NHKのど自慢。
2022年3月で、2013年から司会を担当していた小田切千アナウンサーが降板【4月1日補足・番組内では「司会を退く」と自らを表現】。4月から廣瀬智美/二宮直輝 両アナウンサーが交代で担当することは、先に発表されていた。
初の女性アナウンサー、2名が交代で担当するということは、時代の流れからすれば妥当だ。毎週出張が続くのは大変だったと、昔の司会者がどこかで書いていた。おふたりとも、あまり歌番組のイメージがないアナウンサーなのが、意外と言えば意外な程度(実際はそうでもないようだけど)。
そして、今年度最後・3月26日の放送内で、2022【4月1日訂正】2002年から鐘奏者を務めていた、打楽器奏者・秋山気清(きせい)さんが勇退する【4月1日補足・小田切さんは「ご卒業」と紹介】ことが明らかにされた。
最後の最後で、小田切さんが「秋山気清さん、ほんとうにありがとうございました」と話しかけたばかりに、秋山さんがそれに応えて手を振ったため、最後の鐘を鳴らすタイミングを逸して、空振りになってしまった。
後任の鐘奏者が誰なのかは明らかにされなかった。
そして、近年、小変化が生じてきた(2021年は新型コロナ対策も含めて変化)のど自慢だけに、司会者・鐘奏者交代のほかにも、何らかの変化があるのではないかという予感はしていた。
31日、公式サイトを見ると、やはり…
「▶のど自慢が新しくなります! 」「「4月から、NHKのど自慢が生まれ変わります」」
「司会は、二宮直輝アナウンサーと廣瀬智美アナウンサー。」
→それは知っている。ところで、年齢・入局順では、廣瀬さんのほうが上(初回・4月2日担当も廣瀬さん)なのに、どうして逆に掲載しているのだろう。五十音順?
「舞台セットもリニューアル、出場者のみなさんと一緒に盛り上がります。」
→これまでは地域ブロックごとにセットが異なり、時折リニューアルされていたが、全国共通になるのか?
「おなじみのテーマソングは葉加瀬太郎さんの演奏で。」
→唐突な葉加瀬太郎。生演奏ではなく、録音音源ということでしょう。(2021年4月から、オープニングは録音済みのものを流していた。エンディングは生演奏)
1つ飛ばして、
「鐘を鳴らすのは、全国各地のオーケストラ奏者のみなさん。」
→これも唐突だけど、司会者同様、毎週出張も大変だろうし。オーケストラ奏者がいない地域とかないのだろうか…
初回、4月2日の新潟県村上市は、NHK交響楽団の打楽器奏者が出演することになっている。【4月1日追記・新潟で開催するのに、東京のN響の人という初回からして、「各地のオーケストラ」とは言えないような。NHKの関東甲信越ブロックのくくりなのか。その理屈だったら、これまでだって、「各地のプロ奏者による生バンド伴奏」になる。】
飛ばした1項目が、最大の衝撃。
「カラオケ伴奏で、誰でも、どんな曲でも、気軽に挑戦できます。」
→生バンド演奏でなくなるということか!!!
鐘と並ぶのど自慢の真髄が、アコーディオンから続く、生演奏の伴奏だろう。
3月26日、和歌山県新宮市からの放送が、最後のバンド演奏だったのか…
編曲は、ローテーションからして西原悟さんの担当だが、近畿地方ではピアノも地元の奏者なので出演はなし。
歌い出しを間違った人、伴奏に乗れない人、どんな出場者にも、臨機応変に合わせてくれる、それ以前に、戦前の歌、2023年の歌、演歌、ラップ(※)、どんな曲でも演奏できてしまう、それがのど自慢のバンドであり、のど自慢の素晴らしさだった。
※2022年12月11日の長崎県諫早市では、SOUL'd OUTの「ウェカピポ」を歌った人がチャンピオンになり、その伴奏についてもネット上で評価する声が多かった。
カラオケというのは、民放のBSの歌番組なんかである「音源協力:DAM 第一興商」みたいなのになってしまうのだろうか。町のお祭りのカラオケ大会と違わなくなってしまうような…
カラオケだと、前奏や間奏が長い歌、もしくは前奏がない歌の対応が問題になる。生演奏では、最大限歌えるように、上手く編曲してくれていた(ピンク・レディー「サウスポー」は例外で、振り付けの都合上フル演奏)のだが。【4月2日追記・元歌がソロの曲を、出場者がデュエットで歌ったり、その逆という場合、あるいは出場者(の仲間)がバックコーラスも歌ったりということもあった(反対に、バックコーラスがある歌では、忠実に対応できないのは、生バンドの弱点ではあった)が、その時も編曲で対応していた。今後は、それらでも一律同じカラオケになるのか。】【4月5日追記・前奏があっても、歌い出すタイミングがつかみにくい曲では、そのポイントで元にはないドラムの音などを入れて分かりやすくする編曲もされていた。映像がない音のみのカラオケでは、それは難しそう。】
それに「どんな曲でも、気軽に挑戦できます」と言っているが、カラオケがない曲だってあるだろう。そういうのは、応募はがきを見た時点で、落とすのかな。
あと、最近は北海道と秋田県でしかいなくなったものの(昭和には、どこの県でもいた)、民謡での出場はどうなるのか。民謡のカラオケってあるの?
