本日は珍しいところでサクソフォン協奏曲のオムニバスをご紹介します。ジャズの世界ではトランペットと並んで花形楽器のサックスですがクラシックの世界ではマイナー楽器扱い。管楽器に限定してもフルートやクラリネット、ホルンの方がオーケストラアンサンブルでも重要視されますし、ソロ楽器としての地位も確立しています。理由は楽器としての歴史の浅さ。ベルギー人のアドルフ・サックスによってサクソフォンが発明されたのが19世紀の半ば。その頃には今のオーケストラの形と言うのはほぼ出来上がっていて、新参者のサックスに付け入る隙はなかったんですね。もしあと100年早くサックスが誕生していたらきっとモーツァルトやハイドンあたりがサックスのための作品を書き下ろしていたことでしょう。
今ではサックスもすっかりメジャー楽器となり、クラシックでも現代音楽の分野ではサックスを主楽器とした作品も多く作られているようです。ただ、当ブログでは現代音楽は守備範囲外ですので、20世紀前半に著名な作曲家が書いたサックスと管弦楽のための作品にスポットライトを当てたいと思います。CDで購入したのは英国人サックス奏者のジョン・ハーレがネヴィル・マリナー指揮アカデミー・オヴ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズをバックに演奏したものです。収録されているのはドビュッシー、イベール、ヴィラ=ロボス、グラズノフ、リチャード・ロドニー・べネット、デイヴ・ヒースと計6人の作曲家による作品。うちべネットとヒースは現代音楽なので割愛します。
まずは印象派の巨匠ドビュッシーによる「サクソフォーンと管弦楽のための狂詩曲」。1908年に書かれた曲で、クラシックの世界でサクソフォンのために書かれた曲の中ではさきがけ的存在と思います。ドビュッシーの代表作である「海」、「夜想曲」などに通じる幻想的なサウンドで、なかなかの佳作と言えるでしょう。続いては「寄港地」で知られるフランスの作曲家イベールが1935年に書いた「アルト・サクソフォーンと11の楽器のための室内小協奏曲」。第1楽章の浮き立つような華やかな旋律が印象的です。
3曲目は「ブラジル風バッハ」で有名なブラジルの作曲家エイトル・ヴィラ=ロボスによる「サクソフォンと室内管弦楽のための幻想曲」。ヴィラ=ロボスの作品の中でもマイナーでほとんど知られていない曲ですが、これはなかなかの名曲だと思います。特に第1楽章が素晴らしく、ソプラノ・サックスが奏でる切なげで優しさに満ちた旋律が胸を打ちます。やや物憂げな第2楽章を経て、ドラマチックに盛り上がる第3楽章も良いです。個人的には本CD中ベストの曲だと思います。
最後はグラズノフの「アルト・サクソフォーンと弦楽オーケストラのための協奏曲」。グラズノフは過去に本ブログでも「四季」、ヴァイオリン協奏曲を取り上げましたが、チャイコフスキーの流れを組むロシア・ロマン派の巨匠と言うイメージが強く、実際に代表作はほとんどが19世紀末から20世紀初頭の帝政ロシア時代に書かれたものです。ただ、ロシア革命後のソ連時代も細々と作曲活動を続けており、本作は亡くなる2年前の1934年に書かれたものです。この頃のソ連はショスタコーヴィチ等新世代の作曲家が全盛のころですが、グラズノフの音楽は多少は現代的な響きは見られるもののあくまでロマン派の範疇にとどまっています。そのため当時は保守的と評されたそうですが、古典派・ロマン派のレパートリーが存在しないサクソフォンにとっては貴重な正統派のコンチェルトと言ってよいでしょう。内容的にも上述のヴァイオリン協奏曲等には劣りますが、まずまずの佳作と言えます。
今ではサックスもすっかりメジャー楽器となり、クラシックでも現代音楽の分野ではサックスを主楽器とした作品も多く作られているようです。ただ、当ブログでは現代音楽は守備範囲外ですので、20世紀前半に著名な作曲家が書いたサックスと管弦楽のための作品にスポットライトを当てたいと思います。CDで購入したのは英国人サックス奏者のジョン・ハーレがネヴィル・マリナー指揮アカデミー・オヴ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズをバックに演奏したものです。収録されているのはドビュッシー、イベール、ヴィラ=ロボス、グラズノフ、リチャード・ロドニー・べネット、デイヴ・ヒースと計6人の作曲家による作品。うちべネットとヒースは現代音楽なので割愛します。
まずは印象派の巨匠ドビュッシーによる「サクソフォーンと管弦楽のための狂詩曲」。1908年に書かれた曲で、クラシックの世界でサクソフォンのために書かれた曲の中ではさきがけ的存在と思います。ドビュッシーの代表作である「海」、「夜想曲」などに通じる幻想的なサウンドで、なかなかの佳作と言えるでしょう。続いては「寄港地」で知られるフランスの作曲家イベールが1935年に書いた「アルト・サクソフォーンと11の楽器のための室内小協奏曲」。第1楽章の浮き立つような華やかな旋律が印象的です。
3曲目は「ブラジル風バッハ」で有名なブラジルの作曲家エイトル・ヴィラ=ロボスによる「サクソフォンと室内管弦楽のための幻想曲」。ヴィラ=ロボスの作品の中でもマイナーでほとんど知られていない曲ですが、これはなかなかの名曲だと思います。特に第1楽章が素晴らしく、ソプラノ・サックスが奏でる切なげで優しさに満ちた旋律が胸を打ちます。やや物憂げな第2楽章を経て、ドラマチックに盛り上がる第3楽章も良いです。個人的には本CD中ベストの曲だと思います。
最後はグラズノフの「アルト・サクソフォーンと弦楽オーケストラのための協奏曲」。グラズノフは過去に本ブログでも「四季」、ヴァイオリン協奏曲を取り上げましたが、チャイコフスキーの流れを組むロシア・ロマン派の巨匠と言うイメージが強く、実際に代表作はほとんどが19世紀末から20世紀初頭の帝政ロシア時代に書かれたものです。ただ、ロシア革命後のソ連時代も細々と作曲活動を続けており、本作は亡くなる2年前の1934年に書かれたものです。この頃のソ連はショスタコーヴィチ等新世代の作曲家が全盛のころですが、グラズノフの音楽は多少は現代的な響きは見られるもののあくまでロマン派の範疇にとどまっています。そのため当時は保守的と評されたそうですが、古典派・ロマン派のレパートリーが存在しないサクソフォンにとっては貴重な正統派のコンチェルトと言ってよいでしょう。内容的にも上述のヴァイオリン協奏曲等には劣りますが、まずまずの佳作と言えます。