たけじいの気まぐれブログ

記憶力減退爺さんの日記風備忘雑記録&フォト

葉室麟著 「風花帖」

2024年11月30日 10時49分01秒 | 読書記

図書館から借りていた、葉室麟著 「風花帖(かざはなじょう)」 (朝日新聞社)を、読み終えた。本書は、江戸時代後期に、小倉藩で実際に起きた藩内抗争「白黒騒動」を下敷きにした長編時代小説だが、史実をもとにしながら、互いに思いを交わした男女が、別々の道しか選べなかった悲哀をいかんなく描いた物語になっている。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。


▢目次
(一)~(二十五)

▢主な登場人物
印南新六(いんなみしんろく、印南弥助の子)、
菅源太郎(すがげんたろう、書院番頭、江戸屋敷側用人菅三左衛門の嫡男)・吉乃(きちの、書院番頭杉坂監物の三女)・千代太、
犬甘兵庫知寛(いぬかいひょうごともひろ
小笠原忠苗(おがさわらたたみつ)、小笠原忠固(おがさわらただかた
小笠原出雲(おがさわらいずも)、伊勢勘十郎、
小宮四郎左衛門、二木勘右衛門、小笠原蔵人、伊藤六郎兵衛、
上原与市、直方円斎、早水順太、

▢あらすじ等
九州小倉藩(小笠原藩)勘定方の印南新六には、生涯をかけて守ると誓った吉乃がいたが、ある日の事件がきっかけで、新六は一時的に江戸詰めになり、その間に、吉乃は菅家の嫡男源太郎に嫁いだ。
折しも、藩内は、犬甘兵庫派、小笠原出雲派の派閥争いがエスカレート、新六も、源太郎も、その騒動に巻き込まれていく。もともとは、出雲派だった新六だが、想いを寄せる吉乃とその家族、菅源太郎、千代太を守るために、両派閥の刺客にもなる。
藩の存亡に関わる、ドロドロした派閥抗争の中にあっても、一途に、一人の女性のために命を懸けた男の姿を、鮮烈に描いた作品だった。
  吉乃は国許に残り、千代太を育てる日々を過ごしたが、
  月命日には新六の墓参りを欠かさなかった。
  祥月命日の墓参りのおりには、なぜか風花が舞った。
  (中略)
  「新六殿」
  吉乃は胸の中で新六の名を呼びながら佇んで、いつまでも風花を見つめていた。

コメント (2)

内館牧子著 「老害の人」

2024年11月28日 09時53分11秒 | 読書記

1年以上も前に図書館に予約していた、内館牧子著 「老害の人」(講談社)が、ようやく順番が回ってきて、先日借り、読み終えた。
つい数年前まで、まるで読書の習慣等無かった爺さん、
当然のこと、内館牧子の著作も全く読んだことが無かったが、
昨年の6月のこと、初めて、内館牧子著の「高齢者小説」等とも呼ばれているベストセラー「今度生まれたら」を知って読み、それがきっかけで、第2弾、第3弾の、「終わった人」「すぐ死ぬんだから」を読んだ。著者独特の、これでもかこれでもかという、痛快な文体に惹かれてしまい、その第4弾とも言える「老害の人」も読んでみたくなり、予約していたのだった。

▢目次
 第一章 ~ 第九章、
 あとがき

▢主な登場人物
 戸山福太郎(85歳)・(八重)、
 戸山純市(60歳)・明代(54歳)、戸山俊(18歳)、
 戸山梨子・寿太郎、藤田聡、
 松木達夫(75歳)・美代子、克二(30歳)、林透(27歳)、佐多道彦(42歳)、
 竹下勇三(76歳)・ヨシエ・剛(22歳)、
 吉田武(90歳)・桃子(87歳)・篤・悟、
 村井サキ(79歳)、
 春子・里枝・杏奈(4歳)・翔、、

▢内容紹介・・・「講談社Book倶楽部」より拝借、引用
 迷惑なの!、と言われても。
 昔話に、説教、趣味の講釈、病気自慢に、孫自慢。
 そうかと思えば、無気力、そしてクレーマー。
 双六やカルタの製作販売会社・雀躍堂の前社長・戸山福太郎は、
 娘婿戸山純市に社長を譲ってからも現役に固執して出勤し、
 誰彼かまわず捕まえては同じ手柄話をくり返す。
 彼の仲間も「老害」の人ばかり。
 素人俳句に、下手な絵をそえた句集を配る吉田武・桃子夫妻、、
 「死にたい死にたい」と言い続ける春子
 病気自慢の竹下勇三
 老害カルテット(四重奏)は絶好調。
 さらに、ぽっちランチの女、クレーマーの村井サキが加わり
 老害クインテット(五重奏)。
 「もうやめてよッ」、福太郎の娘・純市の妻、戸山明代は、
 ある日、たまりかねて腹の中をぶちまける。

 「終わった人」、「すぐ死ぬんだから」、「今度生まれたら」に続く、
 著者「高齢者小説」の第4弾!
 定年、終活、人生のあとしまつ……。
 自分のこと、親のこと、いずれは誰もが直面する「老後」。
 「最近の若い人は……」というぼやきが、今や「これだから『老害』は」と
 なってしまった時代。

 内館節でさらなる深部に切り込む!

