐倉  惣一        さくらとさつきの兄 海上自衛隊員
  • 佐久間 まくさ       さくらのクラスメート
  • 山口  えりな       さくらのクラスメート バレー部のセッター
  • 米井  由美        さくらのクラスメート 委員長
  • 白石  優奈        帝都の同学年生 自分を八百比丘尼の生まれ変わりだと思っている
  • 原   鈴奈        帝都の二年生 おもいろタンポポのメンバー
  • 坂東 はるか        さくらの先輩女優
  • 氷室  聡子        さつきのバイト仲間の女子高生 サトちゃん
  • 秋元            さつきのバイト仲間
  • 四ノ宮 忠八        道路工事のガードマン
  • 四ノ宮 篤子        忠八の妹
  • 明菜            惣一の女友達
  • 香取            北町警察の巡査
  • クロウド          Claude Leotard  陸自隊員 
 
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