【4月1日補足・「気軽に」というのは、素人の出場者にとっては不慣れな生演奏ではなく、日頃歌い慣れているカラオケで、という意味のようだ。ただ、「生バンド伴奏で歌いたくて、のど自慢に応募した」「生バンドで歌えたのが、気持ち良かった/いい体験ができた」という出場者の声があったのも事実。カラオケで歌いたいのなら、カラオケ屋に行けばできる。】
公式サイトでは、
「もっともっと訪れた地域のみなさんとお近づきになるために生まれ変わります。」
と言っているけれど、これが出場者・視聴者が求めていることなのか…
偉大なるマンネリではあったが、それを変える必要があるのか。
公式サイトより合成
あと、番組ロゴというより表記が変わり「NHKのど自慢」が「NHKのどじまん」になるらしい。鳥(スズメ)もマイナーチェンジされるようで、羽が「の」なの?【5月14日追記・「のどじまん」のひらがなに表記になったのはロゴだけで、番組名としては引き続き漢字表記の「のど自慢」のままらしい。公式でない表記が番組名として画面に出るのは、なんだかヘン。】
日曜お昼の茶の間の光景はどうなっていくだろう。
【4月1日感想を追記】生伴奏がカラオケに変わることは、いつかはあり得るのではないかと、以前から思ってはいたが、その時が来てしまった。お金と手間はかかっても、生演奏なのが、テレビの、NHKの、人気番組ならではのアドバンテージだったと思う。素人がカラオケ音源で歌うのを聞かせたいのなら、町のカラオケ大会でもYouTube投稿でもできる。素人とバンドの駆け引き(?)や、バンドの人たちの反応などが垣間見えるのも楽しかった。NHKがそれらを捨ててしまうとは。
【4月2日訂正・↓以下は、NHKや番組関係者とは関係のないアカウントでしたので、追記を取り消します。恥ずかしながらだまされてしまった。ツイッターってこういうまぎらわしさが嫌い。なお、番組公式ツイッターは@nodojiman_nhk。】
【4月1日番組公式ツイッター(@nhk_nodojiman)の投稿より追記】4月1日15時03分に「4月からのNHKのど自慢の伴奏は、前日の予選会、本選ともに生バンドからカラオケ伴奏に。新しいスタイルは楽しみですが、出場者の歌声に寄り添う生バンドの演奏が聴けないのは残念です。(以下略)」とツイート。
残念に思うのなら、やめるなよ。やめるのを決めたのはそっちでしょと言いたくなるが、これはもしかしたら、番組側としても生演奏をやめたくなかったという意思を表す、“ささやかな抵抗”なのではと勘ぐってみたり。しかも「のど自慢」と旧表記だし。
また、4月1日時点では、ツイッターのアカウント名は「のど自慢」表記、アイコンの番組ロゴも以前のまま。
【4月2日追記・視聴後の感想】総合的には、意外にも違和感はさほどなかったというのが正直な感想。
司会者や鐘奏者はまったく問題なし。
カラオケ音源は、思ったほどは気にならず。「高校三年生」ではイントロが本来より端折られており(ただし、これまでの宮下・西原両氏の編曲とはまた違う略し方)、何らかの改変がされていると思われる【末尾の5月13日付追記参照】。その「高校三年生」の人たち(合格してしまったが)など、伴奏に乗れていない出場者はおり、対応が今後の課題だろう。音源提供の表示などはなし。
伴奏・歌声・鐘の音の音量のバランスが、以前と違った感じがして、人やテレビの設定によっては聞きづらそう。
コロナ以前のように、全出場者が同時にステージ上にいる場面が復活。ただし、オープニング終了後にいったん全員が引っこみ、順番に舞台中央のトンネル状の口から出てきて歌い(この点は大昔ののど自慢みたいだ)、歌唱後はステージ上の椅子に座って最後までいる方式。最初と最後に全出場者が壇上にいることになるが、最初のほうの順番の人が歌っている時は、ステージが少々寂しい【12月17日放送から変更。下の追記参照】。
【4月16日追記】3回見て、上手く言えないが、カラオケでは「音が安っぽい」「音色が同時にたくさん鳴って、歌声が聞きづらく感じる時がある」「前奏(または間奏)が長くなって、間延びする時がある」と感じている。
【5月14日追記】イントロが長い歌では、フェードインするように聞こえて始まることがあり、短縮しているのが明白な場合がある。
【11月10日追記】「TOMORROW」「月光」など、曲の始めのほうに比較的長い間奏が入る歌では、生バンド時代は繰り返しを省略する編曲がされていた。カラオケ化後も同様の対応がされ、間奏が完全にカットされるケースもあるようだ。
