大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・096『運命の道案内!』

2024-04-28 17:00:29 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
096『運命の道案内!』   




「認知症の進んだお婆ちゃんを夫のお爺ちゃんが、発作的に殺してしまったのよ!」

 結婚式場で巫女をやっている時には見せたことが無い悲痛な表情で言う御神楽さん。

 同居の家族は、前の晩から旅行に出かけて、家にはお婆ちゃんとお爺ちゃんしか居なかった。

 あれは……朝寝なんかじゃなかったんだ(;'∀')。

「いまなら間に合う」

「え?」

「旅先からお孫さんが電話して、誰も出ないもんだから、防犯カメラをチェックして気づいたのよ。これ……」

 御神楽さんがワイプすると目の前に3Dの画像が出てきた。

 早乙女家は、万一のことを考えて、家の三か所にカメラが設置されていて、スマホで確認できるようになっているんだ。

 でも、死角になっているんだろう、映像にお爺ちゃんもお婆ちゃんも姿は映ってない。雨戸が閉まったままなのは異常。

 息子さんが車で戻って確認することになったようだ、奥さんとお孫さんが心配顔で見送っている。

「息子さんが発見したら万事休す、でも、今なら間に合うかも!」

「どうするんです(;'∀')?」

「実はね……」

「え…………ええ!?」


 というわけで、わたしは有楽町を歩いている。


 御神楽さん(須世理姫)が乏しい神さまの力でテレポさせてくれたんだ。

 電車で行っていたら間に合わないからね。

 ……緊急事態なんでスマホで調べながら歩いてる。

 わたしのスマホは魔法少女仕様なので、昭和46年でも使える。

 むろん昭和の時代にスマホがあるわけないので、できるだけ使わないようにしてるし、使う時はこっそり手鏡を見ているふりをする。

 でも、今は緊急事態。道を歩きながら、ある場所を探している。

 目標は二つ。

 Tテレと略して呼ばれる帝国テレビ。それと、Tテレにたどり着けないで道に迷っている若き日のお婆ちゃん。

 昭和46年ではまだ二十歳の池田すみ子さんだ。

 Tテレで行われる新人俳優のオーディションを受けに行くんだ。お婆ちゃん、いや、すみ子さんは、初めての有楽町で迷ってしまって、オーディションに間に合わなくて俳優の道を諦めてしまう。

 でも、受けていれば合格して、令和の時代では大御所女優として君臨。

 むろん認知症にもなっていなくて、お爺ちゃんに殺されることもない。

 そうなのよ!

 池田すみ子さんを見つけて、無事に……と、思ったらスマホの地図にドットが現れた!

 すみ子さんを表す赤のドット!

「あの……ひょっとしてTテレを探してます?」

 できるだけ冷静に声をかける。

「あ、はい。東京は初めてなんで……あなたも!?」

 あ、これは想定外。

「いいなあ、学生さんは制服で来られるからぁ。わたし、着ていくものに悩んでしまって地図の確認がおろそかでえ(^_^;)」

「あ、わたしは家の用事で……」

 適当なことを言ってごまかして、地図に出ているもう一つの青のドットを目指す。

 すみ子さんはオーディションを受けるだけあって、明るくてよくしゃべる。

 もし道案内がもうちょっと長くかかったら、適当に合わせてるだけの時司巡の話は種切れで破綻してしまってただろう。

「ああ、ここだここだ! どうもありがとう、時司さん!」

 令和のTテレビからは拍子抜けするようなビルだったけど、五分ちょっとで着くことができた。

「じゃ、がんばってくださいね!」

 手を振ってTテレに入っていくすみ子さんを見送ると、急いで横っちょの道に入って、一日に一回の魔法で学校に戻った。


「いけないわねえ、時司さん、連休前で気が緩んでるんじゃないのぉ」


 一時間目の授業には遅刻してしまい、ちょうど授業だった花園先生に叱られてしまった(;'∀')。

 

☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            2年3組 副委員長
  • 高峰 秀夫             2年3組 委員長
  • 吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 藤田 勲              2年学年主任
  • 先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  教頭先生  倉田(生徒会顧問)
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫
  • 早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹        
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 7組) 上杉(生徒会長)
  • 灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  
 
 


 
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REオフステージ(惣堀高校演劇部)014・千歳のアウフヘーベン

2024-04-28 08:07:08 | 小説7
REオフステージ (惣堀高校演劇部)
014・千歳のアウフヘーベン                      
※ 本作は旧作『オフステージ・空堀高校演劇部』を改名改稿したものです




 予感はしていたが校長室に呼ばれた。


「沢村千歳さんのチャレンジ精神と、それを受け入れた小山内啓介君の前向きな心に拍手を送りたいと思います」

 校長のお祝いの言葉はテイク3でOKが出た。

 千歳と啓介は校長の前に進み、恭しく励ましの言葉がしたためられた色紙を受け取った。

 パシャパシャパシャパシャパシャパシャ

 すかさずフラッシュが光り、連写のシャッター音が続く。

「なんとか夕刊に間に合いますよ(^^♪」

 A新聞の記者が――嬉しいでしょう!――と言わんばかりの笑顔で言った。

「3人並んだところの写真なんかいりませんかね?」

 理髪店の匂いをプンプンさせながら校長が言う。A新聞の取材と聞いて、校長は1時間の時間休をとって散髪に行ってきたばかりである。

「連写した中から選びます、自然な感じなのがいいですから。動画も撮っていますので、それはネットで流れますから(^▽^)/」

 天下のA新聞だ、どうだ嬉しいだろう! というマスコミ笑顔で記者はとどめを刺した。


 千歳は身障者対応の自販機の前で撮った『乾杯の写メ』を付けてブログに載せると共に、主要四大紙に送ったのだ。


 予想通りA新聞が食いついてきた。

 完全バリアフリーモデル校である惣堀高校の演劇部に車いすの女生徒が入部したのである。こういうことが大好きなA新聞の地方欄にはうってつけだった。

 こうして、千歳の演劇部への入部は惣堀高校のエポックになった。

 エポックというのは、なにか始まりそうな予感というような意味で、それ以上でもそれ以下でもない。

 だから、校長が予定よりも2週間早く散髪に行った以外には、世間も学校も、取り立てて何もしてはくれない。


 そんなこと、千歳は百も承知だ。


 千歳は「千歳は頑張っているんだ」という熱意の発信ができればいい。この発信のポテンシャルが高ければ高いほど学校を辞める時は「仕方が無かった」ということになる。

――惣堀高校では地に足を付け前に進むことの大切さを学びました――

 その後の言葉に困っていた。 こんなに充実してるんだったら辞めることはないだろうと言われる。ある都知事の言葉を聞いて、これで行こうと決めた。

――そして、千歳はあえて惣堀を後にします――

 なぜ? どうして!? みんな聞くだろう。

――自分をアウフヘーベンするために!――

 おお!

 みんな、御本家のアウフヘーベンを知っているから、あとは聞かない。

 あとは満面の笑みで校門を後にすれば、一丁上がり!

「大丈夫よ、新聞の地方欄なんてほとんど注目なんかされないから」

 隠れ家としての部室が欲しいだけの啓介は新聞社なんかが来て、少し不安になっていた。
 まっとうな演劇部活動をやろうという気持ちは毛ほどもない。ないから不安になる。しかし、千歳の見透かしたような物言いには、どこかカックンとなってしまう。


 だが、一つだけ影響があった。


「部員の充足、もう一週間待ってあげるわ」

 生徒会副会長の瀬戸内美晴がポーカーフェイスで伝えに来た。

「え、どういう風の吹き回しやねん?」

「校長の申し入れよ。あたしもうかつだった、校長が居るのにも気づかなくて生徒会顧問に確認したのよ『演劇部の部室明け渡し、今日確認します』て、そーしたら『もうちょっと待ってやってくれへんやろか』て言われたのよ。むろん、校長とはいえ素直に聞く気はないけどね、定例の部長会議やる視聴覚教室の許可願の不備を突かれてね。ま、それで一週間延期。一週間延ばしてもなんにも変わらないだろけど、フェアにやりたいからね。ほんじゃ……」

 イーーーダ(σ`д゜) !

 美晴が出て行ったドアに思い切りアカンベエをする啓介。

 …………( ˂˃ ‸ ˂˃)

 千歳は、もう一工夫やってみる必要を感じた……。



☆彡 主な登場人物
  • 小山内啓介       演劇部部長
  • 沢村千歳        車いすの一年生  留美という姉がいる
  • ミリー         交換留学生
  • 瀬戸内美春       生徒会副会長
  • 生徒たち        セーヤン(情報部) トラヤン
  • 先生たち        姫ちゃん 八重桜


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