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秋田市を中心に青森県津軽・動植物・旅行記などをご紹介します。

個人情報の落とし物

2017-08-09 00:44:20 | 秋田のいろいろ
道端の電柱や塀などに、キーホルダーや冬場なら手袋なんかがが載ったり引っかかったりしていることがある。誰かが路上に落とした物を、誰かが見つけて拾ってそうしたのだろう。
遺失物法では、拾った人は落とし主へ返すか警察へ提出しなければならないわけだが、キーホルダーや手袋でそこまでするのははばかられ(落とした人も警察へ遺失物届を出してまで探す可能性は低い)、かといってそのまま放置して汚れてしまうのも忍びなく、汚れにくくかつ目につきやすい場所へ動かしておこうという、親切心によるものなのは、理解できる。運良く落とし主に戻るかどうかは分からないけれど。

では、落ちているのが中身が入った財布だったら。
落とした人は困って探すのが普通。
でも、キーホルダーと同じように目立つ場所に移動させただけのものがあったそうだ。見つけて動かした人が中身を開けて見ることを躊躇したとか、警察が遠いもしくは急いでいるとかだったのだろうか。
その財布は、通りがかりの別の人が改めて拾って、落とし主へ連絡して無事返還できたのだけど、目立つ場所に移されたことによって、悪意ある者に見つけられて盗まれてしまう危険【9日追記・つまり親切心があだになる】もある。やはり、遺失物法通りに返還または提出するべきであろう。


秋田市内で見つけた落とし物2つ。
バス停のポール
時刻表掲出枠の裏側、支柱との間のすき間に何かはさまっていた。
拡大
ソフトケースに収まった水色の紙が、ケースごと半分に折られていた。
秋田市民の高齢者が1回100円で路線バスに乗車できる「高齢者コインバス資格証明書」だ。※発行年度によるのか別の色のものもある。また今年度後半からサイズが小さくなる予定。

バスから降りた人が落としてしまい、見つけた人が拾って折ってはさんだのだろう。
だけど、こんな目立たない場所に押しこまれてしまっては、仮に落とした人が探しに来たとしても、発見できないかもしれない。
証明書がないと100円でバスに乗れないわけだが、手続きをすれば、容易に再発行してもらえるはず。だから、そもそも、落とした人も探そうともしないかもしれない。

ところで、この証明書には、利用者の顔写真、氏名、住所、生年月日が記載されている。
市では「この証明書に、身分証明書としての効力はありません。」としているけれど、これだけの個人情報があれば、振り込め詐欺など「犯罪の情報源としての効力はあります」ということにならないだろうか。
これを踏まえれば、落とした人は気が気でないかもしれない。

落とした人は気にしていないか気にしているか知らないけれど、発行元の秋田市役所へ届けたほうが無難と判断。秋田駅東口の市の出先機関・駅東サービスセンターへ持っていったら、受け取ってくれた。
折れ目や汚れ具合からして、この状態であったのは1日や2日ではなさそうだった。

落とさないのがいちばんだけど、犯罪の情報源になりにくいよう発行する側の配慮も必要かもしれない。記載は「生年のみ」、「住所に番地は表記しない」といった個人情報の“減量”、クレジットカードのように「拾得した方は秋田市役所へご連絡ください」といった文言の記載をしたほうがいいようにも思う。
【21日追記】健康保険証も顔写真はないほかは同じような情報量だけど、医療機関の窓口で月1回の提示で済むから、落とすリスクは少ないし、落としても本人へ戻る可能性が高いと思う。荷物を持って、屋外の路上のバス停で何度も出し入れするコインバス証明書のほうが、“危ない”はずである。
また、バス降車時に運転士が確認するのは、証明書の顔写真(と発行者の市長印)だろう。その他の情報は、運転士としては確認のしようがない。それに、証明書発行時に秋田市(秋田市長)が住所・生年月日等個人情報を確認して、記載内容が正当であることを認めて、市長印を押しているわけである。こうしたことからしても、やはり生まれた月日や住所まで記載する意味はないと思うだけど…
なお、証明書の「発行機関名および印」欄には「秋田市長(印)」だけで、「穂積 志」の名はない。有効期限がない証明書だから、市長が交代することを見越しているのだろう。
【2023年9月14日追記】2022年秋からは、コインバスがICカード化された。もちろんカードには個人情報は記載されない。