【2024年2月4日追記・歌唱前の出場者の動き変更】2023年12月17日放送(年内最後)から、歌唱前の出場者も、各自の椅子に座るようになった。各自順番直前に裏へ行って、正面から出てくる流れに。
【4月3日追記・テーマ曲について】編曲も葉加瀬太郎。声と重なって音量が小さかったので詳細は不明だが、従来とさほど違った印象がなかった。大胆にアレンジされることを危惧していたので、安心。テンポは少し早めかな。エンディングもオープニングと同じものかと思われる。
チャンピオン発表時のドラムロールに続くファンファーレは、従来とまったく違うものになった。
【4月7日追記・出場者募集時の説明について】放送の2か月前~1か月前にかけて、開催地の放送局ホームページで告知される。
4月初め時点で募集されている開催地では、3月中から募集がされていたわけだから、伴奏がカラオケになることについて説明がされているのではないかと、各放送局のホームページを見てみた。すると、4月7日時点ではその点に言及した局はなし(というか各局同じ内容)。
予選出場決定者へ送られる通知では説明があるのかもしれないが、はがきを見て愕然とするもしくはがっかりする出場者がいるかもしれないし、ないのであれば、当日会場でカラオケに変わったことを知って、以下同。
ちなみに、2015年の富山県の「予選会のご案内」の画像をネットで見つけたが、その「要領」の中に次のような注記があった。
「●バンドによる生演奏ですが、キーの変更はできません。」
→あくまで予選の話。予選通過者は、編曲者と打ち合わせてして、キーや前奏などアレンジしてもらえる。カラオケ化後も、予選では同じなのだろうか。
「●歌う曲のCD・MD・カセットテープ(ご自分で歌ったものではなく、歌手が歌っている原曲のもの、カラオケバージョンは不可)のいずれか一つをご持参ください(本選出場の20組に選ばれた場合に必要となります)。」
→本番用編曲の参考にするのだろう(オリジナルカラオケはダメってのが意外)。4月以降は、最初からカラオケがあるのだから、この項目はなくなっただろうか。
【4月16日追記・記念バッジについて】予選出場者、本選出場者それぞれに記念ピンバッジが送られ(予選/本戦で色違い?)、本選出場者は、予選時のバッジを服に着けて出演する(着けない人もいる?)。
バッジのデザインは、これまで何度も変わっているようだが、いずれも「NHKのど自慢」ロゴや鳥をかたどったものだった。
2023年4月にもバッジがリニューアルされ、(予選用は赤色で)「の」の中に小さい鳥がいるデザインに。以前のよりも大きく目立って見え、一見、ただの「の」バッジだと認識してしまう。
【4月16日追記・曲順の事前告知について】番組公式ツイッター(@nodojiman_nhk)において、放送当日11時30分頃に、その日の歌唱順に曲名と歌手名が発表されるようになった。
これまでは、放送内で、出場者が曲名を言った時に(もしくはその直前のイントロで)初めて、何を歌うか分かって、それも楽しみというか特徴だった。事前に、しかもツイッターでひっそりと知らせる意味があるのか。ちょっと引っかかる。
【5月13日追記・NHK側の見解やカラオケの使いかたについて】生バンド廃止は、ネットばかりか全国紙各紙にも掲載されるなど、話題になった。
そんな中、ニュースサイト「デイリー新潮」は、5月12日に「NHK「のど自慢」はなぜ生バンドからカラオケになったのか チーフプロデューサーが苦渋の決断を語る」をアップした。
1992年入局・53歳の、番組チーフプロデューサーへの長いインタビュー記事。
吉川精一アナウンサー時代からのど自慢に関わり、NHKエンターテイメント部門の職員の中でも「僕は関与の密度が濃いほうです」という。
御本人でなくデイリー新潮側の不手際かもしれないが、生放送なのに「収録」とされていたり、番組ロゴが変わったことには触れているが、すべて「のど自慢」表記で、新しい公式表記であるはずの「のどじまん」の文字はない【5月14日付追記参照】。
生バンド廃止、カラオケとなった経緯や理由は、
・バンドのスペースを空けて、ステージ上の空間を確保するコロナ対策。
・自動演奏の”打ち込み“を使った最近の曲を、生バンドで再現するのが難しい。
・地方において、のど自慢に対応できる奏者の確保が難しくなっている。
ことを挙げている。
