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石井弘明先生「えびすの森」について大いに語る(スケッチ&コメント)

2020-11-23 08:14:07 | スケッチ




石井弘明先生大いに語る

江嵜企画代表・Ken



西宮文化協会十一月行事として「えびすの森を守る」と題する講演会と講演のあとの「えびすの森」観察会が11月21日(土)午前10時から開かれ、楽しみにして出かけた。神戸大農学研究所の石井弘明先生が観察会共に講師を務められた。西宮神社会館での講演会会場の様子をいつものようにスケッチした。会場では、観察会に使うヘルメット2個が1つの長テーブルに距離を置いて用意されていた。時節柄、マスク着用が会報にあらかじめ案内されていたが、会館入り口で検温チエックが行われるなど新型コロナウイルス感染防止策がきめ細かく配慮されていた。あらかじめ応募した50人近い方が参加されており大盛会だった。

講演に先だち山下忠雄、西宮文化協会会長は「本日は森のお話です。観察会もあります。森という字は林の上に木が乗っております。森と林との違いはどこにあるのでしょうか。昔から鎮守の森という言葉があります。小さい大きいの差もあろうかと思いますが、神様が宿ったところが森ではないかと、私見ですが、思う次第です。本日は自然林の成り立ちや植生の基本などを専門に研究しておられる石井弘明先生のお話です。」と挨拶された。

石井弘明先生は会場正面に一枚の航空写真を映した。「画面左手半分がえびすの森で縦横200メートルある。森の右(東側)に神社本殿その他建物が見える。上は東西に走る阪神本線。南は国道43号線。周りはビル、住居に囲まれている。市街地のどまん中にえびすの森は位置している。えびすの森は兵庫県より天然記念物に指定された。市街地に残された貴重な森を後世に残すにはどうしたらいいかという課題に取り組んでいます。」と話を始めた。

石井先生はそもそもなぜ森の研究を始めたのか。「屋久島を縦走したのが原点です。山頂から降りて来た時に屋久島の森の神々しさを肌で感じた。森とはどういう生き物なのかと研究を始めた。このあと普段は立ち入りの出来ないえびすの森に入って神様が宿つている木を堪能していただきます。」と話を進めた。

石井先生は「2004年に初めてえびすの森にご縁をいただいた。神殿や神社境内を囲うように密生している場所を「社叢」と呼ぶ。最初にえびすの森を調べた時、楠が150本,棕櫚が650本あった。棕櫚を除去することから始めた。棕櫚をなくすのにひと夏かかった。実は一本だけ棕櫚を残しております。①園芸種と外来種の侵入を防ぐ。②在来植生の衰退を防ぐ。低木を植えていくと100年で元の森に戻すことが出来る。」と力を込めた。

質疑応答の時間では「ガーデニングについてどう思うか」との質問に石井先生は「園芸文化にもいろいろある。思い切り人工的なものから自然の縮図のようなものもある。自然風というが人の手が加えられて森は守られる。何を目指すかのかと言うことだ。やんわりと軌道修正を繰り返しながら我々も模索している。」と答えた。

場所を移して「えびすの森」の観察会がはじまった。512番の番号札がついた楠の大木前に集まった。「幹の太さは大人5人が取り囲むほどある。樹齢200年以上。高さは25メール。若い木は一年2センチ成長する。」との説明があった。二番目に幹から二股に伸びた大木が紹介された。75年前の空襲で焼けた楠だった。木のてっぺんの葉が枯れているが木が高齢化している兆候だ。根元から新しい茎が伸びている。これも木が古くなってきたことを教えているという説明があり妙に感心した。

講演の中で「西洋人に木に神様が宿っているというと全く理解できない。インディアンは木はもちろん石にも神が宿るという。」というエピソードの紹介があり特に印象に残った。

観察会で「今年は長梅雨だった。虫が発生しやすかった。多くの木が枯れた。環境の変化で水揚げしてくれない。菌の発生とダブルで影響が出て今年は全国的に死亡率が高かった。」と話された。「死亡率」という言葉が印象に残った。

石井先生は森の保全・復元活動により2016年に第1回貝原敏民美しい兵庫賞を受賞。著書「森の生態学」(石井弘明編)(朝倉書店)があると西宮文化協会「会報」に紹介されていた。

貴重な機会をご用意いただいた西宮文化協会の事務局にひたすら感謝である。(了)


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