「あとがき」で、著者は、
「老害をまき散らす老人たちと、それをうんざりして「頼むから消えてくれ」とさえ思う若年層。両者の活劇のような物語を書けないものかと、かなり前から考えていた」
・・・と記述しておられる。
さらに、「そんな老人たちであっても、命がある以上、どう生きたらいいのか。少なくとも、若年層に押し付けられた趣味や挑戦等の「自分磨き」ばかりでは無い。そう思います」
とある。
あくまでも物語で有り、登場人物のそれぞれは、やや極端なキャラクター?に描かれているが、その言動には、思い当たる節、多々有り、同感、共感。
「老害」・・・・・、我が身に照らして、肝に命じて、暮らしたいものだと思うところだ。

振り返り記事   「今度生まれたら」   ⇨ こちら
         「終わった人」     ⇨ こちら
         「すぐ死ぬんだから」  ⇨ こちら


葉室麟著 「橘花抄」

2024年11月20日 09時49分35秒 | 読書記

なんやかんや有って休止していた図書館通い、
先日、ようやく再開したい気分になり、約2ヶ月振りに図書館に出向き借りてきた1冊、
葉室麟著、「橘花抄(きっかしょう)」(新潮社)を、やっと読み終えた。
本書は、江戸時代中期、筑前黒田藩のお家騒動を背景に、両親を亡くした孤独な女性卯乃と、自らの信じる道を歩む立花重根、立花峯均等を中心とした男達の姿を描いた長編時代小説だったが、やはり、葉室麟著作ならではの、史実とフィクションが織り混ざった傑作だった。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。


▢目次
 第一章 卯花(うのはな)
 第二章 姫百合
 第三章 山桜
 第四章 乱菊
 第五章 花橘(はなたちばな)

▢主な登場人物
 卯乃(うの)、
 立花五郎左衛門重根(宗有)(しげもと)、立花(花房)峯均(寧拙)(みねひら)、

 奈津、りく、さえ、桐山作兵衛、村上庄兵衛、藤森清十郎、
 黒田光之(大殿)、黒田泰雲(綱之)、黒田綱政(殿)、黒田吉之、
 大涼院、呂久子、杉江、

 隅田清左衛門、真鍋権十郎、津田天馬
 佐野道伯

▢あらすじ等
 両親を亡くした14歳の卯乃が、筑前黒田藩で権勢を振るっていた立花重根に引き取られる
 ところから物語が始まっている。その卯乃は、父親村上庄兵衛切腹に、重根が関与したと
 聞かされ、懊悩のあまり失明、
 さらに、実の父親が、黒田藩廃嫡の黒田泰雲(綱之)であったことを知ることになり、
 前藩主黒田光之、現藩主黒田綱政、お世子黒田吉之を巡る、藩内抗争に巻き込まれる。

 前藩主の没後には、立花一族の粛清が始まり、減封、閉門、配流、追及は苛烈を極め、
 重根と峯均には、隻腕の剣士・刺客、津田天馬の凶刃が迫る。
 己の信ずる道を貫く重根、峯均等の男達、そして、主人公的な卯乃や、りく、奈津、さえ等
 一途に生きる女性達が、それぞれ魅力的に描かれ、
 さらに、最終章では、小呂島(おろのしま)での峯均と天馬の行き詰まる迫力満点の
 死闘シーンが、まるで劇画映像の如く描かれ、巌流島の宮本武蔵佐々木小次郎の対決を
 想わせている。
  五月待つ花橘の香をかげば昔の人の袖の香ぞする
 葉室麟著作には、よく和歌が登場するが、本書にも、随所に和歌が織り交ぜられており、
 さらには、終始、「香」にこだわっている等、格調の高さが感じられる。


(参照・参考)
e-hon 
「橘花抄」
葉室麟インタビュー
👇️
こちら


 


何時読むの?読む気有るの?積読本

2024年10月11日 20時14分42秒 | 読書記

数年前に、書棚や押入れや天袋に何十年も眠っていた、世界文学全集、百科事典、古い本類や辞書類等々を、かなり大胆に整理処分したことが有ったが、「もったいない」、「改めて読んでみたい」等という気が働いてしまい、処分し切れずにいる小説類も、まだ結構有る。
戦後、間もない頃、貧しい家で育ち、書籍等をおいそれと買ってもらえず、「本は大切な物」という観念が出来上がっている古い人間、思い切った断捨離を心掛けている一方で、いざ処分するとなると決断が鈍ってしまい、迷ってしまうのである。
自分で、書店等で買い求めた記憶がまるで無く、もしかしたら、本好きだった亡き義母から妻が譲り受けた本なのか、長男、次男が学生の頃に買い揃え、置いていった本なのかは、不明だが、夏目漱石の一連の著作品文庫本14冊も、それで、その内読んでみたい等として残してある。
ブログで検索してみると、4年前にも、その気になり、その中から、「三四郎」「それから」「門」は、読んでいたことが分かったが、その後は、また放ったらかし状態、
  何時読むの?読む気有るの?積読本
  その内いつか、って、何時なのよ
時々、自問自答している。
9月の中旬から約2週間、利用している図書館が、システムの更新、機器の入替等のため休館になり、その後もあれやこれや有って、図書館通いを、一時休止することにしていたが、その間に、手持ち無沙汰となり、やっとその気になり、その中の1冊、「道草」に手を伸ばしてみた。
つい数年前までは、読書の習慣等、まるで無かった爺さん、ブログをやるようになってからのこと、相互フォロワー登録している方から、薦められ、肩の凝らない、読みやすい、時代小説を中心に、ずっと読むようになっているが、夏目漱石の作品は、若い頃には、一度は読んでみたいと思っていたことは確かなことで、八十路過ぎてから、やっと手を伸ばす気になった、ということだ。


