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tPA静注療法後の救済療法について

2009年02月18日 | 閑話休題
先週末に名古屋で講演したことについてちょっと紹介します。

2005年10月に点滴による急性期脳梗塞の血栓溶解療法が日本で認可されました。
この薬は組織プラスミノーゲンアクチベーター(英語ではtPA: tissue plasminogen activator)といい、点滴するだけで脳の血管の詰まったところを再開通させられるすばらしい薬です。
ただし発症から3時間以内という制限がある上、CTやMRIですでに脳梗塞が完成していたり出血や動脈瘤がある場合等は使ってはいけないとされています。
では3時間をわずかにすぎた脳梗塞の患者さんはどうしたらいいのでしょうか?
私たちはこれまで、脳の血管が詰まって6時間以内なら脳血管閉塞部に直接カテーテルを挿入して血栓を溶かす薬を直接注入する治療を行ってきました。
ですから3時間を過ぎても6時間までならカテーテルで血栓を溶かす治療を行っています。
最近では風船のついたカテーテル(バルーンカテーテル)を併用することでさらに高い効果が得られています。

しかしtPAが使用できるようになったおかげで劇的に変わったことがあります。
それは救急隊が脳卒中を判定し、tPA治療がすぐに可能な病院を選んで搬送してくれるようになったことです。
これはtPAがもたらした最大の産物です。
ただし3時間以内にtPAを点滴しても詰まった血管が再開通しない場合があります。
これまで調べたところでは点滴直後(点滴開始後1時間)の時点で、20-30%しか開通しません。
つまったまま様子を見ていると、やはり翌日には大きな脳梗塞になってしまいます。
これでは患者さんに申し訳ない。以前はカテーテルで70-80%の再開通率を得ていたのですから。
そこで私たちは点滴が終わっても血管が開通していない患者さんに対して、すぐにカテーテル治療を追加し、閉塞部で風船を広げることで血栓を破砕し再開通させる治療を試みています。
この治療で少なくとも半数の患者さんに再開通が得られて劇的に症状が改善することが分かってきました。

この経験をこれまでいくつかの国内学会で発表したり各地で講演をしてきましたが、今回名古屋で講演してほしいと依頼されました。
名古屋の脳外科医と神経内科医の合同の会だったので、会場には100名を超える脳卒中を専門とするドクターが集まっており、大変反響が大きく驚いています。
自分たちがこれまで行った範囲ではこの方法は非常に有効で、多くの患者さんを救うことができました。
今後はその科学的検証のため、多施設で前向きの調査をしたいと考えています。
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