大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

やくもあやかし物語・159『びしょ濡れプンプン丸』

2022-10-18 14:46:22 | ライトノベルセレクト

やく物語

159『びしょ濡れプンプン丸 

 

 

 おまえは誰だ!

 

 びしょ濡れが赤い口を開いて怒鳴った。「誰だ!」と言うのだから、わたしのことを聞いているんだろうけど、勢いが強いので疑問というよりは攻撃だ。

「あ、あなたこそ誰よ!」

 むかしのわたしだったら、ワタワタして「あ、え、えと……(;'∀')」ということになるんだけど、少しはあやかし慣れしてきて、ちょっぴりだけど度胸も付いた。

 だから、ノッケにかましておく。

 体一つでやってきたんじゃなくて、とりあえず、机と椅子はわたしのだしね。

「ここは船長室だ、ひとの船長室に居るお前は密航者だ、密航者は、簀巻きにして海に放り込むのが海の掟だ!」

「え、海に放り込む( ゚Д゚)!」

 ドスン

 わたしの度胸はいっしゅんで崩れてしまった。

 衝撃がリアルだと思ったら、机は座卓ほどの、椅子は座椅子の低さに縮んでしまった。

「ああ、事と次第によってはな(;`O´)o」

 びしょ濡れのくせに、めちゃくちゃ怖い。びしょ濡れプンプン丸だ!

「えと、自分の部屋に戻ったら、机の上にミカンがあって『あ、ミカンだ』と思ったら、ここに来てた」

 手にしたミカンを、ズイっと突き出す。

「ミカンは、あるのが当たり前、この船はミカン船だ。てめえ、積み荷のミカンを勝手に食ったなあ」

「ち、ちがうちがう! この机だって……え、わたしのじゃない?」

 わたしのも木の机だけど、材質も色も違う。樫の木かなんかで、黒光りするごっつい木でできている。

「見え透いた言い訳しやがって」

「え、あ、あ……」

 チリリリン チリリリン

「ウワ!?」

 黒電話が鳴って、びしょ濡れプンプン丸はビックリして、ピョンと後ろに跳んだ。

 揺れる船の中なのに、跳んでもふらつかないのに感心。

 わたしは、ちょっと安心した。

 机も椅子も変わっているけど、黒電話だけは付いて来てくれたみたい。

 チリリリン チリリリン

「そ、その黒いのはなんだ! なんでリンリン鳴ってるんだ!?」

 チリリリン チリリリン

「えと、電話だから……出てもいい?」

 チリリリン チリリリン

「と、とにかく、その音を停めろ!」

 チリリリン チリリリン

「うん、分かった……もしもし」

『船長さんに替わってもらえますか』

 交換手さんが言うので、受話器を突き出す。

「替わってって」

「こ、これをか?」

「取らなきゃ、話ができない」

「お、おう……」

「あ、逆さま」

「逆さ……お、おお!?」

 正しく持つと交換手さんの声がしたようで、ビックリしている。

 ……交換手さんは、なにかうまいこと言ってくれているようで、びしょ濡れプンプン丸は目に見えて神妙になって、ふつうのびしょ濡れになった。

「は、はい、承知いたしました。そういうことであれば、きちんとお祀りいたします、は、は、はい、替わります!」

 びしょ濡れは、うやうやしく両手で受話器を捧げ持つと、わたしに手渡した。

「もしもし」

『みかんの神さまということにしました。やくもを大切に扱えば、無事に積み荷を届けられると言っておきましたので、大丈夫ですよ(^▽^)』

「みかんの神さま!?」

『そっちに行くわけにはいきませんが、がんばってくださいね』

「がんばるって、わたし、戻りたいんだけど」

『手立ては考えますが、無事に着けばなんとかなりそうですよ』

「あ、えと……」

『それでは、グッドラック』

「あ、ちょ……」

 プツン…………電話は一方的にきれてしまった。

「これは、航海安全の為に遣わされたミカンの神さまとは存じませんでした。まことにご無礼いたしましたっ!」

「あ、ども。そこまで平伏されなくても(^_^;)……それで、あなたと……この船はなんなの?」

「はい、改めて名乗らせていただきます」

 畏まると、ずぶ濡れは身にまとっていたずぶ濡れを脱いだ。

 ずぶ濡れは上にまとっていた蓑一つで、その下はお祭りの法被みたいな下に細身のパンツルック。

 ちょっとカッコいい女の子。 

「わたくし、紀伊国屋ブンコと申す若輩者でございまして……」

「紀伊国屋文庫?」

 頭の中にお馴染みのラノベ文庫のいくつかが点滅する。

 ☆角川……☆電撃……☆講談社……☆スニーカー……☆オレンジ……☆GA……

 

 ラノベの読み過ぎで、とうとう文庫のあやかしが出てきてしまった!?

 

☆ 主な登場人物

  • やくも       一丁目に越してきて三丁目の学校に通う中学二年生
  • お母さん      やくもとは血の繋がりは無い 陽子
  • お爺ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い 昭介
  • お婆ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い
  • 教頭先生
  • 小出先生      図書部の先生
  • 杉野君        図書委員仲間 やくものことが好き
  • 小桜さん       図書委員仲間
  • あやかしたち    交換手さん メイドお化け ペコリお化け えりかちゃん 四毛猫 愛さん(愛の銅像) 染井さん(校門脇の桜) お守り石 光ファイバーのお化け 土の道のお化け 満開梅 春一番お化け 二丁目断層 親子(チカコ) 俊徳丸 鬼の孫の手 六条の御息所 里見八犬伝 滝夜叉姫 将門 アカアオメイド アキバ子 青龍 メイド王 伏姫(里見伏)
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泣いてもωオメガ 笑ってもΣシグマ・98『ヤバイ!』

2022-10-18 06:30:16 | 青春高校

泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)

98『ヤバイ!』小菊  





 九州と山口県が梅雨入りした。

 東京の梅雨入りは四五日は先だろうに、神楽坂のあたしは一足早く梅雨入りだ。

 なんたって腐れ童貞と兄妹だと言うことが学校中に知れ渡ってしまったんだから!

 マッジがお弁当を持ってきた。

 

 学食のトラブルをいち早く知って、お弁当を用意して届けてくるのはアッパレよ。

 四時間目を十分だけカットして買いに行けと言う学校も無茶だわよ。

 だからってメイド服でやってくる!? 

 校舎のどこからでも丸見えの大蘇鉄の前で待ってる!?

「いいか、マッジさんは格安で下宿する代わりにメイドの仕事をしてくれているんだ。大蘇鉄の前に居たのは、玄関が掃除中で、教頭先生が『蘇鉄の下なら陽が当たりませんよ』と言ったから、マッジさんは悪くない! 兄妹だってことが大っぴらになるけど、バレるのは時間の問題だっただろうが、な、お前も分かれよ、な、分かるだろ?」
 
 腐れ童貞は、小学生に言うみたいにウダウダ説明。でも、説明されても気持ちは収まらないよ!

「うすうす分かっていたけど、二人がホントに兄妹だったなんて、とってもアメージングじゃない!」

 増田さんが手放しで、いつもの彼女では考えられないくらいクリアーに叫ぶ。

 お蔭で「同居してるイトコなの!」という最後の設定も言えなくなってしまった。

 おまけに金髪美人のメイドまで居るというので、あたしの家そのものへの関心まで高まって来た。

「どういうつもりよ、あんたたち!?」

 学校帰りの交差点、急ぎ足も虚しく赤信号にひっかかって、とうとう叫んでしまった。

 電柱や自販機の見え隠れに十人ほどの生徒が付けてきているのだ。

 …………………………。

 あたしの叫び声に応える者はいない。追跡を諦める者もいない。

 青信号までは間があるけど、エイヤ! 車の間隙を縫って横断歩道を駆ける。

 角を曲がってコンビニの前で立ち止まる。いきなり走ったのでわき腹が痛い、ジュースでも買おうかと店内に目を向けると、ここにもうちの生徒たち。
 
 ヤバイ!

 再び駆け出す。

 ここらへんは、子どものころからの遊び場、でもって神楽坂というのは通り一本中に入るとラビリンス。

 三回角を曲がった路地で息をつく。

 ハーハー

 すると、パート帰りのお母さんが通りを歩いているのが見える。

「お、お母さ~ん!」

 こんなにお母さんを懐かしく感じたのは保育所以来だ。

「あ、どうしたの小菊!?」

 いきなり路地から飛び出してきたあたしにビックリのお母さん。

「もう、あたしイヤダ!」

 お母さんの胸にすがり付いていると、また気配!

「あ、あれ、妻鹿さんのお母さんだ!」

「キャー、小菊と雄一を生んだ奇跡の母よ!」

 え、ええ!?

 いきなりのことで、わけもわからず立ちつくすお母さん。

 申し訳ないけど、お母さんをスケープゴートにして逃げる。

 このまま帰ったんじゃ、家に殺到されてしまう!

