今年1月のブログでチャーリー・パーカーの「ナウズ・ザ・タイム」を取り上げ、パーカーの魅力に開眼したようなことを書きましたが、実はその後も何枚かパーカーのCDを買ってみたはものの、イマイチのめり込めませんでした。名盤と呼ばれている「スウェディッシュ・シュナップス」「バード・アンド・ディズ」はそこまで楽曲が良いとは思いませんし、晩年の「プレイズ・コール・ポーター」は演奏がヘロヘロ。「エイプリル・イン・パリ」はパーカーのソロ自体は素晴らしいものの、バックの甘ったるいストリングスがちと苦手。最後の試しということでこれまで録音の悪さを理由に敬遠していた40年代後半のダイアル・セッションを買ってみました。これがなかなか素晴らしい。音質はさすがに悪いですが、それを補ってあまりあるパーカーの素晴らしい演奏と後にスタンダードとなる名曲のオリジナル演奏が堪能できます。
ダイアルと言うのは西海岸にあったレコード会社の名前ですが、他に有名な作品はなく、パーカーの全盛期を録音するためだけに存在したレーベルと言っても過言ではないでしょう。録音は1946年2月から1947年12月にかけて計8回行われ、合計37曲が2枚のCDにわたって収録されています。パーカーの他の作品はやたら別テイクが多く閉口することがありますが、本作は全てマスターテイクのみで曲の多さのわりにはすっきりした印象です。
まずはVol.1から。こちらは5つのセッションから成り、全て西海岸録音です。まず、1つ目のセッションは1946年2月のディジー・ガレスピーとの共演で、“Diggin' Diz”1曲のみが収録されていますが、さすがに録音状態が悪すぎてまともな評価はできません。2曲目から6曲目までは翌3月のセッションで、当時まだ19歳だったマイルス・デイヴィス(トランペット)に加え、ラッキー・トンプソン(テナー)、ドド・マーマローサ(ピアノ)らかなるセプテットの演奏。このセッションからは後にパーカーの代表曲となる“Moose The Mooche”“Yardbird Suite”が生まれており、どちらも素晴らしいの一言。その他に有名な“Ornithology”も収録されています。7曲目から10曲目はハワード・マギー(トランペット)との共演ですが、こちらは正直イマイチ。アルコールで酩酊状態だったらしく、演奏もどことなく冴えません。11曲目から15曲目は1947年2月のセッションで、“Misty”の作曲者としても知られているエロール・ガーナー(ピアノ)との共演。これがなかなか充実の出来で、“Bird's Nest”ではパーカーとガーナーが目の覚めるようなソロの応酬を繰り広げます。“Cool Blues”もいいですし、アール・コールマンのヴォーカルも入った“This Is Always”“Dark Shadows”ではパーカーの珍しい歌伴演奏も聴けます。16曲目から19曲目は再びハワード・マギーとのセッションで、パーカーと同じく夭折したワーデル・グレイ(彼については3月のブログ参照)のテナーも聴けます。パーカーの演奏自体は比較的好調ですが、自作曲が“Relaxin' At Camarillo”のみで後はマギーの作品と言うのがやや不満ですね。以上、雑多な寄せ集め感もあり、演奏も全てが上質と言うわけではありませんが、マイルス入りのセッションとエロール・ガーナーとの共演は必聴ですね。
Vol.2の方は1947年の10月から12月にかけてニューヨークで録音されたもので、Vol.1のような寄せ集め感はなくメンバーも固定です。そのメンバーとはマイルス・デイヴィス(トランペット)、デューク・ジョーダン(ピアノ)、トミー・ポッター(ベース)、マックス・ローチ(ドラム)。さらに13曲目から18曲目での6曲でJ・J・ジョンソン(トロンボーン)が追加で加わります。この一連のセッションは掛け値なしにジャズ史上に残る名演と言ってよいでしょう。若きマイルスやジョーダンも才能の片鱗をうかがわせていますが、何と言っても主役はパーカー。全盛期の彼の閃きに満ちたアドリブと彼のペンによる名曲の数々が多数収録されており、多少の録音の悪さなど吹き飛ばしてくれます。特に10月のセッションが圧倒的で、1曲目から“Dexterity”“Bongo Bop”“Dewey Square”“The Hymn”と名曲・名演のオンパレード。続いて“All The Things You Are”の変奏曲である“Bird Of Paradise”、スタンダード曲のメロディを鮮やかに再構築した“Embraceable You”とバラード演奏の素晴らしさも見せつけてくれます。翌11月のセッションも好調で、こちらも“Bird Feathers”“Klactoveedsedstene”“Scrapple From The Apple”と後に多くのジャズメンにカバーされる名曲のオリジナルが聴けます。他の3曲はスタンダードで“My Old Flame”“Out Of Nowhere”“Don't Blame Me”とロマンチックなバラード演奏が続きます。最後の12月のセッションはJ・Jのトロンボーンを加えたセクステット演奏ですが、内容的には上記2セッションには劣るものの“Drifting On A Reed”“Crazeology”は名演です。これまでパーカーと言えばジャズ史上の偉人であることは認めつつも、時代の古さもあってどこか取っつきにくさを感じていた私ですが、このダイヤル・セッションを聴いた今ではすっかりその魅力に取りつかれてしまいました。「パーカーを聴かずにジャズを語るなかれ」なんて年寄り評論家のたわ言とかつては反発していた私ですが、これからは同じセリフを発してしまいそうで怖いです・・・
