広く浅く

秋田市を中心に青森県津軽・動植物・旅行記などをご紹介します。

格言鉛筆

2016-01-17 23:16:36 | その他もろもろ
大学入試センター試験が終わった。
秋田など雪国では、今シーズンとしては寒くて雪が残る日に当たってしまったが、平年と比べて極端ではなく、全国的に大きな交通や試験運営上の支障がなく終わったようで、何より。明日からは全国的に荒れ模様の天候になるそうで、ギリギリセーフ。

秋田でのセンター試験を伝える、テレビのローカルニュースで気になったこと。
秋田以外の多くの地方部でも同じかと思うが、毎年、各県につき1つの試験会場の1つの試験室に限定して、受験生着席後~試験開始前の問題用紙を配布して説明する辺りまでに限り、部屋の後方にマスコミを入れて撮影させているようだ。秋田県では秋田大学、青森県では弘前大学などと、国立大学で取材させるのが恒例。部屋も毎年同じかもしれない。
後ろ姿で試験開始前とはいえ、その部屋に割り当たってしまった受験生にしてみれば、気が散ってしまうかもしれない。公平性の意味では、いかがなものだろう。

したがって、どこのテレビ局、新聞社でも、撮影する向きの左右が違うくらいで、代わり映えしない映像なのだけど。
今年は、秋田テレビ(AKT)と秋田朝日放送(AAB)で、同じ受験者の机上のアップが放映された。(NHKとABSでは映らなかった)
上がAKT、下がAAB
距離やアングル的にふさわしい位置ということ以外に、2局のカメラマンがここをアップで撮影し、編集でカットされずに放映に至った理由というか、映像の意図は、よく理解できる。
なぜなら、置かれた3本の鉛筆が、いずれも神社で頒布・授与されているものだから。受験生らしい光景として、「画(え)になる」のだ。

黄色の鉛筆には「太宰府天満宮」、無着色のには「湯島天神 一歩一歩進め。」、中央の水色のには「東風吹かば匂ひおこせよ 梅の花」と判読できる。
水色は歌からして水色も太宰府天満宮の鉛筆かと思ったら、やはりそう。「太宰府天満宮」と書かれた(彫られた)面の裏が見えていることになる。だから、黄色の裏にも歌が書かれているはず。歌は下の句の「あるじなしとて春な忘れそ」が彫られたものもあり、ほかに白い鉛筆もラインナップされてセットになっているようだ。

湯島天神の鉛筆は僕も使ったことがあった。たしか四角い断面で、書かれている文言が複数あって、それがセットされている。「実るほど頭を垂れる稲穂かな」を覚えたのが、湯島天神の鉛筆だったはず(でも、今はラインナップにないみたい)。


1人で複数の神社に神頼みするのは、いかがなものかという疑問が湧くのはさておき、一見すると、いじらしくてほほえましい光景である。
しかし、この場所にこの鉛筆があること自体、間違っているのでは? とふと感じた。

21年前、僕が受験した時は、受験票だったか要項だったかに、「余計な文言が書かれた鉛筆は使えない」という制限が記載されていたはず。

独立行政法人大学入試センターのホームページで確認。
すると、今年の出願者が全員入手する「受験案内」と「受験上の注意」という書類において、どちらも同じ文面で言及されていた。

「受験案内」7ページより

「試験時間中,机の上に置けるものは,黒鉛筆(H,F,HBに限る。和歌・格言等が印刷されているものは不可。)…」とある。
なお、受験票や当日机に貼られる「受験番号票」には、記載なし。

そうそう。21年前もたしかまったく同じ文言だった。
「和歌・格言等が印刷され」た鉛筆なんてあるの? と思ったのを思い出した。(既に湯島天神の鉛筆は知っていたが、結びつかなかった)

「東風吹かば~」は明らかに和歌であり、また、湯島天神のホームページでは、この鉛筆を「格言入」と紹介しており、どちらも試験時間中に使うことはできないととらえて差し支えないだろう。
厳密には撮影の段階では「試験時間中」ではないが、結果的には「あまり適切とは言えない試験会場風景」が放映されてしまったことになりそう。