 あたしはご町内をグルッと大回りするハメになった……。

 

☆彡 主な登場人物

  • 妻鹿雄一 (オメガ)     高校三年  
  • 百地美子 (シグマ)     高校二年
  • 妻鹿小菊           高校一年 オメガの妹 
  • 妻鹿幸一           祖父
  • 妻鹿由紀夫          父
  • 鈴木典亮 (ノリスケ)    高校三年 雄一の数少ない友だち
  • 風信子            高校三年 幼なじみの神社(神楽坂鈿女神社)の娘
  • 柊木小松(ひいらぎこまつ)  大学生 オメガの一歳上の従姉 松ねえ
  • ミリー・ニノミヤ       シグマの祖母
  • マッジ・ヘプバーン      ミリーさんの知り合いの娘 天性のメイド資質
  • ヨッチャン(田島芳子)    雄一の担任
  • 木田さん           二年の時のクラスメート(副委員長)
  • 増田汐(しほ)        小菊のクラスメート
  • ビバさん(和田友子)     高校二年生 ペンネーム瑠璃波美美波璃瑠 菊乃の文学上のカタキ
  •            


 

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銀河太平記・129『ココの資料整理』

2022-10-17 10:05:49 | 小説4

・129

『ココの資料整理』心子内親王  

 

 

 戦史資料室黒書院分室……ちょっと長いから分室。

 分室の資料は、文書、電子資料、現物資料に大別できるけど、その大半が悲惨なもの。

 

 例えば、ある前線基地への補給。給水要請があってから実施までに三週間もかかっている。

 当時の火星は極地方を除いて地下水は無いから、補給を受けた時には手持ちの水を飲み干して、半数は渇きで死んでいるでしょう。

 

 戦闘終了後、戦果確認のために数えた敵の遺棄死体、15・5人。

 死体数に小数点が付いているのは、バラバラになった死体が多いので、欠損部位を集めて推測した数が入っているから。

「最終的には、手足の数で決めるそうでござる」

 軍に問い合わせてくれたサンパチさんが教えてくれる。

 

 自軍戦死者取り扱いについての遺族の感想。感謝の言葉が多かったけど、こんな苦情があった。

―― 最後のキスをしようとしたら、夫の口の中には舌が無かった ――

「戦死体は、腐敗防止のために、内臓や舌は取り出してしまうのでござるよ」

 これは、問い合わせもせずにサンパチさんの即答。地球でもそうなんだ(;'∀')

 

 集落が敵襲を受け、少年一人を残して一家全滅。

 少年は、赤ん坊を背負って、まるで兵隊さんのように直立不動。

 ちょっと見には、可愛くも凛々しい姿。

「背中の赤ん坊は亡くなった妹でござる。少年は、直立不動で赤ん坊が火葬される順番を待っているのでござる」

「でも、なんで、直立不動?」

「少年の父は軍人でござる……死者を悼む最高の礼が直立不動……これしか知らなかったのでござりましょう」

 

 そして、次に手に取ったのが『赤錆の露頭』と、ちょっと文学的なタイトルが付いた記録。

「マス漢戦争の遺物でござるな」

 戦争記録は戦時中のものに限らない。戦後、年月が経ってから発見されたものもある。これは、そういうものの一つのよう(049『赤さびの露頭』)。

 

 発見者は旅人とあるだけだけど、記録は詳細だった。

 旅の途中、赤錆の露頭にぼろ布のようなものが見えて、部下と共に掘ってみると、五人分のミイラ化した遺体が出てきた。検分すると、全員後ろ手を縛られた扶桑軍兵士。二人が男性、三人が女性。

 男性兵士のミイラには首が無く、女性兵士は下半身が露出している。

「なんと云うこと……」

「往々にしてあることでござる、戦争とは狂気そのものでござるよ」

「しかし……ここ、三年前だから、まだ現場が残ってるわよね」

「行ってみますか?」

「うん、胡蝶さんに頼んで……自分でお話してみる」

 資料を閉じて立ち上がると、ハンベに緊急速報のシグナル。開いてみようと思ったけど、脚は胡蝶さんの詰所に向かっているので、後回しにすることにする。

 

「了解しました」

 

 胡蝶さんの即答で、わたしはサンパチさんとともに赤錆の露頭を目指した。

 

 

※ この章の主な登場人物

  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵              天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任
  • 扶桑 道隆             扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)    将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥(児玉隆三)        地球に帰還してからは越萌マイ
  • 孫 悟兵(孫大人)         児玉元帥の友人         
  • 森ノ宮親王
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン             太陽系一の賞金首
  • 氷室(氷室 睦仁)         西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)         西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)          西ノ島 フートンの代表者
  • 須磨宮心子内親王(ココちゃん)   今上陛下の妹宮の娘

 ※ 事項

  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
  • 西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
  • パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
  •  

  

 

 

 

 

 

 

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泣いてもωオメガ 笑ってもΣシグマ・97『メイド服のマッジさん!』

2022-10-17 06:11:41 | 青春高校

泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)

97『メイド服のマッジさん!オメガ 

 



 某国のミサイルが落ちてくるのは宝くじに当たる確率ぐらいだと思い始めている。

 まあ、危機感というものは長続きしない。

 今日もミサイルは落ちてこないが、そのミサイル的確率の事故が学校で起こっちまった!


 なんと、学食でガスと電気のトラブルが重なったのだ。

 

 うちは都立高校の中でも指折りの古い学校なので、耐震補強とかバリアフリーとかは進んでいるんだけども、ライフライン設備はすごく老朽化している。

 校内放送で教頭先生がグダグダ説明したけど、要は、本日食堂は使えないということだ。

 おまけに、学食にパンを運んでいた車が事故で大破という事態が重なった。

 つまり、自販機のジュース以外、校内では手に入らなくなったのだ(;'∀')。

―― 四時間目を十分短縮します。その十分間で、弁当を持たない生徒は校外で調達してください ――

 学校の対策は無茶だ。

 十分で行って帰ってこられるのは、学校の半径二百メートル以内だ。

 昼休みの半分を買い出しに当てるとしても、半径四百メートル。

 利用できるコンビニは三軒、パン屋が二軒。この五軒で五百人はいるであろう学食生徒の昼飯をまかなうことは不可能だ。

「いっそ、午後の授業をカットすれば、問題解決になるんじゃないっすか?」

 真面目に提案したんだけど、教壇のヨッチャンは完全に無視だ。

 どうも俺のω顔では、真面目な発言とは受け止めてもらえない。

「……脱走だな」

 ノリスケが呟く。

 買い出しに出たまま帰らないという意味なのは、付き合いが古いので以心伝心。

 無言のうちにチョイ悪男子を決意したところで、校内放送がかかった。

―― 一年三組の妻鹿小菊さん、三年三組の妻鹿雄一君、至急玄関まで来なさい ――

 さっきの教頭先生が俺と小菊をまとめて呼び出しているのだ。

 何事かと駆けつけてブッタマゲタ!

 

 なんと、マッジさんが濃紺のワンピースに胸当てエプロンという真正メイド服姿で立っていた!

 

 それも玄関車寄せの真ん前、大蘇鉄のところにだ!

 いかにも、メイドさんが御主人の使いでやってきて、うやうやしく控えています……って感じ!

 ここは、本館のどこの教室からでも見える! 見えてしまう!

 俺が彼女のところに駆け寄った時には、校舎中の窓からの視線が突き刺さってきやがった。

 もし、視線を可視化したとしたら、俺は体中に矢が突き刺さった弁慶の立ち往生! マッジさんは、体中から奇跡の後光を発しているマリア様!

 そりゃそうだろう、アキバのメイドじゃなくて金髪で青い目の真正メイドさんなんだ、注目を集めないはずはねえ!

「お呼びたてして申し訳ありません、学校食堂の事故を知りましたので、お弁当をお持ちしました」

 マッジさんは二つのランチボックスを持っていた。

「え、あ、いや、どうもすみません(#'∀'#)」

 大きい方を受け取ると、マッジさんは俺の肩越しに玄関の方に頭を下げる。

 ランチボックス持ったまま首を捻じ曲げると、怖い顔をして玄関から出ようとしない小菊が目に入った。

 ちょっとマズイよな……。

 

☆彡 主な登場人物

  • 妻鹿雄一 (オメガ)     高校三年  
  • 百地美子 (シグマ)     高校二年
  • 妻鹿小菊           高校一年 オメガの妹 
  • 妻鹿幸一           祖父
  • 妻鹿由紀夫          父
  • 鈴木典亮 (ノリスケ)    高校三年 雄一の数少ない友だち
  • 風信子            高校三年 幼なじみの神社(神楽坂鈿女神社)の娘
  • 柊木小松(ひいらぎこまつ)  大学生 オメガの一歳上の従姉 松ねえ
  • ミリー・ニノミヤ       シグマの祖母
  • マッジ・ヘプバーン      ミリーさんの知り合いの娘 天性のメイド資質
  • ヨッチャン(田島芳子)    雄一の担任
  • 木田さん           二年の時のクラスメート(副委員長)
  • 増田汐(しほ)        小菊のクラスメート
  • ビバさん(和田友子)     高校二年生 ペンネーム瑠璃波美美波璃瑠 菊乃の文学上のカタキ
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魔法少女マヂカ・293『ポチョムキン村・2・エリザベータ』