コロナ対策で、予選のみをカラオケで行ってみたこともあったが、本番の生バンドで歌えなくなる出場者がいて、全面カラオケに切り替えたそうで、出場者にもカラオケが受け入れられているととらえているようだ。
また、「確かに予算の問題もありましたが、あくまでも解決すべき多くの課題のひとつにすぎません」。
チーフプロデューサーとしては、バンド演奏の良さは分かっていて、リスペクトしているけれど、そうした理由から、やむなくカラオケにした、と言いたいのだと読めた。言葉は悪いが、バンド廃止ありきでいろいろと理由を並べ立てて。
NHK側の人間として、対外的にそう言うしかないのは理解する。
だけど、音楽業界の人たちの視点では、別の見解が出てきそうな気もする。
バンドの後継者が見つからないというけれど、北海道のバンドは若い人たちだし、2022年度途中でも、四国のドラムと中国のギターが新しい人に交代している。
このインタビューに対する、音楽専門家の方々の見解や反論を聞いてみたい。
カラオケの使いかたが紹介されていた。
カラオケシステムは予備を含めて2台を搬入。予選では、(カラオケ屋で歌うのと同じように)担当者が曲番号を入力して、そのまま流す。
イントロが長い曲の扱い。カラオケに備わった「イントロスキップ」機能があるが、極端にスキップされるため、「『この曲はイントロが長いので、歌う時間を長くしたければ飛ばすことができます。うまく歌えなかった場合はやり直すことができます』と説明」。
原曲キーで、変更不可(予選)。ガイドメロディーやコーラスはオフ。
「『のど自慢』は歌のコンテストという側面もあるので、歌の巧さも重要な選考要素の一つです。そこでカラオケをシビアな設定にし、皆さんの歌唱力を丸裸にするのが狙いです」
→カラオケ化で歌いやすくしましたようなことを言っておきながら、ここでは厳しくなった。だったら、生バンドで歌えない人は、その技能がないとみなす、シビアな選考をすればいいのでは? カラオケで歌える巧さ・歌唱力がある人でいいのなら、それはカラオケ大会では?
生バンドでは、50組ごとに休憩を入れていたが、カラオケではなくなって、進行がスムーズに。
本選出場者決定後。
「希望があった場合や、番組サイドからの提案により、特にキーの調整を行います。」
「音源データを、カラオケから音楽制作ソフトに移し替える。」
「プロのミュージシャンや音響の専門家が、音楽制作ソフトでイントロの短縮を行います。」音域を調整する「イコライジング」も行う。
したがって、「『のど自慢』で流れる曲は、厳密に言うとカラオケ音源とも異なります。番組のオリジナル音源なのです」。
「カラオケは民謡の音源も豊富ですが、ひょっとすると存在しないものがあるかもしれません。書類選考の段階で『この民謡はカラオケに音源がないけれど、予選会で歌ってもらおう』と決まったら、尺八と三味線の先生を手配することは充分に考えられます」
→それだと、民謡は曲によって、生とカラオケが混在することになり、それこそ不公平では? また、演歌やポップスだって、カラオケにない曲はあるだろう。それはどうするのか。
【5月14日追記・番組名表記について】
気が付けば、新聞テレビ欄のほか、電子番組表、NHKサイトの表記とも「NHKのど自慢」のまま。というとは、画面表示のみ「のどじまん」に変えたということだろうか。
でも、画面に表示される文字が、公式表記であるべきではないのだろうか。
分かりやすさでというのなら、「チコちゃんに叱られる! 」「どうする家康」「大相撲」などほかの番組名も、全部ひらがな表記にするべきではないのか。
【11月10日追記】2023年10月15日は秋田県大仙市から放送。秋田県は民謡が盛んなため、現在でも、毎回1組は民謡での出場者がいるのが通例。
カラオケ化後初の秋田からの放送となったわけだが、今回は民謡歌唱者はいなかった(生バンド時代でも、民謡が出ない回もなかったわけではないが)。予選での民謡はいたと思われるが、秋田では放送されないので、詳細は不明。
※のど自慢関連の次の記事。
2022年3月で、2013年から司会を担当していた小田切千アナウンサーが降板【4月1日補足・番組内では「司会を退く」と自らを表現】。4月から廣瀬智美/二宮直輝 両アナウンサーが交代で担当することは、先に発表されていた。
初の女性アナウンサー、2名が交代で担当するということは、時代の流れからすれば妥当だ。毎週出張が続くのは大変だったと、昔の司会者がどこかで書いていた。おふたりとも、あまり歌番組のイメージがないアナウンサーなのが、意外と言えば意外な程度(実際はそうでもないようだけど)。
そして、今年度最後・3月26日の放送内で、
最後の最後で、小田切さんが「秋山気清さん、ほんとうにありがとうございました」と話しかけたばかりに、秋山さんがそれに応えて手を振ったため、最後の鐘を鳴らすタイミングを逸して、空振りになってしまった。
後任の鐘奏者が誰なのかは明らかにされなかった。
そして、近年、小変化が生じてきた(2021年は新型コロナ対策も含めて変化)のど自慢だけに、司会者・鐘奏者交代のほかにも、何らかの変化があるのではないかという予感はしていた。
31日、公式サイトを見ると、やはり…
「▶のど自慢が新しくなります! 」「「4月から、NHKのど自慢が生まれ変わります」」
「司会は、二宮直輝アナウンサーと廣瀬智美アナウンサー。」
→それは知っている。ところで、年齢・入局順では、廣瀬さんのほうが上(初回・4月2日担当も廣瀬さん)なのに、どうして逆に掲載しているのだろう。五十音順?
「舞台セットもリニューアル、出場者のみなさんと一緒に盛り上がります。」
→これまでは地域ブロックごとにセットが異なり、時折リニューアルされていたが、全国共通になるのか?
「おなじみのテーマソングは葉加瀬太郎さんの演奏で。」
→唐突な葉加瀬太郎。生演奏ではなく、録音音源ということでしょう。(2021年4月から、オープニングは録音済みのものを流していた。エンディングは生演奏)
1つ飛ばして、
「鐘を鳴らすのは、全国各地のオーケストラ奏者のみなさん。」
→これも唐突だけど、司会者同様、毎週出張も大変だろうし。オーケストラ奏者がいない地域とかないのだろうか…
初回、4月2日の新潟県村上市は、NHK交響楽団の打楽器奏者が出演することになっている。【4月1日追記・新潟で開催するのに、東京のN響の人という初回からして、「各地のオーケストラ」とは言えないような。NHKの関東甲信越ブロックのくくりなのか。その理屈だったら、これまでだって、「各地のプロ奏者による生バンド伴奏」になる。】
飛ばした1項目が、最大の衝撃。
「カラオケ伴奏で、誰でも、どんな曲でも、気軽に挑戦できます。」
→生バンド演奏でなくなるということか!!!
鐘と並ぶのど自慢の真髄が、アコーディオンから続く、生演奏の伴奏だろう。
3月26日、和歌山県新宮市からの放送が、最後のバンド演奏だったのか…
編曲は、ローテーションからして西原悟さんの担当だが、近畿地方ではピアノも地元の奏者なので出演はなし。
歌い出しを間違った人、伴奏に乗れない人、どんな出場者にも、臨機応変に合わせてくれる、それ以前に、戦前の歌、2023年の歌、演歌、ラップ(※)、どんな曲でも演奏できてしまう、それがのど自慢のバンドであり、のど自慢の素晴らしさだった。
※2022年12月11日の長崎県諫早市では、SOUL'd OUTの「ウェカピポ」を歌った人がチャンピオンになり、その伴奏についてもネット上で評価する声が多かった。
カラオケというのは、民放のBSの歌番組なんかである「音源協力:DAM 第一興商」みたいなのになってしまうのだろうか。町のお祭りのカラオケ大会と違わなくなってしまうような…
カラオケだと、前奏や間奏が長い歌、もしくは前奏がない歌の対応が問題になる。生演奏では、最大限歌えるように、上手く編曲してくれていた(ピンク・レディー「サウスポー」は例外で、振り付けの都合上フル演奏)のだが。【4月2日追記・元歌がソロの曲を、出場者がデュエットで歌ったり、その逆という場合、あるいは出場者(の仲間)がバックコーラスも歌ったりということもあった(反対に、バックコーラスがある歌では、忠実に対応できないのは、生バンドの弱点ではあった)が、その時も編曲で対応していた。今後は、それらでも一律同じカラオケになるのか。】【4月5日追記・前奏があっても、歌い出すタイミングがつかみにくい曲では、そのポイントで元にはないドラムの音などを入れて分かりやすくする編曲もされていた。映像がない音のみのカラオケでは、それは難しそう。】
それに「どんな曲でも、気軽に挑戦できます」と言っているが、カラオケがない曲だってあるだろう。そういうのは、応募はがきを見た時点で、落とすのかな。
あと、最近は北海道と秋田県でしかいなくなったものの(昭和には、どこの県でもいた)、民謡での出場はどうなるのか。民謡のカラオケってあるの?
