大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・091『御神楽さんは須世理姫』

2024-04-07 10:53:38 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
091『御神楽さんは須世理姫』   





 四月七日、明日は始業式、春爛漫の今日も結婚式場に向かうホンダZ。


 春休み中にみんなで出かけようと誓い合ったけど、一年の時とちがっていろいろある。まあ、三週間もすればゴールデンウィークだしね。残念がるよりも前向きに考えることにしてバイトに励む。

 ムム、今日も四組!

 本日の御式のとこには四組八家の苗字が並んでる。

「「よし!」」

 直美さんといっしょに気合いを入れて職員用入り口から事務所経由でスタジオを目指す。

 直美さんの手には事務所でもらった『本日の御式』の詳細。

「あ、やりぃ~!」

 パラっとめくって小さくガッツポーズの直美さん。

「どうかしたんですか?」

「二組目に変更があってさ……あ、マリッジブルーじゃないわよ(^_^;)。人数が変更で、一組目と同じなのよ!」

「え、それはラッキー(^▽^)」

 喜んでから――お客さまにはどんなご都合があってのことか分からない――ので、慌てて口を閉じる。

「そうね、でも、これは参列の方が増えてのことだから、いいよ」

「あはは、ですか(^_^;)」

 直美さんは人数に合わせて照明やら椅子の間隔やらを変えている。日に何組も、月に何十組、年に数百組の写真を撮るけど、撮られる方は一生に一度の事。間に合わせや粗略な撮り方はしない。

 しかし、ごくたまに前後で同じ人数の場合は同じ設定でいけるので楽ができる。

「ちょっと式場の外撮って来るよ、朝の光だし、桜も満開だしね!」

 一組目の撮影が済むと、直美さんは宣言した。

「助手しましょうか」

「いいよいいよ、必ず使うってもんでもないし」

 一眼レフを掴むと、直美さんは楽しそうに外に行った。

 須之内写真館の結婚アルバムは新郎新婦のと親族一同のだけではなく、式場のあれこれ、式場の外観の写真も付けている。去年、令和の公民館の前で、53年前に式を挙げたというお婆さんに会って、お婆さんは、その時の記念写真を持っていた。


 さて、しばしの息抜き、読みかけのコミックを広げる。


「それ『葬送のフリー〇ン』でしょ」

 ギク( ゚Д゚)!?

 顔を上げると巫女の御神楽采女さんが笑顔で立っている。

「大浜の神主さんが自前の巫女さん連れて来たんで、わたしも忙中閑ありなのよ」

 ヤバイ! 

 いま読んでるのは令和のヒット作……て、御神楽さん、なんで見抜いてる!?

「こないだは、のぞき見してたでしょ」

「あ、あ…………(;'∀')」

 覗いたわけじゃない、通りかかったら見えてしまっただけで。

「時司巡、あなた魔法少女……時司応(ときつかさこたえ)の孫ね?」

「あ、あ……はい(;'∀')」

 なんか、すごい圧を感じて、あっさり白状してしまった。

「そんなに畏まらなくてもいいわよ、あれを見られてアルバイトの巫女でございもないだろうしね」

「あ、え、えと……」

「わたし、本名は須世理姫(すせりびめ)って言って、昔は、この丘の上にお社があったの」

「スセリビメ?」

「濁らない読み方ではスセリヒメ。ま、ここでは御神楽采女だから、こっちでは御神楽さんとか采女さんとかでいいからね」

「えと、神さま……?」

「まあねぇ」

「あ……でも、なんで、結婚式場に?」

「言ったでしょ、もともとお社があったし、結婚式場ってお目出度いでしょ。お目出度って神さまには栄養みたいなものだからね」

「あ、そかそか……」

「ああ、ごめん、いきなり出てきて神さまだって言われてもビックリだよね。まあ、おいおい知ってもらったらいいし。まあ、取りあえず素性は明らかにしておこうって、ま、引っ越しのご挨拶みたいな……あ、つぎの組、席次で揉めてるっぽい、やれやれ、じゃ、またね!」

 シャララ~ン

 そう言うと御神楽、スセリビメさんは、一昔前のアニメのようなエフェクトを残して消えていってしまった(^_^;)。

 

☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校一年生
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         1年5組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            1年5組 副委員長
  • 高峰 秀夫             1年5組 委員長
  • 吉本 佳奈子            1年5組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            1年5組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 藤田 勲              1年5組の担任
  • 先生たち              花園先生:4組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  教頭先生  倉田(生徒会顧問)
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹        
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 7組) 上杉(生徒会長)
  • 灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  
   

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ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第132話《髑髏ものがたり・4》

2024-04-07 07:06:48 | 小説7
ここ世田谷豪徳寺 (三訂版)