2022-10-16 09:42:32 | 小説

魔法少女マヂカ・293

『ポチョムキン村・2・エリザベータ語り手:マヂカ 

 

 

『不思議の国のアリス』にこんなシーンがあった。

 

 お姉さんの歴史の話がつまらなくて、木の根方で、ついウトウトするアリス。

 すると、草原からピョコっと顔を出した兎が懐中時計を出して「しまった、遅刻する!」とピョンピョン跳ねて行ってしまう。そこから不思議の国の物語が始まってしまう。

 別の異世界でアリスに振り回された(078『M資金・12 アリス』~)ことがあるので瞬間身構えてしまう。

 しかし、そいつは兎ではなく、どっちかというと兎では無くてアリスに近い。

 アリスのような少女なのだが、金髪ではなくて銀髪、瞳も淡い銀鼠色。そして「どっちかっていうと」と断わりが入るのは頭にウサ耳が付いているからだ。

「なんだ、こいつは?」

 悟嬢が眉をひそめていぶかるが、そいつは恐れる風もなく、フワフワしながらこちらを見ている。

「あなたたち、迷い人さんね?」

 言われて、悟嬢と顔を見かわす。

 ポチョムキンとの戦いで結界の割れ目に呑み込まれて、ここに来てしまったのだ。

 してやられた、あるいは嵌められたという意識はあるが、アリス的迷い人というのとは違う。自分の意思で来たわけじゃないからね。

「そういう顔をしている人を『迷い人』って言うの、わたしに付いて来て」

 そう言うとウサ耳は、クルっと前を向いて、ズンズン歩き出した。

「わたし、エリザベータ。微妙に長いからエリザでもベータでもいいわよ。あなたたち魔法少女でしょ?」

「分かるのか?」

「ええ、迷い人で無事にたどり着いたのなら、ただものじゃないわ。男なら魔法使い、女なら魔女か魔法少女。見た感じボルシェビキでもないし邪悪でもないから魔法少女。で、お名前は?」

「マジカ、こっちは孫悟嬢」

「孫悟嬢!?」

「知っているのか、わたしのこと?」

「ええ、孫悟空の話は有名でしょ。日曜学校の子たちも好きで、ジュニア版の『西遊記』は人気よ。本当は、ちゃんと大人版の『西遊記』を読みたいんだけど、ミーシャが、あ、ミーシャっていうのは日曜学校の先生でね、ミーシャが『子どもには難しいですから』って読ませてくれないの。本当は、難しいんじゃなくて、子どもには読ませられない内容だからくらいは分かってる。いわゆるZ指定ってやつよ。わたしは、もう子どもじゃないんだから、読んだって問題ないと思うんだけどね、まあ、ミーシャの言うことは90%は正しいことだからね。まあ、がまんしてるのですよ」

「「フフフフ」」

「失礼ね、わたしは、もう十六歳なのよ! 男子だったら士官学校だって入れるわ、予科だけど。で、孫悟嬢ということは、悟空の奥さん?」

「孫だ」

「フフ、そうよね。キタイスキー(中国人)は夫婦別姓だから、夫婦で苗字が同じわけないもんね」

「フフ、物知りだな、エリザ」

「ありがとう、悟嬢! エリザでもベータでもいいって言ったけど、ほんとはエリザって呼ばれる方が好き。だって、ベータって、英語で言えばBのことでしょ、なんだかB級のエリザって感じ。だからエリザ」

「こっちの方は知ってるのかい?」

 悟嬢がわたしを指さす。

「うん、もう千年くらいやってるヤポンスキーの魔法少女。通り名は渡辺真智香。渡辺って言うのは武士階級の名族の苗字よね。清和源氏の流れをくむ河内源氏」

「驚いたなあ、だが、渡辺は清和源氏ではない、嵯峨源氏だけどな」

「サガ源氏? ウウ、ミーシャの10%の間違いか。でも、酒呑童子をやっつけた源頼光の四天王には違いないでしょ?」

「酒呑童子や源頼光まで知っているのか!?」

「へへ、日曜学校の知識だけどね。わたしのウサ耳は伊達じゃないのよ」

「「なるほどな」」

 悟嬢と声が揃ってしまった。

 

 パパパパパーーーン!!

 な、なんだ!?

 

 村の入り口まで来ると、盛大に花火があがった!

 

※ 主な登場人物

  • 渡辺真智香(マヂカ)   魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 要海友里(ユリ)     魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 藤本清美(キヨミ)    魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員 
  • 野々村典子(ノンコ)   魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 安倍晴美         日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長 アキバのメイドクィーン(バジーナ・ミカエル・フォン・クルゼンシュタイン一世)
  • 来栖種次         陸上自衛隊特務師団司令
  • 渡辺綾香(ケルベロス)  魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る
  • ブリンダ・マクギャバン  魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員
  • ガーゴイル        ブリンダの使い魔
  • サム(サマンサ)     霊雁島の第七艦隊の魔法少女
  • ソーリャ         ロシアの魔法少女
  • 孫悟嬢          中国の魔法少女

※ この章の登場人物

  • 高坂霧子       原宿にある高坂侯爵家の娘 
  • 春日         高坂家のメイド長
  • 田中         高坂家の執事長
  • 虎沢クマ       霧子お付きのメイド
  • 松本         高坂家の運転手 
  • 新畑         インバネスの男
  • 箕作健人       請願巡査
  • ファントム      時空を超えたお尋ね者

 

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泣いてもωオメガ 笑ってもΣシグマ・96『微妙な気持ち』

2022-10-16 06:20:13 | 青春高校

泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)

96『微妙な気持ち小菊 





 我が家に外人さんがやって来た(;゚Д゚)。

 それも十八歳のブロンドの女の子……第一印象は女の人なんだけど、自己紹介で十八と言われてぶっ飛んだ。

 今どき外人の女の子なんて珍しくないんだけど、受ける印象がひどく大人びている、おまけに日本語ペラペラ。

「……ということで、しばらくお預かりすることになった、みんなよろしくな」

 お祖父ちゃんの紹介が終わると、青い瞳を春の海のような穏やかさにして口を開いた。

「マッジ・ヘプバーンと申します、急な話でご迷惑をおかけするかもしれませんが、勤め先が見つかるまでの間ですので、なにぶんよろしくお願いいたします」

 そうなんだ、マッジさんは急に決まったお務めの為に、松ネエと同じ便で東京にやって来た。

 羽田からは、自分の勤め先に行く予定だったんだけど、勤め先が火事で焼けてしまうという不運。

 とりあえず落ち着く場所が必要ということで、松ネエが電話してきてお祖父ちゃんが二つ返事で引き受けた。

「当たり前なら、いったんハワイに帰るところなんですが、不退転の決意でやってきたものですから無理を申しました」

「いやいや、是非にと言ったのはわたしの方だ。お節介なんだが、若い人の決意は応援したくてね」

 お祖父ちゃんが頼もしそうに言う。あたしが突破新人賞を獲った時も似たような顔をしていたけど微妙に違う。

 お祖父ちゃんが三十歳も若ければ「惚れたか?」と勘違いする。曰く言い難しなんだけど、言葉にしたら「頼もしそう」ということになる……しておく。

「部屋は、小松の隣の部屋を使ってもらう」

 うちは無駄に部屋が多い、大昔置屋をやっていた名残なんだけどね。

 あたしは、微妙な気持ちになった。

「あ、えと……あ、
あそこは、あたしが使いたいんだけど(#゚Д゚#)!」

 

 みんなの視線が集まった。

 

「えと……本を書くじゃない、今の部屋は通りに面してて、ちょっとね」

「おまえ、そんなこと言ってなかったじゃねえか」

「うっさいわね! 考えてたけど言い出せなかったんじゃない」

「だけどなあ」

「うっさい、腐れ童貞!」

 

 実は兄貴が正しい。今の今まで部屋を代わろうとは思ってなかった、お祖父ちゃんがいきなり言うもんだから、反射的に出てしまった。

 

 うちは間数は多いけど、手入れや掃除をしないですぐに使える部屋は、そんなには無い。

「わたしが無理を言ってるんですから、パイン……小松さんと同じ部屋で結構です」

 うちに来るまでは、松ネエと、そういう話になっていたらしい。

「ようし、マッジさんには小菊の部屋を使ってもらおう。じゃ、今から引っ越しだ」

 お祖父ちゃんが宣告した。

 身から出た錆。

 

 夕べは遅くまでかかって引っ越し。とてもあたしとマッジさんだけではできないので、兄貴と松ネエも手伝ってくれる。一言も文句言わないで。

 悔しいけど、二人の方が大人だ。

 自己嫌悪で夕べは眠れなかった。

 今朝起きると、町内恒例のドブ掃除をやっている。うちは間口も広いので一家総出、マッジさんもTシャツに短パンという出で立ちで手伝っている。

 あ、つい寝過ごしちゃった……

 声が小さすぎたのか、誰も反応しない。

 急いで状況を判断、下水に撒く薬がまだのようなので「薬もらってくる!」と宣言して町会長さんちへ。

 それからは、例年通り、手を洗ったり着替えたりしてからみんなでスイカを頂く。

 そして、反省しながら、この文章を打ってんのよ。

 も、文句ある!?