【4月1日補足・「気軽に」というのは、素人の出場者にとっては不慣れな生演奏ではなく、日頃歌い慣れているカラオケで、という意味のようだ。ただ、「生バンド伴奏で歌いたくて、のど自慢に応募した」「生バンドで歌えたのが、気持ち良かった/いい体験ができた」という出場者の声があったのも事実。カラオケで歌いたいのなら、カラオケ屋に行けばできる。】
公式サイトでは、
「もっともっと訪れた地域のみなさんとお近づきになるために生まれ変わります。」
と言っているけれど、これが出場者・視聴者が求めていることなのか…
偉大なるマンネリではあったが、それを変える必要があるのか。
公式サイトより合成
あと、番組ロゴというより表記が変わり「NHKのど自慢」が「NHKのどじまん」になるらしい。鳥(スズメ)もマイナーチェンジされるようで、羽が「の」なの?【5月14日追記・「のどじまん」のひらがなに表記になったのはロゴだけで、番組名としては引き続き漢字表記の「のど自慢」のままらしい。公式でない表記が番組名として画面に出るのは、なんだかヘン。】
日曜お昼の茶の間の光景はどうなっていくだろう。
【4月1日感想を追記】生伴奏がカラオケに変わることは、いつかはあり得るのではないかと、以前から思ってはいたが、その時が来てしまった。お金と手間はかかっても、生演奏なのが、テレビの、NHKの、人気番組ならではのアドバンテージだったと思う。素人がカラオケ音源で歌うのを聞かせたいのなら、町のカラオケ大会でもYouTube投稿でもできる。素人とバンドの駆け引き(?)や、バンドの人たちの反応などが垣間見えるのも楽しかった。NHKがそれらを捨ててしまうとは。
【4月2日訂正・↓以下は、NHKや番組関係者とは関係のないアカウントでしたので、追記を取り消します。恥ずかしながらだまされてしまった。ツイッターってこういうまぎらわしさが嫌い。なお、番組公式ツイッターは@nodojiman_nhk。】
残念に思うのなら、やめるなよ。やめるのを決めたのはそっちでしょと言いたくなるが、これはもしかしたら、番組側としても生演奏をやめたくなかったという意思を表す、“ささやかな抵抗”なのではと勘ぐってみたり。しかも「のど自慢」と旧表記だし。
また、4月1日時点では、ツイッターのアカウント名は「のど自慢」表記、アイコンの番組ロゴも以前のまま。
【4月2日追記・視聴後の感想】総合的には、意外にも違和感はさほどなかったというのが正直な感想。
司会者や鐘奏者はまったく問題なし。
カラオケ音源は、思ったほどは気にならず。「高校三年生」ではイントロが本来より端折られており(ただし、これまでの宮下・西原両氏の編曲とはまた違う略し方)、何らかの改変がされている
伴奏・歌声・鐘の音の音量のバランスが、以前と違った感じがして、人やテレビの設定によっては聞きづらそう。
コロナ以前のように、全出場者が同時にステージ上にいる場面が復活。ただし、オープニング終了後にいったん全員が引っこみ、順番に舞台中央のトンネル状の口から出てきて歌い(この点は大昔ののど自慢みたいだ)、歌唱後はステージ上の椅子に座って最後までいる方式。最初と最後に全出場者が壇上にいることになるが、最初のほうの順番の人が歌っている時は、ステージが少々寂しい【12月17日放送から変更。下の追記参照】。
【4月16日追記】3回見て、上手く言えないが、カラオケでは「音が安っぽい」「音色が同時にたくさん鳴って、歌声が聞きづらく感じる時がある」「前奏(または間奏)が長くなって、間延びする時がある」と感じている。
【5月14日追記】イントロが長い歌では、フェードインするように聞こえて始まることがあり、短縮しているのが明白な場合がある。
【11月10日追記】「TOMORROW」「月光」など、曲の始めのほうに比較的長い間奏が入る歌では、生バンド時代は繰り返しを省略する編曲がされていた。カラオケ化後も同様の対応がされ、間奏が完全にカットされるケースもあるようだ。
【2024年2月4日追記・歌唱前の出場者の動き変更】2023年12月17日放送(年内最後)から、歌唱前の出場者も、各自の椅子に座るようになった。各自順番直前に裏へ行って、正面から出てくる流れに。
