物置の奥深くに純正のホイールキャップが眠っている。
新車だった親戚時代から我家にやってきていつ頃まで使用したか正確には分からない。
写真や記録を探すと昭和50年代中頃まで使っていたようだ。
父も若く私達兄弟は育ち盛りでコルトはそんな家族を載せて走り回っていた頃だ。
彩雲号ではなく普通に「家の車」として使われていた時代に外されて長い眠りに着いていたホイールキャップ。
すっかり錆ていたがメッキクリーナーで磨くと落ちていった。
へこみもあるがそれはこの車の歴史でもある。
どこでいつ付けた傷だろう?
父がへこませたのか親戚なのか。
裏側を見ると一枚だけメタリックグレーに塗られていた。
なんでこんな事になっているのだろう。
しばらく眺めていると記憶が蘇った。
兄が中学か高校の頃に塗装の劣化が著しいので父と2人で缶スプレーで車体全体を塗った事があった。
その時にもう使わないホイールキャップの裏側で塗り試しをしたのだ。
すっかり忘れていた。そんな事もあったっけ。
ピカピカになったホイールキャップは30年ぶりに見る町と彩雲家を見てどう思っているだろう。
彩雲号は塗装を14年前にやり直している。
塗り替えてしまったという事は車体の上に載っている現在の塗装はあの時の空気や出来事を知らない。
だけどホイールキャップは当時のそのものだ。
ピカピカになったホイールの表面はあの楽しいお出掛けや旅行を写していたのだ。
私は過去からやってきた贈り物だと思っている 。
つづく