これまで声楽曲、特に宗教音楽は敬遠していましたが、先日のプーランク「グロリア」「スターバト・マーテル」が良かったので、本日はブラームスの「ドイツ・レクイエム」を取り上げたいと思います。レクイエムは日本語で“鎮魂歌”とも訳され、カトリック教会で死者の安息を祈るミサのための曲です。一応、世間ではモーツァルト、フォーレ、ヴェルディの作品が3大レクイエムと呼ばれていますね。一方の本作は「ドイツ・レクイエム」というタイトルが示すように、ラテン語ではなくドイツ語で歌われていますし、歌詞も通常のレクイエムとは異なるようです。これはブラームス自身が宗教的にもプロテスタントだったことも影響しているようです。
もっとも我々異教徒の日本人には歌詞の内容とかはどうでもいいですよね。純粋に音楽の良さだけ評価するとしたらこれはもう素晴らしいの一言です。親しみやすい旋律、壮麗なオーケストレーション、そして美しい合唱と三拍子揃った声楽曲の傑作です。ブラームスの作品全体の中でも交響曲第1番に次ぐぐらいの完成度かもしれません。あえて難点を挙げるとすれば全7曲75分というボリュームですが、随所に盛り上がるパートがあるため、決してダレることはありません。特に素晴らしいのは第2曲、第3曲、第6曲でどの曲も前半はやや重苦しい旋律ながら、後半に一気に爆発的な盛り上がりを見せるというパターン。合唱とオーケストラが一体となった壮麗な音世界はかのベートーヴェンの第9を彷彿とさせます。静謐な美しさが漂う第1曲も素晴らしいです。CDはダニエル・バレンボイム指揮シカゴ交響楽団のものを買いました。数ある同曲の録音の中でも名盤の誉れが高い1枚ですし、何より廉価版で1000円という価格が決め手ですね。