空のむこう側
早いもんで
翔が逝ってから2年になる。
12月初旬の寒い日の夕方
翔の悲報が電話から流れてきた
「翔が死んじゃったよ」
電話のむこうで号泣する長男の声
夜の高速道路を飛ばして5時間半
すでに体温の低下した翔の頬を撫でながら
あふれる涙をこらえることができなかった
もの言わぬ14歳の孫の寝顔は
安らかで、生前のやさしさと暖かさをたたえていた
だが、迎える言葉もぬくもりもない
昨日のことのようにように 鮮やかによみがえってくる
翔への想いは時を経ても変わらない
雪を抱いた常念岳をはじめ北アルプスの山並みが
神が作った荘厳な壁のように連なっている安曇野の冬
槍も穂高もお前が登りたかった山だ
「旅人になりたい」と言っていた翔は
今、北アルプスの雪で覆われた天空を
「帰らぬ旅人」になって翔(とん)でいるのだろうか
安曇野から300㌔も離れた茨城で
落ちてゆく夕日が赤く染める西の空を眺めながら
希望を果たせず早逝した翔のことを思うと
目頭が熱くなってくる
翔よ
翔が舞う空のむこうには
やすらぎはあるのだろうか
旅人は時が経てば自分が生まれ育った故郷へ帰るという
翔よ
疲れて故郷が懐かしくなったら
旅の翼をやすめに戻ってくるといい
14歳の翔を
お前を愛してやまなかった父や母が
爺ちゃんや婆ちゃんが
いつでも抱きしめてやるよ
空の果てを仰ぎながら
白髪がめっきり増え、急に歳をとった私は
「翔よ」と毎日呼びかける
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