まったく余計なお世話だけど、この受験生、どうなったのだろうか。
受験案内には、この鉛筆のような指定外の物を「使用又は置いている場合には、解答を一時中断させて、試験終了まで預かることがあります。」とある。
カンニングなどは「不正行為」として、ただちに退室・全科目無効となるが、それとは別の軽い措置だ。
ただ、肝心の鉛筆を取られては、解答できない。普通の鉛筆を持っていただろうか。(持っていたとしても、筆箱やかばんから取り出す行為は認められるのか)

しかし、ネット上には実際のセンター試験で「使ったけど、何も言われなかった」という声も少なからずある。
監督者が黙認してくれたのか、気づかないのか、あるいは受験案内では「預かることがあります」であって「預からないこともあります」なのか。

21年前のセンター試験では、顔写真照合や回収した解答用紙の確認は、けっこう厳重に行っていると感じた(それまで高校内での模試しか受けていなかったので、驚いた)が、そうじゃない部分もあるのだろうか。


ここで、当該受験者(並びに同様のことをした受験生)に対して厳しいことを書かせてもらう。
受験案内だけでも20ページに及び、読むのは面倒で大変かもしれない。だけど、大事な大学受験の第一関門であるセンター試験なのだから、隅々までもらさず読むべきだ。
世の中には「知らなかった」では済まされないこともある。(この件はそこまでじゃないし、実際には世の中には知らなかったでは済まされないように見えて、結局は済んじゃうことがけっこうあるのだけど…)

それに、他の受験生の多くは、注意書きをしっかり読んで持ち物を揃えているはず。その人たちからすれば、間違ったことをしているのにまかり通ってしまうとは、バカバカしく感じてしまうかもしれない。
以上、苦言。まあ、大した問題ではないから、今後は注意しましょう。



ところで、湯島天神では、鉛筆を1ダース単位で授与しているが「格言入・格言無各6本」。
つまり半分は格言が入っていないらしい。格言なしは、試験会場への持ち込みを考慮しているようだ。(湯島天神の名称表記はあり。三菱やトンボと同じブランド名ととらえられるのだろう)
テレビの受験生も、そっちを持っていけばよかったのに…

あと、大学入試センター側が、「次に挙げる寺社の鉛筆は、和歌・格言入りでも持ち込めます」という“認証”制度を作ったら…親切すぎるし、特定の企業や宗教団体の利益になるからダメか。
じゃあ、もうやってるかもしれないけど、寺社側で鉛筆の包装に「この鉛筆は、試験では使用できない場合があります。その場合の責任は負えません」と注意書きをしたら…それでも、読まない(理解しない?)人には意味がないか。


今回の注意事項では、「英文字や地図等がプリントされた服等」の着用もダメ。昔はどうだったかな?
記載に忠実に従えば、言及がない「英文字や地図等が印刷されている鉛筆」や「和歌・格言等がプリントされた服」は良いことになる。あるいは「数式や公式がデザインされた」鉛筆や服とか。
それに、机に置くティッシュペーパーは「袋又は箱から中身だけ取り出したもの」でなければいけない。昔は袋ごと置いても良かったような気がするけど。一方で、消しゴムのケースについては言及がない。
重箱の隅をつつくようだけど、大学入試センター側でも、制限に一貫性を持たせ、それを簡潔に分かりやすく示す努力が必要かもしれない。

※個人的な思い出ですが、センター試験関連記事
※このてんまつを大学入試センターへ投書したのだが、翌2017年も要項はそのままだったようだ。関連記事
※2018年も変化はなさそう。そんな中、2017年8月18日にトンボ鉛筆が「文字なし「モノ消しゴム」」を発売した。先に発売していたトンボマークのみの鉛筆とともに「試験会場での所持品や服等に文章や英文字等がプリントされたものを制限する表記が受験上の注意(センター試験)にあることから、文房具選びで苦慮している受験生に対応しました。」とのこと。
※センター試験は2021年から「大学入学共通テスト」となったが、実施主体は大学入試センターが継続するためか、こうした注記はおおむね変化なし。新型コロナウイルス対策でマスク着用が義務付けられ、マスクにも条件が付いた。マスクもメーカー名程度は許容されるが、その辺の周知が不充分だったらしく、メーカーのシャープがツイッターで自社のマスクは使えないと早とちりし、それが拡散して不安になった受験生もおり、それを受けてセンターが周知するという、ちょっとした混乱もあった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする