巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
関西で新学年の二日目でクラス替えをやった中学があった。
三年生だけなんだけど、臨時休校にしてクラス替えをやり直したというから一大事なわけで、全国ニュースになっていた。
それと同じくらいの一大事がうちの学校でもあった!
なんと、新しい二年のクラス、お仲間のほとんどがいっしょの2年3組!
ロコ、たみ子、真知子、佳奈子、それにメグリ(わたし)の五人はもちろんのこと、委員長の高峰君や10円男の加藤高明なんかもいっしょなんだ!
そして、担任はコワモテの藤田先生じゃなくて、4組の担任だった花園先生だよ(^▽^)!
「これはね……」
真知子が腕組みしながら前かがみになる。つられてわたしたちも顔を寄せる放課後の食堂。
「去年の4組って、ちょっと大変だったみたいなのよ……」
「「「「ああ……」」」」
4組は文化祭前に栗原さんが亡くなって、急きょ担任の花園先生が栗原さんがやるはずだったジュリエットの役をやった。
本番は大成功で、ご両親も感謝されていたという話だけど、どこかギスギスしているという噂はあった。
他にも生徒同士のトラブルや、授業の先生との行き違いとか、結果的には丸く収まったということだったけどね。
「担任にしたら、すごいプレッシャーだったと思うのよ」
「「「「うんうん」」」」
「初めての担任だったし、これ以上こじれたら、ね……」
「分かります! 花園先生辞めちゃうかもですね!」
「声大きい」
「すみません(;'∀')」
たみ子に言われて首をすくめるロコ。みんなは、さらに首を寄せる。
「それで……自分で言うのもなんだけど、学年でいちばんまとまりのある5組の主要メンバーを花園先生のクラスにいれたんだと思う」
「「「「そうなんだ!」」」」
「これは責任重大です!」
「……生意気な言い方かもしれないけど、ちょっと甘いんじゃないかな」
佳奈子が少し身を起こす。
「なんでですか?」
「もし、花園先生が教師を天職だと思うんなら、少々むつかしいクラスでも担任すべきだと思うよ。若い時に楽しちゃったら、あとが大変だと思う」
佳奈子は二年になったばかりだというのにバレー部の部長をやらされている。三年はさっさと引退しちゃうし、新入部員はまだ思うほどには入ってないらしいし、そういう身の上と引き比べると、微妙に批判的になる。
「ごめん、やっぱクラブ気になるから行って来る」
佳奈子はカバンを抱えて食堂を出て行く。でも、少し行ったところで明るく手を振って、けなげに体育館に駆けていった。
そして、わが身のラッキーさを感謝し、新クラス2年3組の無事を祈るために近場の宮之森神社にみんなで行った。
ジャララ~ン パンパン
お作法通り鈴を鳴らし二礼二拍手一礼して神頼み。
「えと、ここの御祭神てなんだたっけ?」
お願いしてから、たみ子が不敬なことを言う。
「八幡様ですよ、誉田別命(ほんだわけのみこと)、応神天皇ですね」
「あ、そうだったんだ」
「知らずにお願いしてしまったぁ」
「じゃ、もう一回お詫びも兼ねて」
真知子の音頭で10円のお賽銭を入れて、もう一回頭を下げる。
帰りにお守りを二つ買う。
一つは花園先生に、もう一つは佳奈子に。
お金を払って顔を上げると、なんと巫女さんは御神楽さん( ゚Д゚)!
ビックリしていると、口の形だけで――アルバイト――と言ってウィンクした。
☆彡 主な登場人物
- 時司 巡(ときつかさ めぐり) 高校2年生
- 時司 応(こたえ) 巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
- 滝川 志忠屋のマスター
- ペコさん 志忠屋のバイト
- 猫又たち アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
- 宮田 博子(ロコ) 2年3組 クラスメート
- 辻本 たみ子 2年3組 副委員長
- 高峰 秀夫 2年3組 委員長
- 吉本 佳奈子 2年3組 保健委員 バレー部
- 横田 真知子 2年3組 リベラル系女子
- 加藤 高明(10円男) 留年してる同級生
- 藤田 勲 2年学年主任
- 先生たち 花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀 音楽:峰岸 教頭先生 倉田(生徒会顧問)
- 須之内直美 証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
- 御神楽采女 結婚式場の巫女 正体は須世理姫
- 時司 徒 (いたる) お祖母ちゃんの妹
- その他の生徒たち 滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 7組) 上杉(生徒会長)
- 灯台守の夫婦 平賀勲 平賀恵 二人とも直美の友人