タキさんの押しつけ映画評・22
『サイボーグ009/アルゴ』
この春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ
これは、悪友の映画評論家・滝川浩一が仲間内に流しているホットな映画評ですが、もったいないので、本人の了承を得て転載したものです。
☆サイボーグ009
石森章太郎の009/第1シーズン 「ブラックゴースト 黄泉編」及び、最終章「神々との戦い編」を知悉し、あのラストを受け入れた人にのみお薦めする。それ以外の人には絶対納得出来ない。
神山監督は石森ワールドを知り尽くし、その美点も欠点も 石森章太郎の先見性・作品世界に提示される思想・それ故の苛立ち…総てを神山の理解の中で昇華して本作の製作を行っている。
従って、原作世界(石森ユニバースと言い換えても良い)の肯定的視点に立たなければ、本作の良し悪しは解らない……どころか説明抜きのラストに怒りすら覚えるだろう。
エヴァンゲリヲンのファンには理解いただけると思うが、エヴァテレビシリーズを全く見ずに 劇場版第一作を見た人間(私です)の理解不能と苛立ち・怒りを想像していただきたい。テレビシリーズを見ていて、ラスト2話の展開はファンを四分五裂に引き裂いた……あの混乱も思い出していただきたい。
エヴァは今回の劇場版「序」・「破」
そして間もなく公開の「Q」において再構築されるようだが、予告を見る限り その内容は不明であり、さらなる混乱も予想される。最終話が第4作として噂される「四」ないし「死」としてでるならば、それを見るまで評価は出来ないのだが……。
さて、懐かしき「SFの集中と拡散」の時代を共有する兄弟姉妹たちよ、アタシャ石森が生きていて 脚本製作に携わったのかと思ってしまいました。あの懐かしきサイボーグ・島村ジョーが再び目の前に現出しようとは……これは奇跡と言って決してオーバーではない。決して神山監督の能力を見くびっていた訳ではないが、ここまで見事に石森ユニバースを再現されるとは思っていなかった。
確かに、せめて2部作品にしてもっと丁寧に作ってくれと思わんでもないが(途中で姿を消すメンバーがいたり、結局 最期まで正体不明の少女がいたりする) この唐突なぶった切り感……我々も当時「石森の中途半端」として怒り狂った、いわばご都合主義にしか見えないストーリー展開を是正して「石森ワールド」の完成(当然、神山解釈による)を目指して欲しかった。
ではあるが、本作の在り方を認めたいと思う。
「彼の声」という存在(現象)が現れる。何らかの陰謀なのか、「彼」が「神(唯一神・創造主)」なのかは解らない。この謎に解答を与える為のストーリーの切断なのだが、それにしても、何故009只一人だけがその結論に至ったのか……そこんところのセンテンスがいくら何でも不足している。或いは、極めて熱心なキリスト教信徒なら、考えるよりもっと直感的に理解してみせるかもしれない。
石森がクリスチャンであったかどうかは知らないが、彼の作品世界にキリスト教的思想が深く関わっているのは間違いない。神山の仕事はそこまで斬り込んでいるという事なのだろう。 作画は見事と言う他ない、3DCGと手描きアニメの合体の おそらく最高作品である。3D映像も問題ない、これなら差額を支払っても文句は無い。原作「黄泉編」のラストにシンクロするシーンがある。私の中には 悲しむフランソワーズを抱き留めたハインリッヒがジョン・ダンの詩を口ずさむシーンが浮かんだ。009フリークなら滂沱の涙必至であります。どちらかと言えば「貧乳タイプ」の003が「攻殻~」の素子並みに爆乳に成っているのは神山サービス? そうそう、イワンの両目がチャンと出ていて なかなかハンサムな赤ん坊でありました。これもサービス?♪
☆アルゴ
イランのアメリカ大使館占拠時の実話です。全く忘れていました。ベン・アフレックの監督としての手腕は本物です。「ザ・タウン」でも唸りましたが、今作でも唸りっぱなしです! 完全脱帽。話は実話である分 結果は知れている訳で(大成功だった)、それをこれだけサスペンスフルにハラハラドキドキさせながら見せる手腕は物凄いの一言。本作は今年度アカデミーの一角を狙っていると言われますが 納得であります。映画に含まれる政治性・アメリカ政府の欺瞞・アメリカ人の正義・原理主義への嫌悪感……総てのバランスがギリギリに線引きされている。
このバランス感覚が素晴らしい、まさにBRAVO~!!であります。
にしても、原理主義ってのは嫌ですねぇ、反吐が出ます……いやいやイスラムだけじゃありませんキリスト教だってコミュニズムだって一緒です。世の中、中庸で自由なのが一番、イラン人のパーレビに対する憎しみや 何故パーレビがそこまで嫌われるか その裏でアメリカが果たした役割……そんな事は全部理解した上で、ヤッパリ原理主義は受け入れられない。そんならお前の個人的な怨みはどうなんだって?…そんな痛い事は聞いては成りませぬ。アハハハ 勝手勝手~チャンチャン。