夏目漱石著 「道草」(角川文庫)を、やっと、やっと、読み終えた。
ネットで調べてみると、「道草」は、1915年(大正4年)6月3日から9月14日まで、朝日新聞に連載された長編小説だった。
「道草」は、「吾輩は猫である」を執筆中の生活を元にした漱石自身の自伝的作品とされているようだ。
例えば、主人公の「健三」は、漱石自身であり、金をせびりに来る「島田」は、漱石の実際の養父塩原昌之助なのだという。

▢目次
 (一)~(一〇二)
 解説 荒 正人

▢主な登場人物
 健三(主人公、東京駒込在住、36歳、教員)
 お住(健三の妻)
 島田平吉(健三の養父)
 お常(島田の妻、健三の養母、島田と離婚後、波多野(警部)と再婚したが波多野死去)
 長太郎(健三の兄、市ヶ谷薬王寺在住)
 お夏(健三の腹違いの姉、四ツ谷津ノ守坂在住、比田寅八の妻、51歳)  
 比田寅八(お夏の夫、)
 お藤(島田の後妻、前夫遠山は死去)
 お縫(遠山とお藤の娘)

▢あらすじ等
 ヨーロッパから帰国し東京駒込に居を構えて数年、健三は、大学教師として多忙な日々を
 送っているが、妻のお住は、そんな夫を世間渡りの下手な偏屈者と見ている。
 そんな折に、健三が幼少の頃の養父で、絶縁したはずの島田平助が現れ、執拗に金を無心する
 ようになる。
 さらに腹違いの姉お夏や妻の父までが現れ、金銭等を要求され、収入が少ない苦しい暮らしを
 している健三とお住を悩ませる。
 健三は、その都度、なんとか金銭を工面しては、区切りをつけるのだが・・・、

 健三の収入源を当てにして、容赦無く金づるに群がってくる周りの人達、
 当時(明治時代から大正時代)の庶民の世相は、そんなものだったのだろうか。
 健三の生い立ちや性格が、そうさせていたのだろうか。
 どろどろとした人間模様に圧倒されてしまう。

 3人目を出産した妻お住とは、心相入れることなく平行線のまま・・・・、
 健康不安、人間的苦悩を抱えながら、稼がないとならない健三。

 最後には、
 「世の中に片付くなんてものは、ほとんどありゃしない。一ぺん起こったことは
 いつまでも続くのさ。ただいろいろな形に変わるからひとにも自分にもわからなくなるだけの
 ことさ」と、健三は、苦々しく吐き出すのだった。


振り返り記事

「三四郎」  👉️ こちら

「それから」 👉️ こちら

「門」    👉️ こちら


 


藤原緋沙子著 「風蘭」

2024年09月20日 17時56分56秒 | 読書記

図書館から借りていた、藤原緋沙子著 「風蘭(ふうらん)」(廣済堂文庫)を、読み終えた。
本書は、著者の長編時代小説、「隅田川御用帳(すみだがわごようちょう)シリーズ」第10弾の作品で、「第一話 羽根の実」「第二話 龍の涙」「第三話 紅紐」「第四話 雨の萩」の連作短編4篇が収録されている。
「隅田川御用帳シリーズ」は、縁切り寺「慶光寺」の御用宿「橘屋」の女主人お登勢(おとせ)に雇われた、元築山藩藩士の浪人塙十四郎(はなわじゅうしろう)が、「慶光寺」の寺役人近藤金吾や、橘屋の番頭藤七等と共に、縁切りを求めて「橘屋」に駆け込んでくるいろいろな女達の様々な事情を探り、絡み合う悪事や謎を解明、愛憎乱れる 女と男の深い闇を、人情と剣とで見事に解決していく、悲喜こもごもの物語である。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。


「第一話 羽根の実」
▢主な登場人物
 おまき・新蔵、
 伊佐次(岡っ引き、伊佐の旦那
 直蔵(出会茶屋小松屋奉公人)、お久(出会茶屋小松屋女中
 政之助(庭木職人)・おみつ、源八、
 野瀬修理(無役旗本)、清松(渡り中間
 松波孫一郎(北町奉行所吟味方与力

