大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

鳴かぬなら 信長転生記 163『大行進』

2024-02-04 11:45:17 | ノベル2
ら 信長転生記
163『大行進』孫権 





 どこまで狙ってるんだろう!?


 コウちゃん……ボクと大橋姉さんに血の繋がりは無い。兄さんのお嫁さんだから、ほんとうは義姉さんと呼ぶべきだし、書くべきだ。

 でもね、建業の宮殿で「義姉さん、この花壇の前で撮らせて!」と言ったとき、コウちゃんは「いいわよ」と気楽にポーズをとってくれて、こう言った。

「チュウボウが言ってくれる『義姉さん』には『姉さん』の響きがあるわね(^○^)」

「え?」

「音にしたら『ネエサン』でいっしょなんだけど、微妙に柔らかくって実の姉として呼んでくれてるみたいで、とっても嬉しいわ」

「え、あ、そうかなあ……特に意識はしてないんだけどね(#*´△`*#)」

「わたし、姉妹って妹の小橋だけでしょ、ほんとうの弟ができたみたいで、とっても嬉しいのよ(^▽^)」

「ア アハハハ ありがとう姉さん!」

 うまいよ義姉さんは。

 ほんとうの弟みたいということでボクが義姉さんを女として見る目を封じたんだ。
 ボクは、やっと十四歳の、それこそ中坊なんだけど、五年もたてば一人前の男だ。義姉さんとの年齢的な距離はぐんと縮まって来る。それを見据えて、見事に釘を刺した。

 実を言うと、兄さん(孫策)は嫉妬深い。

 ボクが義姉さんを女として見ることは絶対に許さない。だけど、兄さんは鷹揚、温厚な国王として評判をとってきた。ボクと義姉さんの仲を疑ってそうそう邪険なこともできないし、させてはいけない。
 ある日突然、妃、あるいは弟を、あるいはその両方を始末するとかね。そういうことは魏の曹操の専売特許だ。

 そのまま『姉さん』の響きで呼ぶのも面白くないので、それからは『コウちゃん』という呼び方もしている。義姉さん、正しくは紅茶妃大橋だからね。間違ってはいないさ。


 三蔵法師大説法会は予想をはるかに超えて、豊盃始まって以来のフェスティバルになってしまった。
 このまま解散しては、熱が収まらずに、公園の中の人たちは勢いのままに街中に繰り出して、その様子に刺激された豊盃の人たちが……なんというか……暴れるよ。

 豊盃は独立した自由都市だから、日常の治安維持のための警察組織しかない。街中がフィーバーしたら、きっと手が付けられない。

 ピーーーーン!

 マイクがハウリングする尖がった音がして、聴衆は一瞬身を縮こまらせる。

『みなさーーん! まだまだ熱は冷めませーん!』

 ウオーーー!!

『豊大街大通りの使用許可を取っていますので、これからはパレードに移ります!』

 ウオーーー!!

 これで流れができた。三蔵法師を載せた馬を悟空・猪八戒・沙悟浄が囲んで先頭を行き、その後ろをコウちゃんとリュドミラが乗った馬車が続く。むろん、その後ろには、すでに満を超える群衆が続いていく。

「で、コウちゃん、この後はどうするの?」

 ちょっと心配で馬車の傍に寄って聞いてみた。

「アハハ、考えてないわぁ」

「「え(¯□¯;) !?」」

 馬車のリュドミラといっしょに驚いた。

「まあ、二時間もパレードすれば、みんなくたびれて自然解散になるんじゃないのぉ(^_^;)」

 ああ、ちょっと尊敬しすぎたかなあ……

 楽隊はボレロをマーチ風にしてくれて、パレードは豊大街ストリートを北に向かっての大行進になった。

 そして、二キロちょっと行進し、そのあとは北の楼門を開けて豊盃の外に出てしまうという時、大行進の前に五十騎余りの騎兵が現れた……。

 

☆彡 主な登場人物
  • 織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生  ニイ(三国志での偽名)
  • 熱田 敦子(熱田大神) あっちゃん 信長担当の尾張の神さま
  • 織田 市        信長の妹  シイ(三国志での偽名)
  • 平手 美姫       信長のクラス担任
  • 武田 信玄       同級生
  • 上杉 謙信       同級生 配下に上杉四天王(直江兼続・柿崎景家・宇佐美定満・甘粕景持 )
  • 古田 織部       茶華道部の眼鏡っ子  越後屋(三国志での偽名)
  • 宮本 武蔵       孤高の剣聖
  • 二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま
  • 雑賀 孫一       クラスメート
  • 松平 元康       クラスメート 後の徳川家康
  • リュドミラ       旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ  劉度(三国志での偽名)
  • 今川 義元       学院生徒会長
  • 坂本 乙女       学園生徒会長
  • 曹茶姫         魏の女将軍 部下(備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
  • 諸葛茶孔明       漢の軍師兼丞相
  • 大橋紅茶妃       呉の孫策妃 コウちゃん
  • 孫権          呉王孫策の弟 大橋の義弟
  • 天照大神        御山の御祭神  弟に素戔嗚  部下に思金神(オモイカネノカミ) 一言主
 

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ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第71話《I want be Nikujyaga!》

2024-02-04 07:45:05 | 小説7
ここ世田谷豪徳寺 (三訂版)

第71話《I want be Nikujyaga!》さくら 





 メリメリメリ……


 鈴奈(りんな)さんの手は、首の付け根にいくと顔の皮をめくり始めた……( ゚Д゚)!

