ここ1年あまりクラシック、特に声楽曲の奥深い世界にどっぷりはまり込んでいましたが、CD収集も一段落したので本業(?)のモダンジャズ名盤探しに戻りたいと思います。今日は先日発売された「ジャズ・コレクション1000」シリーズからデイヴ・ベイリーのエピック盤「ワン・フット・イン・ザ・ガター」を取り上げます。デイヴ・ベイリーと言えば、ドラマーとしてジェリー・マリガンのバンドに長く在籍し、他にもルー・ドナルドソンの「ブルース・ウォーク」やアート・ファーマーの「モダン・アート」等にも顔を出しています。自身名義ではジャズラインというマイナー・レーベルに残した「バッシュ!」が隠れ名盤として有名ですね。私も所有していますが、ケニー・ドーハム、カーティス・フラー、トミー・フラナガンら一流ジャズメンの共演もあり、なかなかクオリティの高い作品です。本作はその「バッシュ!」の前年の1960年に録音されたセッションですが、こちらも通好みのメンツが脇を固めています。トロンボーンのフラーは「バッシュ!」と同じですが、トランペットがエリントン楽団でも活躍したベテランのクラーク・テリー、テナーがホレス・シルヴァー・クインテットのジュニア・クック、ピアノが「アス・スリー」で当時ブルーノートから売り出し中だったホレス・パーラン、ベースがペック・モリソンという布陣です。
曲はCDにはボーナストラックで"Brownie Speaks"が入っていますが、もともとのレコードには3曲のみ。ただし、どれも10分を超える長尺の演奏で、各人のソロがたっぷり収められています。とは言え、リーダーである肝心のベイリーのドラム・ソロはなく、ひたすら裏方に徹しているのが面白いですが・・・1曲目はタイトルチューンでもある"One Foot In The Gutter"。テリーのオリジナルとのことですが、どこかで聞いたことのあるようなスローテンポのブルースです。2曲目はセロニアス・モンクの"Well, You Needn't"。マイルス・デイヴィスも好んで取り上げたナンバーですが、切れ味鋭いマイルスの演奏に加えて、こちらはミディアム・テンポの快適なハードバップです。3曲目はクリフォード・ブラウンの"Sandu"。本家はかの名盤「スタディ・イン・ブラウン」に収録されていた5分弱の曲ですが、本セッションでは20分にもわたってメンバー達が延々とソロを繰り広げます。特に冒頭のテーマ演奏のあと5分以上も続くカーティス・フラーのトロンボーン・ソロが圧巻です。スタジオの中にオーディエンスを入れて録音されたらしく、随所で拍手が入っているのもご愛敬。終始リラックスした雰囲気の中で行われたご機嫌なジャム・セッションの記録です。ベイリーは他にもエピックに2枚のアルバムを残しており、今回再発されたのでまたそれらも聴いてみたいと思います。