▢あらすじ等
 駆け込み寺慶光寺で修行中のおまきが外出したまま帰らず、元の亭主新蔵殺しの疑いで
 捕縛された。

 外出禁止規則を破って外出させた寺役人近藤金五の責任は重大、免職の危機に立たされるが、
 十四郎、藤七等が懸命に、事件の真相、謎を解いて行き、ついに・・・。
   「おのれ」、修理が顔をひきつらせた時、
   「金五、そこまでだ。鶴の羽が見つかったぞ」
   清松は 雑木林を抜けると、門に走った。
   「待て」、修理も刀をぶらさげたまま、表に飛び出し、立ちすくんだ。
   火事羽織、野袴、陣笠を被った松波孫一郎が配下の同心、小者を従えて待ち受けて
   いたのだった。


「第二話 龍の涙」
▢主な登場人物
 お楽・辰造(石工)・おひろ、おきの、
 山城屋宗兵衛(太物商)、嘉助、
 お稲、弥兵衛(鬼火小僧)、お朝、
 松島大膳(旗本)、櫻痴(おうち、松島大膳の隠居)、
 松波孫一郎(北町奉行所吟味方与力)、

▢あらすじ等
 3年前に、前妻と娘を亡くしていた石工の辰造と世帯を持ったお楽だったが、
 夫婦の愛情等最初から無かったと、慶光寺に駆け込んできた。
 二人の馴れ初めを語るお楽、十四郎は笑うに笑えず、お楽の顔を見た。
 辰蔵の身の振り方に不審?、十四郎、藤七等が探索していくと、そこに見えてきたものは・・・。

 盗賊鬼火小僧の陰?、病的異常な数寄屋老人の陰が・・・・。
   「旦那、・・・よくわかりました。あっしが馬鹿でございやした」
   辰蔵は頭を下げた。


「第三話 紅紐」
▢主な登場人物
 おとよ、勝三、おあい、お吟、平助、
 留吉、与助、伊助、
 佐々木恭之助、政蔵、染次、
 庄兵衛、柳庵、
▢あらすじ等
 元結城屋の女房おとよは、不実な夫勝三と離縁、慶光寺を出た後、組紐師として懸命に
 暮らしていたが・・・・。結城屋は潰れ・・・。
 結城屋を潰したのはおとよのせいと決めつけていた義母お吟に対して・・・。
 一方で、佐々木恭之助に騙されて落ちるとことろまで落ちた勝三は、命を狙われ、
 おとよは人質に・・・・。最早これまでか。
   目を醒まして、男としてけじめをつけておくれ・・・」
   厳しい口調で、お吟は、勝三に迫った。
   十四郎は、静かに声をかけた。
   「お前は、お吟の子ではないか。お吟が育てた息子なら、もう駄目だなどという言葉は
   ない筈だと俺は思うぞ」

 
「第四話 雨の萩」
▢主な登場人物
 お妙・七之助・おたつ、お光、
 美樹・勇也・初音・
 芦沢伊三郎、猫目の玄蔵、為五郎、
 佐吉(呉服屋加賀屋手代
▢あらすじ等
 元仏具屋勝田屋の七之助と離縁し、慶光寺を出て普通の暮らしに戻っていたはずのお妙が、
 生きていく希望を失い、まさかの火付けの罪で捕縛され・・・。
 火付けは、重罪。お妙を救えなかったことに失意、消沈するお登勢、
 一方で、十四郎と清楚で儚げな未亡人美樹との関係は?、
 千々に乱れるお登勢の心・・・。
 十四郎との間に隙間風が吹き荒れ、孤独感に苛まれるお登勢、
 二人に最大の危機が?。

  「おっ、萩が咲いたか」
  「この萩は、俺が植えたのだ」
  お登勢はびっくりした目をしてみせたが、「うそ、うそ、、知りません」、
  すぐに咎めるような声を上げるとそこにしゃがみこんだ。
  だがその声音にも白い襟足にも、隠し切れない喜びが溢れていた。


「隅田川御用帳」ゆかりの地図

本書で初めて、「隅田川御用帳」ゆかりの地図が、巻頭で紹介されており、
地図で位置や方角を確認しながら、物語の展開を、楽しめるようになった。






葉室麟著 「草雲雀」

2024年09月13日 10時31分10秒 | 読書記

図書館から借りていた、葉室麟著の長編時代小説、「草雲雀(くさひばり)」(実業之日本社)を、読み終えた。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。


▢目次
(一)~(三十)

