広く浅く

秋田市を中心に青森県津軽・動植物・旅行記などをご紹介します。

ウバユリ/キツネノカミソリ

2017-08-26 23:46:17 | 動物・植物
秋田市中央部の城址公園である千秋公園には、あまり人が訪れない林のようなエリアもある。
市街地とは思えない豊かな自然の中で、いろいろな動植物が棲息し、これも千秋公園の魅力であることを、以前から紹介してきた。
今回は、そこで咲く2つの夏の花について。

まず、現在は花が終わってしまったもの。梅雨明け頃・7月下旬に咲いていた。
千秋トンネル・手形側。左上に咲いている
千秋トンネル手形側の道路は掘割(切り通し)で、上空はうっそうと木々が茂る。アブラゼミに加えて、秋田市街地では珍しいヒグラシの声も聞くことができる。彌高神社の裏手の斜面に当たり、人は立ち入れないほぼ手付かず(管理はされているようだけど)の林。その中。



つんと飛び出た茎に、細長いラッパ状の地味な色の花が四方に咲いている。防災行政無線のスピーカーを連想させる咲き方。
薄暗い林で、地味だけど存在感を放つ花が唐突に咲いているのは、どこか薄気味悪い雰囲気がしなくもない。

以前、千秋公園の別の場所(西側斜面)で咲いているのも見たことがあった。
「ウバユリ」というユリだと思っていたが、改めて調べると、ウバユリは関東以西の分布。北には変種の「オオウバユリ」が分布するそうなので、これもオオウバユリだろうか。(でも写真などで比べると、ただのウバユリっぽい雰囲気もしなくはない)

ユリ科ウバユリ属に分類される。
鮮やかで豪華な一般的な「百合の花」はユリ科ユリ属なので、若干遠い親戚といったところ。
花の咲き方も独特だけど、葉もユリらしくない(というか単子葉植物らしくもない)、大きくて広いもの。この葉が、花が咲く頃には枯れていることが多いので、「葉がない」→「歯がない」→婆さん→姥の連想で「ウバユリ」になったそうだ。姥にも、植物にも、失礼でかわいそうな命名。
属は違っても、鱗茎を食用にする「百合根」はあり、アイヌの人たちには重要な食料とされ「トゥレプ」と呼ばれたそう。

千秋公園のウバユリは、花が咲いても葉は青々としていた。
オオウバユリは1本につき花が10輪以上も付くこともあるようだが、ここでは4~5輪程度(このことからすれば、やはりただのウバユリ??)。

お盆前には花がすべて終わり、後には果実ができている。まだ葉はしっかりとある。
横向きだった花と違い、果実は上向き
種もけっこう実るようだ。


もう1つは、現在咲いている花。
西側の本丸から二の丸裏にかけての道
斜面にオレンジ色のユリのような花がぴょんぴょんと出て咲いている。
葉はない
ヒガンバナ科(分類法によってはユリ科)の「キツネノカミソリ」という植物。
ヒガンバナと同じように葉がない状態で花だけを咲かせるが、葉を出す時期はヒガンバナが花後なのに対し、キツネノカミソリは早春から夏前。どちらも有毒。
「キツネノカミソリ」の名は、葉がかみそりのような形なのにちなむそうで、今の季節では分からない。「キツネ」は花の色からの連想あるいは、変わったライフサイクルを狐につままれたのに例えたのだとか。
秋田市ではヒガンバナはギリギリ生育できる北限のせいか、あまり見かけないけれど、キツネノカミソリはより耐寒性が強いようだ。

千秋公園のキツネノカミソリは、茶室の日当たりのいい斜面に咲くのは、ほぼ毎年NHKが「季節の風景」で紹介するなど、それなりに知られている。
上の写真は、茶室からつながる斜面であり、若干陰にはなるが、そこそこ日が当たる。そういう環境を好むのかと思っていた。

さらに歩いていると、
分かりにくいけど、全面に点々と
より木が茂り、笹やミズヒキなど草木が生い茂る斜面にも、キツネノカミソリが咲いていた。これは知らなかった。
なるほど。他の草が芽吹く前に葉を出すキツネノカミソリだから、夏場の日当たりはあまり重要じゃないのかも。
日陰のキツネノカミソリ
日当たりのよりも、日陰のほうが、やや大型に見えた。
それに花茎の色は、日当たり(たしか茶室のも)のは花と同様に赤みがかっているのに対し、日陰のものは緑色。図鑑などでは緑色が一般的のようだ。
秋田市内のお寺の庭(日当たり良好)に植えられているキツネノカミソリは、小柄で赤い花茎だった。
環境によるのかもしれないし、遺伝的に違う群落なのかもしれない。
そういえば、ヒガンバナも花茎の色は赤と緑がある。ヒガンバナは種ができないので、遺伝的な差は小さいと思うが、キツネノカミソリは種ができる個体とできない個体があるそうだ。 
【28日追記】写真撮影から1週間経たない28日には、日向・日陰ともキツネノカミソリはほとんど散ってしまって花茎だけになっていた。意識しないと花が咲いていたとは分からない。キツネノカミソリの花期は短いようだ。


千秋公園表側では、今年もハスが見事。その反対側では、ひっそりと咲くほかの花もたくさんあるのです。
コメント (2)
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