毎年1回のお愉しみ巡回公演の人形浄瑠璃、文楽が今年もウエル戸畑の市民会館ホールで上演されました。今年の演目は「生写朝顔話」(しょううつしあさがおばなし)で、途中笑い薬の段を挟んで、悲しみと可笑しさで、見応え聞きごたえがありました。
筋書きは土台に大内家のお家騒動があるのですが、この上演では、一途に阿曾次郎への恋を貫く深雪が、悲しみのあまり盲目となってなお恋しい人を追って門付け芸人となって流浪し、二人がすれ違いを繰り返す哀れが人の同情を惹く恋物語となっています。歌舞伎でも「生写朝顔日記」として上演されてきました。
人形だけに動きも大きく、請われて恋人の前でそれと知らずに唄う贈られた朝顔の歌と、その弾く琴の音は、人形の指の動きが音に忠実に動く確かさに驚きました。
歌舞伎に比較すると、おなじ文化遺産として登録されながら恵まれていない文楽ですが、この確かな芸は,義太夫の語りと共に大事に伝えていかねばならないものと、改めて思った一日でした。
人間国宝の竹本住大夫さんも、今年5月で引退なさるとか。 文楽の最長老が語るあの野太い声での絶品の近松の世話物は、もう聞けなくなるのは寂しい限りです。