【4月3日追記・テーマ曲について】編曲も葉加瀬太郎。声と重なって音量が小さかったので詳細は不明だが、従来とさほど違った印象がなかった。大胆にアレンジされることを危惧していたので、安心。テンポは少し早めかな。エンディングもオープニングと同じものかと思われる。
チャンピオン発表時のドラムロールに続くファンファーレは、従来とまったく違うものになった。
【4月7日追記・出場者募集時の説明について】放送の2か月前~1か月前にかけて、開催地の放送局ホームページで告知される。
4月初め時点で募集されている開催地では、3月中から募集がされていたわけだから、伴奏がカラオケになることについて説明がされているのではないかと、各放送局のホームページを見てみた。すると、4月7日時点ではその点に言及した局はなし(というか各局同じ内容)。
予選出場決定者へ送られる通知では説明があるのかもしれないが、はがきを見て愕然とするもしくはがっかりする出場者がいるかもしれないし、ないのであれば、当日会場でカラオケに変わったことを知って、以下同。
ちなみに、2015年の富山県の「予選会のご案内」の画像をネットで見つけたが、その「要領」の中に次のような注記があった。
「●バンドによる生演奏ですが、キーの変更はできません。」
→あくまで予選の話。予選通過者は、編曲者と打ち合わせてして、キーや前奏などアレンジしてもらえる。カラオケ化後も、予選では同じなのだろうか。
「●歌う曲のCD・MD・カセットテープ(ご自分で歌ったものではなく、歌手が歌っている原曲のもの、カラオケバージョンは不可)のいずれか一つをご持参ください(本選出場の20組に選ばれた場合に必要となります)。」
→本番用編曲の参考にするのだろう(オリジナルカラオケはダメってのが意外)。4月以降は、最初からカラオケがあるのだから、この項目はなくなっただろうか。
【4月16日追記・記念バッジについて】予選出場者、本選出場者それぞれに記念ピンバッジが送られ(予選/本戦で色違い?)、本選出場者は、予選時のバッジを服に着けて出演する(着けない人もいる?)。
バッジのデザインは、これまで何度も変わっているようだが、いずれも「NHKのど自慢」ロゴや鳥をかたどったものだった。
2023年4月にもバッジがリニューアルされ、(予選用は赤色で)「の」の中に小さい鳥がいるデザインに。以前のよりも大きく目立って見え、一見、ただの「の」バッジだと認識してしまう。
【4月16日追記・曲順の事前告知について】番組公式ツイッター(@nodojiman_nhk)において、放送当日11時30分頃に、その日の歌唱順に曲名と歌手名が発表されるようになった。
これまでは、放送内で、出場者が曲名を言った時に(もしくはその直前のイントロで)初めて、何を歌うか分かって、それも楽しみというか特徴だった。事前に、しかもツイッターでひっそりと知らせる意味があるのか。ちょっと引っかかる。
【5月13日追記・NHK側の見解やカラオケの使いかたについて】生バンド廃止は、ネットばかりか全国紙各紙にも掲載されるなど、話題になった。
そんな中、ニュースサイト「デイリー新潮」は、5月12日に「NHK「のど自慢」はなぜ生バンドからカラオケになったのか チーフプロデューサーが苦渋の決断を語る」をアップした。
1992年入局・53歳の、番組チーフプロデューサーへの長いインタビュー記事。
吉川精一アナウンサー時代からのど自慢に関わり、NHKエンターテイメント部門の職員の中でも「僕は関与の密度が濃いほうです」という。
御本人でなくデイリー新潮側の不手際かもしれないが、生放送なのに「収録」とされていたり、番組ロゴが変わったことには触れているが、すべて「のど自慢」表記で、
生バンド廃止、カラオケとなった経緯や理由は、
・バンドのスペースを空けて、ステージ上の空間を確保するコロナ対策。
・自動演奏の”打ち込み“を使った最近の曲を、生バンドで再現するのが難しい。
・地方において、のど自慢に対応できる奏者の確保が難しくなっている。
ことを挙げている。
コロナ対策で、予選のみをカラオケで行ってみたこともあったが、本番の生バンドで歌えなくなる出場者がいて、全面カラオケに切り替えたそうで、出場者にもカラオケが受け入れられているととらえているようだ。