▢主な登場人物
栗屋清吾(媛野藩馬廻り役栗屋十郎左衛門の三男(部屋住み)、28歳、片山流秘技磯之波遣い手)、みつ、
栗屋十郎左衛門、栗屋嘉一郎(栗屋家当主、栗屋清吾の長兄)、
国東武左衛門(元媛野藩筆頭家老)、国東彦右衛門(国東武左衛門の嫡男)、
国東伊八郎(国東武左衛門の五男、妾腹の子、山倉家養子山倉伊八郎、栗屋清吾の幼馴染)、
樋口半右衛門(国東家親戚)、佳江(国東家親戚)、
菅野新右衛門(書院番、菅野刑部の妾腹の子)、しほ(菅野新右衛門の妹、湖蓮尼)、菅野刑部、
山倉兵蔵(伊八郎の養父)、山倉弥兵衛(山倉兵蔵の嫡男)、
大久保眞秀(おおくぼまさひで、媛野藩藩主
三岡政右衛門(三岡派派閥領袖、側用人)、山辺監物(国東派派閥領袖)、花田昇平(一刀流遣い手)、
菖庵(茶道頭)、梶尾(奥女中取締、黒錘組(くろおもりぐみ)頭領)、小萩(黒錘組(くろおもりぐみ)小頭)、
白木屋四郎兵衛(酒造業、金貸し業

▢あらすじ等
主人公の栗屋清吾は、剣の腕前には自信を持っているものの、正直者、小心者で、うだつが上がらない、部屋住みの身分、将来への夢もなく、少禄の栗屋家にとっては厄介者だった。百姓出の女中みつを妻帯したが、子を生すことさえも夢。
一方で、同じ部屋住み身分の幼馴染、山倉伊八郎は、実は、元藩の筆頭家老国東武左衛門の隠し子だったことがわかり、家老職につく道筋が開け、その幸運を生かそうとする伊八郎に、無理やり用心棒にさせられ、戸惑い、おびえながらも、伊八郎に尻を叩かれ、次第に藩内に渦巻く派閥闘争に巻き込まれ、暗闘で剣を振るうことになる。清吾が願っていたのは、みつとの小さな幸福な家庭、それだけだったが、そのためには、伊八郎を取り巻く敵を、命懸けで倒さねばならず・・・・、
あたかも、草雲雀が懸命に鳴くように・・・。
伊八郎が、国東家に呼び戻された本当の理由は、したたかな国東武左衛門の企てだった。
20年前の菅野刑部殺害事件の根深い恨みとの対決?
城内で試問を受け、無事くぐり抜けた伊八郎、清吾に、襲いかかる刺客・・、
首取り廊下で、決着・・、
  伊八郎は、清吾を睨んだ。
  「わかったら、さっさと行ってみつ殿を取り戻してこい」
  「まったく手のかかる男だ」
  梶尾が銚子を持って伊八郎に酒を注いだ。

  草雲雀は、美しい相手を思って一晩中、りり、りり、と鳴くのだという。
  「わたしもみつも草雲雀だ」
  清吾は、みつを背負う腕に力を込めると、草雲雀の鳴き声に合わせて
  しっかりと夜道を歩いていった。(完)


表題の「草雲雀」とは、何?・・・・、
無知な爺さん、これまで聞いたことも無い言葉だったが、
作品中で、昆虫であることが分かり、
さらにネットで調べてみると・・・。

「草雲雀(クサヒバリ)」とは、
「フィリリリリリ・・・・」と、
雲雀のような美しく澄んだ声で鳴く、
コオロギ科の昆虫のことだった。
別名「朝鈴(アサスズ)」
俳句では、「秋」の季語。

(ネットから拝借、草雲雀の画像)


へー!、知らなかった・・・、
目から鱗・・・である。


 


藤原緋沙子著 「紅椿」

2024年09月08日 20時37分05秒 | 読書記

図書館から借りていた、藤原緋沙子著 「紅椿」(廣済堂文庫)を、読み終えた。
本書は、著者の長編時代小説、「隅田川御用帳(すみだがわごようちょう)シリーズ」第9弾の作品で、「第一話 雪の朝」「第二話 弦の声」「第三話 東風よ吹け」「第四話 残る雁」の連作短編4篇が収録されている。
「隅田川御用帳シリーズ」は、縁切り寺「慶光寺」の御用宿「橘屋」の女主人お登勢(おとせ)に雇われた、元築山藩藩士の浪人塙十四郎(はなわじゅうしろう)が、「慶光寺」の寺役人近藤金吾や、橘屋の番頭藤七等と共に、縁切りを求めて「橘屋」に駆け込んでくるいろいろな女達の様々な事情を探り、絡み合う悪事や謎を解明、愛憎乱れる 女と男の深い闇を、人情と剣とで見事に解決していく、悲喜こもごもの物語である。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。


「第一話 雪の朝」
▢主な登場人物
 万寿院(松代)、春月尼、
 楽翁(八代将軍徳川吉宗の孫、元老中筆頭、元白河藩藩主、松平定信)、
 坂巻武太夫・坂巻武一郎・坂巻勇之進(英慧)、
 永井主水(旗本、無役)、増之助、
 佐兵衛・お仲
 栗田徳之進(寺社奉行所徒目付)、千草、

▢あらすじ等
 縁切り寺慶光寺主万寿院は、遠い日に交わした約束を果たしに、お忍びで玉王寺を訪れ、
 英慧と対面するが・・。英慧とは何者?、
 誰もその謎が解けない内に、万寿院の命を狙う事件発生。下手人は?、
 十四郎、藤七等が真相究明に乗り出すが、意外な事実が・・・、
 万寿院がかって旗本坂巻武太夫の養女だった頃の出来事に繋がり、
 増之助が白状、楽翁への逆恨みも明るみになる。
   十四郎は、英慧の最期を思い出していた。万寿院に手をとられて、血の涙をながした英慧の
   姿を・・・。