 

☆彡 主な登場人物

  • 妻鹿雄一 (オメガ)     高校三年  
  • 百地美子 (シグマ)     高校二年
  • 妻鹿小菊           高校一年 オメガの妹 
  • 妻鹿幸一           祖父
  • 妻鹿由紀夫          父
  • 鈴木典亮 (ノリスケ)    高校三年 雄一の数少ない友だち
  • 風信子            高校三年 幼なじみの神社(神楽坂鈿女神社)の娘
  • 柊木小松(ひいらぎこまつ)  大学生 オメガの一歳上の従姉 松ねえ
  • ミリー・ニノミヤ       シグマの祖母
  • マッジ・ヘプバーン      ミリーさんの知り合いの娘 天性のメイド資質
  • ヨッチャン(田島芳子)    雄一の担任
  • 木田さん           二年の時のクラスメート(副委員長)
  • 増田汐(しほ)        小菊のクラスメート
  • ビバさん(和田友子)     高校二年生 ペンネーム瑠璃波美美波璃瑠 菊乃の文学上のカタキ
  •            

 

 

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泣いてもωオメガ 笑ってもΣシグマ・95『ほうじ茶が冷めるまで』

2022-10-15 06:54:29 | 青春高校

泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)

95『ほうじ茶が冷めるまで小松 





 和食ではラーメンとカレーライスが好きです。

 ほうじ茶をフーフー冷ましながら呟くようにマッジさん。

 ちょっぴり頬が染まっているのは、ほうじ茶の熱さのせいか照れているのか、よく分からない。


 今夜はハワイ旅行の最終日で、ミリーさんの家でパーティーだった。


 @ホームのメイドさんたちだけでなく、テニスでいっしょになったマッチョさんたちも加わって、賑やかで楽しいひと時だった。


 で、ゲストも帰り、後片付けが終わって、リビングでハワイ最後の夜を女五人で過ごしているところ。


 ミリーさんがほうじ茶を出してくれて、しみじみ頂いている。

「ラーメンとかカレーライスって和食?」

 チロルさんが素朴な質問をする。

「ええ、立派な和食ですよ。ラーメンは中国、カレーはインドだけれども、日本に入ってきて独特の進化を遂げて、もう中国人もインド人も日本独特の料理だと思ってますよ」

「へー、そうなんだ」

「横須賀にいたころにファンになったんです。ドブ板通りに美味しいお店があって」

「え、ドブ板知ってるんですか!?」

「はい、横須賀生まれですから」

「もなかも横須賀だよ! 諏訪公園の北側!」

「あ、丘の上に女学校が見えるところですね!」

 
 そう、もなかさんとマッジさんは同じ横須賀生まれと分かって賑やかになった。


 お父さんが軍人で十五歳まで日本で暮らしていた……というのは、あまりに上手い日本語なので「お生まれは?」と聞いて、初日(傷痕が痛んでオバマ先生に診てもらった)に教えてもらっていた。そこにもなかさんも横須賀だと分かって、突然みんなの距離が近くなった。

「あ、ドブ板って云えば……!」

「うんうん、だよねだよね!」

 ひとしきり、ドブ板のおもしろそうなお店の話になりかけるけど、他の者は横須賀を知らない。するとマッジさんは自然に話題を戻した。

「横須賀でも、一押しのソウルフードは、ラーメンとカレーですけど、もう日本人の国民食ですね」

「食のガラパゴス化なのかもしれないわね」

 もなかさんが納得しかける。

「少し……ちがうと思います……元のをヒントに……きっかけにして作られた別物だと、わたしは感じてます」

 ほうじ茶を持ち上げたが、まだ熱いのか、テーブルにもどした。その仕草が引きつける力があるのだから、マッジさんはタダモノじゃない。

「これも好物なんですけど、肉じゃがってあるじゃありませんか」

「男の胃袋つかむ必須アイテム!」

 アハハハ(^O^)

 チロルさんのツッコミに、みんなが笑う。

「あれって、元々はビーフシチューなんですよね。東郷平八郎提督がイギリスに留学した時に惚れこんで、日本風に作らせたのが始まりなんですって」

「「「へーそうなんだ」」」

「英国風メイドとアキバメイドの違いみたいなものかしら?」

 ミリーさんが、お寿司屋さんみたいな湯呑みを持って輪の中に入って来た。

「そうですね、良い例えだと思います」

「ビーフシチュー好きな人って100%肉じゃがも好きよね」

「ですよね、わたしもそうです」

「うちの母は両方得意料理です!」

「ハハ、主婦料理の定番だもんね」

「肉じゃがの方もやってみようとは思わない?」

「はい、勉強してみます。まだ主婦になる予定はありませんけど」

「それじゃ……」

 耳元で囁くミリーさん。マッジさんはまだ熱いのか、含んだお茶を慌てて呑み込んで、小さく「アッ」と言った。

 アハハハ( ´艸`)

 

 ミリーさんが笑って、それを潮にお茶会はお開きになった。

 

「あれって、マッジさんに縁談でも勧めたのかなあ」

 ベッドに入るとチロルさんが呟く。

「違うわよ、ミリーさん、@ホームで働かないかって謎を掛けたのよ」

「え、そうなの!?」

「あ、ちょっと希望的観測も入ってるかな?」

「フフ、なんだ」

「いい人だもの、マッジさん」

「マッジさん、日本に来るのかなあ……」

「どうだろ、頬染めてたし、もし来るとしても、学校とか終わった秋じゃない?」

「わたしは……」

「なに、パインさん?」

「あ、ううん、なんでも……フワ~( ̄O ̄) あ、ごめんなさい……」

「パインさん、お眠だ」

 女三人、喋り出したらきりが無いので、わたしのアクビをきっかけにチロルさんが部屋の照明を落とした。

 
 そして、そのあくる日、どんでん返しがあった。
 

「日本までごいっしょします」

 帰国の空港に、マッジさんはパスポートを持って現れたのだった!

 

☆彡 主な登場人物

  • 妻鹿雄一 (オメガ)     高校三年  
  • 百地美子 (シグマ)     高校二年
  • 妻鹿小菊           高校一年 オメガの妹 
  • 妻鹿幸一           祖父
  • 妻鹿由紀夫          父
  • 鈴木典亮 (ノリスケ)    高校三年 雄一の数少ない友だち
  • 風信子            高校三年 幼なじみの神社(神楽坂鈿女神社)の娘
  • 柊木小松(ひいらぎこまつ)  大学生 オメガの一歳上の従姉 松ねえ
  • ミリー・ニノミヤ       シグマの祖母
  • マッジ            ミリーさんの知り合いの娘 天性のメイド資質
  • ヨッチャン(田島芳子)    雄一の担任
  • 木田さん           二年の時のクラスメート(副委員長)
  • 増田汐(しほ)        小菊のクラスメート
  • ビバさん(和田友子)     高校二年生 ペンネーム瑠璃波美美波璃瑠 菊乃の文学上のカタキ
  •            

 


 

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くノ一その一今のうち・23『自習時間の忍び語り』

2022-10-14 10:03:07 | 小説3

くノ一その一今のうち

23『自習時間の忍び語り』 

 

 

 今日は一時間目から自習だ。

 

 自習は、たいてい自習監督の先生が自習課題を配って「あとで取りに来るから、やっておけよ」と言って出ていく。

 一時間目の自習なので、SHRを済ませた担任が、そのまま自習課題を配っていった。

 あれ?

 取り掛かろうと思ったら、すでに自習課題には答えが書いてある。それも、わたしの字で。

―― やってるふりをしておけ ――

 忍び語りの声が飛び込んできた。声は服部課長代理だ。

『どこにいるんですか?』

―― 自分で探してみろ ――

 二秒で教室内のクラスメートたちを透視……教室には居ない。

 胸元の魔石が仄かに熱を持つ……とたんに意識が倍ほどに冴えてきて、窓の外、校庭のメタセコイアの根方で日向ぼっこしている猫が目に入る。

―― ほう、気づいたか。さすがは『その一』だな ――

『なんの用ですか、学校にまで押しかけてきて』

―― おまえ、佐助に会ったな ――

『あ、今日報告するつもりだったんです』

 昨日の今日だ、業務報告なら、バイトに行ってやればいいと思ってた。

―― 会社では人の目がある ――

 課長代理だって会社の人間だろうに……いや、ヤバイ話?

