輸送機器メーカーS社の株主総会
画・江嵜 健一郎
24日10時から輸送機器メーカーS社の株主総会があり楽しみにして出かけた。当社との縁は語れば長い。当社前身の川西航空機がゼロ式戦闘機を生産していた。母校本庄小学校は道一つ隔てて会社と隣接していた。そのため米軍の空爆に巻き込まれた。
爆撃は小学1年の時だったが幸い縁故疎開中で難を逃れた。爆撃で3階建ての校舎は破壊され、小学3年の時に再建されるまで雨の日は傘を差して授業を受けたことを今もはっきり記憶している。
コロナを理由に、出来るだけお越し頂かないようにと事前に送付された総会案内には書かれていた。それなのに、どうして、わざわざ株主総会に出かけるのか。社長さんに直接、質問できる又とない機会だからである。この日も、枕言葉よろしく、80年近い前の出来事にひとこと触れた後、質問に入った。
最寄り駅から当社会場まで歩けば30分かかる。送迎バスのサービスは昨年から急遽廃止された。総会に極力来ないようにするためである。歩くか、一時間1本のバスを利用するか、タクシーに乗るかである。最寄り駅の阪急仁川駅前を9時30分発のバスに乗ることができた。
会場入り口で検温、消毒、マスク確認のあと座席番号が示され、係りの職員の案内で席に着いた。開始15分前だった。本当の株主か、それともさくらか不明だが、20人ほどが既に着席していた。
様子見て、二番目に手を挙げた。「一年前、コロナ発症の時と一年経った今、何が変わったのか。何が変っていないのか。現状どうなっているのか。先年100周年を迎えられたが、この先100年、どんな会社像を描いておられるのか。差支えない範囲でお教え願えればありがたい」と尋ねた。
社長さんは「当社の事業は受注が基本である。受注が無ければ全てがはじまらない。自分の意志ではどうにもならない面が強い。コロナの影響で例えば航空機部門の売り上げは今期30%以上減った。全てボーイングの受注停止による。ボーイングはコロナ以前に戻るにはあと2年かかると発表している。」と開口一番話した。
「当社は受注次第の事業である。しかし、受注では日々の動きは追わない。既存の事業も新規事業も今後の事業展開も常に「長期的に」対応することを会社経営の基本に置いている。」と社長さんは力を込めた。
コロナ発症直後だった1年前に質問したときは、どう手を打っていいか分からないせいもあってか、社長さんは心配顔だった。今回は違った。同じ人と思えぬさっぱりしたお顔が強く印象に残った。
最初に手を挙げた株主は工場跡地の簿価について質問した。筆者のあと、社長さんが「他に質問はありませんか」と促しても誰も手を挙げなかった。型どおり採決へ進み、10時からの総会が10時30分過ぎにあっさりお開きとなった。
「ボーイングの見解は、コロナ以前に戻るにはあと2年先だ。」という社長さんのことばを反芻するように家路についた。今回のコロナは生半可な料簡では乗り切れないということを改めて教えられた。
健康を失えば全てを失う。インドの変異株があばれているようだ。ワクチン接種も万能ではないという話もある。睡眠不足は免疫力を奪うと言われる。むつかしいことは分からない。十分な睡眠をとり、風邪を引かないことだけは最低注意してコロナを乗り切りたい。(了)