図書館から借りていた、葉室麟著 「風花帖(かざはなじょう)」 (朝日新聞社)を、読み終えた。本書は、江戸時代後期に、小倉藩で実際に起きた藩内抗争「白黒騒動」を下敷きにした長編時代小説だが、史実をもとにしながら、互いに思いを交わした男女が、別々の道しか選べなかった悲哀をいかんなく描いた物語になっている。
読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。
▢目次
(一)~(二十五)
▢主な登場人物
印南新六(いんなみしんろく、印南弥助の子)、
菅源太郎(すがげんたろう、書院番頭、江戸屋敷側用人菅三左衛門の嫡男)・吉乃(きちの、書院番頭杉坂監物の三女)・千代太、
犬甘兵庫知寛(いぬかいひょうごともひろ)
小笠原忠苗(おがさわらたたみつ)、小笠原忠固(おがさわらただかた)
小笠原出雲(おがさわらいずも)、伊勢勘十郎、
小宮四郎左衛門、二木勘右衛門、小笠原蔵人、伊藤六郎兵衛、
上原与市、直方円斎、早水順太、
▢あらすじ等
九州小倉藩(小笠原藩)勘定方の印南新六には、生涯をかけて守ると誓った吉乃がいたが、ある日の事件がきっかけで、新六は一時的に江戸詰めになり、その間に、吉乃は菅家の嫡男源太郎に嫁いだ。
折しも、藩内は、犬甘兵庫派、小笠原出雲派の派閥争いがエスカレート、新六も、源太郎も、その騒動に巻き込まれていく。もともとは、出雲派だった新六だが、想いを寄せる吉乃とその家族、菅源太郎、千代太を守るために、両派閥の刺客にもなる。
藩の存亡に関わる、ドロドロした派閥抗争の中にあっても、一途に、一人の女性のために命を懸けた男の姿を、鮮烈に描いた作品だった。
吉乃は国許に残り、千代太を育てる日々を過ごしたが、
月命日には新六の墓参りを欠かさなかった。
祥月命日の墓参りのおりには、なぜか風花が舞った。
(中略)
「新六殿」
吉乃は胸の中で新六の名を呼びながら佇んで、いつまでも風花を見つめていた。