 で、そこにはノッペラボーのゆで卵みたいな顔が……現れたわけではない。あいかわらず鈴奈さんの顔だ。

「あたし、自分の顔が持ちたいんだ」

 そう言いながら、ガンモの煮付け半分を美味しそうに口に運んだ。

 ここは赤坂見附近くの食べ物屋さん。洋食とか和食とか中華の区別なく、オーナーが月ごとに気に入ったメニューを出すというお店。だから行くまでは、今月がなんの料理か分からない。そこが、この店のおもしろいところだそうだ。

「さくらも、リピーターになったらハマるよ」

 今月は、日本の家庭料理がテーマのようで、煮物と天ぷらが出てきた。味は、うちの百倍はおいしい。

「このあと、メインのおかず。これが目玉だからね」

 シェフってか、ご亭主がおっしゃる。木村さんといって、去年までは大阪のお店で修行していたらしい。

「大阪の、どこにいらっしゃったんですか?」

「南森町の志忠屋、狭いけど、味にうるさい店だったな」

「あ、ひょっとして、そこのオーナー滝川さんて言いません!?」

「そうだよ、知ってんの?」

「はい、大阪のロケで使ったお店です!」

「いやあ、もう半年いたら会えてたねぇ」

「じつは、お店のロケでぇ……」

「へえ、そんなことが(^_^;)」

「それから……」

「あ、そういえば……」

 程よく大阪の話をすると木村さんは厨房に戻った。

 お箸の袋を見ると『東京志忠屋』とあった。きっと店の前にもちゃんと看板があったんだろうけど、身の上話で一杯の頭では気が付く余裕がなかった。

「あたし、アメリカに行くんだ」

 ガンモの残り半分を口に入れて、モグモグさせながら鈴奈さん。

「勉強ですか?」

「うん……オ、もったいないって顔してるね」

「いえ……ハイ、おもいろタンポポって全盛じゃないですか!」

「十八歳の女子高生だからね。自分で言うのもなんだけど、アイドルとしての人気だけ。五年先は、これじゃもたない。メンバーも方向性微妙に違うしね。その違いが決定的になるまでに、お互い勉強しなおそうということになったの。で、あたしはジャズとロックの勉強」

「二つもですか!?」

「うん、とりあえず。行ってみて自分に向いてる方にシフトしていこうと思ってるんだけどね」

「じゃ、ポップスじゃなくて、ロックかジャズになっちゃうんですか?」

「ううん。そのあたりを人並みにやれるようになったら、日本でちゃんとしたポップスやりたいと思って。ま、ヘタしたら今の人気なんかどっか行っちゃって、この世界から忘れ去られる恐れもあるけどね。人間、やって失敗する後悔よりもやらなかった時の後悔の方が大きいっていうからね」

 たった一歳違いだけど、考えてることは、あたしが及びもつかないほど大人。学校で良くも悪くも注目されることなんてことは問題なんかじゃないみたい。

「はい、おまち……」

 そのとき木村さんがメインディッシュを持ってきた。

「主菜って言ってほしいな。今月は家庭料理なんだから」

 で、それは、我が家でもよくやる肉じゃがだった。

「わあぁ、肉じゃがって家庭料理のお父さんて感じですね……お、おいしい(゚д゚) !なんだろ、このフワッとしたおいしさは?」

「食材を煮込む前の下ごしらえと、ちょっと日本酒をつかってるところとか調味料を入れるタイミングかなぁ……おっと、それ以上のレシピは企業秘密」

 スマホを出しかけたあたしに木村さんのご注意。

「肉じゃがって、元々はビーフシチューなんだよ」

「「え、肉じゃががですか!?」」

 鈴奈さんと声が揃った。

「むかし、東郷平八郎さんがね、あ……東郷さんて知ってる?」

「はい、日本海海戦のですね。兄が海上自衛隊なんです」

「じゃ、話は早いな。東郷さんがイギリスの商船学校に入ったときにビーフシチューに出会ってね。調理が簡単で栄養価も高い、日本に帰ってから海軍のマカナイさんと相談して、アレンジしたのが肉じゃがの始まりなんだ」

「ビーフシチューをリスペクトして、日本料理の定番にしたんですね!」

「うん、糸コンニャクいれたところなんて絶妙だね」

「Oh i want be nikujyaga!」

 鈴奈さんがきれいな英語で賛美した。

 聞くと、鈴奈さんは六歳までアメリカで育った帰国子女だった。先見性と身の軽さは、そんなところも影響しているのかもしれない。

 そして、ほんの数か月後に自分の修業時代が来るとは思ってもいないわたしだった……。


☆彡 主な登場人物
  • 佐倉  さくら       帝都女学院高校1年生
  • 佐倉  さつき       さくらの姉
  • 佐倉  惣次郎       さくらの父
  • 佐倉  由紀子       さくらの母 ペンネーム釈迦堂一葉(しゃかどういちは)
  • 佐倉  惣一        さくらとさつきの兄 海上自衛隊員
  • 佐久間 まくさ       さくらのクラスメート
  • 山口  えりな       さくらのクラスメート バレー部のセッター
  • 米井  由美        さくらのクラスメート 委員長
  • 白石  優奈        帝都の同学年生 自分を八百比丘尼の生まれ変わりだと思っている
  • 原   鈴奈        帝都の二年生 おもいろタンポポのメンバー
  • 坂東 はるか        さくらの先輩女優
  • 氷室  聡子        さつきのバイト仲間の女子高生 サトちゃん
  • 秋元            さつきのバイト仲間
  • 四ノ宮 忠八        道路工事のガードマン
  • 四ノ宮 篤子        忠八の妹
  • 明菜            惣一の女友達
  • 香取            北町警察の巡査
  • クロウド          Claude Leotard  陸自隊員 
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