―― 俺の気まぐれだ ――

『……ですか』

 だめだ、想念が読まれてる。聞くことに専念しよう。

―― 社長は『同じ豊臣のガード、構うな』と言うだろう ――

『だめなんですか?』

―― 豊臣の裔は鈴木の家一つがあればいい。木下は不要だ。あちらは鈴木こそ不要だと思っているがな ――

『はい、シカトします』

 あんな奴、こっちから願い下げ。

―― 言っておく。佐助とは慣れ合うな。いずれ命のやり取りをすることになる ――

『無視すればいいんじゃないんですか?』

―― 今はな、将来的には殺す。木下の当主ともどもな ――

『じゃ、今から始末すればいいんじゃないですか』

 売り言葉に買い言葉。

―― 笑わすな、お前が敵う相手じゃない ――

 ちょっと腹立つ。

―― その子は笑っていただろ ――

『お祖母ちゃんを呼び捨てにしないでください』

―― その子は下忍、俺は上忍だ ――

『そうですか』

―― 手に負えない時、あいつは笑うんだ ――

『でも、佐助の方から仕掛けてきたら?』

―― まあや様をお守りすることだけに集中しろ ――

『それだけですか?』

―― 必要があれば連絡する ――

『とりあえずは?』

 佐助の様子からして、近々なにか起こりそうな気がしているから聞き返す。

―― 近々な……フフフ ――

『なにがおかしいんですか!?』

―― ハハハ……俺だって笑うんだぞ ――

「課長代理!」

 

 ヤバイ、声が出てしまった(;'∀')。

 

 さいわいクラスメートには気付かれなかった。

 胸に手を当てると、魔石がさらに熱を持っていた。

 メタセコイアに気を戻すと、すでに猫の姿は無かった。

 

 

☆彡 主な登場人物

  • 風間 その        高校三年生 世襲名・そのいち
  • 風間 その子       風間そのの祖母(下忍)
  • 百地三太夫        百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
  • 鈴木 まあや       アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
  • 忍冬堂          百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
  • 徳川社長         徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
  • 服部課長代理       服部半三(中忍)
  • 十五代目猿飛佐助     もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者
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泣いてもωオメガ 笑ってもΣシグマ・94『三人ともぶっ飛んだ』

2022-10-14 06:38:03 | 青春高校

泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)

94『三人ともぶっ飛んだ小松 





 マッジさんがいなければテニスは諦めていただろう。

 わたしたちに、マッチョ七人を相手に交渉する度胸は無い(^_^;)。

 で、その交渉の結果、仲良く一緒にプレイすることになった。

 

 正直――なんでよー!?――

 コートの向こうとこっちに分かれてプレイ開始!

 袖口からタトゥーが覗いて、身長は190はあろうかというマッチョが進み出てきてネット越しの握手。

 ガシガシ!

 ボクシングのグローブくらいの手で握手され、振動で景色がブレて、わたしのちっこい手は完全に呑み込まれる。

「『我々は初心者なんで、どうぞお手柔らかに』だそうです」

 マッジさんが同時通訳。

 通訳が終わると、マッチョは一瞬サングラスをとった。

 意外に甘いマスク……というか子供っぽいスマイルに、ちょっと拍子抜け。

 アメリカ人というのは一般的に歳より老けて見える。それが、この童顔はいったい?

「アメリカには、ベビーなんちゃらとか、なんちゃらキッドとか童顔の悪もいるって云うよ(,,꒪꒫꒪,,)」

 もなかさんが小声で忠告。

 で、ゲームを始めると「おちょくってんのか!?」というくらいにマッチョたちはヘタクソだった。

 サーブは確かに力があるけど、力任せのためか、ことごとくがファウル。

 Goddamn!(こんちくしょー!!)

 わたしにも分かる英語で悔しがるマッチョたち。ラブ:フィフーティーンになるとさすがにコントロールを意識してきた。

 カッポーーーン

 意識すると、今度は極端に球速が落ちて簡単に打ち返せる。

 打ち返したボールは三回に一回くらいしか返ってこない。ヒットしたボールも力任せなので、明後日の方向に飛んでいき、あっという間に勝ってしまった!

 童顔マッチョだけかと思ったら、他の六人もことごとくヘタクソマッチョ。

「やっぱりインターハイに出るような女子高生は違うなあ~……だそうです」

「「「イ、インターハイ? 女子高生?」」」

 三人ともぶっ飛んだ。

「そう紹介したんです、インターハイに出るための練習に来てるって」

「はあ……で、こちらの方々は?」

「サンフランシスコのお巡りさんたちです、休暇でハワイに来られてるんです。テニスはEスポーツではグランドスラム級だそうですよ」

「Eスポーツ?」

「……これですよ」

 コントローラーを持つ仕草でアキバでもお馴染みのテレビゲームだと分かった。

 プレイが終わって七人のマッチョさんたちと改めて挨拶。

 サングラスをとった七人は、みんな人のいい顔をしていた。

 一人童顔のマッチョさんはトム・クランシーというなり立てホヤホヤの19歳だと分かった。

 マッジさんはマッチョさんたちにも種明かし。

 オオ! アメージング!!

 わたしたちがアキバのメイドだと知ると、驚いたり喜んだり。

「実は、ホノルルにもメイド喫茶がオープンしたんですよ。彼女たちは、その指導にやってきたんです」

 マッジさんが微妙に誇張し、ランチを食べた後、みんなでハワイ@ホームに出向くことになった。

 マッジさんの凄さを認識したのでした……。

 

☆彡 主な登場人物

  • 妻鹿雄一 (オメガ)     高校三年  
  • 百地美子 (シグマ)     高校二年
  • 妻鹿小菊           高校一年 オメガの妹 
  • 妻鹿幸一           祖父
  • 妻鹿由紀夫          父
  • 鈴木典亮 (ノリスケ)    高校三年 雄一の数少ない友だち
  • 風信子            高校三年 幼なじみの神社(神楽坂鈿女神社)の娘
  • 柊木小松(ひいらぎこまつ)  大学生 オメガの一歳上の従姉 松ねえ
  • ミリー・ニノミヤ       シグマの祖母
  • ヨッチャン(田島芳子)    雄一の担任
  • 木田さん           二年の時のクラスメート(副委員長)
  • 増田汐(しほ)        小菊のクラスメート
  • ビバさん(和田友子)     高校二年生 ペンネーム瑠璃波美美波璃瑠 菊乃の文学上のカタキ
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泣いてもωオメガ 笑ってもΣシグマ・93『マッジさんと七人のマッチョ』

2022-10-13 06:33:56 | 青春高校

泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)

93『マッジさんと七人のマッチョ小松 




 ほら、違うでしょ?

 座りなおしたミリーさんは二割増しフレンドリーになった。

 昨日、ミリーさんがオバマ先生を連れて見舞いに来てくださった。

 ニ十分ほどで居合わせたみんながフレンドリーになって、ベッドでひっくり返っているわたしを含め、とても充実した時間を過ごせた。

 それが、マッジさんの気配りからなんだと直感はしたものの、具体的にマッジさんがどうやったのかは分からない。

 それで、今朝も見舞ってくださったミリーさんに聞いてみたのだ。

「椅子を引いて座って頂く時に、ほんの少し近くして、方向もみんなが向き合うように微妙に変えるの。すると、座り直した時に……こうなるワケ」

「なるほど、それが自然にできちゃうわけですね」

「でも、みんなに同じことをやったら気づかれる。気づくととたんにぎこちなくなる」

「ですよね、不自然な圧を感じます」

「だから、お茶を出したりクッキーを出したりするときに……そうね、例えばもなかさんは、少し距離があっても手を出すから、このへん」

「ほんとだ、わたし自分から近づいて行ってる!」

「むろん、みんなに仲良くお喋りがしたいという気持ちがなくっちゃだめなんだけど。ま、そういう空気も読んで、自然に雰囲気が出来るように、ね」

「そういう気配りって、メイド喫茶のマニュアルじゃできませんよね」

 チロルさんが感動して、男みたいに腕を組んだ。

 メイドが人前で腕を組んではいけないんだけど、休憩室なんかでリラックスするとやってしまう。彼女の魅力は可愛いルックスの下に潜んだ男らしさなのかもしれない。

「テニスコートの準備が整いました」

 マッジさんが、テニスウェアーで現れて、みんなに告げた。

 今日は、わたしも回復。ホテルのテニスコートを借りてテニスをすることになっているのだ。

 わたしがこんなだから、マッジさんが手配をしてくれたんだ。

 マッジさん自身、ハイスクールでは地元のテニスクラブに所属していたので、コーチを兼ねた一日マネージャーをかって出てくれた。

「わたしはランチの予約をしてからまいりますので、みなさんお先にどうぞ、三番コートです」

「すみません、なにからなにまで」

「いいえ、こういうの好きですから」

 マッジさんと分かれてテニスコートに向かう。

「じゃ、楽しいテニスを」

 ミリーさんはお店があるので駐車場の方に消えて行った。

 あ、あれ~?