ダイアルと言うのは西海岸にあったレコード会社の名前ですが、他に有名な作品はなく、パーカーの全盛期を録音するためだけに存在したレーベルと言っても過言ではないでしょう。録音は1946年2月から1947年12月にかけて計8回行われ、合計37曲が2枚のCDにわたって収録されています。パーカーの他の作品はやたら別テイクが多く閉口することがありますが、本作は全てマスターテイクのみで曲の多さのわりにはすっきりした印象です。
まずはVol.1から。こちらは5つのセッションから成り、全て西海岸録音です。まず、1つ目のセッションは1946年2月のディジー・ガレスピーとの共演で、“Diggin' Diz”1曲のみが収録されていますが、さすがに録音状態が悪すぎてまともな評価はできません。2曲目から6曲目までは翌3月のセッションで、当時まだ19歳だったマイルス・デイヴィス(トランペット)に加え、ラッキー・トンプソン(テナー)、ドド・マーマローサ(ピアノ)らかなるセプテットの演奏。このセッションからは後にパーカーの代表曲となる“Moose The Mooche”“Yardbird Suite”が生まれており、どちらも素晴らしいの一言。その他に有名な“Ornithology”も収録されています。7曲目から10曲目はハワード・マギー(トランペット)との共演ですが、こちらは正直イマイチ。アルコールで酩酊状態だったらしく、演奏もどことなく冴えません。11曲目から15曲目は1947年2月のセッションで、“Misty”の作曲者としても知られているエロール・ガーナー(ピアノ)との共演。これがなかなか充実の出来で、“Bird's Nest”ではパーカーとガーナーが目の覚めるようなソロの応酬を繰り広げます。“Cool Blues”もいいですし、アール・コールマンのヴォーカルも入った“This Is Always”“Dark Shadows”ではパーカーの珍しい歌伴演奏も聴けます。16曲目から19曲目は再びハワード・マギーとのセッションで、パーカーと同じく夭折したワーデル・グレイ(彼については3月のブログ参照)のテナーも聴けます。パーカーの演奏自体は比較的好調ですが、自作曲が“Relaxin' At Camarillo”のみで後はマギーの作品と言うのがやや不満ですね。以上、雑多な寄せ集め感もあり、演奏も全てが上質と言うわけではありませんが、マイルス入りのセッションとエロール・ガーナーとの共演は必聴ですね。
Vol.2の方は1947年の10月から12月にかけてニューヨークで録音されたもので、Vol.1のような寄せ集め感はなくメンバーも固定です。そのメンバーとはマイルス・デイヴィス(トランペット)、デューク・ジョーダン(ピアノ)、トミー・ポッター(ベース)、マックス・ローチ(ドラム)。さらに13曲目から18曲目での6曲でJ・J・ジョンソン(トロンボーン)が追加で加わります。この一連のセッションは掛け値なしにジャズ史上に残る名演と言ってよいでしょう。若きマイルスやジョーダンも才能の片鱗をうかがわせていますが、何と言っても主役はパーカー。全盛期の彼の閃きに満ちたアドリブと彼のペンによる名曲の数々が多数収録されており、多少の録音の悪さなど吹き飛ばしてくれます。特に10月のセッションが圧倒的で、1曲目から“Dexterity”“Bongo Bop”“Dewey Square”“The Hymn”と名曲・名演のオンパレード。続いて“All The Things You Are”の変奏曲である“Bird Of Paradise”、スタンダード曲のメロディを鮮やかに再構築した“Embraceable You”とバラード演奏の素晴らしさも見せつけてくれます。翌11月のセッションも好調で、こちらも“Bird Feathers”“Klactoveedsedstene”“Scrapple From The Apple”と後に多くのジャズメンにカバーされる名曲のオリジナルが聴けます。他の3曲はスタンダードで“My Old Flame”“Out Of Nowhere”“Don't Blame Me”とロマンチックなバラード演奏が続きます。最後の12月のセッションはJ・Jのトロンボーンを加えたセクステット演奏ですが、内容的には上記2セッションには劣るものの“Drifting On A Reed”“Crazeology”は名演です。これまでパーカーと言えばジャズ史上の偉人であることは認めつつも、時代の古さもあってどこか取っつきにくさを感じていた私ですが、このダイヤル・セッションを聴いた今ではすっかりその魅力に取りつかれてしまいました。「パーカーを聴かずにジャズを語るなかれ」なんて年寄り評論家のたわ言とかつては反発していた私ですが、これからは同じセリフを発してしまいそうで怖いです・・・