人生の裏側

人生は思われた通りでは無い。
人生の裏側の扉が開かれた時、貴方の知らない自分、世界が見えてくる・・・

忘れられた思想家.出水日出男①

2019-04-09 12:46:37 | 創作
かつて出水(いづみず)日出男という思想家が居たのをご存知でしょうか?
ご存知ない? (そうでしょう、そうでしょうとも!)
今では、すっかり歴史の表から消えてしまった存在と言ってもいいでしょう。
例え知っている人が居たとしても、国家主義あるいは超国家主義の理論家であり、それらの背後に暗躍した、言わば大日本帝国の御用学者のようにしか観ていない人がほとんどでしょう。
ちなみに"ウキウキペディア"によれば、明治、大正、昭和にかけて活躍した(1974ー1948)宗教哲学者、国学者とあるが、やはり似たような紹介しかされていません。
彼がどういう人物で、どういう思想を語ってきたかは、こういう"又聞き"ばかりが一人歩きしていて、ほとんど伝えられていません。
これは一つには、彼の活動拠点が主にフランス、スイスなど外国に置かれていたことが理由だと思われます。
もっともこの理由で、彼は戦後死ぬまで第一線で活躍することが出来たとも言えるのです。
何故なら彼はずっと日本という国を愛し続けていたにも関わらず、その国家は彼を敵視し続け、抹殺しようとさえしたのです。
実際に30年代中頃、官憲から捕縛命令が下されたのですが、中立国スイスに居たため難を逃れたのでした。
そう、彼は我が国よりも海外(特に長く居住していたフランス)で知られていた!
同時代、世界的に知られていた我が国の思想家と言えば、鈴木大拙の名を思い浮かべる人が多いでしょう。
しかし、無名の自称出水日出男研究の第一人者、天野若彦氏は言う「この人こそは我が国が産んだ20世紀の賢者の一人であるi」と。
鈴木大拙の、禅仏教を欧米に浸透させた功績は計り知れないものがありましたが、反面日本的精神、霊性というものに、そうしたものの偏ったイメージを植え付け過ぎた気来もあります。
これに対し、この忘れられた思想家が、日本的精神、霊性の根幹にあるものとして主として表明したのは"神ながらの道"でした。
大著「神ながらの大道」などで彼は、古今東西の神話、宗教、思想を縦横無尽に引いてその大道を説き明かしています。
「ユダヤ教、キリスト教、回教、仏教、儒教、老子教いずれも我が神ながらの道に帰一しないものは無いのである」
彼の説くところは、ダブル.イメージが映し出されるものが少なくありません。
とてもスケールの大きい、寛容性、包容力に富んだ、正しく"大道"をイメージされるものを感じることもあれば、それが相対的一宗教、日本神道に帰させてしまう、偏狭なセクト主義のようにも感じられる。
しかし、丹念にその著述を読み込めば、神ながらの道は、日本神道に多く溶け込み、伝承されているとは述べられていても、それはイコールであるとはどこにも明示されていません。
彼にそのレッテルを着せることになった国家主義、超国家主義についても同様で、日本の、あるいは大東亜の統治は、天皇中心の国体によらなければならない、とはどこにも書かれていません。
そもそも彼は政治学に関することには、ほとんど言及していないのです(あちこちで理想の国政は神政であるとは述べられていた)。
彼の教説は、セクト主義とは無縁のはずです。その大道を世界に向けて発信していたのだから。
その実践として、積極的にスイス、国際連盟(その設立にも関与していたと云われる)に出向いて、その宗教哲学の講演も行っていました。
同時に力を入れていたのが、著書で展開した諸宗教の一致を現実世界に適応させようという試みとも言える、大連に拠点があった"大亜細亜宗教一致運動"の設立、運営でした。
しかし、彼のその三十年の夢は、満州事変によって潰えてしまうのでした。
それを奇縁とする日本国の国連脱退によって、事実上そこを追われてしまいました。
純粋な宗教思想による精神的共同体だったものが、その精神的基調を政治的なそれに利用して興された、日帝の傀儡、満州国建設に理論を与え、加担していると見なされたからです。
そしてその普遍調和を開示する機関となるものも、事実上権力支配の道具になってしまったのです。
そしてその頃から彼の存在は、その愛する国の中枢から危険視されるようになりました。
彼は云われるように、狂信的国家主義、超国家主義を志向し、その背後に暗躍したのでしょうか?
彼は当時のエッセイでこう書いています。
「私が思い描いていたものは、私の手の届かないところで、歪められ、変形せられ、一人歩きし、暴走を許してしまった。もう、これで日本の、否、世界人類の運命は普遍調和どころか、崩壊の一途へとなだれ込んで行くだろう...しかし皇国に伝えられし、神ながらの道の種は、何としても残さなければならない...そうでなければこの世界の、人類の運命は...」(続く)

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