   あの時、十四郎は、自分の姿を見ているような気がしていたのである

「第二話 弦の声」
▢主な登場人物
 おまつ、
 長吉・お常、伊之助、
 蟹蔵(岡っ引き)、松波孫一郎
▢あらすじ等
 祝言を挙げる寸前に行方不明になった男を探しに江戸に出てきたおまつが爪弾く哀切と
 激しさが迫る津軽三味線の音色に、十四郎の足が止まった。ならず者に囲まれたおまつを
 救った十四郎はおまつを橘屋に連れてきたが、お登勢がテキパキと対応してくれ・・・、

 一方で、橘屋に駆け込んできたお常、不審だらけで、
 十四郎、藤七が真相究明中に、殺害され・・、

 伊之助とは?、長吉とは?
 お登勢、北町奉行所吟味方与力松波孫一郎の計らいで・・・、
   おまつの目も長吉をとらえていた。長吉をとらえたまま、おまつは三味線を引く。
   弦は切れても心の糸は切れぬと言ったおまつの言葉が、十四郎の脳裏を過ぎった。

「第三話 東風よ吹け」
▢主な登場人物
 お春・茂作、作造・お才・忠吉、お妙・辰平
 上総屋儀兵衛、利助、おりつ、
 弥蔵、佐吉、
 マムシの以三(岡っ引き)、木村乙一郎(南町奉行所見習い同心)
▢あらすじ等
 10才で養子に出した我が子利助の幸せをひらすら願う老母お春が、殺人の疑いで
 捕縛されるが、不審だらけの事件・・・、
 お登勢が、十四郎が、藤七が、賢明に真相究明し、
   夕暮れが迫っていたが、冬には珍しく暖かい風が吹いていた。
   「おっかさん」、「利助、・・・利助、お前、こんなところにきちゃ駄目だ、早くお帰り」
   じわりと十四郎は、いわれぬ感慨を覚えていた。


「第四話 残る雁」
▢主な登場人物
 お光、半之助、お浜、
 惣二(惣次郎)、徳兵衛、
 柳庵、
▢あらすじ等
 凶暴な亭主半之助との離縁話で、橘屋に駆け込んできたお光だったが、
 突然お登勢に反感、恨み?、
何故?、十四郎、藤七がその真相を究明していくと、
 そこには、兄惣二のお登勢に対する隠された想いが有った。 

  「私たち二人は残る雁だって・・・」、哀しい言葉が蘇った。
  「そんな筈があるものか、お前の人生はこれからだ」

 お登勢の胸に深く刻まれた亡夫徳兵衛への愛の深さを垣間見た十四郎は、落ち込んでしまうが、
 お登勢は、大切な亡夫の遺品「撥(ばち)」を、富岡八幡宮に納める決意をし、
 十四郎の胸には、新たな灯が灯るのだった。


 


藤原緋沙子著 「夏の霧」

2024年08月30日 20時51分50秒 | 読書記

図書館から借りていた、藤原緋沙子著 「夏の霧」(廣済堂文庫)を、読み終えた。
本書は、著者の長編時代小説、「隅田川御用帳(すみだがわごようちょう)シリーズ」第8弾の作品で、「第一話 雨上がり」「第二話 ひぐらし」「第三話 凧の糸」「第四話 母恋草」の連作短編4篇が収録されている。
「隅田川御用帳シリーズ」は、縁切り寺「慶光寺」の御用宿「橘屋」の女主人お登勢(おとせ)に雇われた、元築山藩藩士の浪人塙十四郎(はなわじゅうしろう)が、「慶光寺」の寺役人近藤金吾や、橘屋の番頭藤七等と共に、縁切りを求めて「橘屋」に駆け込んでくるいろいろな女達の様々な事情を探り、絡み合う悪事や謎を解明、愛憎乱れる 女と男の深い闇を、人情と剣とで見事に解決していく、悲喜こもごもの物語である。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。


「第一話 雨上がり」
▢主な登場人物
 段七、お勝、お菊、長治、
 石黒左仲・松乃、おえい、伊佐次、
 仙石屋儀兵衛、

▢あらすじ等
 牡丹栽培が大当たりでしていた段七の女房お勝が、段七が稼いた金五十両、百両全部を
 持ち出しており、離縁したいと橘屋に駆け込んできたが・・・・。
 お勝の娘お菊が何者かに拐かされ、脅迫状が・・・・。
  「お勝、ここに金がある。この金を長治さんに」
  「すべて俺が松乃さまのことを内緒にしたのが始まりだ。責任は俺にある。
  それにお菊は俺にとっても大事な娘だ」
  「だっておまえさん、そのお金は」
  お勝が包をつかんだ時、お菊が泣き出した。