次は、道路沿いの柵というかフェンス。
左上の赤い矢印
写真では分かりにくいけれど、小学校の名札。
安全ピンの針先が、フェンスのすき間に差しこまれていた。表向きになっており、学校名、学年とクラス、フルネームの氏名が、歩いて通るだけで判読できる(サイズからして自転車や車では判読不可能)。

学校名と場所からすれば、登下校あるいは遊んでいる時に落としてしまい、通りがかりの人が見つけて(以下同文)…ということだろう。
落とした児童は、毎日は通らない場所なのか、高さからして気づかないのか。
名札は学校指定の文房具店で購入できるから落としても困っていないだろうけど、これでは「さらし者」状態。

実は、何か月も前にこの状態なのを発見しており、学校へ届けたほうがいいと思っていた。
だけど、僕の通行ルートからすれば学校へ行くのは遠回りになるし、学校が開いている時間に通る機会もなかった。(学校へメールして「あそこにあるから回収に行け」と依頼するのも、なんか余計すぎるお世話のような気がしたし…)
先日、意を決して、自ら回収して学校へ届けることができた。

届けるため、名札をフェンスから外して手に取る。
名札本体の表面は、青や黄色の細い糸で枠・学校名などの文字・校章が刺繍された白い布。クラスや氏名は各自記入する方式。秋田市立の多くの小学校で昔からよく見かけるタイプで懐かしい。
拾った名札は安全ピンは開き切ってしまい、少し錆びて名札本体の布が一部茶色くなっており、布は吸湿と乾燥を繰り返して油性ペンの文字が少しにじんでいて、名札として再使用は厳しそう。
ふと、名札を裏返すとびっくり。昔の裏面は布の裏側が見えていただけだったが、この名札は別の紙が入っていた。
こんなもの(千代田ネーム工芸社ホームページより)
「血液型記入カード」なるもので、血液型のほか、保護者氏名、住所、電話番号の記入欄があり、落とし主はすべての項目が記入されていた。
また上記の繰り返しになるが、これもまた犯罪の情報源になり得る。表面の比ではない。

とすれば、落とした人(児童本人や保護者)は、気が気でないかもしれない。
気にしていないか気にしているか知らないけれど、やはり届けて正解だったと、自画自賛。【10日追記】とともに、もっと早く届ければ良かったと後悔。

それにしても、血液型カード。
子どもの安全とか個人情報保護が昔より厳しく叫ばれている現在、昔はなかったこんなものが存在しているとは!(昔もあったのかな?)
「千代田ネーム工芸社」とあるから、名札のメーカー側で作っている。
秋田市で一般的なこの規格の名札は、小学1年生が付ける縦長でケースのカラーバリエーションがある名札も含めて、同社の製品だった。【9日追記】プラスチックに彫る名札や、体育着のゼッケン式名札なども製造販売しており、2017年版カタログには秋田市立飯島小学校のゼッケンが掲載されている。
最近は、登下校時は裏返して氏名を隠せる名札も発売していると聞いていたが、それも同社の製品。こんなカードはそれとは対極にあると言えよう。同社の方針が理解できない。
そもそも、血液型は記入したとしても、ABOだけでなくRh型も記入しないと意味がないだろうし、万一輸血する時は改めて検査してから行うはずで、意味は薄いと思う。

保護者氏名や電話番号については、我が子に何かあった時、一刻も早く連絡してもらうために記入するという考えもとてもよく分かるし、嫌だったら記入しなければいい(学校側で強制してはいないだろう)のだろうけど。