『サイボーグ009/アルゴ』
この春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ
これは、悪友の映画評論家・滝川浩一が仲間内に流しているホットな映画評ですが、もったいないので、本人の了承を得て転載したものです。
☆サイボーグ009
石森章太郎の009/第1シーズン 「ブラックゴースト 黄泉編」及び、最終章「神々との戦い編」を知悉し、あのラストを受け入れた人にのみお薦めする。それ以外の人には絶対納得出来ない。
神山監督は石森ワールドを知り尽くし、その美点も欠点も 石森章太郎の先見性・作品世界に提示される思想・それ故の苛立ち…総てを神山の理解の中で昇華して本作の製作を行っている。
従って、原作世界(石森ユニバースと言い換えても良い)の肯定的視点に立たなければ、本作の良し悪しは解らない……どころか説明抜きのラストに怒りすら覚えるだろう。
エヴァンゲリヲンのファンには理解いただけると思うが、エヴァテレビシリーズを全く見ずに 劇場版第一作を見た人間(私です)の理解不能と苛立ち・怒りを想像していただきたい。テレビシリーズを見ていて、ラスト2話の展開はファンを四分五裂に引き裂いた……あの混乱も思い出していただきたい。
エヴァは今回の劇場版「序」・「破」
そして間もなく公開の「Q」において再構築されるようだが、予告を見る限り その内容は不明であり、さらなる混乱も予想される。最終話が第4作として噂される「四」ないし「死」としてでるならば、それを見るまで評価は出来ないのだが……。
さて、懐かしき「SFの集中と拡散」の時代を共有する兄弟姉妹たちよ、アタシャ石森が生きていて 脚本製作に携わったのかと思ってしまいました。あの懐かしきサイボーグ・島村ジョーが再び目の前に現出しようとは……これは奇跡と言って決してオーバーではない。決して神山監督の能力を見くびっていた訳ではないが、ここまで見事に石森ユニバースを再現されるとは思っていなかった。
確かに、せめて2部作品にしてもっと丁寧に作ってくれと思わんでもないが(途中で姿を消すメンバーがいたり、結局 最期まで正体不明の少女がいたりする) この唐突なぶった切り感……我々も当時「石森の中途半端」として怒り狂った、いわばご都合主義にしか見えないストーリー展開を是正して「石森ワールド」の完成(当然、神山解釈による)を目指して欲しかった。
ではあるが、本作の在り方を認めたいと思う。
「彼の声」という存在(現象)が現れる。何らかの陰謀なのか、「彼」が「神(唯一神・創造主)」なのかは解らない。この謎に解答を与える為のストーリーの切断なのだが、それにしても、何故009只一人だけがその結論に至ったのか……そこんところのセンテンスがいくら何でも不足している。或いは、極めて熱心なキリスト教信徒なら、考えるよりもっと直感的に理解してみせるかもしれない。
石森がクリスチャンであったかどうかは知らないが、彼の作品世界にキリスト教的思想が深く関わっているのは間違いない。神山の仕事はそこまで斬り込んでいるという事なのだろう。 作画は見事と言う他ない、3DCGと手描きアニメの合体の おそらく最高作品である。3D映像も問題ない、これなら差額を支払っても文句は無い。原作「黄泉編」のラストにシンクロするシーンがある。私の中には 悲しむフランソワーズを抱き留めたハインリッヒがジョン・ダンの詩を口ずさむシーンが浮かんだ。009フリークなら滂沱の涙必至であります。どちらかと言えば「貧乳タイプ」の003が「攻殻~」の素子並みに爆乳に成っているのは神山サービス? そうそう、イワンの両目がチャンと出ていて なかなかハンサムな赤ん坊でありました。これもサービス?♪
☆アルゴ
イランのアメリカ大使館占拠時の実話です。全く忘れていました。ベン・アフレックの監督としての手腕は本物です。「ザ・タウン」でも唸りましたが、今作でも唸りっぱなしです! 完全脱帽。話は実話である分 結果は知れている訳で(大成功だった)、それをこれだけサスペンスフルにハラハラドキドキさせながら見せる手腕は物凄いの一言。本作は今年度アカデミーの一角を狙っていると言われますが 納得であります。映画に含まれる政治性・アメリカ政府の欺瞞・アメリカ人の正義・原理主義への嫌悪感……総てのバランスがギリギリに線引きされている。
このバランス感覚が素晴らしい、まさにBRAVO~!!であります。
にしても、原理主義ってのは嫌ですねぇ、反吐が出ます……いやいやイスラムだけじゃありませんキリスト教だってコミュニズムだって一緒です。世の中、中庸で自由なのが一番、イラン人のパーレビに対する憎しみや 何故パーレビがそこまで嫌われるか その裏でアメリカが果たした役割……そんな事は全部理解した上で、ヤッパリ原理主義は受け入れられない。そんならお前の個人的な怨みはどうなんだって?…そんな痛い事は聞いては成りませぬ。アハハハ 勝手勝手~チャンチャン。