「第二話 ひぐらし」
▢主な登場人物
 甲州屋政右衛門(鬼政)・初太郎、五助、お梶、文治、
 法雲、大野又兵衛、
 柳庵、楽翁、幽仙、
▢あらすじ等
 鬼政と忌み嫌われていた甲州屋政右衛門は、女房を亡くとすぐ隠居したが、最近 多額の使途
 不明金を要求され困っていると、息子初太郎が橘屋へ相談にやってきた。
 鬼政とは、過去に、駆け込んだお梶を救ってもらった恩義が有るお登勢、体を張って、
 真相究明に乗り出し・・・、
  「お登勢さん、これがお梶さんが返済してくれたお金です。この六両は私の支えになります。
  この歳になって初めて。金もただの金じゃないということが分かりました。・・・・」
  政右衛門は少年のような眼をして言った。
  「十四郎様、あの二人、きっと先々一緒になるかも知れませんね」
  お登勢は、根岸の隠居所を振り返って言った。

「第三話 凧の糸」
▢主な登場人物
 竹次郎、松太郎、三国屋梅之助・お信、
 与助・お兼、おとめ、
 お静、千太、八兵衛、
 土左ヱ門の伝・おまさ、
 松波孫一郎、
 もみじ屋伊助・お鈴

▢あらすじ等
 夫松太郎に殺されると、橘屋に駆け込んできた豊島屋のお兼が、投身自殺?、不審?
 お登勢、十四郎が、その真相究明に奔走、次第に、凧作りの名人竹次郎、松太郎の過去が
 明るみになり・・・、
 竹次郎が決意・・・、
  「それはそうと十四郎様、お静さんとは本当になんでもなかったのですか」
  お登勢は白い手を口にあてて、くすくす笑った。

「第四話 母恋草」
▢主な登場人物
 片岡慎之助、中井甚五郎、
 片岡庫之助・美佐、片岡市之丞(片岡市之助)、お夏、
▢あらすじ等
 橘屋の玄関に崩れ落ちるように入ってきた若侍片岡慎之助と病身の武士中井甚五郎、
 最愛の母親美佐を奪い、父親片岡庫之助を惨殺した男を、敵討ちするため、陸奥国中江藩から
 江戸に出てきたのだというが・・・・。
  「母上・・・・、母上・・・・、母上・・・・・」
  慎之助はむせび泣く。
  お登勢も側に座って、涙を押さえる。
  「泣けばいい・・・、慎之助、母のために存分に泣いてやれ」


 


葉室麟著 「冬姫」

2024年08月23日 06時23分51秒 | 読書記

図書館から借りていた、葉室麟著 「冬姫」(集英社文庫)を、読み終えた。本書は、乱世を生き抜き、自らの運命を切り開いた、織田信長の二女、冬姫の生涯を描いた長編時代小説だった。

▢目次
「橋姫の夜」「夜叉の笛」「まだら蜘蛛」「天女舞」「どくろ杯」
「紅蓮の城」「女人棋譜」「魔鏡の影」「独眼竜の恋」「花嵐」
 解説 村木嵐

▢主な登場人物
冬姫(織田信長の二女、蒲生忠三郎(氏郷)の妻)、いお(乳母)、
蒲生氏郷(がもううじさと、幼名鶴千代、蒲生忠三郎賦秀(やすひで))、
蒲生賢秀(がもうかたひで)、蒲生秀隆(幼名鶴千代、蒲生氏郷と冬姫の嫡男)、
鯰江又蔵、もず、
織田信長、帰蝶(織田信長の正室)、鍋の方(織田信長の側室興雲院)、
五徳(徳姫、織田信長の長女、徳川信康の妻)、築山殿、
お市(織田信長の妹、浅井長政の妻、柴田勝家の妻)茶々(淀の方)、初、江、
明智十兵衛光秀、玉子(明智光秀の娘細川忠興の妻、ガラシャ)、いと、
羽柴秀吉、徳川家康、前田利家、伊達政宗、柴田勝家、高山右近、石田三成、細川忠興
北政所(おね)、まつ(前田利家の妻)、
▢あらすじ等
織田信長の二女として生まれ、「武家の女は槍や刀ではなく、心の刃を研いでいくさをせねばならぬ」と言い聞かせられて育ち、長じて蒲生氏郷(蒲生忠三郎)の妻となった冬姫が、父親織田信長への敬慕の念と、名将と知られようになる夫蒲生氏郷へのひたむきな愛情を胸にして、多くの人間と巡り会い、渡り合い、乱世を生き抜き、自らの運命を切り開く、「女のいくさ」を描いている。
 蒲生家の行く末を見届けた冬姫は、寛永十八年、この世を去った。
 織田信長の娘として戦国の世を彩って生きた、紅い流星のような生涯だった。 
著者独特の時代考証、歴史解釈による、戦国時代の一女性にスポットを当てた作品と言えると思うが、歴史にも疎い人間、正直なところ、これまで、冬姫という存在すらも知らずで、「へー!、なるほど・・、そうだったのか・・・・」、
目から鱗、・・・・、である。
さらには、蒲生氏郷、羽柴秀吉、伊達政宗、徳川家康、等に対する人物観までもが、微妙に変わってくるから不思議なことだと思う。
 淑き人の良しとよく見て好しと言ひし吉野よく見よ良き人よく見(天武天皇の和歌)
 限りあれば吹かねど花は散るものを心みじかき春の山嵐 (蒲生氏郷、享年40歳、辞世の歌)