 三番コートには先客が居た。

 それもマッチョな男の人たちが七人も。
 
 七人とも短髪のサングラス、人種はまちまちだけど、チューインガムを噛んでいる口から漏れるのはネィティブな英語だ。

「すごいタトゥーだ……」

 チロルさんは、男たちのTシャツの下に隠れている刺青を目ざとく見つけた。

「ちょっとヤバイ感じ……」

 あたしたちはジワジワと後ずさって、テニスコートの入り口まで戻った。

「どうしたんですか?」

 ランチの予約を終わったマッジさんと出くわした。

「分かりました」

 事情を説明すると、マッジさんは、ツカツカと三番コートへ。

 Hey you guys!!(ちょっと、あんたたち!)

 最初の一言しか分からなかった。

 双方早口の英語(ゆっくりでも分からないけど)の上、ほとんど怒鳴っているし、わたしたちはビビってる。

「ヤバいわよ、通報した方が……」

「「う、うん」」

 通報と言いながら、三人の脚は動かない。

 マッジさんが、完全に囲まれてしまったときは、正直ちびりそうになった。

 一瞬、男たちがいっせいにわたしたちを睨んだ。

「「「ヒッ!」」」

 五歳の時にお化け屋敷に入って以来の悪寒が背中を走る。

 すると、男たちが早足で、わたしたちのところにやってくる。

 瞬間意識が飛んだかもしれない。

 気づくと、マッジさんが目の前に居た。

「ダブルブッキングのようです、あちらといっしょにフロントに掛け合ってきます」

 そう言うと、再びマッジさんは男たちに囲まれてホテルの本館に向かった。

 生きた心地もしなかったけど、結論は直ぐに出た。

「フロントのミスでした。あの人たち、いっしょにやろうって言ってますけど、どうしましょうか?」

 で、けっきょくマッチョ七人組と、テニスをする羽目になってしまった!

 

☆彡 主な登場人物

  • 妻鹿雄一 (オメガ)     高校三年  
  • 百地美子 (シグマ)     高校二年
  • 妻鹿小菊           高校一年 オメガの妹 
  • 妻鹿幸一           祖父
  • 妻鹿由紀夫          父
  • 鈴木典亮 (ノリスケ)    高校三年 雄一の数少ない友だち
  • 風信子            高校三年 幼なじみの神社(神楽坂鈿女神社)の娘
  • 柊木小松(ひいらぎこまつ)  大学生 オメガの一歳上の従姉 松ねえ
  • ミリー・ニノミヤ       シグマの祖母
  • ヨッチャン(田島芳子)    雄一の担任
  • 木田さん           二年の時のクラスメート(副委員長)
  • 増田汐(しほ)        小菊のクラスメート
  • ビバさん(和田友子)     高校二年生 ペンネーム瑠璃波美美波璃瑠 菊乃の文学上のカタキ
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せやさかい・352『今日から試験……の朝』

2022-10-12 14:17:40 | ノベル

・352

今日から試験……の朝さくら    

 

 

 忘れてたわけやないねんけど、今日からテスト、中間考査。

 

 そのせいか、昨日はあれだけ晴れてた空が、どんよりと曇り空。

 うちから自転車に乗って堺東のスナック『れいぜい』の駐車場。

「「お早うございます!」」

 今日から試験でも、ドンヨリ曇り空でも、留美ちゃんと二人、明るく挨拶は欠かしません。

「「おはよう!」」

 え、挨拶が二つ返ってきた?

 最初の頃は、お店のドア開けて挨拶したんやけど、お店は朝の営業中。「まあ、顔合わせた時だけでええで」とマスターの親友でもあるテイ兄ちゃんが言うので、駐車場で顔合わせた時だけにしてます。

 朝は、食パンやら牛乳やらのデリバリー、スタッフの(言うてもマスターとアルバイトさん)の制服クリーニングの受け取り、ゴミの運び出しなんかで、50%くらいの確率で会います。

 で、もう一回言います。挨拶が二つ返ってきた。

 マスターが同じスタッフの制服着たきれいな女の人と荷物運んでるやおまへんか!

 うちらも、十六年生きてきた人生の経験で分かるんです。

 この二人は夫婦、あるいは夫婦に近い関係、それも成たてのホヤホヤ!

 とうぜん、十六歳のJKとしては、瞬間で頬染めてニヘラ~と笑てしまうんです!

「あ、まだ式は挙げてへんねんけど、奥さんの亜里沙( #´o`#)。この子らは話してた友だちの身内で、さくらと留美ちゃんや、アハハハ(n*´ω`*n)」

「家内の亜里沙です、よろしく( #´o`#)」

「「はい、こちらこそ!!」」

 元気よくお辞儀して駐車場を出る。

「あ、せや!」

「え、どうしたの?」

「ちょ、待ってて!」

 うちは、取って返して、裏口から店に入ろうとしてたマスターを掴まえる!

「え、なに?」

「このこと、うちのテイ兄ちゃんは知ってるんですか?」

「え、あ……まだ知らんと思う」

「了解!」

 もう信号のとこまで行ってる留美ちゃんに簡単に説明。

「え、そうなの!?」

「なんか訳ありみたいやけど、これは面白いと思わへん?」

「え、お目出度いことでしょ」

「これ、テイ兄ちゃんに言うたったら、どんな顔しよるやろなあ( ´艸`)」

「ちょっと、ひとが悪いよ(^_^;)」

「さて、どんな風に話したろかなあ……クククク」

「さくら、今日から試験だって忘れてるでしょ?」

「え、あ、せやった!」

「今日は英語と公民だよ、分かってるよね、一学期、英語は欠点だったんだからね」

「憶えてますぅ」

「だったら、集中集中! 電車来るまで単語の復習するよ!」

「へいへい……」

「なに、ブツブツ言ってんの」

「いえ、ただのお念仏です」

「阿弥陀様は、極楽往生しか保証はしてくれません。勉強ばかりは自力作善です」

 ああ、留美ちゃんも、すっかりお寺の子になってしまいました。

 

☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら    この物語の主人公  聖真理愛女学院高校一年生
  • 酒井 歌      さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
  • 酒井 諦観     さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦念     さくらの伯父 諦一と詩の父
  • 酒井 諦一     さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
  • 酒井 詩(ことは) さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
  • 酒井 美保     さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
  • 榊原 留美     さくらと同居 中一からの同級生 
  • 夕陽丘頼子     さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 聖真理愛女学院高校三年生
  • ソフィー      ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
  • ソニー       ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
  • 月島さやか     さくらの担任の先生
  • 古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
  • 女王陛下      頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首 

 

 

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鳴かぬなら 信長転生記 90『クルミを見分ける』

2022-10-12 09:47:11 | ノベル2

ら 信長転生記

90『クルミを見分ける』織部 

 

 

 

 スナイパーだからだろうか、覚えると的確だ。

 

 クルミ団子を食べて思いついたんだ。

 クルミをいっぱい採って、皆虎の街で売ってみよう。

 最初は辻売りでいい。売れたら、それを元手に……元手といっても金の事ばかりじゃない。

 当分の活動に困らない程度には生徒会からもらっている。

 わたしの言う元手は評判のことさ。

 あいつの商売は固い、信用が置ける。そういう評判だ。

 小さな評判でも立てておけば、そこから道が開ける。

 むろん、わたしは扶桑(転生国)のスパイだから、そっちの道をつけるための評判が第一なんだけどね。

 わたしは、美しいものを見たいんだ。できたら所有もしてみたい。

 天下で一番許せないのは、値打ちも分からずに無駄にお宝を所有してるやつらだ。戦国大名で、そういう値打ちの分かる者はほんの一握りだった。

 松永弾正とか秀吉とかは最低だった。

 弾正は自分が滅ぶくらいならお宝も道連れ。平蜘蛛の茶釜に火薬をぶち込んで、己が身とともに爆砕させてしまった。この古田織部ほどの数寄人が頭を下げて頼みに行ったというのにだ!

