ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ジョー・ニューマン&ズート・シムズ/ロッキング・ホーンズ

2016-07-21 23:05:30 | ジャズ(スイング~中間派)
本日もJAZZ MASTERS COLLECTIONシリーズから、ジョー・ニューマンとズート・シムズの共演盤をご紹介します。このアルバム、もともとはラマ(Rama)という超マイナーレーベルから発売されたそうですが、その後レーベルごとルーレット・レコードに買い取られたそうです。とは言え、ルーレット自体もお世辞にもメジャーなレーベルとは言えないので、これまではCD化もされておらず、知る人ぞ知る作品でした。でも、内容はなかなか充実していますよ。白人テナー奏者の最高峰であるズートとカウント・ベイシー楽団でサド・ジョーンズとともに看板トランぺッターだったニューマン。白人と黒人の違いはあれど、スタイル的には直球ハードバップというより、どちらかと言うとスイング~中間派の流れを組む路線。サポートメンバーもジョニー・エイシア(ピアノ)、オスカー・ペティフォード(ベース)、オシー・ジョンソン(ドラム)とややシブめの顔ぶれで、ややオールドスタイルながら味わい深い演奏を聴かせてくれます。



全10曲、スタンダードは含まれておらず、1曲を除いて全てメンバーの自作というなかなか野心的な構成。中でもピアノのエイシアが5曲を作曲しており、リーダー2人に劣らない重要な役割を果たしています。このエイシアというピアニスト、グラント・グリーンの「ラテン・ビット」等で名前を見たことはありますが、地味な存在なため注目していませんでしたが、なかなか良い曲を書きますね。ラテン調の楽しい“Mambo For Joe”、スタンダード曲のような美しいメロディを持つバラード“Midnight Fantasy”、ズートとニューマンが全編に渡ってスリリングなアドリブ合戦を繰り広げる“’Tater Pie”、メンバー全員が快調にソロを取った後オシーのドラムソロで締める“Oh Shaye”、ほんわかした曲調“Susette”とどれも佳曲揃いです。他の曲ではオープニングトラックの“Corky”がニューマンの作曲で力強いリフ・チューン、ラストの“Similar Souls”がオシー・ジョンソンの作曲で快適なミディアム・チューンでそれぞれお薦めです。演奏面で言うとやはりズートのアーシーでコクのあるテナーと、ニューマンの乾いた音色のトランペットが聴きモノです。原題の“Locking Horns”は「(角突き合わせて)格闘する」と言う意味らしいですが、内容はリーダー2人の激しいバトルというより、全編リラックスしたムードの共演と言った趣きです。全曲オリジナルというのも好感が持てますし、なかなかの隠れ名盤ではないでしょうか?
コメント