パラリンピック ④ 忘れ得ぬ選手たち①
パラリンピックに出場したアスリートをシリーズで追ってきた。
パラリンピックが幕を閉じ、メディアの報道から、
オリンピックやパラリンピックの記事が消えてから久しい。
ブログ掲載するには、時期おくれであり、掲載を躊躇したのだが、
やっぱり、今掲載しておかないとパラアスリートたちの活躍や
障害に対する考え方を紹介するする機会がなくなってしまうので
後数回にわたり掲載することにしました。
(写真諫山卓弥・朝日新聞)
エマニユエルニーテティ・オク(30歳) ガーナ
パワーリフティング男子72㌔級(運動機能障害)に出場。
1回目 160㌔
2回目 失敗
3回目 失敗
三回目の試技が終わると、関係者が座る会場に向かって何度も頭を下げた。
メダルには届かなかった。
7位の成績は、彼にとっては『栄光』の7位だったのだろう。
2020東京パラリンピックの栄光の舞台に参加できたことへの感謝の気持ちなのだろうか。
「力をすべて出した。ここで競うことが夢だった。たどり着けて光栄だ」
持てる力をすべて出し切って勝ち取った7位。
この大会に参加できたことが、オクにとっては最大の喜びであり、
名誉の参加だったのでしょう。
※足などに障がいのある選手が参加し、持ち上げたバーベルの重さを競う。
専用の台にあおむけになって行うベンチプレスのみで競われる。
3回の試技で最も重い重量が記録となる。
選手の入場からバーベルを構えるまでの時間は2分間と決められ、
オーバーすると失格となる。
2分間で選手は専用台にあがり、準備をしながら集中力を高めるが、
声を出して気合いを入れたり、
腕を上げたりと選手それぞれのルーティーンを見比べるのもおもしろい。
そして、バーベルを胸まで下げて持ち上げるまでの時間は約3秒。
このわずかな時間に選手はこれまで培ってきたトレーニングの成果を爆発させる。
(NHKの競技・パワーリフティングを要約)
2013年、オクはガーナの町で城の警備の仕事をしていたとき、
事故が起こり銃弾はオクの左足太ももを貫通し、傷は深く足は切断された。
2016年のリオデジャネイロ大会をテレビで見たのが契機となり、
パワーリフティングのアスリートをめざすようになった。
2004年パラリンピックに初めてガーナから選手が出場したのがきっかけとなり、
障害がある人への理解がすこしづつ芽生え始めた。
※ガーナの人口は約3042万人。そのうち、障害のある人は約500万人。先進国の割合よりも多く、
差別や偏見が経済的な格差を生むみ、貧困の原因にもなっている。
「ガーナでは障害がある人はまだ家や学校のクラスに閉じこもっていることが多い。
活動にあまり参加したがらない。そんな人たちの気持ちを何とか変えたい」
パワーリフティングのアスリートとして、自分が競技に参加することで、
社会的な接触をさけ、内に閉じこもりがちな障害を持つ人の気持ちを変えたい。
7位に終わった東京大会だったが、悔いの無い競技ができたことに、
オクは大会へ参加できたことに感謝したのだろう。
新しい動きがあった。
東京大会の開会式と閉会式がサハラ砂漠以南の49の地域で無料で放映された。
嬉しいことであり、特にアフリカ選手の活躍を52分間の特集で毎日放映されたことだ。
しかも無料放映である。日本ではNHK以外は、無料放映が常識だが、
これらの国や地域では原則有料放映である。
番組制作の意図は、
「アフリカに根強くある障害がある人への間違った認識を変えるための取り組み」と
朝日新聞は伝えている。
アフリカ全体で2億5千万人以上が視聴することになるとも。
オクはこだわる。
「パラリンピアんが話題になって、障害がある人への偏見をなくす闘いに大きく貢献すると思う。
自分もその活動の一部になれたらいい」
東京パラリンピックでの選手の活躍は、私たちに楽しさと勇気、感動を与えてくれました!
更に依然として存在する障害と偏見、差別について深く考える機会を与えてくれました。
2024年の開催都市のパリ大会に、再びエマニュエルニーテティ・オクの
元気な姿を見せてくれることを期待しています。
参考記事: 朝日新聞Why I´m here(だから私はここにいる) (NHK ウェブニュース)
(つづく)
(昨日の風 今日の風№125) (2021.10.22記)
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