巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
令和の今朝は連休の初日だ。
まあ、暦的にはレギュラーの土曜日で、私立の高校なんかは授業があって、ちょっと前を歩いている私立の生徒はいつものように駅を目指してる。だけど、寿川沿いの道を往く人はウィークデイの半分ほどしかいないよ。
あ、カギ閉めたかな!?
うちのお祖母ちゃんは、夕べから出かけているので、今朝の戸締りはわたしだ。幸い、家を出てすぐに思い出したんで、すぐに確認。
ガチャガチャ
よし、大丈夫。指さし確認までして念を入れる。
三軒隣りの早乙女さん(例のお婆ちゃんの家)は、まだ雨戸が閉まっている。
お婆ちゃんが付いてこなくなったのはいいんだけど、連休初日で、一家そろって朝寝を決め込んでいるのは羨ましい。
橋を渡って昭和の街へ。
Gの標石を念入りに蹴ってから最寄りの奥宮駅。
桜はとうに散ったけど、八重桜が残っていて、ちょっとだけ雰囲気。
ホームに立つと、電車待ちのオッサン達がみんなタバコ喫ってる。
ベンチの横の吸い殻入れからは煙が立っていて、駅員さんがボトルに入った水をぶっかけて消している。この駅員さんがホームの際まで出てくると列車の到着が近い。
令和の時代だと、次の列車がどこまで来てるかディスプレーに出るんだけど、昭和の駅にそんなものは無い。
え……際まで出てきた駅員さん、また引っ込んだ。
顔が緊張してる。そうか、この四月に入社した新人さんだ。
もう列ができ始めてるし、そのままシルシのところに立つ。
上りと下りの線路の間に低い立札『線路は灰皿ではありません』が立っている。よく見るとホームの下はタバコの吸い殻が虫の死骸みたいにウジャウジャ。
もう一年も通っているけど気が付かなかった。
むろん、タバコ喫ってる人がいるぐらいのことは思ってたけど、こんな嫌な感じに思うのは気分が令和の連休モードになっているからかもしれない。
戸締りをし直したせいか、電車が微妙に遅れた。それとも一本遅いのに乗ってしまったか、宮の森の駅でロコといっしょにはならなかった。
時計を見ると、いつもより二分ちょっと遅れてる。
時計の下に札がぶら下がっていて『4月27日よりダイヤ改正しました』と案内が出ている。
そーか、気が付かなかった(^_^;)。
昇降口で上履きに履き替えて顔を上げると御神楽さんが立っている。
「あら」
「ちょっといい?」
「あ、はい」
カバンを持ったまま中庭へ。
「早乙女さんち、雨戸が閉まったままだったでしょ」
「え、ああ……」
三十分前に羨ましく思ったばかりばかり。
「朝寝なんかじゃないのよ……」
「え、じゃあ?」
「実は……」
「え……ええええ(; ゚д゚) !?」
心臓が停まりそうになった。
早乙女さんのお爺ちゃんが、お婆ちゃんを殺して自分も命を絶った!
線路に虫の死骸のような吸い殻を見つけた、あの時の千倍も気分が悪くなってきた……。
☆彡 主な登場人物
- 時司 巡(ときつかさ めぐり) 高校2年生
- 時司 応(こたえ) 巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
- 滝川 志忠屋のマスター
- ペコさん 志忠屋のバイト
- 猫又たち アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
- 宮田 博子(ロコ) 2年3組 クラスメート
- 辻本 たみ子 2年3組 副委員長
- 高峰 秀夫 2年3組 委員長
- 吉本 佳奈子 2年3組 保健委員 バレー部
- 横田 真知子 2年3組 リベラル系女子
- 加藤 高明(10円男) 留年してる同級生
- 藤田 勲 2年学年主任
- 先生たち 花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀 音楽:峰岸 教頭先生 倉田(生徒会顧問)
- 須之内直美 証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
- 御神楽采女 結婚式場の巫女 正体は須世理姫
- 早乙女のお婆ちゃん 三軒隣りのお婆ちゃん
- 時司 徒 (いたる) お祖母ちゃんの妹
- その他の生徒たち 滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 7組) 上杉(生徒会長)
- 灯台守の夫婦 平賀勲 平賀恵 二人とも直美の友人