第132話《髑髏ものがたり・4》惣一 




 自衛隊員たる者、常住坐臥、機に臨み変に応じ、いついかなる時も沈着冷静でなければならない。任官以来五省と共に心がけてきたし、これからもそうである自信もある。

 だが、これには驚いた。

 久々の上陸休暇で豪徳寺の自宅に帰ると、玄関の框で上の妹さつきが待っていて、そのまま狭いカーポートに連れていかれた。

「ホンダZじゃないか、こんなレトロな車に乗ってんのか!?」

「車は、どうでもいいの。ちょっと中に入って」

 180に近いガタイを無理やり助手席に収めると、さつきがシートの後ろから、なにやら小汚い箱を取り出した。

 さつきは怖い顔をして蓋を開けた。

 で、常住坐臥も五省も吹っ飛んでしまった。


 そこには、一目で人間のそれと分かる頭蓋骨が入っていた。


「さつき、おまえ、これ……!?」

「そう、髑髏よ。それも旧帝国陸軍中尉の……」

 それから、さつきは、その頭蓋骨にまつわる話と、夢にひい祖母ちゃんが出てきて話したことなどをまくし立てた。

「要するに、この中尉殿の身元を明らかにして遺族にお返ししたい。ついては、オレになんとかしろってことだな……?」

 さつきは、黙ったまま頷いた。

「……分かった」

 当てがあっての返事ではない。激戦地のニューギニアで戦死し、その首を刈り取られ、骨格標本のようにされた旧軍人を、自衛隊員としては放置しておくわけにはいかない。

「こんな車の中に放置しておいちゃいけない。仏壇の前に安置しよう」

「でも、お母さん、こういうの苦手だからいやがるよ」

「そういう問題じゃない。車を出せ!」

 オレはさつきに命じて、豪徳寺近くの仏具屋に行き、新しい骨箱と4寸用の骨箱覆いを買って入れなおした。

「母さん、殉職した先輩の遺骨を預かってきたんだ、今夜一晩仏壇の前に置かせてくれ」

 大きな意味では間違いではない理由を言って納得してもらった。それでも渋い顔をするので話題を変えた。

「さくらのやつ、なんだか急に歌で有名になったな。艦の中でも聞いてるやつがいてさ。『佐倉さくらってのは、君の妹さんじゃないか?』って艦長に聞かれて返事のしように困ったよ」

「困ることないじゃない、ちょっと曲は古いけど、アイドルの『ア』ぐらいにはなってるんだから自慢しときゃいいじゃない」

「自慢はしないけど、艦長に聞かれて白も切れないから、そうですって返事したよ」

「それでよろしい」

「おかげで、こんなにサイン頼まれちまったよ」

 白地に青の碇のマークやあかぎのロゴの入ったハンカチの束を出した。

「で、さくらは? そろそろ帰ってくる時間じゃないの?」

「フフ、それがラジオに出演するって……あら、そろそろ時間!」

 おふくろは古いCDラジカセを出して、無邪気に末娘の紙屑が燃えるようなバカ話に、うんうん頷いて、さつきといっしょに笑っている。
 
 これも親孝行、渋茶を飲みながらさくらとパーソナリティーのやり取りに耳を傾ける。
 人の話を最後まで聞いていないとか鼻濁音ができていないとか、語彙が少ないとか、でも声だけは可愛いとか兄らしい半畳を入れる。

 そうやって一家の団欒をリードしながら、残った休暇で大先輩の身元確認をどうやろうかと頭を悩ませる佐倉一等海尉であった……。



☆彡 主な登場人物
  • 佐倉  さくら       帝都女学院高校1年生
  • 佐倉  さつき       さくらの姉
  • 佐倉  惣次郎       さくらの父
  • 佐倉  由紀子       さくらの母 ペンネーム釈迦堂一葉(しゃかどういちは)
  • 佐倉  惣一        さくらとさつきの兄 海上自衛隊員
  • 佐久間 まくさ       さくらのクラスメート
  • 山口  えりな       さくらのクラスメート バレー部のセッター
  • 米井  由美        さくらのクラスメート 委員長
  • 白石  優奈        帝都の同学年生 自分を八百比丘尼の生まれ変わりだと思っている
  • 原   鈴奈        帝都の二年生 おもいろタンポポのメンバー
  • 坂東 はるか        さくらの先輩女優
  • 氷室  聡子        さつきのバイト仲間の女子高生 サトちゃん
  • 秋元            さつきのバイト仲間
  • 四ノ宮 忠八        道路工事のガードマン
  • 四ノ宮 篤子        忠八の妹
  • 明菜            惣一の女友達
  • 香取            北町警察の巡査
  • クロウド          Claude Leotard  陸自隊員 
  • 孫大人(孫文章)      忠八の祖父の友人 孫家とは日清戦争の頃からの付き合い
  • 孫文桜           孫大人の孫娘、日ごろはサクラと呼ばれる
  • 周恩華           謎の留学生
 
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