 


藤原緋沙子著 「春雷」

2024年08月05日 16時44分47秒 | 読書記

図書館から借りていた、藤原緋沙子著 「春雷」(廣済堂文庫)を、読み終えた。
本書は、著者の長編時代小説、「隅田川御用帳(すみだがわごようちょう)シリーズ」第7弾の作品。
「第一話 風呂屋船」「第二話 蕗味噌(ふきみそ)」「第三話 畦火(あぜび)」「第四話 花の雨」の連作短編4篇が、収録されている。
「隅田川御用帳シリーズ」は、縁切り寺「慶光寺」の御用宿「橘屋」の女主人お登勢(おとせ)に雇われた、元築山藩藩士の浪人塙十四郎(はなわじゅうしろう)が、「慶光寺」の寺役人近藤金吾や、橘屋の番頭藤七等と共に、縁切りを求めて「橘屋」に駆け込んでくるいろいろな女達の様々な事情を探り、絡み合う悪事や謎を解明、愛憎乱れる 女と男の深い闇を、人情と剣とで見事に解決していく、悲喜こもごもの物語である。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。


「第一話 風呂屋船」
▢主な登場人物
 秀吉(ひできち)・お初、文吉、
 城市(検校?、深川材木商三国屋次男坊勘当)、鮫蔵、おきん、
 野江、 
 野田の旦那(南町奉行所定町回り同心
▢あらすじ等
 船風呂屋秀吉に裏切られたお初は、生まれたばかりの赤子文吉を捨て、死を選ぼうとするが
 死に切れず、慶光寺に駆け込む。秀吉は、鮫蔵殺しの疑いで南町奉行所同心野田に捕縛される。
 十四郎、藤七が、探索開始、次第に明るみになってくる事実、検校?城市の企みが?
   「秀吉さんを、鮫蔵と思ってさ」、
   おきんは、風呂屋船を顎でさした。
   「婆さんが・・・・、そうか、文吉の子守をするのか」
   「いえいえ、むかしとった杵柄ですよ旦那。小町と呼ばれていた頃、あたしゃ、
   踊りの名人だって
言われていたんですから」「何、婆さんが踊る?・・・・、
   踊って客寄せを刷るというのか」・・・・、
十四郎は吹き出した。
 


「第二話 蕗味噌」
▢主な登場人物
 山崎与五郎(旗本200石)・喜野、未緒、
 力弥、お染(あやめ)、黒木忠兵衛、
 おたき・仙太郎、
 赤井源内(浪人、渡り用人
▢あらすじ等
 中間力弥との不義を疑われ、夫与五郎に殺されると慶光寺に駆けこんできた旗本の妻女喜野
 だったが、その裏には、したたかな悪女おたきの企てが・・・。力弥、お染の哀れ、

   源内が声を落として言う。
   「はい。女子(おなご)は恐ろしい生き物だということです。・・・・・、
   これは山崎様に限ったことではございませんが、若い頃に苦労ばかりかけたようなお人は、
   たいがい、老後は悲惨です・・・・」


「第三話 畦火」
▢主な登場人物
 為三(雷電為左衛門・天狗舞)・おかよ、利助・お袖、
 遠州屋、おつた、
 松蔵(利助の幼馴染)、
▢あらすじ等
 橘屋の主人お登勢を付け狙う初老の大男とは何者?、その理由は?、縁切り事件の逆恨み?、
 十四郎、藤七、金五、等が探索、そこに隠されていた真相は?、
 遠州屋の悪業が元凶だったとは・・・。

   配下を従えて与力松波孫一郎が馬で駆け付けて来た。
   「遠州屋、お前を召し捕る」、
   捕り方の後ろから利助が走り出してきて、為三にすがりついた。
   「再縁する?・・・・、お袖、本気なのか」と十四郎。
   「畦火・・、つまり為三は、灰になって新しい芽を育てる肥料になる覚悟だというのか」
   金五が目を白黒させた。


「第四話 花の雨」
▢主な登場人物
 辻国之助、遠山壱之丞、お栄、弁天屋喜左衛門、
 西尾数馬・松江・小太郎、
 楽翁、万寿院、春月尼、
▢あらすじ等
 お登勢の茶の湯の仲間の一人、辻国之助が、菊池藩上屋敷御賄方西尾数馬の妻女松江と不義の
 疑いをかけられ、遁走、5歳の小太郎を置き去り、その後を追った松江、女敵討ち?、
 苦悩する西尾数馬、
 目撃者お栄の証言、楽翁へ嘆願、お登勢、十四郎等が懸命に手を打つが・・・、
 果たして、その結末は?
   「お登勢様、十四郎様、ご恩は一生・・・」、
   松江は手をついた。十四郎は、松江のはかなげな襟足を見て、はっとした。