 秀吉は、なんでも金に換算しないと値打ちの分からん阿呆だった。値段の高いもの、金ぴかのものに目が無かった。青磁や古九谷を金の茶釜と並べて悦に入るアホ猿。

 むろん他にも数寄者の戦国大名はいっぱいいるけど、この扶桑に転生しているやつらは、ちょっと評しにくい。

 まあ、察してちょうだい。

 

 あ、覚えると早いという話、リュドミラのことね。

 

 ウクライナ出身のスナイパーで、生前309人のドイツ兵を一発で撃ち殺したって伝説の狙撃手。

 こいつにくるみの見分け方を教えてやった。

 オニグルミは大きさの割には実が小さくて、味もそれほどじゃない。狙うのはサワグルミ。

 実はしっかりしてるし、味もそこそこ。超一級品というわけじゃないけど、辻売りの元手にはちょうどいい。

 

「全部が全部小振りというわけじゃないのに、よく分かるわねぇ」

「いちど特徴のあるものを見たら、あとはオーラで分かる」

「くるみにオーラがあるのか?」

「ああ、優れた標的には優れているだけのオーラがあるんだ」

「そうなのか?」

 見分け方を教えたわたしでも、樹高の高さ、微妙に明るい葉の色ぐらいしか分からないし、それも目を凝らしていないとなかなか見分けられない。

「たとえ、風采が上がらなくても同じ軍服を着ていても部隊長クラスの将校やスナイパーは持っているものが違う」

 そうか、同じ窯で焼いても名品は違うからな。

 名品があれば、窯出しの火口を開けただけで、迫って来る迫力が違うものな。

「そうか、おかげで捗った。では、そろそろ皆虎に入るとするか」

「あ、ああ」

 ちょっと上気した返事をすると、少し後ろについて歩き出す。

 一見従者めいたポジションだけど、わたしを主と見ているわけじゃない。

 警護対象は少し前に置いた方が視野が広くなってガードがしやすくなるんだ。

 この古田織部、単に数寄者というだけで戦国大名になったわけではないからね。

 

 皆虎の城壁が見えるころには、街道にチラホラと扶桑、三国志の物売りや商人らしい者たちの姿が見えるようになってきた。

 信長が開けた穴は、少しずつだが風の流れを呼んでいるようだ。

 スパイという身を忘れはしないけど、ちょっとワクワクしてきたかも。

 

☆彡 主な登場人物

  • 織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生(三国志ではニイ)
  • 熱田 敦子(熱田大神) 信長担当の尾張の神さま
  • 織田 市        信長の妹(三国志ではシイ)
  • 平手 美姫       信長のクラス担任
  • 武田 信玄       同級生
  • 上杉 謙信       同級生
  • 古田 織部       茶華道部の眼鏡っこ
  • 宮本 武蔵       孤高の剣聖
  • 二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま
  • リュドミラ       旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ
  • 今川 義元       学院生徒会長
  • 坂本 乙女       学園生徒会長
  • 曹茶姫         魏の女将軍 部下(劉備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
  • 諸葛茶孔明       漢の軍師兼丞相
  • 大橋紅茶妃       呉の孫策妃 コウちゃん
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泣いてもωオメガ 笑ってもΣシグマ・92『ぶり返す傷痕』

2022-10-12 06:53:36 | 青春高校

泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)

92『ぶり返す傷痕』小松 




 もう少し早く声を掛けていたら……。

 マッジさんは、枕もとで凹んでいる。


 右わき腹の傷痕は、やっぱり二人には分かってしまった。

 @ホームのメイドは毎日自分たちで制服や身だしなみをチェックする。お客さんに夢を与える仕事だから当然のこと。ロッカールームで着替えたら、お互いの姿を数秒見て「よし!」と確認してからフロアに行くんだ。仕事中も、メイド服やエプロンにシミが付いていないか、乱れはないかとか無意識にチェックしている。それが、ハワイに来ても出てしまう。

 Tシャツ脱いだ瞬間に、二人の視線。ほんの0・1秒ほどなんだけど、元からわたしの傷を気にしているもなかさんが気が付いて、もなかさんの表情からチロルさんも息を呑んでしまった。

 もなかさんは――どうしよう――という気持ちで一杯になって表情まで引きつってきた。

――ドンマイ――

 口の形で、そう言って、水に飛び込んだ。

 瞬間迷った。知らないふりするか、なにか気の利いた言葉を掛けるか。逡巡したり、固まったりするのは一番NG。

 なにかエスプリの利いた一言が言えればよかったんだけど、ドンマイじゃ――気にしてる――って丸わかり。

 二人だけじゃなくて、近くに居た水泳客も、わたしたちの表情から気づく人がいて、ちょっと困ってしまった。

 むろん、お行儀のいい水泳客ばかりだから――お気の毒に――というものばかりだったけど、どんな目で見られようと、もなかさんにはプレッシャーだ。

 おまけに、わたしは具合が悪くなった。

 海水に浸かったせいか、薄い水着のせいか、傷痕がつっぱらかり、右わき腹全体が痛み出したのだ。

 そのため、夕食も食べずにベッドでひっくり返り、マッジさんの世話になっているってわけ。

 マッジさんが二度目のため息をついたときにドアがノックされた。

 

「ミリーさんが来られたわよ」

 

 マッジさんの応対を待たずに入って来たのはチロルさん。そのチロルさんの次にもなかさんのエスコートでミリーさんと、引退したお相撲さんのような男の人が入って来た。

「ビックリしたわ、日本でのこと、何も知らなかったから……どう、おかげんは?」

「申し訳ありません、わたしが付いていながら」

 マッジさんの恐縮した肩に手を置いて慰めた後、引退したお相撲さんみたいな人を紹介するミリーさん。

「お医者様に来ていただいたの、わたしが五十年診ていただいているから太鼓判よ」

「五十年も!」

「わたしは二代目です、シバラク・オバマと言います」

「なんだか大統領みたいでしょ」

「わたしはシバラク、ぼくは共和党だしね、さ、脈から診ましょう……」

 毛むくじゃらの手にビビったけども、腕を掴んだ手は、とても優しかった。

「傷跡を見せてもらっていいですか?」

 男の先生に見せることよりも、女四人に見られる方が極まりが悪い。

「きれいに縫合してあります、ただ術後の日数がたっていないので、ちょっと無茶でしたね。水着になるのにドクターの許可は得ましたか?」

「術後は一回行ったきりで、そのあとは行ってないんです」

「それは、またどうして?」

「じ、じつは……」

 わたしは、薄情な女医さんのことをまくしたてた。

「アメリカなら訴訟になりますね、ま、そのままほったらかしにした貴女も豪傑ですけどね」

「わたし、日本に帰れますでしょうか……?」

 凹んでいるマッジさんともなかさんを元気づけるために、おどけて聞いてみた。

「こんなチャーミングなメイドさんなら、そこのお友だちもいっしょに出国を阻止したいところですけどね」

「オバマさんは、うちのお店の常連さんなのよ」

「@ホームはスバらしいですよ、とってもファンタジーです。わたしも、後継ぎが出来たら妖精さんになりたいですね」

 妖精さん? 瞬間戸惑ったけど、メイド喫茶のスタッフ(妖精さんと呼ぶ)のことだと思い至って笑わせてもらった。

 気が付いたら、わたしのベッドを中心にして輪が出来ていた。

 わたしに人望があってとか、みんなが気を遣ってというんじゃない、気が付いたら部屋のスツールや椅子がそうなっていて、みんなで仲良くお茶会になっていたのだ。

 オバマ先生が帰ってから気が付いた。

 お茶を出すタイミングとテーブルの移動、さりげなく輪になるようにマッジさんが誘導していたんだ。

 マッジさん……なかなかの人だ。

 

☆彡 主な登場人物

  • 妻鹿雄一 (オメガ)     高校三年  
  • 百地美子 (シグマ)     高校二年
  • 妻鹿小菊           高校一年 オメガの妹 
  • 妻鹿幸一           祖父
  • 妻鹿由紀夫          父
  • 鈴木典亮 (ノリスケ)    高校三年 雄一の数少ない友だち
  • 風信子            高校三年 幼なじみの神社(神楽坂鈿女神社)の娘
  • 柊木小松(ひいらぎこまつ)  大学生 オメガの一歳上の従姉 松ねえ
  • ミリー・ニノミヤ       シグマの祖母
  • ヨッチャン(田島芳子)    雄一の担任
  • 木田さん           二年の時のクラスメート(副委員長)
  • 増田汐(しほ)        小菊のクラスメート
  • ビバさん(和田友子)     高校二年生 ペンネーム瑠璃波美美波璃瑠 菊乃の文学上のカタキ
  •  

 

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せやさかい・351『三年ぶりの如来寄席』

2022-10-11 18:10:16 | ノベル

・351

三年ぶりの如来寄席さくら    

 

 

 なんで今日が晴れなん!?

 朝の青空を見上げて歯ぎしりするあたしです!

 

 昨日は三年ぶりの如来寺寄席やったんです!