【9日追記】そういえば、どうしてこの名札って布なのだろう。名前部分も刺繍するのなら分かる(耐久性や文字のきれいさ)けれど、枠だけ刺繍で名前はペンで各自記入する方式なら、布である必要は考えつかない。
それなりにコストがかかりそうだし、自分の過去の経験からして記名する時には、ペンの種類によっては布がインクを吸収してにじんでしまう(拾った時ににじんでいたのはこのせいかも)。昔は、わんぱく・おてんばな子が激しく遊んだり誤って洗濯したりしてしまった時、それに耐えられる性能が求められていたのかもしれない。
今だったら、厚手の紙にフルカラー印刷(印刷屋なりレーザープリンターなりで)したとしても、もっと安くかつきれいにできるのではないだろうか。どうせ1年間しか使わないのだし、企業や役所の名札だって紙製なんだし。
今さらなぜ布製なんだろう。



コインバス資格証明書も名札の裏も、財布ほど重要ではないが、キーホルダーほど軽視できるものではないと思う。
そんな落とし物が長期間放置されていた、すなわち個人情報が長期間放置されていたというのはどうなんだろう。「小さな親切 犯罪の情報源(せっかくの親切心があだ)」は極端でも「小さな親切 落とした人には伝わらない(せっかくの親切心が伝わらない)」状態である。
落とした人(もしくは発行元など)に連絡・提出すれば、「あなたの個人情報はここにあります。悪用されていません」と伝えることができる。それをするべきだと思う。「小さな親切 大きなお世話(自己満足の親切心)」のような気もするけれど、自分が落としたことを考えると、そうしてほしい。自分の個人情報が、どこかでさらされ続けているかもしれないと思うと…
いかがだろうか。

【17日追記】コインバス証明書の記載事項見直しと拾ったら届け出る旨の注記については、秋田市役所へ提案しておいた。返信は要望しなかったのでどうなるか分からないけれど、忘れなければ今後に注目。【2023年9月14日追記】結果を確認しないまま、ICカード化されました。


【10月24日追記】上記2題とは無関係だけど「個人情報の落とし物」つながりで思い出したこと。
JRの定期券は、利用者の氏名(カタカナ)、性別、年齢が券面に記載されている。また、購入時の申込書には「拾得時の連絡をご希望の場合は、電話番号をご記入ください。」という欄がある。(さらに通学定期の場合は、学校名もJR側が把握している。)したがって、落ちている定期券を拾って、駅(または警察)へ提出すれば、落とし主に戻る可能性はきわめて高い。
近年、ツイッターにおいて、主に若い人が「【拡散希望】イソノナミヘイさんの定期券拾いました。あさが丘駅へ届けました。」など、定期券面の写真付きで投稿し、それが拡散されているのを見ることがある。
駅へ届けたのなら、イソノナミヘイさんが申込書に電話番号を書いていれば、ツイッターなど使わなくても返却されるのだから、写真付きでネットにアップするのは、無駄。氏名・性別・年齢、さらに自宅や勤務・通学先を推測させる可能性がある定期券利用区間までネット上に“さらす”のは個人情報やプライバシー保護の観点から褒められることではない。
申込書に電話番号を書いていないのなら、落とし主は「連絡されたくない」(=そっとしておいてほしい?)ことになるのだから、大きなお世話であって余計にやるべきではないことだ。下手すれば後で訴えられるかもしれない。
投稿する人の「一刻も早く、探しているであろう落とし主に伝えて安心させたい」という思いは分からなくもないけれど、その裏側には危険もはらんでいることを忘れてはならない。
ネット上に自分の実名など絶対に載せてはいけないと言われていた時代(20~15年前)からネットを使っている者としては、フェイスブックのような最近のネット上で実名が使われるサービスには、違和感を抱いているのだけど、それは使う人の自由。だけど見ず知らずの他人の実名まで勝手にネットに載せるのは、違和感以上のものを覚えずにはいられない。
コメント (9)
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