今日はひさびさにチェロ協奏曲を取り上げます。前回のクラリネットほどではないにせよ、チェロ協奏曲も作品数に恵まれているとは言い難いですね。多作で知られるモーツァルトはなぜかチェロを主楽器にした曲を1つも残していませんし、ベートーヴェンもチェロ・ソナタは書いたもののコンチェルトには手をつけず(チェロ入りの「三重協奏曲」はありますが)。一応、ドヴォルザーク、シューマンと今日ご紹介するハイドンが“3大チェロ協奏曲”と呼ばれてはいるものの、実際はドヴォルザークの一人勝ち状態なのが現実です。とは言え、ハイドンのチェロ協奏曲もなかなか魅力的でしたよ。
さて、このハイドンのチェロ協奏曲ですが現存しているのは2曲あり、そのうち“3大協奏曲”の一つに数えられているのは第2番の方です。第1番の方はと言うと、何と1960年代まで存在が知られておらず、プラハの博物館の倉庫に楽譜が埋もれていたというから驚きです。当然、そんな古い楽譜が突然見つかったところで「本当にハイドンなの?ニセモノじゃないの?」という疑惑が出てきて当然だと思うのですが、研究の結果正真正銘のハイドン作と認定されて今に至っているようです。どういう鑑定の仕方をしたのかはわかりませんが、素人でもわかるのは曲の内容が素晴らしいということですね。バロックの名残も感じさせる雅やかな第1楽章、優美なアダージョの第2楽章、チェロの技巧も相当に要求される華やかな第3楽章。もし、これをハイドンが書いたのでないのなら、同時代にもう一人別の天才が存在していたことになってしまいます。
一方の第2番ですが、こちらは古くから親しまれているだけあって、とても充実した内容です。第1楽章は15分もある雄大な楽章で、全体的にゆったりした旋律ながら後半にチェロの超絶技巧が求められるソロパートがあります。第2楽章は穏やかなアダージョ、第3楽章は心が浮き立つような華やかなロンドで締めくくります。CDはハンナ・チャンのチェロ、ジュゼッペ・シノーポリ指揮シュターツカペッレ・ドレスデンのものです。録音(1997年)当時、天才チェリストと話題だったチャンが15歳とは思えない成熟したチェロを聴かせてくれます。