ハードバピッシュ&アレグロな日々

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トランペット&トロンボーン協奏曲集

2019-01-08 12:44:42 | クラシック(協奏曲)
本日取り上げるのはトランペット協奏曲とトロンボーン協奏曲のオムニバスです。最近個人的にハイドンがブームということもあり、ハイドンのトランペット協奏曲を聴くために今日ご紹介するCDを購入したのですが、それ以外の曲も粒揃いの佳曲揃いでまさに掘り出し物の1枚でした。収録はトランペット協奏曲が2曲(ハイドン&フンメル)、トロンボーン協奏曲が2曲(フェルディナント・ダヴィッド&ヴァーゲンザイル)。演奏はデイヴィッド・ジンマン指揮チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団でソリストがジェフリー・セガール(トランペット)とマイケル・ベルトンチェロ(トロンボーン)です。



まずはトランペット協奏曲から。トランペット協奏曲はバロック時代に多く作曲され、ヴィヴァルディやタルティーニ、テレマンあたりの曲もありますが、そこら辺の音楽は正直言って私の好みではない。ところが古典派やロマン派になると極端に数が少なくなり、本CD収録のハイドンとフンメルぐらいしかありません。ただ、この2曲に関しては文句なしの名曲だと思います。ハイドンの作品は1796年、彼が64歳の時の作品で、時期的には一連のロンドン交響曲を書き上げた後、「天地創造」「四季」などのオラトリオに取り掛かる前の作品です。つまり、作曲家として円熟の極みにいた時の曲ですから悪かろうはずがありません。トランペットの華やかな音を最大限に活かしつつ、ハイドンお得意の切れ味鋭い弦楽アンサンブルも楽しめる至上の逸品です。

一方のフンメルはフルネームをヨハン・ネポムク・フンメルと言い、ベートーヴェンとほぼ同時期に活躍した作曲家のようです。生前はバレエ音楽やピアノ協奏曲、ヴァイオリン協奏曲をはじめ多くの作品を残し、ベートーヴェンと並び称されるほどの高い評価を受けていたようですが、今ではこのトランペット協奏曲ぐらいしか演奏されません。ただ、この曲はハイドンや20世紀のアルチュニアンと並んでトランペット協奏曲の最重要レパートリーと言って良く、多くの録音が残されています。曲調は古典派の王道を行くもので、旋律は明快で特に第3楽章は節を付けて歌いたくなるようなわかりやすさです。あるいはこのわかりやすさが深みがないと判断され、その後の低評価につながったのかもしれませんね。

続いてはトロンボーン協奏曲。こちらはトランペット協奏曲以外に数が少なく、特に19世紀以前はほとんど作品が見当たりません。モーツァルトの父であるレオポルト・モーツァルトやリムスキー=コルサコフなんかの作品もあるようですが、本作に収録されているのはフェルディナント・ダヴィッドとゲオルク・クリストフ・ヴァーゲンザイルという作曲家の作品。どちらも無名ですが前者のダヴィッドはメンデルスゾーンとほぼ同時期に活躍したドイツの作曲家で生前はヴァイオリニストとして有名だったそうです。なんでもあのメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲ホ短調(いわゆる「メン・コン」)の初演は彼なんだとか。ヴァイオリン協奏曲も5曲残したそうですが、なぜかそれらが演奏される機会は皆無で、もっぱらトロンボーン協奏曲(正確に言うとトロンボーンと管弦楽のためのコンチェルティーノ)だけが後世に残っています。ただ、この曲は本当に素晴らしい曲で、旋律もロマン派の王道を行くものですし、ソロ部分もまるでヴァイオリン協奏曲を思わせるような華やかさです。トランペットとはまた違う迫力あるトロンボーンが高らかにソロを歌い上げる部分が素晴らしいですね。最後のヴァーゲンザイルは18世紀半ばに活躍したオーストリアの作曲家。年代的に完全にバロック時代なので、上述の3曲とはやや毛色が違います。曲もまあまあと言ったところです。
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