小さい頃の写真に、白粉を鼻筋に引いたものがある。
法被を着て鉢巻を巻いた、お祭りのは納得だが、
そのハレの日に味をしめて、普段着に白い鼻は、
ばあちゃんにねだり塗ってもらったものだろう。
……完全なばあちゃんっ子だったものな。
劇団からの帰りの地下鉄で隣に座った女性から白粉の匂い。
祭りでもなく、和服でもなく。
加えて筆者は野暮天だから、
《この香りはブルガリの「プチママン」、
いや白鳩の蓋が印象的なニナリッチの「レールデュタン」、
はたまたジャンシャルルブロッソーの……》と、
すぐに香水のあれこれが浮かばない。
電車を降り、徒歩で自宅へ。
一階は某カンパニーの稽古場で二階には事務所。
三法人のひとつは塾。だが教室ではなく本部機能。
おそらく部屋は禁煙にして、廊下で吸うルール。
なので階段を上ると無人の二階エリアに煙草の臭いがたまにする。
そしてやっぱり、その銘柄が何だかさっぱりわからない。
そうそう。
最近、シーシャの店が増えた印象だ
劇団のある六本木、居住エリアの池袋でも
水煙草の甘ったるい匂いを放出する店を目にする。
(鼻にする、のほーがふさわしいのかな?)
これにいたっては臭いどころか、その形状すら不確かだ。
せめて芝居の香りは理解し続けたい。