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脳梗塞の診断 脳血管撮影

2009年02月23日 | 脳梗塞
脳血管の診断で最も信頼性の高いもの、それがこの脳血管撮影です。
脳血管撮影は腕や足の付け根の動脈から細い管(カテーテル)を入れて、頸の辺りの血管まで誘導し、そこから造影剤という液体を注入しながらレントゲン撮影を行う方法です。
脳血管を画像として写し出すもっとも原始的な方法でありながら、今なおスタンダードとされる方法です。

脳には心臓のような大きな動きがないため、最近はMRAやCTAに診断の大部分を譲りはじめていますが、やはり細かな診断においては今も最も精密な画像が得られる方法です。
ただしカテーテルを誘導することによるリスクもあります。報告によって違いますが、多いものでは5-6%、少ない報告でも0.5%ぐらいといわれています。
しかし私自身はこれまで何千という患者さんの検査を行ってきましたが、一度も合併症を出していません。
それは非常に多くの症例に検査を行って慣れているからだと思います。
たかが検査とあなどることなかれ。カテーテルやワイヤーの選択や色んな使い方の習得が必要で、それなりのコツがあるのです。「巧みの技」ともいうべきテクニックもあります。

これまで自分自身が最も多く脳の血管撮影を行ったのは国立循環器病センターに在籍していた頃です。
毎日、非常に多くの症例の検査を行っていました。というかそれしか仕事がない時もありました。
血管撮影という仕事は、スタッフの先生たちからすれば、治療の前段階であり、「雑用」という捉え方をされていたように思います。
ですから進んでカテーテル検査をする自分に「じゃあこの症例もやってくれ!」と徐々に頼まれるようになりました。
「雑用」かもしれなかったこの検査を頼まれて一日何件もこなして行くと、そのうちに「カテーテルが入らない血管」がなくなってきて、自信がついてきました。そして他のレジデントがカテーテルが入らない時には、技師さんたちに検査室に呼ばれるようになりました。
近くの病院にアルバイトにいった時にもカテーテル検査を頼まれるようになり、一日10件もやることがありました。ちなみに無償でしたが...(;;)
そうするうち、スタッフがやっても入らない血管にカテーテルが入れられるようになりました。
「雑用」であったはずのこの検査ですが、当時の国循の脳血管撮影の半分以上を自分がやっているということに気づき、ちょっと誇らしく思いました。もちろんその後にチャンスが巡ってきた脳血管内手術にいかに役に立ったかは言うまでもありません。カテーテル検査がうまい人はカテーテル治療もすぐにうまくなります。当たり前ですね。

この間、幸運にも合併症は経験していません。最近になり、他の先生達の検査をアドバイスするようになりましたが、それを見ていて合併症を起こす人の手技がどんなものかがある程度分かるようになりました。高等な「技」を覚えればいいというものではなく、合併症を起こさないための安全かつ合理的な方法があるのです。
ですから最近は、「いかに合併症を起こさない検査法を確立するか」、あるいは「どうやったら安全に後輩に検査をさせられるか」、ということを常に考えています。

検査や手術はある意味スポーツみたいなものです。良い方法を学んだら、毎日のように数多くやっているとだんだんうまくなるんですね!
この血管撮影における合併症ゼロ記録は今も続いていますよ(^^)v
コメント (1)
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