ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ウォルトン/ベルシャザールの饗宴

2018-08-07 12:31:48 | クラシック(声楽)
本日は久々にオラトリオを取り上げたいと思います。3年ほど前にオラトリオの魅力に目覚めて、ハイドンの「天地創造」やメンデルスゾーンの「エリヤ」等の古典的名作をいくつか取り上げましたが、今日ご紹介するのはイギリスの作曲家ウィリアム・ウォルトンが1931年に発表した作品です。ウォルトンについては以前にヴァイオリン協奏曲のエントリーでも書きましたが、20世紀の作曲家でありながら前衛的な要素はほぼなく、わかりやすい曲想が持ち味です。このオラトリオも難解な旋律はほぼない上に、時間的に30分強とコンパクトにまとまっているので、むしろ2時間前後の大作が多い古典の名作よりオラトリオ初心者には取っ付きやすいかもしれません。物語は旧約聖書の「ダニエル書」から取られていて、古代バビロニアの王ベルシャザールが異教の神々を崇拝して神を冒涜したところ、天罰が下って死に、バビロンに捕らえられていたユダヤ人達が解放されたというお話です。とは言え、内容はともかく、音楽的には宗教色はそれほど感じず、大規模な合唱とオーケストラサウンドで作り上げる一大スペクタクルと言った感じです。



作品は全9曲に分かれていますが、通しで演奏されるため実際は1曲です。盛り上がる場面は2カ所。まずは3曲目から4曲目にかけてベルシャザール王が酒宴を開き、異教の神々を称賛する場面。そして、フィナーレの神の栄光を讃える場面。どちらも迫力ある合唱とフルオーケストラが奏でるゴージャスなサウンドが一体となった壮大な音世界で、聴く者を陶酔させてくれます。20世紀の合唱音楽と言えばオルフの「カルミナ・ブラーナ」ばかりが有名ですが、個人的には本作もそれに負けない傑作だと思います。その割に人気は高いとは言えず、本国イギリスを除けば演奏機会も多くないのが残念でなりませんが、幸いCDだと私の買ったポール・ダニエル指揮イングリッシュ・ノーザン・フィルハーモニアによるナクソス盤が国内版でも入手可能ですし、youtubeだと尾高忠明がBBCプロムスを指揮した映像が視聴可能です。どちらも本当に素晴らしい演奏ですので、未聴の方々にはおススメです。
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