 朝から雨の中を桂米国さんは、お弟子さんを連れて、うちの本堂に来てくれはりました。

「いやあ、三年ぶりの阿弥陀さんの神々しいこと!」

 そない感激すると、鈴(りん)を鳴らして手を合わせはります。

 米国さんは、いちおうプロテスタントで浄土真宗やありません。

 せやけど、お寺の本堂でやるんやさかい、ちゃんとご挨拶はするわけです。

「ナマンダブナマンダブ……」

 ちゃんと念仏も唱えはります。

「異教徒なのに、なぜお念仏を?」

 米国さんより早く頼子さんといっしょに来てるソフィーが聞きます。

「お念仏は『南無阿弥陀仏』でしょ、南無は『もしもし』いう呼びかけやし、阿弥陀仏は仏さんの名前。つまり『もしもし仏さん』という意味。これから本堂を使わしてもらいますいうご挨拶。なにごとも挨拶で始まって挨拶で終わるっちゅうわけです」

「でも、それならお念仏でなくとも……」

「うん、ソフィーさんも、そうやと思うねんけど、日本人に挨拶するときは日本語でっしゃろ?」

「はい、礼儀です」

「二人とも英語で会話できるけど、いま、日本語で話してまっしゃろ?」

「あ……はい。そういうことなんですね」

 ソフィーの日本文化理解が、また一歩進みました。

 

 組み立て式の高座を作って、メクリを整え、テルテル坊主ぶら下げて、あとは雨が止むのを待ちました。

 

 けど、雨は止みません。

「10月10日は晴れの特異日やねんけどなあ……」

 と、テイ兄ちゃんは、本堂の縁側から空を睨みます。

 雨を怨むのは、檀家さんのことなんです。

 檀家さん、主に婦人部。婦人部いうのは、平均年齢70歳ちょっとくらい。

「いや、70歳もっとや」

 テイ兄ちゃんが言いなおします。

 そうなんです、年寄りが多いので雨の日はお寺にくるのんが大変なんです。

 神経痛やらリウマチには厳しいし、人によっては電動車いすやったりして、健康でも来るのんが大変なんです。

 それから、学校の方は動員が効きすぎました(^_^;)。

 散策部はもちろんのこと、生徒会からも会長の田中真央と執行部全員。田中会長は人気声優百武真鈴でもあるので、そのファンが学校の内外から聞きつけて30人ほど。

 他にも、担任のペコちゃん、体育の長瀬先生(意外な落語ファンやそうです)やら、うちらのクラスメートも3人ほど。

 それから、正式に王女さまになったので、頼子さんファンもボチボチと。

 総勢100人ほどの入りで、お寺の檀家さんは、そのうちの10人ほど。

「みんな、檀家のお婆ちゃんたちを前にこさせてあげて!」

 会長の田中真央さんが仕切って、お婆ちゃんたちを最前列に。

「いやあ、なんか同じ苗字で、孫みたいやなあ」

 と田中のお婆ちゃんが喜ぶ。

「よねちゃん、孫やないやろ、ひ孫やで!」

 と、加藤のお婆ちゃんがチャチャ入れしはります。

 うひゃひゃひゃひゃ(^Д^)

 テンション高く笑うけど、あした大丈夫やろかと心配しました。

 

 前回同様、うちと頼子さんは着物着てお茶子です。

 会場整理とめくり、お囃子が録音やいうのは、ちょっと残念やけど、これは経費の関係。

 

 出し物は『所帯念仏』『はてなの茶碗』『千両蜜柑』『地獄八景亡者の戯れ(前半)』の三本。

 それぞれ面白かったんやけど、紹介してると、めっちゃ長うなるんで、別の機会にね。

 

 落語会そのものは大盛況。せやけど、檀家さんの数が少なかったんで、如来寺の催し物というよりは、完全なイベントになってしもた。

「まあ、ええで、にぎやかなんが一番や」

 テイ兄ちゃんは明るく返してくれる。

 田中のお婆ちゃんは、張り切り過ぎて、帰ってから寝込んではるそうです。

「檀家さんのこと、いちばんに考えてくれて、ありがとうなあ」

 お祖父ちゃんが喜んでくれた。

 喜んでくれるのはええけど、頭撫でるのんは、堪忍してほしい(^_^;)

 

☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら    この物語の主人公  聖真理愛女学院高校一年生
  • 酒井 歌      さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
  • 酒井 諦観     さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦念     さくらの伯父 諦一と詩の父
  • 酒井 諦一     さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
  • 酒井 詩(ことは) さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
  • 酒井 美保     さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
  • 榊原 留美     さくらと同居 中一からの同級生 
  • 夕陽丘頼子     さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 聖真理愛女学院高校三年生
  • ソフィー      ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
  • ソニー       ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
  • 月島さやか     さくらの担任の先生
  • 古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
  • 女王陛下      頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首 

 

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漆黒のブリュンヒルデQ・093『玉代と松陰を語る』

2022-10-11 15:51:29 | 時かける少女

漆黒ブリュンヒルデQ 

093『玉代と松陰を語る』   

 

 

 お~れが居たんじゃお嫁にゃいけぬ 分かっちゃいるんだ妹よ~♪

 今日もぉ~涙の 今日も~涙の 日が落ちる 日が~落ち~る♪

 

『あなた、同じフレーズばっかり』

『え、あ、ほんとだ(^_^;)』

『『アハハハ』』

 

「「フフフフフ(* ´艸`)」」

「二人ともほんなこて楽しそうやなあ(^^)」

「ほんとだね」

 孫と姪(設定だけど)としても、階下のリビングで祖父母が楽しそうにしていると嬉しい。

 ついつい、テスト勉強の手も停まってしまう。

「しかし、なんでお祖父ちゃん『男はつらいよ』ばっかり歌ってるんだろうね?」

「え、ひょっとして自覚なかとか?」

「え、わたし!?」

「そうじゃ、ひるで、昨日から何度も寅次郎って呟いとっ」

「あ……ああ……」

 世田谷城址公園で出会って、ちょっと気になっている。

 

 吉田寅次郎……吉田松陰。

 

 わたしにとっては隣のテリトリーになる、吉田神社の御祭神だ。

 わたしは、迷える霊や妖には、名前を付けて本来の場所に戻してやるんだけども、松陰は違う。

 迷える霊にゆっくり時間をかけて思い出させているんだ。

 思い出すまでは、自分の松陰神社に通わせて、いろいろ教えているらしい。

 松本という男と、三遊亭円突という落語家の警防団に出会ったが、二人とも充実した目をしていた。

 気になったわたしは、何度も――吉田寅次郎――と呟いていたらしい。

「でも、なんでそれが『男はつらいよ』になるんだ?」

「だって、主役ん寅さんな車寅次郎じゃらせんか」

「え……あ、トラさんも下の名前は寅次郎だったか!?」

「そうじゃ、お祖おやっどんは、寅さんの映画好いちょっでね、ネトフリでよう観ちょっじゃ」

「松陰の方の寅次郎は、鹿児島でも有名とか人気だったりするの?」

「ああ、吉之助どんたちは好いちょったみて。明治維新ん元になった人物じゃっで」

「そうか、でも、安政の大獄で処刑されるんだよね」

「うん、黒船がやってきたとき、アメリカに密航しようとして失敗したんじゃ」

「あの時、ペリーは日本と条約結ぶことが第一で、密航者をかくまって連れていってくれるはずないんだけどね。日本史で習ったよ。松陰ほどの学者なら分からないはずはないんだけど」

「そうやなあ、喋るったぁ片言んオランダ語で、言葉も通じん」

「なんだか、その辺が、抜けてるようで……戦略的な観点からみると……」

「みると?」

「その……一種のバカに見える」

「あはは、そうじゃ、あん時ん松陰はバカやった。小船をおっとって黒船に漕ぎよせっとどん、途中で露ベソが壊れて櫂が使えんくなっせぇ、ふんどしで応急修理してん。松陰は黒船に上がったときはフルチンやった!」

「プ、ほんとか( ´艸`)!?」

「ああ、こんエピソードは西郷どんたち、かごんまん者はわっぜ好いちょっ」

「間抜けにしか思えないんだけど(^_^;)」

「ひっではブァルキリアん姫騎士じゃっでね、物事を戦略的、戦術的にしか見ちょらんとじゃ。人間には、そげん可愛らしさも大事じゃち思う」

「そうか……で、その『ひっで』というのは何よ?」

「ああ、ごめんなせ。薩摩弁でひるでは発音しにくうて『ひっで』になってしまうんじゃ」

「ん……なんかひっでぇ」

「「アハハハハハ」」

 結局のところ、ふたりで馬鹿笑いしておしまいになりそうになって、下からお祖母ちゃんの呼ぶ声がした。

『ひるでぇ、お友だちがいらっしゃったわよぉ!』

 

 え、ともだち?

 

 わたしはブァルキリアの姫騎士、百戦錬磨の戦乙女、我が家に近づく者は子ネコ一匹でも事前に察知できる。

 気が付かなかったのは、その『ともだち』が、相当の怪しの者か、玉代とのバカ話に興じすぎていたか……「はーい」と返事して下りる階段の窓から見える向かいの窓、ねね子が興味津々の顔でこっちを見ていた。

 

 

☆彡 主な登場人物

  • 武笠ひるで(高校二年生)      こっちの世界のブリュンヒルデ
  • 福田芳子(高校一年生)       ひるでの後輩 生徒会役員
  • 福田るり子             福田芳子の妹
  • 小栗結衣(高校二年生)       ひるでの同輩 生徒会長
  • 猫田ねね子             怪しい白猫の猫又 54回から啓介の妹門脇寧々子として向かいに住みつく
  • 門脇 啓介             引きこもりの幼なじみ
  • おきながさん            気長足姫(おきながたらしひめ) 世田谷八幡の神さま
  • スクネ老人             武内宿禰 気長足姫のじい
  • 玉代(玉依姫)           ひるでの従姉として54回から同居することになった鹿児島荒田神社の神さま
  • お祖父ちゃん  
  • お祖母ちゃん            武笠民子
  • レイア(ニンフ)          ブリュンヒルデの侍女
  • 主神オーディン           ブァルハラに住むブリュンヒルデの父
  •  

 

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