また、「確かに予算の問題もありましたが、あくまでも解決すべき多くの課題のひとつにすぎません」。
チーフプロデューサーとしては、バンド演奏の良さは分かっていて、リスペクトしているけれど、そうした理由から、やむなくカラオケにした、と言いたいのだと読めた。言葉は悪いが、バンド廃止ありきでいろいろと理由を並べ立てて。
NHK側の人間として、対外的にそう言うしかないのは理解する。
だけど、音楽業界の人たちの視点では、別の見解が出てきそうな気もする。
バンドの後継者が見つからないというけれど、北海道のバンドは若い人たちだし、2022年度途中でも、四国のドラムと中国のギターが新しい人に交代している。
このインタビューに対する、音楽専門家の方々の見解や反論を聞いてみたい。
カラオケの使いかたが紹介されていた。
カラオケシステムは予備を含めて2台を搬入。予選では、(カラオケ屋で歌うのと同じように)担当者が曲番号を入力して、そのまま流す。
イントロが長い曲の扱い。カラオケに備わった「イントロスキップ」機能があるが、極端にスキップされるため、「『この曲はイントロが長いので、歌う時間を長くしたければ飛ばすことができます。うまく歌えなかった場合はやり直すことができます』と説明」。
原曲キーで、変更不可(予選)。ガイドメロディーやコーラスはオフ。
「『のど自慢』は歌のコンテストという側面もあるので、歌の巧さも重要な選考要素の一つです。そこでカラオケをシビアな設定にし、皆さんの歌唱力を丸裸にするのが狙いです」
→カラオケ化で歌いやすくしましたようなことを言っておきながら、ここでは厳しくなった。だったら、生バンドで歌えない人は、その技能がないとみなす、シビアな選考をすればいいのでは? カラオケで歌える巧さ・歌唱力がある人でいいのなら、それはカラオケ大会では?
生バンドでは、50組ごとに休憩を入れていたが、カラオケではなくなって、進行がスムーズに。
本選出場者決定後。
「希望があった場合や、番組サイドからの提案により、特にキーの調整を行います。」
「音源データを、カラオケから音楽制作ソフトに移し替える。」
「プロのミュージシャンや音響の専門家が、音楽制作ソフトでイントロの短縮を行います。」音域を調整する「イコライジング」も行う。
したがって、「『のど自慢』で流れる曲は、厳密に言うとカラオケ音源とも異なります。番組のオリジナル音源なのです」。
「カラオケは民謡の音源も豊富ですが、ひょっとすると存在しないものがあるかもしれません。書類選考の段階で『この民謡はカラオケに音源がないけれど、予選会で歌ってもらおう』と決まったら、尺八と三味線の先生を手配することは充分に考えられます」
→それだと、民謡は曲によって、生とカラオケが混在することになり、それこそ不公平では? また、演歌やポップスだって、カラオケにない曲はあるだろう。それはどうするのか。
【5月14日追記・番組名表記について】
気が付けば、新聞テレビ欄のほか、電子番組表、NHKサイトの表記とも「NHKのど自慢」のまま。というとは、画面表示のみ「のどじまん」に変えたということだろうか。
でも、画面に表示される文字が、公式表記であるべきではないのだろうか。
分かりやすさでというのなら、「チコちゃんに叱られる! 」「どうする家康」「大相撲」などほかの番組名も、全部ひらがな表記にするべきではないのか。
【11月10日追記】2023年10月15日は秋田県大仙市から放送。秋田県は民謡が盛んなため、現在でも、毎回1組は民謡での出場者がいるのが通例。
カラオケ化後初の秋田からの放送となったわけだが、今回は民謡歌唱者はいなかった(生バンド時代でも、民謡が出ない回もなかったわけではないが)。予選での民謡はいたと思われるが、秋田では放送されないので、詳細は不明。
※のど自慢関連の次の記事。
あのオーケストラ、まだまだ続けて欲しかったです。生演奏だからなんか特別な体験感が増しますね。
素人が、テレビで歌い、しかも生放送、しかも生演奏と、どれもNHKのど自慢でしかできないことのはず。そのうち1つを、どこでもできるカラオケにしてしまっては、NHK自ら、その魅力を捨てたも同然で残念です。
予選では、歌い出しでしくじってしまっても、気にせずに堂々と歌うことが大事。などという話を聞いたことがありますので、ご参考まで。