図書館から借りていた、藤原緋沙子著 「さくら道」(廣済堂文庫)を、読み終えた。
本書は、著者の長編時代小説、「隅田川御用帳(すみだがわごようちょう)シリーズ」の第13弾の作品で、「第一話 さくら道」「第二話 まもり亀」「第三話 若萩」「第四話 怨み舟」の、連作短編4篇が収録されている。
「隅田川御用帳シリーズ」は、縁切り寺「慶光寺」の御用宿「橘屋」の女主人お登勢(おとせ)に雇われた、元築山藩藩士の浪人塙十四郎(はなわじゅうしろう)が、「慶光寺」の寺役人近藤金吾や、橘屋の番頭藤七等と共に、縁切りを求めて「橘屋」に駆け込んでくるいろいろな女達の様々な事情を探り、絡み合う悪事や謎を解明、愛憎乱れる 女と男の深い闇を、人情と剣とで見事に解決していく、悲喜こもごもの物語である。
読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。
「第一話 さくら道」
▢主な登場人物
お結(おゆい)・おさん、
京紅屋清兵衛(佐吉)
嵯峨屋啓太郎(利左衛門)・太兵衛、
儀助(為三)、兼一、玉田久太郎、
▢あらすじ等
第十代将軍の愛妾「お万の方」だった万寿院の依頼で、大奥時代、右筆として仕えていた
楓(かえで)・おさんの消息探索に京に向かった十四郎、そのおさんの娘、お結を連れて
江戸に帰ってきた。
おさんは、嫁いだ嵯峨屋啓太郎に離縁され、娘お結を連れ子に京紅屋清兵衛の後妻になったが、
その清兵衛が押し込み強盗に殺害され、お結は口が利けなくなり、さらに命を狙われている。
何故だ?、十四郎、藤七が、真相探索。次第に判明した衝撃の過去とは。
「あの・・・・・あの男、おとっつぁんを、こ、こ、殺した男です」
「お結、・・・よくぞお前は」
十四郎は、お結の肩を強くつかんで、その顔をみた。
(中略)
「このお結は京紅屋清兵衛の娘です。嵯峨屋の娘ではありません」
「私の胸の中にいるおとつぁんは、清兵衛です」
もう一度言ったお結の目から、涙がこぼれ落ちた。
「第二話 まもり亀」
▢主な登場人物
お七・友七
若狭屋与一郎・おれん・嘉助、
太吉、政五郎(鬼政)、小倉佐一郎、おしの、
お豊、
近藤金吾・千草・慶太郎・浪江、
▢あらすじ等
慶光寺で、近藤金五・千草の第1子慶太郎の誕生祝いの最中、門前に捨て子が・・・。
女中のお民が、その赤子と母親に見覚えが有ると言い出し、十四郎、藤七が探索開始、
母親は、若狭屋与一郎の女房お七、赤子は友七、母子共、若狭屋に追われている?、何故?
太吉と佐一郎が、若狭屋に下手な脅迫状を出し・・・、
「どちらと一緒になってもらわなくても、お七は幸せになる。三人に限って恋のさや当てなど
したあげく仲間割れなど考えられんからな」、十四郎は自信ありげに言った。するとお登勢も
「そうですとも、ずっと仲間だと、亀に誓ったと聞いています。仲間割れしたらあの亀が
怒ります。あの亀は三人の守り神なんですから・・・・、そうでしょう、近藤様」
金五は曖昧に頷きながら、十四郎とお登勢をちらりと交互に見て苦笑いした。
「第三話 若萩」
▢主な登場人物
おひろ、おとめ、
加賀屋壮吉、
治三郎(堀川治左衛門)・おさよ・お梅・弥蔵、
兼三、
新六、壮吉、
▢あらすじ等
髪結のおとめから、絵草紙屋の治三郎の女房おひろの離縁希望の相談を持ち掛けられたお登勢、
十四郎、藤七が、治三郎の身辺調査内情探索開始、あぶな絵?、美人局?、おひろが行方不明、
かっておひろが言い交わした加賀屋壮吉が、脅かされ、二百両を要求されている?、
「いつだ、いつその金を渡すことになっているのだ」
おひろは、どこに・・・、
「駄目でございます。今日買い求めるのは、十四郎様のお着物ですから」
「俺の、・・・、いいよ」
「いいえ、着た切り雀では、わたくしが笑われます」
「よわったなあ」
十四郎が苦笑して外に出ると、お民が走ってきて、
「とかなんとか言って・・・」
ふふふと笑うと、引き返して行った。
「お民・・・」
怒ってみせたものの面映ゆい。
十四郎は、お登勢の形の良い腰が揺れるのをちらと見ると「待て、待て、急ぐな」
急いでお登勢に走り寄った。
「第四話 怨み舟」
▢主な登場人物
万寿院、楽翁(元筆頭老中松平定信)、小野田平蔵・お沢、
粂三・お房・吉蔵、
浪泉(ろうせん)の旦那(惣助)、左近、
難波屋玄二郎、天野屋利兵衛、
▢あらすじ等
お登勢、万吉が宗匠頭巾の男に襲われ、万寿院愛用の小鼓が奪われ、2つに割られて返ってきた。
慶光寺、橘屋へ恨み、復讐か?。真相解明に乗り出した十四郎、藤七。
狙いは、楽翁?、20年前の老中松平定信が下した事件に関わる逆恨み、復讐だったとは・・・。
「この男は魚を捌くのもうまいが、ひょっとこ踊りもうまいぞ」
平蔵を指して、楽翁がにこにこしている。
「楽翁様、あれは昔の話ですから」
「なんのここで披露しろ」
「ひょっとこ、ひょっとこ・・・・・、ひょっとこ、ひょっとこ、釣れるかな、釣れるかな・・・、
あっちだ、ひょっとこ、こっちだ、ひょっとこ・・・」
平蔵は腰を振って踊る。
「わーっはっはっはっ、ぎゃはははは、くくくく」
お民が腹を抱えて笑い出したのである。
「お民ちゃん」。お登勢は楽翁の手前、窘めるが・・、